艦隊これくしょん ─態度と乳と乗艦がクソデカいタイプの転生者─ 作:物凄く強い美少女×戦艦はいい文明
AHRP(アープ)。
Adversary of Human Race is Phantom being。
人類に敵対的な幻想体。
わたくし達の敵。
西暦2238年に惑星地球の欧州と呼ばれる地域で出現すると瞬く間に他の惑星にまで広がり破壊と殺戮を撒き散らしたあらゆる生命体の天敵。
口はあっても何かを補食をすることはなく、生殖して増えることもなく、そもそも生命体ですらない、幻のように現れる異形。
通常の手段では傷を付けることすら出来ず、幻想武器か理力兵器を用いて撃退せねばならない超常の存在。
何処から来て、何故人類を攻撃して来るのかすら、100年経った今でも不明。
それと戦う為に居るのがわたくし達
理力と呼ばれる超常のエネルギーをその身に宿し、幻想の武器と人間離れした身体能力で人類の盾となり矛となる戦士。
本来ならわたくしの持ち場は地球なのだけれど、今はクロハヤ人が開拓した惑星ホーソーンへと赴いています。
というのもクロハヤ人……いいえ、地球人以外に幻想衛士……ひいては理力を発現する者が極端に少ないから。
そんな極少数の、ホーソーンを守っていた衛士達が最高位の
「いやぁ、大活躍だったねぇヒメ」
「おーっほっほっほ!当然ですわ!何せこのわたくしですもの!」
あっけらかんとした様子で揶揄うように誉め言葉をかけてくる同年代の女性。
書類仕事をするわたくしの上で空中に揺蕩いながら寝転んでいるのはホーソーンに派遣された同じく地球出身の衛士であるエイリア・ノーティス。
階位はわたくしと同じ四位格。
細腕で戦艦の束を投げ飛ばし、亜光速で飛び回り、レールガンやビーム砲を生身で受けても耐え、宇宙空間にも進出出来る当に超人の域に達した存在。
なのだけれど……エイリアは今一やる気が無く戦闘においては積極的に前に出たがらない。
地球ならばそれも許されるだけの余裕があるけれど、衛士の数が少なく四階位ですら対抗するのが難しいセラフィム級特甲種のアープすら頻出するホーソーンにおいては出来ればもっと大物相手をして欲しいところ。
勿論、四階位が大物狙いをせずに雑魚狩り……中型種や大型種相手に出張ってくれるというのはホーソーンの衛士達にとってありがたいことではあるだろうけれど。
「ま、今後とも大型種以上の相手は頼むわー」
「エイリア」
彼女のやる気のない言葉に思わず真顔になってしまう。
「わたくし達は学生と言えど軍人の身分も与えられた幻想衛士。オリオン腕連合市民の生命財産を守る使命がありますのよ?貴女はもっと誇りある態度と行動が必要ですわ」
「はぁー、ヒメは真面目だねぇ」
呆れたように溜め息を吐くエイリア。
普段から彼女とはこうして意見が食い違うことが多い。
元々エイリアが余り協調性がないのもあって、事有る毎に衝突してしまう。
なのに何故か彼女はこうしてわたくしの元へとやってくるのです。
わたくしも別に不快ではないから構わないのだけれど。
「おーいお二人さん、そろそろ昼食どう?」
やんややんやとしていると、執務室の扉が開いてやや間の抜けた声と共にわたくし達と同じ制服を着用した女性が姿を現した
わたくし達と同じくホーソーンに派遣されている銀髪碧眼の地球人女性幻想衛士のメル・ココット。
階級は
わたくし達より1つ年上の高等部3年生だけれど気さくに接してくれる人です。
「姫乃ちゃんもお仕事もいいけど栄養はしっかり取らないと」
「そうですわね。お気遣い感謝しますわ」
机の上を片付けて立ち上がるとエイリアも空中から降りてついてくる。
メルさんの誘いに従ってわたくし達は食堂へと向かったのだった。
ホーソーンの首都「ホルストメリア」中心街のビルを借り上げられて準備された吉月院学園ホーソーン分校。
幻想衛士の教育機関である吉月院学園から派遣された学生達が滞在する、学生寮も兼ねた学校。
そこが今のわたくし達の拠点である。
他に20名程の学生と10名程の地球連邦正規軍の……つまり大人の幻想衛士がここに滞在していて、クロハヤ国防軍ホーソーン方面軍支援の任に就いている。
その内の学生8名程度が食堂で思い思いの食事をとっていた。
その中に混じったわたくし達の話は自然と先日の低軌道戦闘の話題になっていった。
「いやぁ、ヘビー級の特甲種が相手だったから結構焦ったよ」
メルさんがお道化たように肩をすくめる。
特甲種……全長もしくは体高が400m以下のアープを分類する種別。
