ハイスクールD×G   作:オンタイセウ

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LREXの鎧武極アームズが遂に3枚になりました。
LRのマルスも2枚になってしまいました。
多分、私は黄金の果実に呪われているのです。
……ヘルヘイムマジで怖ェ。


VS11 ライザー・フェニックス(その5)

「駒王学園、オカルト研究部の兵藤一誠!リアス・グレモリーの処女は……俺のモンだァァァァアアアア!!!」

 

その一言に、会場は騒然となった。

 

「な、何を言っているの、あの男!?」

 

“処女”なんて日常ではお目にかかれないどころか、口にするのも憚られる言葉を放ったイッセーに顔を赤くするレイヴェルを始め、多くの貴族たちがざわめく。

 

「イッセー……」

 

だが、リアスは別だった。

生まれて初めて受ける、身分も何も関係ないイッセーからの愛の告白。彼女にはそう聞こえていた。

幼い頃からグレモリー家の後継、魔王の妹という肩書きだけで求婚されてきた彼女にとって、初めてイッセーは個人「リアス・グレモリー」としてみてくれた。それも、可愛い下僕であるイッセーが。これだけで、リアスの心は熱く燃え上がった。

そのリアスの心を傍で見て感じたのか、ライザーは焦って己の下僕たちに命じる。

 

「くっ……取り押さえろ!!」

 

『はッ!!』

 

一斉に二人へ飛びかかるライザーの下僕たち。

 

「イッセー、お前は体力温存しとけ。」

 

イッセーを制してダイスケが前に出る。

 

「「バラバラになっちゃえ!!」」

 

最初に飛び掛ってきたのはチェーンソーの双子イルとネル。火花を散らして降り下ろされる二つのチェーンソーをダイスケが籠手で握り掴む。

 

「こ、このぉぉぉ!!」

 

「ミラ!!」

 

「ええ!」

 

ネルの一声で、棍を持ったミラがダイスケの背後から襲いかかる。

もう少しで棍が直撃する、というその時チェーンソーが握りつぶされる。

 

「「ウソ!!」」

 

バラバラに散らばるチェーンソーの破片。その中をダイスケは後ろを振り返り、ミラを捕まえて双子に投げつける。

 

「「「キャアアア!!」」」

 

三人仲良く壁に激突し、気絶する。

続いて襲い掛かるのはシュリヤー、マリオン、ビュレントの兵士の三人。ゲームでは朱乃の誘導に引っかかり、木場に足止めをされたところでダイスケの熱線をくらって退場した三人だ。

 

「お前らは問題外。」

 

ダイスケのその一言の後、シュリヤーは側頭にハイキックをもらって窓の外へ吹き飛び、マリオンはアッパーで天井に突き刺さり、ビュレントは踵落としで床に埋められる。

 

「ニィ、リィ、美南風!行きなさい!!」

 

ユーベルーナの指示で三人が突撃する。

まずはニィとリィと呼ばれた猫耳の双子がダイスケの両側面から攻撃する。イッセーにしたのと同じように、まず足を潰そうとしてローキックを当てる。

 

「頑丈だって言っただろ。」

 

そのダイスケの言葉を裏付けるように、逆に二人の脚の骨が折れる。その痛がる彼女たちの襟首を掴み再び投げる。投げられた二人は美南風と呼ばれた十二単姿の少女を巻き込んで壁を突き破って退場。

 

「コイツッ!イザベラ!」

 

「わかっている、雪蓮!」

 

今度は戦車二人の拳のラッシュ。だがそれも全て受け流される。

 

「お、ジョジョの真似か?だったら俺も……。」

 

ダイスケは二人の渾身の拳を弾くと、お礼とばかりにラッシュをし返す。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

 

それはガードする暇もなく、イザベラと雪蓮のボディに叩き込まれる。

 

「オォォォラァ!!」

 

二人はレイヴェルの横を突っ切って壁に激突し、沈黙。

 

「いくぞ、シーリス!」

 

「わかっている!」

 

剣を構えて向かってくるのは騎士のシーリスとカーラマイン。それぞれ大剣と炎を纏った短剣が得物。だが、それに関係なくダイスケは両手を広げて構える。

 

「刃物には飛び道具っしょ。」

 

連射される光弾。一発一発の威力は低いが、騎士二人は間合いの外から浴びせられる光弾の雨を受けて崩れ去る。

 

「調子に乗るなァァァァ!!!」

 

