ハイスクールD×G   作:オンタイセウ

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今回はゴジラ成分弱め、っていうか無いです。ご了承ください。
あと、オリキャラ出ます。ほんのチョコっとですが。ただし、姿はまだ見せませんのであしからず。


VS13  木場祐斗(その2)

外はすっかり雨模様。球技大会が終わったあとだったのが幸いだった。

部活対抗ドッヂボール戦は、オカルト研究部の優勝に終わった。だが、一つ問題が起きた。

木場が試合中に物思いに耽っており、完全に足でまといになっていた。ボーとしていた木場をかばおうとしたイッセーが、股間に剛速球を食らってしまうというアクシデントが起きたくらいだった。

確かに、何度かチームに貢献した瞬間はあるにはあった。だが、終始ボケっとしていた。あまりの酷さに、思わずダイスケが木場の頭にボールを当てるという事件も起きたが、我関せずといった具合だった。

無論、リアスも試合中に何度も木場に注意していたが、それも無視しているようだった。

そして、オカルト研究部のもの以外がいなくなった体育館に、乾いた音が響く。

 

「どう?少しは目が覚めたかしら。」

 

リアスは柄にもなく、かなり怒っていた。だが、それでも木場は無言、無表情のまま。

普段とあまりにもかけ離れた木場の様子に、皆困惑している。が、突然いつものイケメンスマイルになる。

 

「もういいですか?大会も終わりましたから、球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の活動まで休ませていただいてもいいですよね?少々疲れてしまったので、普段の部活動の方は休まさせてください。先程は申し訳ありませんでした。どうにも調子が悪かったみたいです。」

 

「おい、木場。お前最近変だぞ?」

 

「イッセー君には関係ないよ。」

 

イッセーの心配して言った一言にも冷たく返す。

 

「あのな、関係ないって言ってもそんな不安定な様子を見せられれば誰だって心配したくなるぜ。」

 

競技中に木場の顔面にボールを当てたダイスケまでもが心配する。が、その言葉に木場は苦笑で返す。

 

「心配?誰が?誰を?利己的な生き方が悪魔の生き方だよ?まあ、主に従わなかった僕が悪かったんだとは思っているよ。君にボールを当てられたのもね。」

 

少しは言っておいた方がいいのか。イッセーとダイスケは柄にもなく思う。普段であれば、二人が無茶を言うなりやるなりして、それを木場が落ち着かせるのがいつもの三人の関係だ。

だが、今では立場が完全に逆になっている。

そこでダイスケが見かねたように切り出す。

 

「ライザーとの一戦を忘れたのか?あの時の反省を生かして、チーム一丸になっていこうとしている矢先だろう。そんな中でお前はその二の轍を踏むつもりか?お互いに補い合わなきゃダメなんだ。……俺自身は悪魔じゃないけど、仲間だろ?」

 

その言葉に木場は表情を曇らせる。

 

「……仲間、か。」

 

「そうだ。俺たち、仲間だろ?」

 

イッセーが木場に続いた。だが、木場はそれに同意しなかった。

 

「君たちは熱いね。……イッセー君、ダイスケ君。僕はね、自分の“基本的”なところを思い出していたんだよ。」

 

突如としての自分語りに、イッセーもダイスケも驚きを隠せない。

 

「基本的な……こと?」

 

「ああ、そうさ。僕が一体、何のために生き、何のために戦っているのかをさ。」

 

「……部長のために、じゃあないのか?」

 

少なくともイッセーはそうだった。命を拾ってくれたリアスのため。それが今のイッセーの生きる最大の理由だった。

そして、それは木場も同じなのだと信じていた。身勝手なまでに。

 

「違うよ。僕は復讐のために生きている。部長から聞いているんだろう?聖剣エクスカリバー……それを僕を生かしてくれた同志たちの為に破壊するのが僕の生きる、そして戦う理由だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天使・堕天使・悪魔の三つ巴の戦争に乱入して逆ギレたァねぇ……最強のドラゴンなのにバカなの?死ぬの?」

