ハイスクールD×G   作:オンタイセウ

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すいません!二週間も空いてしまいました!!!
お待たせした分、いつもより文章量は増えていますのでご了承ください。


VS20  ギャスパー・ヴラディ(その2)

時は夕刻。

旧校舎の前を二人の少女が追いかけっこをしている。

 

「いやー、女の子同士の追いかけっこって、見てていいもんだね。」

 

「いや、まったく。」

 

ダイスケの言葉にイッセーが賛同する。

片方はゼノヴィア。

もう片方は金髪の美少女。

普通なら百合的なシュチュエーションでグッとくる人もいるのだはないだろうか。

 

「ただ、問題は片方が女装野郎で。」

 

「もう片方がデュランダルを振り回しているっていうことなんだけどな。」

 

二人の言うとおりだった。

なんでも「健全な精神は健康な肉体から」とのことで、ゼノヴィアはギャスパーを鍛えることにしたらしい。

 

「ほらほら、滅されたくなかったらひたすら走れ。デイウォーカーなら日光も平気だろう。」

 

「ヒィィイィィィッィッィイイイ!!!!!」

 

だが、伝説クラスの聖剣をブンブン振って追いかける姿はどう見ても吸血鬼狩り。

しかもやっているのが元本職(エクソシスト)なのだから笑えない。

 

「あいつ、下手したらギャスパーの奴を殺っちゃうんじゃあないか?」

 

「そこまで馬鹿じゃあないだろ……多分。」

 

イッセーがダイスケに自信なさげに答えるのも無理はない。

だって彼女、実に生き生きとしていらっしゃるもの。

本人曰く、教会にいた頃と比べてすべてのことが楽しくなったそうだ。

確かに禁欲的な世界から抜け出してしまえば、楽しみというのも増えるだろう。

だが、ある程度は釘を刺しておかねばとイッセーが注意する。

 

「ゼノヴィアー。鍛えるのもいいけど、間違って殺すなよー!」

 

「手加減は苦手だが、まあなんとかするさ。」

 

「そ、そんなぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」

 

「……あいつ、叫んでばっかで喉痛くならねぇのかな?」

 

見当違いの心配をするダイスケに乾いた笑いを漏らすイッセーだが、隣にいるアーシアがショボンとしているのに気づく。

 

「自分と同じ僧侶さんにお会いできると楽しみにしていたのに……目も合わせてもらえませんでした……。」

 

イッセーはアーシアの気持ちが誰よりも理解できた。

以前からアーシアは「早くもう一人の僧侶さんにおあいしたいです」と楽しみにしていたのだ。

レーティングゲームでは共にチームの補助を担う役割なのだから、いずれ連携を取りやすくするためにもコミニュケーションをとっておいたほうがいいのは確かだが、相手が心を閉ざしていたのでは意味がない。

 

「それにしても許せんな。ウチのアーシアを悲しませるなんて!」

 

「お前、アーシアのお兄ちゃん的ポジションが確定してきたな。」

 

だけどな、とダイスケは続ける。

 

「まあ、対人恐怖症の奴に無理にコミニュケーションを取ろうとしても余計に距離を取られるだけだ。なに、時間はあるんだからゆっくり打ち解けていけばいいさ。」

 

ダイスケの言葉を聞いて、何か思うところがあったのかアーシアはグッと胸の前で両手を握る。

 

「……そうですね。ここでめげちゃダメですよね。」

 

「そうそう。イッセーへのアプローチもな。聞いてるぞ。部長や朱乃さんにいろいろ押されてるって。」

 

「そ、それは言わないでくださいぃ……。」

 

一転して顔を真っ赤にして蹲るアーシア。隣にいるイッセーも顔を赤くする。

 

「お前、俺のいる前でそういう話はやめろよ……。」

 

「嫌だね。俺はお前の恋のキューピット的な存在になることに決めたから。」

 

「そんなことする余裕があるんなら、自分の方を何とかしろよ!」

 