ユーベルーナがダイスケに特大の炎を放つ。もはや周りの被害など関係なくなっている。

だが、炎は直撃することなく熱線にかき消される。そのまま熱線はユーベルーナに直撃し、沈黙させた。

 

「安心しろ、威力は抑えた……って、聞いてねぇか。いいか、よォく聞け。この兵藤一誠の道を阻む者は、この俺、宝田大助がブチのめす!!!」

 

その視線をレイヴェルに向けるダイスケ。彼女は床にへたり込み、完全に戦意を喪失していた。

無理もない。ゲームでは腹を突き破られた上、目の前の惨状を見せられれば戦意の一つも喪失する。

妨害しようとしていた衛兵たちを倒した木場たちは、イッセーとダイスケの元に駆けつける。

 

「すごいよ、ダイスケ君。ライザーの眷属を瞬く間に……ってゴフッ!!」

 

間違って、とかではなく、完全に狙って木場を殴るダイスケ。それも顔。

 

「なんで!?僕、何かした!?」

 

「殴られて当然だろうがよぉ。お前らアホどもが調子に乗ってバカやったせいで負けて、結果的にこんな状況になったんだぞ。」

 

「……一応、俺もここに来る前に殴られたんだよね。」

 

そう言って右頬の痣を見せるイッセー。

 

「「「いや、ほんと、すいませんでした。」」」

 

上半身を90°曲げて謝るグレモリー眷属の三人。

それを見て、ダイスケは小猫のそばに寄る。

 

「いやいや、お前はよくやったよ。頑張ってあんなことになったんだからしょうがねぇって。ほら、ご褒美にニシンのパイやるよ。2個あるから。」

 

「ホントですか。一度食べてみたかったんです。」

 

そうして黙々とニシンのパイを食べる小猫の頭を撫でながら、朱乃と木場にしつこく説教するダイスケ。その様子に悪魔たちは動揺せざるおえない。

 

「ライザー殿、あれは一体なんなのですか!?」

 

「ライザー殿の眷属を数分足らずで全滅させるとは……!」

 

周囲の動揺と、眷属が全員瞬殺されたことに焦るライザーは、それまでの余裕をなくす。

 

「き、貴様ら!ここがなんの場所なのかわかっているのか!?」

 

その言葉にイッセーとダイスケは不敵に返す。

 

「だからせめて、タキシードで。」

 

「地味でしょ?ライザー“さん”。」

 

あからさまな挑発に、ライザーは思わず熱くなる。それが自分の婚約披露宴をぶち壊そうとしている相手の挑発なのだからなおさらだ。

 

「ふざけるんじゃあない!!表へ出ろ!徹底的に叩きのめして―――」

 

「彼らは私が招待したのだ。手荒なことはよしておくれ、ライザー君。」

 

上位悪魔かつ72柱の一柱であるライザーを君付けで呼ぶ者。

真紅の髪を流し、グレイフィアを伴ったその男は……

 

「お兄様!?」

 

「サーゼクス様!?」

 

リアスとライザーの言葉でイッセーとダイスケは会得する。

この男こそ、リアスの兄であり現魔王の一角を担う『サーゼクス・ルシファー』その人だと。

 

「し、しかし、サーゼクス様!こ奴らはこのパーティーを台無しにしようとするどころか、私の眷属たちもあのような目にあわせたのですぞ!?」

 

「招待されているのに会場に入るのを妨害されたんだ。彼らだって怒りたくなるさ。……まあ、このような惨状になってしまったわけだが。」

 

壁はボロボロ、窓ガラスは割られ天井に穴があいた現状を見てサーゼクスは苦笑する。

その言葉に納得のいく様子を見せないライザーを見て、サーゼクスは続ける。

 

「彼らは私の用意した余興のために来てくれたのだ。」

 

「さ、サーゼクス様!そ、そのようなご勝手は……!」

 

関係者であろう、慌てふためく中年の男性悪魔をサーゼクスはスッ、と出した右手で抑える。

 

「先日のレーティングゲームは非公式戦ながら実に面白かった。数や経験で圧倒的に不利な妹が十字架を利用した武器や、奇抜な戦術で互角以上に立ち回ったのは実に素晴らしかった。」

 

しかし、とサーゼクスは続ける。

 

「先程も言ったようにゲーム経験のない妹が、フェニックス家の才児であるライザー君と戦うのは少々分が悪かったかな、と。」

 

「……私には、サーゼクス様が『この間の戦いは解せない』とおっしゃっているように聞こえますが?」

 

