ハイスクールD×G 作:オンタイセウ
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その日、ダイスケはイッセーの見舞いに行った。
あのゲーム以来、イッセーは二日間も寝込んでいる。彼の両親も心配していた。
アーシアもほぼ寝ずの番で看病に当たっている。
「ああ、宝田くん。今日も来てくれたのか。」
玄関を開けてくれたのはイッセーの父だった。
普段はイッセーの事を性欲の権化だとか、孫の顔は一生見れないと覚悟しているとか嘆いているのを聞いたことがあるが、やはりイッセーの親だ。イッセーのことをかなり心配していた。
「はい。あの、イッセーは?」
「まだ寝込んでいるよ。アーシアさんが一生懸命付き添っているが……。」
いつもは明るい笑顔で迎え入れてくれるイッセーの父も、流石に暗い表情を見せる。本当ならば、何があったのか教えるべきなのだろうが混乱させるだけだ。結局隠さなければならないのが胸に突き刺さり、罪悪感となる。
「大丈夫です。そのうちすぐに目を覚まして、性欲の権化っぷりを見せてくれますよ。」
ああ、そうだね、とイッセーの父は笑う。
それを後にして、イッセーの部屋につながる階段を上がっていく。
「あ、ダイスケさん。」
後ろから声をかけてきたのは、替えのタオルを持ったアーシアだった。
「今日も来てくださったんですね。ありがとうございます。」
「いいんだよ。それより、タオル持ってくんだろ?先に行きな。」
「すみません、それではお先に。」
アーシアに先を譲ると、イッセーの部屋からグレイフィアが出てくる。
「ダイスケ様、ゲーム以来ですね。ご無沙汰しております。それとアーシア様、イッセー様がお目覚めになりましたよ。」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます、グレイフィアさん!」
アーシアが歓喜と驚きを胸に、部屋の中へ急いで入っていく。グレイフィアと入れ違いになった形だ。
「ダイスケ様、あなたは行かれないのですか?」
「……どうせ、ちょっと痴話喧嘩が起きるでしょうからね。馬に蹴られたくはありませんし。それに……。」
ダイスケはグレイフィアを強い視線で見つめる。
「行くんでしょう?あいつは。部長を取り返しに。」
「お嬢様からお二人はご友人だとお伺いしましたが……本当にそうなのですね。なんでも相手のことがわかる間柄。すこし羨ましいですね。そういう友を持っていることが。」
感嘆するグレイフィアは続ける。
「イッセー様には、お嬢様の婚約披露パーティーの会場へ直接移動できる魔法陣をお渡ししております。御一緒に行かれるのであれば、急がれたほうがいいですよ。」
「いや、どうせもう少しあいつには準備があるでしょうから。それが終わったら、一緒に行きます。……これは、部長からの指示ですか?それとも、あなたの独断?」
「どちらでもございません。これは、サーゼクス様のご意志です。あの御方は非常に妹煩悩が強いというか、シスコンとも言うべき御方なので……。」
魔王がシスコン。なにかとても残念な現実を突きつけられたかのような表情になるダイスケ。
「それでも、お嬢様が望まぬ婚約を迫られ、苦悩されているのを承知された上でのこの行動です。あの御方を信じてあげてください。」
グレイフィアの表情は、なにかとても信頼する相手のことを想う顔だった。
そんな顔を見せられれば、ダイスケもその表情に隠されたものを察しざるをえない。
「どころで、あなたは何故行かれるのですか?イッセー様にはお嬢様を取り返すという意思があります。ですが、あなたの動機がわかりません。」
「動機ならありますよ。まずはあの焼き鳥野郎へのリベンジ、いや、アベンジかな。それにみんなを助けられなかった自分自身へのケジメ。それと……」
「それと?」
「イッセーがダチだからです。」
ふっ、とグレイフィアが微笑む。
「……もう少しあなたのの出会いが早ければ、私はあなたに付いて行ったかもしれませんね。」
「それ、慰めになってません。」
ダイスケがむすっとなったのを見て、彼女は笑った。
もう無駄話をしている暇はないだろう。急がなければ、イッセーが一人で行ってしまう。
そこで、ダイスケが思い出したように言う。
「ああ、そうだ。グレイフィアさん、すいませんがタキシードを2着用意して頂けませんかね。あと、身を隠すローブも。」
「構いません。しかし、何故タキシードを?ローブはわかりますが……。」