「無理だって分かったんだよ!!もう恋なんてしないなんて……言わないよ絶対だったな、これ。」

 

「いや、無理ってどういうことだよ……?」

 

だが、ダイスケは答えない。ただむすっとした顔をみせるだけ。

その不審なダイスケの態度に、イッセーとアーシアは顔を見合わせる。

 

「おーおー、やってるな。」

 

そこへ空気も読まずに匙がやってくる。

 

「おう、匙か。」

 

「よぉ、兵藤に宝田。解禁されたばっかの引きこもり眷属がいるって聞いて見に来たぜ。」

 

急な乱入者の登場で場の空気がいくらか軽くなる。

 

「ああ、あそこ。ゼノヴィアに追いかけまわられているのがそう。」

 

「いや、仲間殺す気?……て、女の子!?それもパツキン!!」

 

匙のリアクションを見て、ほんの数十分前の自分たちを思い出してブルーになるイッセーとダイスケ。

こうなれば、道連れをひとりでも増やすまでだ。

 

「可愛い女の子かと思った?」

 

「残念!股にしっかり生えてました!!」

 

二人の宣告に驚く匙。

やはり、普通の神経をしていたらショックを受けるのは当然だ。

そして例に漏れず匙も落胆する。

 

「詐欺もいいとこじゃねえか。っていうか、女装って誰かに見てもらうためのものだろうに。それでひきこもりって矛盾も甚だしいな。難易度高すぎ。」

 

「「ですよねー。」」

 

自分の価値観が間違っていなかったとホッとする二人。

だが、イッセーは匙のジャージ姿に疑問を持ち怪訝な顔をする。

 

「そういや、お前はそんな格好で何してんの?」

 

「花壇の手入れだよ。会長の命令で一週間前からやってる。ほら、ここ最近、学校行事が立て続いたし、三すくみ会談の会場ってココだろ?魔王様方に見せても恥のない学園の姿にするのが生徒会の兵士たろ俺の仕事だ。」

 

「へぇ、匙もちゃんと仕事してんだな。」

 

やっていることは体のいい雑用だが、流石にそれを口にするのも憚られるので適当に褒めるイッセー。

そんな他愛のない会話をしているうち、イッセーは何者かが近づいているのを感じた。

その人物を確認したその時、イッセーは我が目を疑った。

 

「へぇ、上級悪魔眷属さんたちはここで集まってお遊戯かい。」

 

浴衣を身にまとったチョイ悪兄さん。それはイッセーもダイスケも見覚えがある人物。

 

「アザゼル!」

 

「よぉ、赤龍帝。この前の夜以来だな。」

 

気さくに手を振って答えるアザゼルだが、その場にいた悪魔全員が一気に身構える。

ゼノヴィアはギャスパーの向けていたデュランダルをアザゼルに向け直し、イッセーはアーシアをかばうように神器を出現させる。

匙も驚愕しながらトカゲの頭を模した形状のガントレットを出す。

 

「ひょ、兵藤!アザゼルって……マジで!?」

 

「ああ、コイツとは何度も接触してるから間違いねぇ……!」

 

初めて見るイッセーの真剣な表情を見て、匙は構える。

しかし、この一触即発の緊迫した空気の中で完全無警戒の人物が一人。

 

「おお、それが匙の神器か。初めて見たぜ。なんてやつ?」

 

「ああ、これは“黒い龍脈《アズソーブション・ライン》”っていって……じゃなくて!堕天使の総督が目の前にいるんだぞ!ちょっとは危機感持てよ!!」

 

マイペースすぎるダイスケに思わず突っ込んでしまう匙だが、ダイスケの姿勢は変わらない。

 

「んな、身構える必要ねぇって。見た目ほど悪い奴じゃないし、襲うつもりならイッセーが気配を感じる前にやってるはずだよ。」

 

ダイスケの言うとおりだった。

アザゼルは殺気を放つどころか戦闘の意思も見せていない。

 