 

『だから今、こうして体をバラバラにされた上で封印されているんだ。若さの至りだったんだよ。』

 

「これが若さか……てか?お前、自分が赤だからって言っていいセリフじゃあないぞ?金色でもダメ。」

 

『……相棒よ、お前の友人が言っていることが理解できんのだが……。』

 

「ああ、それは無視してやって。本人もそれを分かって言ってるから。その分悪質なんだけど。」

 

次の日の放課後、オカルト研究部の部員に緊急招集がかかった。

教会のエクソシストが、この駒王町を取り仕切っている悪魔であるリアスに会談を申し込んできたというのだ。

その部室へと至る道すがら、イッセーからドライグの事を聞いていた。

そして昨日、帰宅すると家に二人のエクソシストが、それももう片方はイッセーのアルバムに写っていた子供が成長した紫藤イリナであっり、イッセーの母と談笑していたことも聞いていた。

 

「だけどさ、リアルにあるんだな。「お、お前女だったのか!?」ってやつ。」

 

「大抵そういうのってフラグだよな。っていうか、なんでお前にばっかりフラグが乱立してるんだよ。ユニオンじゃねえんだぞ。」

 

「いや、それフラッグね。ハムさんが大好きな方の。」

 

そうして、二人は部室の扉を開く。

既に他のメンバーは揃っており、後は教会の人間が来るのを待つのみであった。

昨日喧嘩別れのように別れた木場もいる。しかし、心中穏やかではないだろう。自分が最も嫌う者たちがやってくるのだから、本人達がいなくとも腸が煮えくり返っているだろう。

 

「二人共来たわね。先方はあと十分後ぐらいに来る予定だから、くれぐれも衝突なんかしないようにね。特にダイスケ。あなたにはライザーの時の前科があるんだから。」

 

そのリアスの言葉に、ダイスケは「へーい」と適当に答える。

敵対勢力の者がやってくるということで、部室内は緊張に包まれる。

もう、その扉の向こうにいるかもしれない。そんな気の張った状況にさすがのダイスケも気が引き締まる。

 

「そろそろね……。」

 

リアスの言う通り、時計は約束の時刻を告げる。

だが、扉が開く気配はない。

 

五分経過。

 

「来ないわね……。」

 

「俺たちの居場所がわからないんじゃないんですか?」

 

リアスとイッセーは、相手が校内を迷っているのではないかと心配になってくる。

 

十分経過。

 

「おい、小猫。俺にも羊羹一切れくれよ。」

 

「嫌です。自分で買ってきてください。」

 

小猫が小腹が空いたのか、物を食べ始める。

 

二十分経過。

 

「そういや、松田と元浜からオカ研のメンバー呼んでカラオケやりたいって話があるんだけど。」

 

「私、桐生さんにもお誘いをいただきました。」

 

「よかったな、アーシア。他に来る人は?」

 

「あら、なんだか楽しそうね。」

 

「あらあら、でしたら私たちもお呼ばれしちゃいますか?部長。」

 

「……食事が出るのであれば。私も行きます。」

 

三十分経過。

 

「そんなこと言って、俺の『砂○十字架』と『1○6の夢旅人』で泣かせてやろうか!?」

 

「いや、ほんとにダイスケは歌上手いんですよ。」

 

「私、賛美歌ぐらいしか歌えないです……。」

 

「……アーシア先輩、絶対に歌ったらダメですよ。頭痛が来ますから。」

 

「私、カラオケなんてやったことないのよ!楽しみだわ!!」

 

「それでは後で、その松田くんたちと予定の調整をいたしましょうか。」

 

六十分経過。

 

「みんな!今日はカラオケボックスに行って、カラオケの練習よ!!」

 

「では、駅前のカラオケ屋に予約を入れておきましょう。」

 

「うっし!!部長たちの前でドラグソボールの『真っ赤っか不思議アドベンチャー』歌い上げるぜ!!」

 

「よし、小猫。どっちがQ○EENをより愛しているか勝負だ。」

 