「パーティに乗り込むのに私服はちょっと、ね?あ、あとそれと……。」
「ほかにも何か?」
「ええ、ニシンのパイを1つお願いします。」
「はあ……。構いませんが、何にお使いになるので?」
「パーティー会場に乗り込むのに、ニシンのパイが必要だっていう作法があるんですよ。」
「承りました。向こうに着いた時、当家の者に直接あなたに届けさせます。……ご武運を。」
それでは、と彼女はお辞儀をして魔法陣の中へ消えていった。
それを確認すると、ダイスケはイッセーの部屋のドアを開ける。
「遅かったじゃないか。」
イッセーが既に左手に神器を出していた。
いや、神器ではない。その表面に神器にはない生命感がある。
「なるほど、お前の神器のドラゴン、ウエールズの龍だったか。そいつに左腕を売ったな?」
「こうでもしなきゃ、ライザーには勝てないって分かったんだよ。実際に戦ってな。」
もうその真実を知っているのだろう。アーシアの瞳には涙が浮かんでいる。
「行かれるのですね。御二人共。」
「ああ、行ってくるよ。」
「待ってろ、アーシア。部長は必ず……取り返す!!」
アーシアが見送る中、二人は魔法陣の中に消えた。
*
「“婚約”披露宴だなんていって……これじゃあほとんど“結婚”披露宴じゃない。」
今リアスは己の控え室にいる。もうすでにパーティーは始まっている時間だ。
リアスの言うことは最もだった。
今のリアスの格好はほとんどウェディングドレスと言っていい衣装だった。
だが、これは自分が選択した末の結果。甘んじて受ける他ないのが、今のリアスの立場だった。
「そう言うなよ、リアス。せっかくの花嫁衣装にそんな顔は似合わないぜ?」
不意に炎が立ち上がり、中からライザーが現れる。
「いけません、ライザー様!ここは男子禁制ですよ!?」
リアスに使えるメイドの一人がライザーの侵入をたしなめるが、それを当人は気にも止めない。
「硬いこと言うなって、俺は今日の主役だぜ?いや、主役は“花嫁”の方だったな。失敬、失敬。」
「まだ花嫁になったわけじゃあないわ。……一体なんなのよ、この衣装。すぐに取り替えてもらうわ。」
「いやいや、それでいいのさ。グレモリー家とフェニックス家が繋がれたって、より冥界中にアピールできるだろう?そして君もそれを着ることでより諦めがつく。だろう?」
嫌味ったらしく言うライザーに、リアスは唇を噛む。
「安心してくれ。本番ではそれとは比較にならない最高の花嫁衣装を君に送るよ。」
そういって再び炎の中に消えるライザー。
そんな中、リアスの脳裏にあったのはイッセーのことだった。
最後まで一緒に戦ってくれた可愛い弟分にして下僕。
ボロボロになってまで自分の為に戦ったイッセーのその傷ついた姿が、今でも目に浮かぶ。
(ごめんなさい、イッセー……。駄目な主で……。)
そう想いに耽るリアスに、メイドが非常にも現実の時の流れを告げる。
「リアス様。お時間です。」
*
「おねがいしますよ~。警備員さん、通してくださいよ。」
「ダメだ。招待状のない者を通すわけにはいかん。」
「そうは言ってもねぇ、こっちは届け物があるんですよ。ほら。」
「なんなんだ、そのバケットの中身は。」
「「ニシンのパイ。」」
「なんでニシンのパイ!?」
「いや、パーティーの届け物ったらニシンのパイでしょ。」
「どこの星の常識!?ていうか、なんなんだお前ら。」
「いや、私たちね、魔女の宅急便コンビ”相棒”ってやってるんですけれど、グレモリーのメイド長様からこれを届けてくれって頼まれちゃって。」
「相棒ってなんだよ、相方交代するフラグがバリバリに立っちゃてるじゃん。」
「そんなことないわよねーイセ子。」
「そうよダイ子、私たちの絆は永遠よ。いつか必ずわたしたちの宅配で冥界を優しさに包んであげるんだから。」
「いや、訳分かんねーよ。」
「なによ、見てわかんないの?目に見えるすべてのことがメッセージなんだから。」
「とりあえずほら、バゲットのなか見てみてよ。ほんとにニシンのパイしか入ってないから。」
「……確かにニシンのパイだ。ところでイセ子だったか?そいつの左腕はどうしたんだ。」
「ああこれ?これはあれよ、この前たくさんのジャガイモを配達してくれって依頼の時にちょっと。」
「ちょっとってなんだ、何があった。」
「まあ、疲労骨折の複雑骨折?みたいな。」
「そうか、大変だったな。それでなんだ、受取票か何かにサインすればいいのか?」
「いえいえ、受取票もサインも必要ございません。」