「ダイスケの言うとおりやる気はねぇよ。安心しな。」

 

そう言ってアザゼルは両の掌を見せて戦闘の意思がないのをはっきりと見せる。そのアザゼルにダイスケは近寄っていく。

 

「お、おい!ダイスケ、危ないって!」

 

「兵藤の言うとおりだ!てかお前、堕天使の総督を呼び捨てにする仲なの!?」

 

「うん。釣り仲間。なんか用?なんなら、グレモリー先輩呼ぼっか?」

 

自分達の不倶戴天の敵の頭にタメ口で接するダイスケを見て匙は開いた口が塞がらない。

他の悪魔たちもまるで近所の知り合いにアザゼルに話しかけるダイスケを見て仰天している。

 

「いや、散歩がてらに寄っただけだよ。そういや、例の聖魔剣使いはどこだ?噂の聖魔剣とやらを見てみたいんだが。」

 

「ここにはいない!!木場を狙っているんだったらそうはさせねぇぞ!」

 

イッセーが持つ事前情報によれば、アザゼルは大の神器マニアでコレクターであるとも聞いていた。

であれば、イレギュラーな禁手に至った木場を狙うというのは至極当然な予想だ。

しかし、相手は堕天使の首領。幹部であるコカビエルに手も足も出なかったことを考えれば、全員瞬殺という結末もありうる。

そう考えるとイッセーの手足は自然と恐怖で震えてしまう。

 

「だからやる気はねぇって。ダチの言うことくらい信じてやれよ。下級悪魔相手にいじめをやるほど堕ちちゃあいないって。……あー、そこの木陰に隠れているヴァンパイア。」

 

呼ばれてビクッと慌てふためくギャスパー。まさか自分がアザゼルに指名されるなんて思ってもみなかったのだろう。

しかもアザゼルが自分に近寄ってきているのだからビビるのも無理はない。

 

「お前は停止結界の邪眼の持ち主なんだろ?わかっているとは思うが、それは使いこなせなきゃ害悪になっちまう代物だ。うまく神器の補助をする器具でも作れりゃいいんだが……でも、悪魔の神器研究は進んでねぇんだよな。感覚で発動させる神器は持ち主のキャパがないと勝手に動くから危険きわまりねぇんだよなぁ……。」

 

ギャスパーの両目を覗き込んでなにやら思案するアザゼルに恐怖するギャスパーだが、アザゼル本人にギャスパーをどうこうしようとする意思はない。それを感じてか、身構えていた眷族悪魔たちはどうしていいのかわからなくなってしまう。

すると、アザゼルは匙の存在に気づき、指差す。驚く匙にアザゼルは言い放った。

 

「そいつは黒い龍脈だな?それを使って練習すりゃあいい。このヴァンパイアに繋いで神器の余分なパワーを吸い取りながら発動させれば、暴走する頻度も少なくなるさ。」

 

「お、俺の神器って、他の神器の力も吸い取れるのか……?てっきり、敵のパワーを吸い取るだけのものかと……。」

 

自身に隠されていた能力に驚く匙だが、それを見てアザゼルは呆れる。

 

「ったく、これだから最近の神器所有者は。力を振るうことばかりに気を取られて自己の能力の探求と研鑽をしようともしない。黒い龍脈は伝説の五大龍王の一角黒蛇の龍王《プリズン・ドラゴン》ヴリトラを宿している。最近わかった事なんだけどな。それが伸ばす黒いラインは、どんな物にも繋いで力の吸収と拡散を行うことができる。短時間なら、持ち主側のラインを一旦引き離して別のモノ同士をつなぐこともできるぜ。」

 

「じゃ、じゃあ、俺側のラインを……例えば、宝田に繋ぐこともできるのか?それで宝田と力のやり取りができると?」

 