「上等です。私の『Boh○mi○n Rhaps○dy』で地面に這い蹲らせてあげます。」

 

「シスター割引とか、悪魔割引とかあるんでしょうか……?」

 

そうしてカラオケ屋に行く話がまとまり、いざリアスが椅子から立ち上がったその時。

 

「すまない!!遅くなった!!!」

 

息を切らしたエクソシストの少女が二人、部室内に入り込んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緊迫感と、やや緊張が切れた空気が立ち込める何とも言えない空気の中で、最初に話を切り出したのは亜麻色のツインテールをした紫藤イリナだった。

 

「本当にごめんなさい。本来ならもう一人来るはずだったんだけど……。」

 

「途中で「面倒くさいのはお前らだけでやれ」とそいつが駄々をこね始めてな。その説得をしているうちに結果的に逃げられ、ここまで時間を潰してしまった。」

 

緑色のメッシュを入れたゼノヴィアと名乗るキツイ目つきの少女が補足を入れる。

 

「なんていうか……あなたたちも苦労してるのね。フリーダムな問題児を抱えて。」

 

「普段ならば「悪魔風情に哀れんでもらう必要はない!」と言っているだろうが、今はそう思ってくれると少しはこちらの気も軽くなる。ありがとう、リアス・グレモリー。」

 

ゼノヴィアの言葉でダイスケをジトー、と見るリアス。

 

「……なんなんですか、その目は。」

 

「別に……。」

 

わざとらしく視線をずらすリアスを見て、イリナが話を切り出す。

 

「この町を訪れた神父が次々と惨殺されているのは既に聞いていますね?それに関する話なのですが……先日ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会に保管管理されていた聖剣『エクスカリバー』が奪われました。」

 

そこで、イッセーはある疑問を抱いた。

キリスト教内にいくつかの派閥があるのは知っている。だが、エクスカリバーがなぜそれぞれの施設に保管されているのか?と。

 

「イッセー、エクスカリバーそのものは現存していないの。」

 

リアスがイッセーの心の中を見たかのようにその疑問に答える。

 

「ごめんなさいね、私の下僕に悪魔になりたての子がいるから。」

 

その言葉の意味を察したのか、イリナが説明をはじめる。

 

「イッセー君、エクスカリバーは大昔の三つ巴の戦争で折れたの。」

 

「今はこのような姿だ。」

 

そう言ってゼノヴィアは、傍らに立てかけている布に巻かれた長い物体を解き放つ。そこに現れたのはひと振りのロングソード。

 

「これが、エクスカリバーの七つになった片割れ、“破壊の聖剣《エクスカリバー・デストラクション》”だ。カトリック側が管理している。」

 

その瞬間、その場にいた悪魔が全員、生理的な嫌悪感と恐怖を感じた。

悪魔になったばかりのイッセーにも、それがいかに危険なものなのかが直感でわかった。

 

「戦争で砕け散った刃を集め、錬金術によって新たな姿となったのさ。」

 

自分の聖剣を紹介し終えたゼノヴィアは、再び布で剣を包む。

よく見ればその布には、何らかの呪文が記されている。どうやら普段はそうして封印しているようだ。

イリナも懐から長い紐を取り出す。すると、その紐は生きているかのようにうねうねと動き出した。

そして皆の前で紐はその姿を日本刀へと姿を変える。

 

「私の方は“擬態の聖剣《エクスカリバー・ミミック》”。こんなふうに何にでも姿を変えられる超便利アイテムよ。こんなふうに、エクスカリバーはそれぞれに特殊能力を備えているの。こっちはプロテシタント側が管理しているわ。」

 

イッセーは先程と同様に、その剣に恐怖を感じる。

 

「イリナ……悪魔にわざわざ喋る事ではないだろう?」

 

「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔だからといっても、今回は信頼関係を気づくのが重要よ?この場ではしょうがないわ。それに、教えたからといって悪魔の皆さんに遅れを取るなんてことはないわ。」

 