「え?じゃあどうするんだ?」
「「テメーの顔面に拳の判子。」」
ローブと見張りの男が、宙を舞う。
*
冥界の名家同士の婚約パーティーとあって、会場は大いに賑わっている。
会場には数々のドリンクや食事が並び、まさに贅の限りを尽くしたと言わんばかりの光景だ。
だが、所詮は婚約披露宴。本当の結婚披露宴ではこれ以上の趣向がこられるはずだ。
そして社交場らしく、貴族同士の会話もあちこちで見られる。
こういった場における会話は、ただの世間話ではない。
お互いのビジネスの近況や、政治についての意見交換もある。さらには将来のためのコネクション作りや重要な商談につながる会話も起こる。
貴族社会においては往々にして、パーティー会場が政治の場になっていたりするのだ。
そんな中、レイヴェル・フェニックスは他の眷属たちをそばに置いて、顔馴染みの貴族との談笑を楽しんでいる。
「うふふふ。お兄様ったら、レーティング・ゲームでお嫁さんを手に入れたんですのよ。結果の見えていた勝負でしたが、見せ場ぐらいは作ってさしあげる余裕はございましたわ。オホホホホ!」
当のレイヴェルは、自分が人間のダイスケに一撃でダウンされたのを棚上げして語る。
相手は中継されていた試合を見てはいないのだろう。それを聞き手の悪魔は鵜呑みにしてしまっている。
その姿をリアスの眷属悪魔として招待されている朱乃たちは遠巻きに眺める。
「これみよがしに、言いたい放題だ。」
タキシードでキッチリ決めた木場が苦笑する。
「中継されていたのを忘れているのでしょう。」
そこへ、ドレスで着飾った蒼那が現れる。
「会長……。」
「私は学校の関係者ということで観戦していましたが、結果はともかく勝負そのものは拮抗、いえ、それ以上のものでした。それは誰の目にも明らかです。」
ダイスケがこの言葉を聴いていたら間違いなくブチ切れるだろうが、同じ場にいた上役たちも同様の意見だったという。
「ありがとうございます。でも、お気遣いは無用ですわ。」
朱乃のその言葉に、蒼那は怪訝そうな顔をする。
「多分、これで終わりじゃあない。僕らはそう思ってますから。」
「……ええ、終わってません。」
木場と子猫が言い終わると同時に、壇上に大きな火の手が上がる。ライザーの登場だ。
「冥界に名だたる貴族の皆様方!本日は貴重なお時間をさいて頂いてのご来場に、フェニックス家を代表して御礼申し上げます。」
ライザーが恭しく、会場の貴族たちに挨拶を述べる。
「本日お集まりいただいたのは私ライザー・フェニックスと、名門ゲレモリー家次期当主リアス・グレモリーとの婚約という歴史的瞬間にお立会いいただくためであります。」
その言葉をレイヴェルは誇らしげに聴き、グレモリー眷属たちは厳しい視線でもって聞く。
「さあ、ご紹介いたします!我が后……リアス・グレモリー!!!」
リアスの魔法陣が展開し、そこから純白のドレス姿のリアスが現れる。
紅い光が収まり、リアスが目を開けようとした、まさにその時。
「うわぁぁぁああああああ!!!」
衛兵がドアを突き破り、会場の中に飛ばされる。
それが立てる騒音と土煙に、貴族たちが何事かと視線を突き破られたドアに向ける。
誰もがそこに視線を釘付けにしていた。
すべての貴族達も。
蒼那も。
ライザーも。
グレモリー眷属たちも。
そして、リアスも。
土煙が晴れ、二人の人影が見える。
「夜分遅くに申し訳ございません、貴族の皆様。ニシンのパイお届けにあがりましたー。あ、「このパイ嫌いなのよね」ったら殺すからな。」
「いや、ダイスケ。ここにいる人たち、そのネタわからないだろ。」
そこにいたのは紛れもない、タキシードを着たダイスケとイッセーだった。
「……イッセー!?」
リアスが突然のその登場に驚く。
俺は無視ですか、と呟くダイスケをよそにライザーが立ちはだかる。
「おい、貴様!ここをどこだと思っている!?」
それに構わず、イッセー達は宣言する。
「俺は駒王学園、オカルト研究部の宝田大助!ライザー・フェニックス!借りを利子と熨斗とオマケをつけて返しに来たァァァアアア!!」
「同じく駒王学園、オカルト研究部の兵藤一誠!リアス・グレモリーの処女は……俺のモンだァァァァアアアア!!!」
というわけでVS10でした。
今回もまた短めでしたが、ご容赦くださいますようお願い申しあげます。
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!