「ああ、成長すれば伸ばせるラインの数も増える。そうすりゃ、吸い取る出力も倍々だ。だけど今は実行はするなよ?ダイスケの神器のパワーは規格外だ。未熟な状態で吸い取ろうとしたら、逆流してお前の力を根こそぎ奪われるか、許容量以上の力で自爆しちまうぞ。」

 

「なにそれ、こわい。」

 

あまりに恐ろしい話に自分自身の話とはいえドン引きするダイスケと、自分の知らなかった自身の能力の拡張性に押し黙ってしまう匙。

ダイスケを除いたイッセーたちはまだアザゼルのことを信用しているわけではない。が、まるで先生に教えを乞うているような感覚になってしまっている。

 

「神器の能力向上を手っ取り早くしたいんなら、力のあるドラゴン―――この場では赤龍帝を宿した者の血を飲むといい。ヴァンパイアには血を飲ませれば自然と力がつくさ。まあ、あとは自分たちで頑張りな。」

 

アザゼルはそれだけ言うと踵を返してその場を去ろうとする。しかし、イッセーの顔を見て、一旦その足を止めた。

 

「ウチのヴァーリ―――白龍皇が迷惑かけたってな。悪かった。いきなり現れてさぞ驚いたろう。なに、あいつはとんだバトルジャンキーだが、今すぐに赤白対決をしようとは思っていないだろうさ。」

 

軽い態度だがアザゼルはイッセーに対して謝る。

不意打ちをくらってしまったが、イッセーは虚勢を張っていると自覚しつつも口答えをする。

 

「正体を明かさずに俺達に近づいてきたのは謝らないのかよ。」

 

「そりゃ、俺の趣味だ。謝らねぇ。」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべ、アザゼルはそのまま立ち去った。

異常なまでの緊迫感から開放されて皆ほっと一息つくが、顔を見合わせて反応に困っている。

そんな中、匙がため息をついたあとに動き出す。

 

「取り敢えず、そこの新人君に俺のラインを繋げてみるか。その状態で練習してみようぜ。そのかわり、花壇の手入れ手伝えよ。」

 

その一言を聞いた瞬間、ダイスケはその場から逃走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイスケが逃走した後日の夜、ダイスケはイッセーとリアスとともに旧校舎のギャスパーの部屋の扉の前に来ていた。

本来ならもう帰宅して夕飯も済ませたあとだったが、急にイッセーに呼び出されたのだ。

 

「ギャスパー、出てきて頂戴。無理してイッセーと一緒に行かせた私が悪かったわ。」

 

すると、いきなり目に飛び込んできたのが扉の前で謝るリアスと所在無げに立つのイッセーの姿だった。

 

「イッセーと仕事をすれば、もしかしたら貴方の為になるかもしれないと思って……。。」

 

『ふえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!』

 

自室の扉越しに響くギャスパーの泣き声は、旧校舎中に響いている。

状況がイマイチ読めないダイスケは、イッセーから事情を聞いた。

なんでも、イッセーの仕事にギャスパーを無理やりダンボール箱に入れた状態で連れて行ったそうだ。

行った先はイッセーの初仕事先であり、ダイスケもイッセーの紹介で会ったことがある森沢という男の家。

その時、ギャスパーを見た森沢の反応がいかにも変態めいたものだったらしい。

「こんなに可愛い子が女の子のわけがない!!」とか、鼻息を荒くして「お、おじさんと楽しいこといっぱいしよう……?」などといかにもなセリフを吐いて迫ったらしい。

当然、ギャスパーは森沢に対する恐怖から神器を発動。そのまま仕事をこなせずに帰ってきてしまったそうだ。そして今に至るというわけだ。

だが、ギャスパーが部屋の中で泣いているのは森沢が怖かったからだけではない。また暴走してしまった自分自身が嫌になってしまったのだ。

さらに、リアスからギャスパーの複雑な生い立ちも聞いてしまった。

もともと、ギャスパーは吸血鬼の名門、それも吸血鬼の元祖と呼ばれる存在『ヴラド・ドラグリヤ』から家名を頂いたヴラディ家の出身だ。

だが、ギャスパーはハーフだ。それも、母の立場は人間の妾。

吸血鬼の純血主義は悪魔のそれ以上。あのライザーが可愛く見えるののなのだ。

腹違いの兄弟達から執拗に虐げられ、人間の世界に逃げ延びても化け物扱いをされて結局居場所がなかった。

だが、本人が望むのとは裏腹にギャスパーが持つ吸血鬼の潜在能力は桁違いで、人間の部分を持つがゆえに停止結界の邪眼をも備えておりその力は歳を重ねるごとに増していった。