相当腕に自信があるのだろう。これだけの悪魔を相手にしても、負けるはずがないというだけの修羅場をくぐってきたということだろうか。

だがそれよりも、イッセーには気掛かりな事が一つあった。

木場のことだ。

あれだけエクスカリバーに恨みを持つ木場が、果たして今、この場で自分を制御で来るのだろうか。

恐らく、木場にとってもここで二本ものエクスカリバーと遭遇しようとは夢にも思っていないだろう。

それが今目の前にある。今の木場の心中は、イッセーには察して余りあるものだろう。

ただ、木場が軽率な行動を取らないよう祈るだけだ。

もし、万が一のことがあれば、犠牲を出さずに済む方法はないだろう。

 

「それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこの町に関係があるのかしら?」

 

そのリアスの問いにゼノヴィアが答える。

 

「カトリック本部に残っているのは私のを含めて二本。プロテスタントのもとにも二本。正教会も二本。残る一本は三つ巴の戦争の末に行方不明。その内、各陣営にあるエクスカリバーが一本づつ奪われた。奪った連中は日本に逃れ、この地に持ち込んだ、というわけさ。」

 

「……どうして、私の縄張りはイベントが多いのかしら。それで、その犯人は?」

 

額に手を当ててため息を作りあすにゼノヴィアは目を細め、答えた。

 

「“神の子を見張る者《グリゴリ》”の連中、それもその幹部のひとり、コカビエルだ。」

 

「今では偽書に認定されたとはいえ、聖書の一部にもその名が記された堕天使が犯人とはね……。」

 

その出てきた名に、リアスは苦笑する。

コカビエル。

最後の審判やノアの方舟の話が載っている『エノク書』。その6章にその名が刻まれている堕天使の内の一人。

エノク書によれば、人間に天体の兆し、つまり占星術を教えたのがコカビエルだという。

聖書に出てくる堕天使が犯人とは、もうかなり話が大きくなってきている。

ならば、教会側は何故グレモリー眷属とコンタクトを取ったのか?

そのような身内の恥は、内々に処理しそうなものだが。

 

「実は、先日からこの町にエクソシストを秘密裏に送り込んでいたのだが……ことごとく始末されている。恐らく、コカビエルの手の者によるものだろう。」

 

ゼノヴィアのその言葉に、イッセーは驚いた。まさか自分たちの住む町で、そのような惨劇が裏で起こっていようとは。

ならばやはり、彼女らの求めているのは事件解決のための協力の要請だろうか。そのような事件の被害が一般人に及ぶようなことがあれば、土地を取り仕切るものとしてグレモリー眷属が動かざるおえないだろう。

だが、彼女たちが求めているのは違っていた。

 

「私たちの依頼、いや、注文とは私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いに、この街に巣食う悪魔が一切介入してこないこと。つまり、そちらにはこの件に一切関わるな、と言いに来た。」

 

「あら、随分な言い様ね。牽制のつもり?まさかとは思うけど、教会側は私達が堕天使と組んで聖剣をどうこうしようとしているとでも考えているいるの?」

 

ゼノヴィアの注文に、さしものリアスも不機嫌になる。

わざわざ自分の領土にずかずかと土足で入ってきた敵が、「自分たちにやることに手を出すな。ついでに、他の組織と組んだら許さないよ?」と好き勝手に行っているのだ。

上級悪魔であるリアスに、喧嘩を売っているとしか思えない。

だが、ゼノヴィアはリアスの怒りの我関せず、とばかりに淡々と続ける。

 

「上は悪魔と堕天使を信用してはいない。聖剣を除ければ悪魔だって万々歳だろう?双方に利益があるんだ。手を組んでもおかしくはない。だからこそ先に牽制球を放つ。堕天使と組むものであれば、教会側はこの街にいる悪魔をひとり残らず完全に消滅させる。たとえ魔王の妹が相手でも。私の上司からの伝言さ。」

 