「いやいやライザー君、その様な事はないよ。魔王とはいえまだまだ若輩者の私があれこれ言っては旧家の顔が立たない。」

 

上級悪魔同士の交流は大事なものだしね、とサーゼクスは食えないことを笑顔で言う。

イッセーにもサーゼクスの言わんとしていることがわかった。つまり、「うちの妹かなり不利だったんじゃね?ほとんど八百長に近くね?」ということだ。

やはりグレイフィアの言うとおり、この魔王相当なシスコンらしい。

 

「ならばサーゼクスよ、お前はどうしたいのだ?」

 

魔王やリアスと同じ紅髪の男性が問う。髪の色と魔王に対するその態度から、恐らく父親だろうか。

 

「父上、私は可愛い可愛い妹の婚約パーティーはド派手にやりたいと思うのですよ。ドラゴン対フェニックス。そこに先日のゲームで奇抜な戦術を披露してくれた少年を加えての大乱闘。最高のイベントだとは思いませんか?伝説の生物同士が会場を盛り上げる。これに勝る演出はないでしょう。」

 

その魔王の一言に会場にいる全悪魔の口がふさがる。ここまで最もらしい事を言われれば貴族といえども押し黙るほかない。

 

「二人共、お許しは出たよ。ライザー、私とリアスの前で今一度その力を見せてはくれないかな?」

 

その願いを聞き、ライザーは不敵に笑う。これで勝てば、なんの遺恨もなくなるからだ。

 

「……サーゼクス様に頼まれたのであれば断れるわけがございません。このライザー・フェニックス、身を固める前の最後の炎をご覧に入れましょう!!」

 

これで舞台は整う。

そこで、気合を入れる二人にサーゼクスは問う。

 

「さて、二人共。君たちが勝ったときの対価は何がいいかな?」

 

「サーゼクス様!?何を仰るのか!?」

 

「相手は一介の下僕とただの人間ですぞ!?」

 

サーゼクスの申し出に方々から非難の声が上がる。だが、魔王は気にも止めない。

 

「下僕と言っても彼は悪魔です。それに人間の少年も私のためにわざわざ冥界くんだりまで来てくれたのです。ならば、こちらもそれ相応の報酬を支払わなければ。ええと、人間の彼の名はなんだったかな、グレイフィア。」

 

「宝田大助様です。」

 

「ありがとう。さあ、宝田君。君の願いは?」

 

ダイスケはその問に間髪いれずに答える。

 

「俺は、そこの焼き鳥野郎をブチのめせれば十分ですよ。」

 

「ははは、欲がないねぇ。では、リアスの兵士君。兵藤一誠君だったね。君の願いはなんだい?聞けばいつか上級悪魔になってハーレムを作るのが夢だと聞いたが……君の望みは爵位かな?それとも、絶世の美女かい?」

 

イッセーにとって、最高の申し出だった。爵位も、絶世の美女も共にイッセーの望むもの。だが、既に答えは決定している。

 

「俺の主、リアス・グレモリー様を返していだだきたい!」

 

その迷いのない答えに、サーゼクスは満足そうな笑みを浮かべる。

 

「わかった。君が勝てば、リアスを連れて行くといい。」

 

「「ありがとうございます!!」」

 

二人は、奥へと消えていくサーゼクスに頭を深く垂れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急遽作られたバトルフィールド。

それはさながら古代ローマの剣闘士たちが命をかけて戦ったコロッセオ。

だが、ここで賭けられるのは命ではない。一人の女の未来だ。

円形の観客席には貴族悪魔たちが好奇の目で中央にいるイッセー、ライザー、そしてダイスケを見守る。

二対一は卑怯ではないか、という意見もあったが、歴戦のライザーが相手ならばちょうど良いハンデであろうという結論に落ち着いた結果だった。

観客席にはグレモリー眷属をはじめ、蒼那やリアスの傍らにはサーゼクスもいる。

反対の位置にはフェニックス家の関係者たちとボロボロになった眷属たち、そしてレイヴェルが固唾を飲んで見守っている。

 

「イッセー、それとウェールズの赤い龍。準備はいいか?」

 

「ああ、いつでもいいぜ。」

 

『小僧、いちいち「ウェールズの赤い龍」では呼びにくかろう。ドライグと呼べ。』

 

神器を展開する二人。それと対照的にフェニックスを象徴する炎の翼を広げるライザー。

余裕の表情のライザーはイッセーの籠手を指差す。

 