ヘビー級は異能強度のクラス分けで簡単な物理法則の無視を行って攻撃を行う個体のことだ。
ちなみにセラフィム級は天候操作クラスの現実改変能力を持つ。
ヘビー級特甲種となればわたくしが対処したものと同規模ということになる。
四階位や複数の
「でも先輩含めて3人で倒せたんですよね?流石ですよー」
「えー?そんなことないって」
エイリアの言う通り、メルさんはアーマードトルーパーに乗っていたとは言え、後輩2人だけを率いてアープ個体の撃滅に成功している。
二階位クラスなら十二分に大戦果、メルさんは優秀な二階位だと言えた。
「エイリアちゃんも中型種の群れ相手に大立ち回りしたって聞いてるよ。これで撃破数はホーソーンでトップだってね」
「いやぁ、支援の皆さんが頑張ってくれたおかげですよぅ」
メルさんの賛辞にニヘラっとした笑みを返すエイリア。
中型種は大まかに6m以下のアープ個体の種別となる。
確かに能力だけ見ればヘビー級中型種は二階位でも白兵戦で十二分に撃退出来る相手ではある。
そうは言っても、5mもある6本脚の熊が雄叫びを上げ炎を吐きながら突進してくれば余程の剛の者か重装備持ちでなければ逃げ出すでしょう。
普通は理力兵器を装備した砲兵か戦車隊に任せる。
そんな怪物が数百向かってきても……いや、中型種だけならともかく大型種や超大型種が混じっていてもハンマー1つで立ち向かえるのだからエイリアも十分異常だ。
今や理力兵器という便利なものがあるから二階位であっても徒党を組めば中型種や大型種の群れ、超大型種なども撃退することは可能ではあるけれど、いつでもどこでも必ず大火力を振り回せるとは限らない。
特にこのホーソーンのように大都市が多い星なら人口密集地で大口径砲を含む大火力兵器の運用は避けたい。
場合によっては歩兵で対処せねばならないだろう。
そういう意味ではエイリアのような「雑魚狩り」を専門にする四階位が居てもいいのかも知れない。
そんなことを考えながら煮魚の骨を取り除いていると、横合いから2人の男性が同じテーブルに腰掛けてきた。
「よっ!お疲れ、お嬢」
「お嬢ではありませんわ。……お疲れ様です、クオント」
闊達な笑顔の男性はわたくし達と同期の男性衛士であるクオント・セドリック。
階級は二階位。
「お、今日はエイリアもいるのか」
「やほー、クオントもお仕事終わり?」
「あぁ!完璧に任務達成して来たぜ!もう腹減っちゃってさぁ」
エイリアと他愛ない話をしながら大盛りのカツカレーが載ったトレイをテーブルに置く。
もう1人の男性は終始柔和な笑みを崩さずにクオントの対面へと座った。
メルさんと同じ3年生の男性幻想衛士で階級は三階位。
アヴィアナ・ウィグナーさん。
幻想武器を使った白兵能力は少々心もとないが理力兵器……特に多数の無人機を使った広域戦闘能力を持つ非常に優秀な衛士で、わたくし達からすると頼れる先輩になる。
いつも穏やかな表情を浮かべた温厚な人。
それでも時折見せる鋭い視線には思わず背筋が伸びてしまう。
「騒がしくしてすまないね、姫宮君。クオントはどうも君が好きなようだから同席したがってね」
姫宮とはわたくしのミドルネーム。
母のかつての家名だ。
「ちょっ、センパイ!?違いますよ!?ただ同期だから声かけただけで……」
「気にしてませんわ。ウィグナーさんも哨戒任務お疲れ様でした」
喚くクオントを無視して先輩を労う。
広域哨戒を扱える衛士は現状ホーソーンには7名しか居ない。
そしてその内の4名が地球からの派遣組です。
衛星やレーダーが届かない場所の哨戒はどうしても衛士の操る無人機頼りになります。
それ故、広域哨戒能力持ちの衛士達は数か月単位で任務に当たることになってしまっている。
「ありがとう。そうは言っても四階位である君達の方が余程危険な任務をこなしているんだ。本当に頭が下がるよ」
「それほどでもありますわ!でもそれは力を持つ者として当たり前のことをしているまで。ウィグナーさんの働きを軽視する理由にはなりませんわぁ!」
オーッホッホッホと哄笑を上げるわたくしを見てエイリアとクオントが苦笑いをする。
「ヒメは相変わらずだねぇ」
エイリアが呟いた言葉にクオントが納得した様子で何度も頷く。
何ですかその反応は。
メルさんも何故か尊敬に目を輝かせていますわね。
わたくしは当然のことを言っただけなのに。
スクランブルが発令されたのはそれから間もなくのこと。
ホーソーンの衛士達を含むクロハヤ国防軍とアープによる大規模な戦闘が発生したとの報を受けてわたくし達は即座に出撃することになった。
場所はホルストメリアより少し北の港町「サイオ」北方近傍、上空2000m。