「……私が魔王の妹だと知っているのならば、あなたたちも相当上に通じている者たちのようね。ならハッキリと言わせてもらうわ。私は、悪魔は絶対に堕天使とは組まない。グレモリーの名にかけて誓うわ。そして、魔王の顔に泥を塗るような真似は、絶対にない!!!」

 

両者の強い視線が拮抗する。

だが、ゼノヴィアはフッと笑い均衡を解く。

 

「それが聞けてよかった。一応、この町にコカビエルが三本のエクスカリバーを持ち込んだいることを伝えておかねば、何か起きた時に私が、そして教会本部が各方面に恨まれる。三竦みの状況にだって影響を及ぼす。魔王の妹ならば尚更だ。」

 

その言葉で、リアスの表情は少々緩和される。

 

「正教会からの派遣は?」

 

リアスの問いに、ゼノヴィアが答える。

 

「奴らは今回はこの話を保留にした。仮に私とイリナともう一人のエクソシストが奪還に失敗した場合を想定して、最後に残った一本を死守するつもりなのだろう。」

 

「ではたったの三人で?三人だけでコカビエルを相手にするつもり?無謀ね。死ぬつもり?」

 

「ええ、そうよ。」

 

「私もイリナと同意見だ。できるだけ死にたくはないがな。」

 

そのイリナとゼノヴィアの言葉に、リアスは嘆息を漏らす。

 

「―――っ。死ぬ覚悟でいるのいうの?自己犠牲もここまでくると自殺願望ね。」

 

「私たちの信仰をバカにしないで頂戴。ねぇ、ゼノヴィア。」

 

「まぁね。それに、上はエクスカリバーが堕天使に利用されるくらいなら、全て消滅してしまってもいいと決定した。私たちの役目は、最低でも堕天使の手からエクスカリバーを無くす事。そのためなら死んだっていい。それが我々の“殉教”だ。」

 

ダイスケはここまで黙って聞いていたが、正直彼女らの言葉を聴くのにうんざりしてきていた。

リアスの言うとおり、これは自己犠牲や殉教ではなく手の込んだ自殺だ。

相手は強力な堕天使の幹部。それをせいぜい十数年しか生きていない若造が聖剣を振り回して行っても、勝ち目はない。返り討ちにあうのがオチだ。恐らく、教会側も彼女らを捨て駒に送ってきたに違いない。作戦の成功も、あわよくばの域だろう。

そこへ来て、この二人の自己陶酔化した信仰心。

恐らくこの二人は、信仰のために死んで天国に行けるとでも考えているのだろうが、自殺はキリスト教にとっては大罪だ。天国に行ったつもりで地獄に堕ちればいいのに、とダイスケは心密かに思った。

 

「果たして、それは二人だけだ可能なのかしら?」

 

「ご心配なく、リアス・グレモリー。ただで死ぬつもりはないさ。」

 

リアスの問いかけに、ゼノヴィアは不敵に笑う。

 

「あら、自信満々ね。秘密兵器でもあるのかしら?」

 

「ご想像にお任せする。」

 

そのやり取りの後、しばしの間静寂が室内を支配する。

イリナがゼノヴィアにアイコンタクトを送ると、二人は立ち上がった。

 

「それではそろそろお暇させてもらう。」

 

「あら、お茶は飲んでいかないの?お茶菓子ぐらいは振舞わせてもらうわ。」

 

「いや、結構だ。」

 

リアスの厚意を受け取らず、二人はこの場を後にしようとする。が、二人の目がある一箇所に惹きつけられる。

 

「……兵藤一誠の家で見かけた時にもしやと思ったのだが……『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 

ゼノヴィアの言葉に、アーシアは身を震わせる。

イリナも気づいたのか、アーシアをまじまじと見てくる。

 

「ああ、あなたが一時期噂になっていた『元』聖女の『現』魔女さん?悪魔をも癒す力を持っていたらしいわね?追放されて、どこかに流れたとは聞いていたけど、まさか悪魔にまで堕ちていたとは思いもしなかったわ。」

 

「……あ、あの、私は……。」

 