「お前たちの能力は既に割れている。所有者の能力を十秒ごとに倍加する赤龍帝の籠手。さらに自分の力を見方に与える譲渡する新しい力に目覚めたそうじゃあないか。そして、怪力と熱線を放つ龍の手の変異種だそうだな。」

 

確かに自分の能力を相手に知られるのは不利だ。だが、イッセーとダイスケには関係のない話だった。

 

「はっ、俺達の能力が割れてるからどうだっていうんだ。小手先の技なしでも十分にお前を倒せるぜ!」

 

「イッセーの言うとおりだな。それを言えば、お前の不死の弱点だって知ってるんだぜ?」

 

構える三人。

 

「はじめッ!!」

 

レフュリー役の悪魔がはじまりの合図を出した。

炎の翼を広げ吶喊してくるライザー。それを受け止めたのはダイスケだった。

 

「お前にはいろいろと借りがあるからな!まずはお前から片付ける!!」

 

「え、何か貸してたっけ?ああ、あの時貸したジャンプ?いいよ、もう最新号出たから。それにコミックス派だから俺。」

 

「茶化すなァァァァアアアアア!!!!」

 

ライザーの怒りに答えるかの如く、炎の翼は勢いを増しさらなる推力を発生させる。

 

「後ろががら空きだぜ!!」

 

そのライザーの背中に、イッセーは特大の魔力砲を撃ち込む。

だが、その一撃は翼に弾かれ霧散する。

 

「クソッ!!」

 

「悔しがることはないぞ、リアスの兵士。なかなかいい一撃だった。だがな……。」

 

ダイスケが蹴り飛ばされ、壁に叩きつけられる。

そしてイッセーの周囲に高温の炎が立ち上がる。

 

「ちょいとでも俺に敵うと思ったか、マヌケェェェエエエエ!!」

 

この炎ではイッセーの体が持たない。その時、イッセーはリアスに向かって叫ぶ。

 

「部長!昇格の許可をください!!」

 

リアスが頷くと、イッセーにはその変化がすぐに感じ取れた。

ドクン、と胸が鳴る。昇格の許可がおりたということが、感覚で分かった。

 

「プロモーション、『女王』!!」

 

最強の駒の力がイッセーに宿る。それを感じたライザーはすぐさま攻撃態勢に入るが、ダイスケに邪魔される。

 

「ヒーローの変身シーンを邪魔するじゃあねえよ!!」

 

ダイスケの拳がライザーの腕に防がれる。

そのまま二人は激しい拳の打ち合いになった。

その隙にイッセーは赤龍帝の籠手に力を送る。

 

「部長ッッ!俺は木場みたいに剣の才能はないし、朱乃さんのような魔力の天才じゃありません!子猫ちゃんみたいなパワーはないし、アーシアみたいに癒しの力はない上、ダイスケみたいな悪知恵は働きません!!」

 

その言葉に、打ち合いをしながらダイスケは「オイ」と突っ込む。

だが、イッセーを止めようとするライザーの動きは完璧に抑えている。

 

「それでも、それでも俺はあなたのために最強の兵士になってみせます!!輝け、赤龍帝の籠手ァァァアアアア!!」

 

『Welsh Dragon over booster!!!!』

 

赤い閃光がイッセーの体を包む。

そのままイッセーはダイスケと殴り合いを続けるライザーに向けて走り出す。

左手だけでなく、右手に籠手が。

両足にも似た意匠の具足が。

肩や腕にも鎧が出現し、その胴体も赤い装甲が現れる。

背中にはブースターらしき推進装置が現れる。

もうすぐでライザーの顔を殴れる距離になる。ライザーは逃げ出そうとするが、ダイスケがそれを許さない。

右腕で殴れるように構えるイッセー。

思わずライザーは目を瞑る。

イッセーの顔まで甲冑に包まれた時、見事なストレートパンチがライザーの顔面に突き刺さる。

 

「ガハッ!!」

 

勢いよく飛ばされるライザーだが、体制は崩れない。そしてイッセーの姿を見て驚いた。

 

「き、貴様!赤龍帝の力を鎧の形に具現化させたのか!?」

 

「ああ、そうさ!赤龍帝の籠手の『禁じられし忌々しい外法』、“禁手《バランスブレイカー》”!!“赤龍帝の鎧《ブーステッド・ギア・スケイルメイル》”!!今の俺じゃあ短時間しか持たないが、お前をぶっ倒すのには十分だ!!」

 