その望まない力によって、ギャスパーは路頭に迷い一度ヴァンパイアハンターに命を奪われた。そこをリアスに拾われたのだ。

 

『ぼ、僕は……こんな力いらないっ!み、みんな僕の所為で止まっちゃうんだ!みんな僕を嫌がる!怖がる!僕だって嫌なのに!!こんなのなら……僕の命なんて助からなきゃよかったんだ!!』

 

ギャスパーの悲痛な叫びに、リアスは項垂れる。

 

「この子をここまで追い詰めてしまったなんて……王失格ね、私。」

 

元より眷属思いのリアスだ。

自分の可愛い眷属が泣いているというのに、救ってやれない自分にやるせなさを感じてしまう。

そのリアスの悲しい横顔を見て、イッセーはある決意をする。

 

「部長、これからサーゼクス様たちとの打ち合わせがあるんじゃないですか?」

 

「ええ。でも、もう少しだけ時間を延ばしてもらうわ。先にギャスパーをなんとかしてあげたいの。」

 

「いえ、あとは俺に任せてください。部長は上級悪魔として、魔王の妹としての義務を優先して下さい。」

 

仮にも三大勢力のトップが顔を合わせる会談だ。セッティングに不備があれば外交上の軋轢を生むこともありうる。

 

「でも……。」

 

「大丈夫です。自信はないけど、せっかく出来た男子の後輩なんです。何とかします!ダイスケももう帰っても大丈夫だ。悪かったな、呼び出しちゃって。」

 

バツが悪そうにイッセーは言う。

だが、ダイスケにはわかる。イッセーが強がりで言っていることを。

自信がないというイッセーの言葉は真実だ。

大体、イッセーは繊細な人間の相手は不得手だ。それでもリアスに前でカッコをつけて見せるのは、少しでもリアスの負担を背負いたいというイッセーの主に対する思いやりだ。

そのことを察したダイスケは、諦めたようにイッセーに言う。

 

「いや、手伝うよ。部長、ここは俺らを信じて行ってください。」

 

「……わかったわ。イッセー、ダイスケ。二人共、ギャスパーのことお願いね?」

 

「はい!」

 

イッセーが元気よく返事し、ダイスケが片手をひらひらと振って答えたのを見ると、リアスは名残惜しそうにその場をあとにする。

 

「部長は行っちゃったけど……どうやって攻略するよ?一筋縄ではいかねぇぞ、こりゃ。」

 

「んなもん決まってんだろ。」

 

そう言ってイッセーは扉の前で胡座と腕を組み、ズッカとその場に座り込む。

 

「俺はお前が出てくるまでここを動かねぇからな!!」

 

イッセーは繊細な人間を相手にできるほど賢くはない。

だから、言葉でギャスパーの心を開くのは既に諦め最初から持久戦に持ち込んだ。

十分経ち、三十分経ち、ついに座り込みが一時間に突入しても反応がなかった。

 

「なあ、おまえは俺たちのことが……自分の神器が怖いか?」

 

イッセーは扉越しにギャスパーに問う。

 

「おれもさ、ちょっとはお前の気持ちがわかるぜ。俺の中には赤龍帝なんてとんでもないドラゴンが宿っている。隣にいるダイスケなんかゴジラだぜ?最強の怪獣王とか、神様どういうことだよって笑えてくるよな。」

 

ギャスパーの反応はないが、イッセーは続ける。

 

