「こんなことするのは月1だけだからな」
「…………」
「返事しろ、分かったか?」
「……んー。…ん、ん…うん?…ん」
「答えろや…」
あの後たづなさんが便宜を図り、俺とテイオーは特別に休みになった。どのみち、あのまま授業に行けとは言えなかったろうし、俺も流石に休みたかったから、非常に助かった。
「今たづなさんのこと考えてた?」
「こえぇよ」
エスパーへと開花しそうなテイオーの背中をぽんぽんと優しく叩く。俺は今ベッドに仰向けになっており、その上にテイオーがしがみついている。
「…その、なんだ。今日はごめんな」
「う゛ん、ボクもごめん」
とりあえず、俺の謝罪を受け取ってもらえるくらいにはテイオーも落ち着いた。
「こんなことしかしてやれないけど、いいか?」
「う゛ん、大丈夫」
俺の胸に顔を埋めているからか、声がくぐもっているし、声の振動がくすぐったい。
「だけど、本当に良かったのか?なんでも好きなもの奢ってやるっていったのに、こんなことで」
「これがいいんだ、ボクは」
お詫びも兼ねて、ハチミーでもなんでも好きなものを食べさせようと思ったのだが、意外にもテイオーが求めたのはこんなことだった。正直、高等部とはいえお互いに抱きしめ合っているこの光景は完全にアウトではあるのだが、少なくとも今はお互いに邪な感情はない為にセーフとしている。
「あのねトレーナー、ほんとに、ほんとに今日言ったことは全部嘘だからね。絶対に本気にしないでね。後、ひ、ひどいこといっぱい言って…ご、ごべんね゛、あ、あぁぁあ、うわぁぁああん」
「だからもう気にしてないって、全然気にしてないけど、これ以上お前の鼻水で何度も洗濯機送りになっていく俺のシャツのことを考えるとキレそうではある」
「涙だもん゛!!」
似たようなもんだろ…
「あとこれ、抱きつくの週1だからね…それでなんとか、我慢するから」
「いや増やすな増やすな、月1で折れたんだからな俺は」
「月1とか無理…爆発する」
なにがだよ…
「分かった、分かったから」
そういい、またテイオーの背中を優しく叩く。
「ねぇ、トレーナー…ボクね。トレーナーのこと好きだよ」
「…色気もクソもない告白だな」
「いいじゃん、もう汚いところ散々見せたし。今更だよ」
見せたというか見せられたというか。
「返事は、いらない。トレーナーがボクを、ボク達をそういう目で見てないのは分かってるから」
「……………」
「でも、卒業したらいいよね?生徒じゃなくなったら問題ないよね?」
「どう答えても問題にしかならない問いを投げつけるなよ…まぁ、そうだな。卒業すれば、文句を言う奴はいないんじゃないか?」
テイオー達の卒業までまだ年月はある。きっとそれまでには、俺なんかとは比べものにならないほどの相手も
「いないよ、絶対に。トレーナー以上の人なんて未来永劫いないから」
「いよいよエスパーとして開花したか。…テイオー、人生をそう簡単に決めるな。少しだけ先輩風吹かさせてもらうが、女学生の年上に対する恋愛感情なんてのはな、いざ、蓋を開けてみると、8割が尊敬とか憧れてただけだったとか、そういったものなんだよ」
「じゃあ残りの2割がボクだ」
「残った2割はお前、あれだよ、略奪愛だ」
「は?なに?トレーナー彼女いるの?」
「いや、いないけど」
「…ふ〜ん」
なんだこの生産性のかけらもない会話は。
「つまりは、手に入らないものを手に入れようと躍起になるのも若気の至りってことだ。将来必ず後悔することになる。主に黒歴史としてな。そんなテイオーにはためになることを教えてやろう。すっぱいブドウっていうんだが」
「トレーナーはさ、やっぱりボクみたいな子供は好きじゃないの?」
「…告白の返事は聞かないんじゃなかったのか?」
「これは返事じゃないから、あくまでも嗜好を探ってるだけ」
物は言いようだな。
「嫌いだったらこんなことしたりしないだろ」
「曖昧だね、ボクは女性として」
「テイオー、ダメだ。それ以上は色んな意味でダメだ」
生徒の前で子供が好きかどうか聞かれるってどんな拷問だよ。
「……はぁぁぁ、ほんっと、意気地なし」
「なんとでも言え、俺は現実的なんだ」
「それで、ボクにしたこと、他のみんなにもするの?」
「え、あ…忘れてた」