ドライグによれば、ただの人間の体であればほんの十秒ほどしかこの形態を保てない。

だが、イッセーが悪魔であることと元々の体がそれなりに鍛えられていたことから数分の間であれば十分に戦えるとのことだった。

その圧倒的なオーラと力の前に、ライザーは決意する。

 

「赤龍帝のクソガキとふざけた人間!!悪いがもう、手加減はしない!!」

 

咆哮を上げるライザーの炎の翼が、さらに大きく強くなる。その肉体には虹色のオーラが覆い、全身を炎が渦巻く。

その激しい炎が会場を包み、観客たちも己を守るために魔力の防壁を生み出す。

 

「火の鳥!鳳凰!そして不死鳥フェニックスと称えられた我が一族の業火!!その身で受けて燃え尽きろ!!!」

 

その言葉を裏付けるかの如く、その身に纏う炎は周囲の大気までも燃やしている。

 

『小僧ども、フェニックスの炎はドラゴンの鱗をも傷つける。受け続けるのは得策ではないぞ。』

 

ドライグが二人にアドバイスをするが、そんなことは先刻承知の上だ。

 

『さあて、お前たちがいかにしてフェニックスの炎と不死の力に抗うか……とくと見させてもらうぞ。』

 

「「黙って見てろよ、長谷川さん。」」

 

『いや、誰だ長谷川さんって。』

 

二人がドライグ相手に軽口を叩くうちにも、ライザーはさながら火の鳥のごとく迫ってくる。

 

「イッセー、行くぞ!!」

 

「応ッ!!」

 

まず、イッセーは高くジャンプする。

そのまま空中から何発もの魔力砲を撃ち続ける。

それを紙一重でかわしていくライザー。その勢いは止まらない。しかし。

 

「ハァッ!!!」

 

そのダイスケの叫びと同時に、両腕の籠手にあるスリットから青白い閃光が放たれる。

閃光の威力は、一瞬で会場内を包んでいたライザーの炎が掻き消えてしまう程だった。

 

「バカな!!俺の、フェニックスの炎がかき消されただと!?」

 

その余波に巻き込まれ、ライザーも吹き飛ばされる。イッセーが上空に飛んだのはライザーを牽制するだけでなく、これを避けるためでもあった。

その飛ばされたライザーをイッセーが捕まえる。

 

「オォラァァ!!」

 

背中のブースターを全開にして、自分もろとも地面に激突する。そしてイッセーは馬乗りになった状態でライザーの腹に左の一撃を加える。

 

「ガハッ!!」

 

ライザーが吐血する。

確かに強力な一撃ではあったが、ここまでのダメージを負うはずがない。

 

「へへっ、アーシアからこいつを借りれてよかったぜ!」

 

そう言ってイッセーは握られた左手の中をライザーに見せる。

 

「じゅ、十字架!?」

 

驚愕するライザーとともに、観客席にいる悪魔達からも悲鳴が上がる。

 

「十字架が悪魔の苦手なものだってことは、この前のゲームでわかってた。そこで十字架の力を神器で増幅させて殴ってやったってわけさ!!あんたを見れば上級悪魔にも効果テキメンってことが証明されたな!」

 

「馬鹿な!!お前も悪魔なんだぞ!?いかにドラゴンの鎧を身につけていても―――」

 

そこでライザーはようやく異変に気がつく。

全身が鎧姿なのでわかりづらいが、左腕だけが生物的な脈動と生命感があることがわかる。

 

「まさか……神器に眠るドラゴンに力と引き換えに左腕を支払ったのか……!?」

 

「ああ、そうさ。お前をぶっ飛ばすためだけにな。だから俺の左腕は本物のドラゴンの腕だ。十字架だって掴める。」

 

「なんということを……!そんなことをすれば二度と元の体には戻らないんだぞ!!」

 

「それがどうした。俺なんかの腕で部長を取り戻せる力が手に入るんだ。こんな安い取引はないぜ。」

 

ライザーは初めて、目の前の取るに足らない存在と規定していたイッセーに恐怖を感じた。そして一旦イッセーの拘束からのがれ、態勢を整える。

 

「それでおれに勝てなかったらどうするつもりだ!?」

 

「そん時はまた別のところを差し出すまでだ。」

 

冷徹な声でイッセーは告げる。

目の前にいるのは間違いなく一介の下僕悪魔。

だが、その魂は生物の頂点たるドラゴンのそれだった。

 

「……悔しいが認めるよ。お前は強い。肉体だけでなく、その心もだ。だが!だからこそ!!お前は俺が倒す!!」

 

再び炎の翼を広げるライザー。

だが、その翼は二筋の熱線によってかき消される。

 