狼狽するアーシア。

 

「大丈夫よ。あなたのことは上には伝えないから安心して。でも、『聖女アーシア』の周囲にいた者が貴方の現状を知ったら相当ショックを受けるでしょうね。」

 

「しかし、転生悪魔か。『聖女』と祭り上げられていた者が、堕ちるところまで堕ちたな。まだ我らの神を信じているのか?」

 

「ゼノヴィア、悪魔になった彼女がまだ信仰を持っているわけがないでしょう?」

 

「いや、その者から信仰の匂い……いや、香りがする。抽象的な言い方だが、私はそういうのに敏感でね。背信行為をする輩でも、罪の意識を感じながら信仰心を捨てきれない者がいる。それと同じ匂いがするんだ。」

 

「あら、そうなの?アーシアさんは悪魔に堕ちた今でも、主を本当に信じているのかしら?」

 

「……捨てきれない、だけです。ずっと、それしか知らなかったものですから……。」

 

そのアーシアの震える声を聞いてゼノヴィアは破壊の聖剣を解き放ち、アーシアの眼前に突き出す。

 

「そうか、それならば今ここで私たちに斬られるといい。神の名のもとに断罪してやろう。今ならば主も、罪深いお前に慈悲を与えてくださるだろう。」

 

その時、イッセーの中で形容し難いほどの怒りがこみ上げてくる。

アーシアに近づくゼノヴィアの前に、イッセーは立ちはだかろうとする。

だが、そのイッセーの前に立ちものが一人。

 

「……いい加減にしろよ?この糞ビッチ共が。」

 

ダイスケだった。

 

「黙って聞いてりゃ、好き勝手言いやがって。アーシアがどうして魔女なのか言ってみろよ。先攻ぐらいは譲ってやらァ。」

 

「……悪魔は神と敵対する者。それを癒すということは、アーシア・アルジェントの力は主の『愛』の力によるものではない。よって、魔女と断罪するのだ。」

 

そのゼノヴィアの言葉を皮切りに、ダイスケの徹底口撃が始まる。

 

「ハッ!!キリスト教信者が聞いて呆れるな。アーシアの力が「主の『愛』の力によるものではない」?他人を癒す力そのものがアーシアの隣人愛を体現するものだろうが。その力の出処がなんであれ、アーシアが行ってきたことは『隣人愛』よる行動そのものだ。イエス・キリストが全人類の原罪を背負ったようにな。」

 

「悪魔を癒す力のどこが『隣人愛』だって言うのよ。」

 

よせばいいのにイリナも参戦する。

 

「そもそも、お前たちは悪魔の存在を誤解している。悪魔はな、神に仕える天使なんだぞ?いま、この現在でもな。」

 

その言葉に、ゼノヴィアとイリナは呆れる。

 

「悪魔は神の絶対的な敵対者だぞ?」

 

「あなたこそ私たちの信仰を理解していないんじゃあないの?」

 

「忘れたのか?主はこの世界の『創造主』だ。すべての存在が主によって生まれてきている。悪魔もその一つだ。おっと、悪魔は主の創造したものとは違うなんて言うなよ。そんなことを言ったら、主は『世界の創造主』じゃあなくなるぜ?」

 

言おうとしたことが阻まれ、二人は思わず口を閉じる。

 

「元々の悪魔の起源は、罪人を地獄に追い立てる天使だ。その姿を醜悪にしたため、彼らに対する生理的な嫌悪感が生まれるようになったんだ。そうしていくうち、いつの間にか彼らは神と敵対し、人を堕落させる『悪魔』になった。神の権威を高めるためにな。そして、神と悪魔が敵対関係になった最大の原因は、キリスト教が勢力圏を広げ始めたからだ。」

 

リアスたちも、思わずその話に聞き入っている。

 