サイオに入港していたのであろう600m級航宙戦闘艦が数隻、鯨にも似た外観のアープと砲戦を行っていた。
『おー、派手にやってるねぇ』
1隻の航宙艦が右舷側中央に光線の直撃を受けて爆沈するのを見てエイリアが感嘆の声を漏らす。
600mクラスを一撃で沈める威力の光条を放てるということはアープの中でもかなり強力な個体が居るということだ。
「吉月院学園特別編成隊、これより支援に入ります!」
タキオン波で行われる念話通信で周囲の味方に向かって呼びかける。
それに喜色に満ちた応答が返ってきた。
『助かる!すまないが援護を頼む!』
「了解しましたわ!エイリア、貴女は大型種の排除を優先。メルさんとクオントはわたくしを支援!」
三者三様の了解が返ってくる。
本来なら先任であるメルさんが指揮を執るのが慣例なのだけれど、彼女はわたくしに指揮を執らせたがるので仕方がないでしょう。
アーマードトルーパーを着た2人を伴ってわたくしは敵集団へと突入コースを進む。
アープは300mの特甲種が1体、160mの特乙種が11体、どれも鯨型。
そして特甲種の腹から16mの全翼機にも似た大型種が次々と現れている。
特乙種の幾つかは背に生えた砲のようなコブをこちらに向けて黄色の光線を放ってくるが、わたくしの理力障壁はそれらを完全に弾き返す。
お返しとばかりに剣を振り抜き衝撃波で手近な1体を真っ二つにする。
次いでメルさんとクオントの105mm対硬ライフルが放たれると特乙種の障壁を貫いて次々と着弾、その身を引き裂いて破壊していく。
『おっとー、こっからは行かせないよー?』
のほほんとした声音に反して身の丈を大きく超える禍々しい巨大ハンマーを振り回して全翼機を次々に粉砕していくエイリア。
おかげでこちらは煩わしい思いをしないで済む。
エイリアの実力ならばあの程度の相手などものの数分も掛からずに殲滅できるでしょう。
『特乙種更に1体撃破!』
クオントの嬉々とした報告。
見ればクオントのアーマードトルーパーは対アープ用大型ミサイルを次々と射出。
マッハ10を超えて飛翔するミサイルが特乙種に次々と命中し灰色の巨体を粉砕していく。
こちらの参戦によりクロハヤ軍も体勢を立て直し、着実にアープを撃破しつつある。
しかし、どうもおかしい。
中央の特甲種が艦載機を射出してから動かない。
攻撃してくるでもなく、逃げるでもない。
ただただじっとしているのだ。
「エイリア、クオント!特甲種に突撃しますわ、援護なさい!何か嫌な予感がします!メルさんは距離を取って支援を!」
『分かったわ!気を付けて……!』
『りょーかーい。ほらクオント、行くよ。ヒメの言う通りなんかやな感じだしさ』
『おう!』
エイリアの返事を背に、特甲種に向けて加速する。
その時だった。
特甲種の腹部がボコリと醜く膨れ上がり、そこが赤黒く光り始めた。
あれは―――まずい。
あの特甲種は爆弾を腹に抱えて自爆の準備していたのだ。
下手すると惑星を木端微塵にさせかねない爆弾を。
「総員退避!エイリア、クオント、退きなさい!」
叫びながらわたくしは特甲種に向け加速する。
残念ながら、今あの爆弾を外から壊してもホーソーンが消し飛ぶからホーソーンの北半球が消し飛ぶ程度にしか被害を減らせない。
ならば、わたくしの障壁で包んでせめて……サイオが消し飛ぶ程度に抑える。
そう覚悟を決めた瞬間、轟音。
速度を落とさず特甲種の側面に突入し剣の切先を突き刺す。
ほぼ同時に障壁を最大出力で内向きに展開。
わたくしと特甲種をすっぽりと包み込む球状の光壁が一瞬で形成される。
『んー、これだと少し足りないんじゃない?』
「エイリア!?」
不意にエイリアの声が聞こえた。
彼女はアープの眉間にハンマーを叩き付けて障壁の展開に助力していた。
「何してますの!?これでは貴女まで消し飛んでしまいますわ!」
『水臭いじゃんかー。あたし達友達でしょ?』
そう言ってニッと笑うとエイリア。
『うぉおおおりゃああああっ!!』
雄たけびと共に今度は特甲種の反対側に対艦槍を構えたアーマードトルーパーが……クオントが突撃した。
ここまで来ると流石に頭を抱えてしまう。
無茶苦茶だ。
『四階位サマには負けるが俺だって衛士だ!少しは役に立つさ!』
「そう思うなら生き残りなさい!全く。……ごめんなさい、ありがとう」
呆れつつも、2人に感謝する。
3人で連動し障壁を強化。
それとほぼ同時に特甲種の腹部が一際強烈に輝き、エネルギーを解放した。
荒れ狂う白い光の奔流が意識を刈り取って……。