「なにッ!?」

 

「俺のこと忘れてたろ……って、これ言うの二度目だな。」

 

イッセーの傍らにはいつの間にかダイスケがいた。

 

「部長から聞いたぜ、ライザー。フェニックスの不死性に勝つ二つの方法。一つは神の如き圧倒的な力を持って、一撃のもとに葬り去ること。そしてもう一つはその精神を徹底的に叩きのめすこと。」

 

イッセーのその言葉と共に腕を鳴らすダイスケ。

 

「なら俺達がとる方法は一つだ。なあ、ダイスケ。」

 

「ああ、俺たちの答えは……。」

 

「「“圧倒的な力でお前の精神を徹底的に叩きのめす”だ!!」」

 

まず、イッセーがライザーを持ち上げて上へと放り投げる。

その上空で待機していたのは高くジャンプしていたダイスケ。

そのまま放り投げられたライザーを殴り、地面に叩きつける。

そこへイッセーが跳ね返るその体を掴んで地面を引きずり回す。

当然ライザーは抵抗しようとするが、その先で待ち構えていたダイスケに蹴り飛ばされる。

そしてその蹴飛ばされた体は、見事な胴体着陸を決めた。

 

「おい、貴様らわかっているのか!?この婚約は悪魔の未来のために重要なものなのだ!お前らのような何もわからない小僧がどうこうする様なことじゃあないんだぞ!?」

 

この期に及んで見苦しい命乞い。

だが、この二人はもう止まらない。

 

「難しいことはわからねぇよ。でもな、お前に負けて意識を失いかけた時、覚えていたことがある。……部長が泣いていた。お前が泣かした。そして俺も同罪なんだ!!だがらこそ、俺はお前をぶっ飛ばす!!理由なんて―――」

 

「お前は正々堂々とした体を装いながら、自分の欲を満たすためだけにここまで姑息な手段をとった。それで俺のダチ“たち”が辛い思いを、悔しい思いをした。だから俺はお前を倒す。理由なんて―――」

 

「「それだけで十分だ!!!」」

 

卑小な存在と思っていた二人から受ける威圧感に、ライザーはこれまでの生涯で最も大きい恐怖を感じる。

だが、ここで終わるライザーではない。

すぐさま態勢を立て直し、一旦二人から距離をとる。そしてその手から強力な炎を放つ。

ダイスケとイッセーの周囲はすぐに激しい炎に包まれ、盛大な爆発が起こる。

ライザーはこれで二人とも倒したと思った。それは見物していた悪魔達はおろか、リアスでさえも「もうダメだ」、と思ってしまうほどの爆発だった。

だが、イッセーとダイスケはその己の身を焦がす炎さえも己が力と変える。

 

「「破ァァァアアアア!!!!」」

 

爆発の勢いを背に受け、そのまま推進力へと利用する。そしてその運動エネルギーは二人の質量からなる位置エネルギーも糧にして、キックという形でライザーの身に破壊的な傷を負わせる。

 

「ガハッッ!」

 

血を吐き、後方へ吹き飛ぶライザーの体。

強力な飛び道具を持つ二人には格好の標的だ。

 

「「吹き飛べ、スケコマシ!!!」」

 

互いに発射される魔力砲と熱線。

その強大なエネルギーの塊はライザーを壁に叩きつける。

フェニックスなだけあってその肉体は消滅していないが、許容以上のダメージを受けているのは明白だった。

完全に気を失っているライザー。そこへ止めとばかりにダイスケが近づく。

 

「おい、パイ食わねぇか。」

 

顔面に叩きつけられるニシンのパイ。いつの間にか持ってきていた2つのニシンのパイのうちの残った一つだ。

だが、ライザーからはなんのリアクションもない。完全に沈黙していた。

それを確認したと同時に、イッセーの鎧も解除される。時間一杯のようだ。

 

『まさか、限界時間内に仕留めるとはな。驚いたぞ、相棒。』

 

「野郎が思ったより軟弱だっただけだよ。な?」

 

イッセーは共に勝利を勝ち取った友に同意を求める。

 

「俺一人だったら、もっと早くケリがついてた。お前をフォローする必要がないからな。」

 

違いねぇや、とイッセーは笑う。それに釣られてダイスケも笑った。

笑いながら、ライザーの後ろにいるリアスのもとへと二人は足を進める。

そこに、ライザーを庇う様に人影が一つ。

レイヴェルだった。無言に二人を睨み、何かを訴えようとしている。

その足は恐怖に震えているが、最後の矜持と勇気で立ちふさがったのだろう。

足を震わせながらも強い視線で睨むレイヴェルに、二人は笑いを止める。

そしてイッセーはドラゴンの左手を、ダイスケは籠手が着いた右手を向ける。

 