「キリスト教徒たちは自分たちの信仰を広め、かつ正当性を得て他の土地に根を下ろす時、その土地の土着信仰を異端とし、祀られていた神々を『悪魔』とした。サタンなんかがいい例だな。もともとはギリシャの豊饒神のサターンだ。そうして、それらを弾劾することによってキリスト教徒たちは自分たちの正当性を打ち上げ、『救われたければ我らの神を信仰しろ』と迫るわけだ。」

 

イッセーも、その話は歴史の本で読んだことがあった。だが、ここまでの話は聞いたことがない。

 

「そして、悪魔の力はより強大になっていく。絶対の創造者である神に近づくことによって、自然とそれを制する神も力を増す。だが、あっさり神が勝ってはその権威は下がる。かといって神に匹敵する存在になってはいけない。その点にキリスト教の脆弱な点がある。ゾロアスター教のような完全な二元論なら、こんなことは起きないんだろうがな。」

 

そのことを踏まえた上で、とダイスケは続ける。

 

「アーシアが行なってきた癒しの行為は、どんな者も平等に行われていた。お前達も知っている通り、悪魔にもその力は振るわれた。文字どおりの『隣人愛』の体現だ。そのことが一体どう信仰に反する?それに対してお前たちはどうだ。悪魔だがら、魔女だから断罪する。馬鹿の一つ覚えみたいにそれしか言わない。やってることはヤクザ同士の抗争、いや、チンピラの喧嘩だ。お前らと比べれば、アーシアの方がよっぽどより良い信仰者の姿だ。」

 

自分たちが知っている以上のことを言われ、なにも反論できなくなってしまったゼノヴィアとイリナ。だが、ダイスケの口撃は止まらない。

 

「そもそも、お前らは俺たちに手を出すなと言いに来たんだろ?それなのにアーシアを殺そうとする?自己矛盾も甚だしいな。自分に都合のいいことだけ正当化しようなんて、信仰者以前に人として終わってるわ。いい加減、死ねよお前ら。ていうか、今すぐ死ね。」

 

あまりにも散々な言われように、思わず二人は目頭に涙が溜まってくる。

先程まで彼女らに怒りを感じていたイッセーまで、二人に同情してしまっている。

これと同じ状態になったのが、以前に起きた『女子グループ逆説教事件』だ。まるであの時の顛末を見ているようだ、とイッセーは思ってしまう。

アーシアもダイスケを止めようとするが、初めて見るダイスケの一面に戸惑い、先程以上に狼狽している。

 

「……私たちの信仰心を……よくも!!」

 

先程まで冷静だったはずのゼノヴィアは怒りを顕にし、イリナも顔を真っ赤に染め上げて身を震わせている。

 

「何が信仰心だ。自己陶酔と狂信の塊が。言っとくがな、お前らのやろうとしていることは信仰のための自己犠牲でも、殉教でもない。自棄っぱちの自殺だ。あ、そういやキリスト教じゃあ自殺は大罪だったか。お前ら揃ってゲヘナでもハデスでもどっちでもいいから地獄に堕ちればいいのに。」

 

そのダイスケの言葉がトリガーになったのか、とうとう二人の怒りが爆発した。

 

「貴様は絶対に許さん!!!!」

 

「神に代わって、この異端者に神罰を与えてあげるわ!!アーメン!!」

 

とうとう戦闘態勢をとる二人。

 

「おーおー、口喧嘩で負けたと思ったらリアルファイトですか。それが敬虔な信徒のやる事なんだね。初めて知ったわ。」

 

ここまで追い込んでおいてまだ刺激するダイスケ。

それをリアスが制しようとする。

 

「ダイスケ、いい加減に―――」

 

ダイスケを止めようと動くリアスだったが、そこに木場が介入してきた。

 

「ちょうどいい。僕も相手になろう。」

 

これまで見せたことのないような特大の殺気を放ち、木場は魔剣を携える。

 

「誰だ、君は。」

 

「君たちの先輩だよ。もっとも、失敗作だそうだけどね。」

 




はい、ということで教会娘二人のいじめ回でした。
今回のダイスケが言ったことは、某百鬼夜行シリーズからの受け売りですのであしからず。
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!
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