「言ったはずだぜ。イッセーの邪魔をするなら俺が相手になるってな。」

 

「文句があるのなら、いつでも戦ってやる!!」

 

その迫力に押されたのか、彼女は道をあけた。

そしてイッセーはリアスの前に立ち、最も彼女に向けて言いたかった言葉を放つ。。

 

「部長、帰りましょう。」

 

「……イッセー。」

 

リアスは、その言葉を受け入れる。そして、その隣にいるリアスの父にイッセーは深く頭を下げたあと、ハッキリと言い渡した。

 

「部長を、俺の主であるリアス・グレモリー様を返していただきます。ご迷惑をおかけして申し訳御座いません。ですが、約束通りに部長は連れて帰らせていただきます。」

 

彼は何も言わず、ただ静かに目を瞑る。

本当ならサーゼクスにも礼を言いたかったのだが、いつの間にか姿を消していた。

またいつか会った時に、必ず礼を言おう。そうイッセーは心に誓う。

そして懐からグレイフィアから預かった魔法陣を展開する。すると、そこから一頭の幻獣が現れる。

 

「おお、グリフォンか。」

 

ダイスケの言葉で、これで逃げろというグレイフィアの意思に気づいたイッセーは、リアスの手を取り共に騎乗した。

そのままグリフォンはひと鳴きすると、遥か上空へ舞い上がる。

 

「みんな、部室で待ってるからな!!」

 

イッセーはそう言い残すと、リアスと共に飛び立った。

 

「あー……俺、どうやって帰ればいいんだ?」

 

非正規のルートで侵入したダイスケは、イッセーたちを見送っておいて思い出したように悲観にくれる。

 

「大丈夫ですわ。サーゼクス様の手引き……と言ったら悪い印象ですけど、あの御方が導いてくださった事になっているのなら問題はありませんわ。特例です。」

 

朱乃が立ち尽くすダイスケに告げる。

 

「それより、嬉しかったよ。あの言葉。」

 

「あ?なんのことだよ。」

 

木場の言葉に、ダイスケは疑問を持つ。何か自分は木場を嬉しがらせることでも言っただろうか。

 

「ダイスケ先輩、惚けるの下手ですね。」

 

「いや、マジでわかんねぇんだって。」

 

小猫の冷やかしも理解できない。

 

「もう、ダイスケ君ったら。さっきの言葉のことですわ。」

 

朱乃の言っている意味もわからない。本当に何を言っているのかわからないのだ。

 

「ああ、『おい、パイ食わねぇか』のこと?いや、どこでネタ仕込もうかずっと悩んでたんだけど、喜んでくれたんなら良かったわ。」

 

「そうじゃなくて、『俺のダチ“たち”』って言ってくれたことだよ。」

 

木場の言葉で「あ゛」とダイスケは固まる。

 

「先輩が私たちをそういうふうに見てくれているって分かって、なんか良かったです。」

 

「これは普段のダイスケ君とのギャップを示した『俺のダチ“たち”宣言』としていつまでもネタにできそうですわ。」

 

その反応に徐々に顔が赤くなるダイスケ。正直なところ、怒りに任せて口走っていたので自分でも何を言ってるのか意識できていなかった。

 

「「「あー、顔赤くなったー!」」」

 

ここぞとばかりにダイスケをいじるグレモリー眷属の三人。先ほど散々説教されたのだから当然の報復とも言える。

 

「う、うるせぇ!!ほら、さっさと帰るぞ!!明日も学校あるんだから!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の放課後、ダイスケはその後の顛末をイッセーから聞いた。

ライザーはあのあと、生涯で初めて味わったショックで寝込んでしまったとのこと。そのこともあって、縁談も破談になった。

そしてイッセーの腕は、朱乃がドラゴンの気を散らせることで人間の腕の形を保てるそうだ。その方法は何ともエロい方法らしいが、イッセーはダイスケの嫉妬が怖くなりその仔細は決して語らなかった。

ドライグもあのあとからイッセーと少し喋るようになったようだ。聞けば「白い奴」とかいうライバルがおり、衝突はほぼ避けられないらしい。そのことを聞いたダイスケは心の中で黙祷したとかしなかったとか。

そして、驚愕の事実を知った。

昨日の別れた直後、イッセーはリアスとキスをした。それも、お互いファーストキス。

一方はラブロマンスな展開に対して、もう一方は逃げるように人間界に帰ってきたりと明らかに雲泥の差がある結末を迎えたわけだ。

 

「おまえ、俺だって頑張ったのに、何もないんだぞ!?何なんだよ、この差!?」

 

「いや、そこは最強のドラゴンと唯のドラゴンの違いってやつ?」

 

そのイッセーの調子に乗った一言に、ついにダイスケは堪忍袋の緒を自分で引きちぎった。

 

「お前、ついに言ったな!?言ってはいけない一言をついに言ったな!?おい、一発殴らせろ!!!」

 

「ライザーをぶん殴れればそれでいいって言ったのお前だろ!?なにも要求しなかったお前の落ち度だバーカ!」

 

襲いかかるダイスケから走って逃れるイッセー。

だが、追手はさらに二人増える。

 

「おい、イッセー!!お前、アーシアちゃんだけでなく、リアス先輩とも同棲することになったってどういう事だゴラァァァ!!!」

 

「お前、学園の二大お姉さまの一角とどうやってそんな関係になったんだ!?俺にも教えろォォォォ!!!」

 

「ゲッ、松田!?元浜!?」

 

情報通である二人の言葉で、ダイスケの中の入ってはいけないスイッチが入る。

 

「テメェ、それは俺も聞いてないぞ!?絶対捕まえて、一発お見舞いしてやる!!clook up!!」

 

「「俺達も同じくアクセルベント!!」」

 

「ゲェ!!じゃあ俺はアクセルフォームだ!!start up!!」

 

その様子を学園の人間たちは「またバカルテットがやってるよ」と呆れた目で見る。

だが、彼らは知らない。その馬鹿な日常風景は、そのバカルッテトのうちの二人が戦って得たものなのだと。

二人に勝利の余韻はいらない。今このバカバカしくも充実したひとときを得た事が重要なのだ。

そしてイッセーはついに旧校舎前で捕まってしまった。

松田に四の字固めをくらい、元浜には袈裟固めを決められ、ダイスケにはチョークスリーパーを仕掛けられている。

そんな中、イッセーとダイスケは窓から誰かが見下ろしているのに気付く。

微笑みを浮かべたリアスだった。

多分、ライザーと戦っていなかったらこんな瞬間には出会えなかっただろう。

イッセーはリアスの笑みに笑みで返し、ダイスケもその笑顔を見てホールドを解く。

 

「わりぃ、これから部活だ。」

 

「また明日な。松田、元浜。」

 

春はまだ、始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェニックス卿。今回の婚約、このような結果となってしまい申し訳ない。無礼を承知でお頼み申したいのだが、今回の縁談は……。」

 

「グレモリー卿。頭をお上げください。純血の悪魔同士ということで確かにいい縁談だったが、どうやらお互い欲が強すぎたようだ。元々、お互いに純血の孫がいるというのに、なおも欲したのは私の悪魔ゆえの強欲か。はたまた先の戦で地獄を見たからか……。」

 

「いえ、私もリアスに自分の欲を重ねて過ぎてしまったのです。」

 

「しかし、兵藤くんといったか。彼には私からも礼を言いたかった。ライザーに足りなかったのは敗北という経験だ。フェニックスの血の力を過信しすぎていたのです。そのような者に、もともと今回の縁談は身に余る話だったのですよ。そして、フェニックスの限界を学べただけでも今回のこの話はよい結果を運んでくれました。」

 

「……そう言っていただけるとありがたい。」

 

「あなたの娘さんは良い下僕を持った。これからの冥界は退屈しないでしょうな。」

 

「私もそう思います。……しかし、よりにもよって私の娘が赤龍帝を拾うことになろうとは。」

 

「赤が目覚めた、ということはやはり白の方も。」

 

「ええ、赤と白が出会うのも時間の問題でしょう。そして……あの黒の神器を持つ彼、宝田大助君の宿す存在はやはり……。」

 

「数多の怪物たちの頂点。我々悪魔から見ても神代の時代の神話の一つと思っていたが……まさか、実在していようとは。」

 

「全世界の神々が寄ってたかってようやく封印できたという、怪獣王。……これはひと波乱ありますな。」

 




はい、というわけでVS11でした。
今回初めて某北海道の伝説的番組のネタを取り入れてみました。今まで散々あぶない刑事とか使っておいて何を今更という感じですけどね。
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!
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