「だけど、俺たちはギャスパーみたいな特別な生い立ちはないし、木場みたいにすごい生き方をしてきたわけじゃあない。普通の高校生だったんだ。」

 

高度な話術も、策略も今は必要ない。ただ出来るのは、自分の正直な気持ちをぶつけることだけ。

そうしなければ、固く閉ざされた扉も、ギャスパーの心も開くことはないのだから。

 

「俺は正直……怖い。力を使うたびに自分の体が別の何かに変わっていく感覚があるんだ。悪魔の世界のことだってまだよくわからないし、ドラゴンっていうのがどんな存在なのかもわからない。でも、俺は前に進んでいこうと思う。」

 

「俺も似たようなもんさ。似たような境遇の奴に自分の力がどんなものなのかちょっと聞いたんだけどさ、宿している怪獣のせいでセルフボッチ確定だとさ。おまけに宿しているのはあのゴジラだぜ?いつか暴走して自分の大事なものまでぶっ壊すんじゃないかって、不安で不安でしょうがない。だけど、お前を見て決めた。俺は自分自身の力に向き合う。そして、使いこなしてみせる。」

 

ダイスケの言葉を聞いて驚いたのは、扉の向こうのギャスパーだけではなかった。

 

「みんながダイスケに壁を感じてるのって……そのことだったのか?な、なんで何も言ってくれなかったんだよ!?」

 

図らずもイッセーの中にあった疑問の答えが見つかった。

 

「ホントはずっと秘密にするつもりだったんだけどな。言って解決する問題じゃないし、お前がそう言ってくるのは目に見えてた。だけど、ギャスパーのことを考えたら素直に言っといたほうがいいって思ったんだよ。」

 

はぁ、とため息をついて諦めたような顔をするイッセー。

思えば、ダイスケが自分のことで誰かに心配かけさせまいとするのは今に始まったことではない。

小学生の学習発表会の準備の時、イッセーは脚立の上で作業することがあった。

だが、その脚立に他の作業している生徒がぶつかってしまい、転落してあわや大事故になりかねない事態が起きたのだ。

幸いにも落ちたイッセーをダイスケが身を挺して受け止めたので大事には至らなかったが、そのあとが問題だった。

自分とほぼ同じ体重を受け止めたはいいが、無理な体勢がたたって腕の骨にヒビが入っていたのだ。ダイスケは腕をしかめながらも、そのまま作業は続行。最終的にヒビが入っていることに他の人間が気づいたのは、帰宅した時にいち早く腕の異常に気づいた祖父だった。

そんな前科があるのだから、もう怒る気にもなれない。

だが、二人の覚悟に驚いている者が一人。

 

『どうして……どうしてそんなにあっさり自分の力を受け入れられんですか?もしかしたら、本当に大事な何かを失っちゃうかもしれないんですよ?』

 

沈黙を守っていたギャスパーが扉越しに聞いてきた。

 

「何言ってるんだよ。そんなの、背が小さいだの顔がブサイクに生まれてきただのと同レベルの話だぜ?誰だって、自分がどんな存在なのか選んで生まれてきているわけじゃない。ゲームじゃないんだから、自分の容姿や能力を選んで生まれて来れないんだ。持ってるものだけで人生を生き抜かなきゃならない。それなのに生まれがどうこうとか、自分の能力が嫌だなんて本来は言ってられないはずだぜ?それなのに、せっかく身についた力を活かせないなんて……そりゃ、“損”だ。贅沢すぎる悩みだ。世の中の大半はそんな特別の力がないんだもんな。」

 

『“損”……ですか?』

 

ダイスケの言葉を噛み締め、ギャスパーは今までしたこともないような考え方に新鮮さを覚えていた。

そこへイッセーが畳み掛ける。

 

「俺はダイスケみたいな考えを持ってるわけじゃないから、お前の人生訓になるようなことは言えない。……ただ。」

 

『ただ?』

 

「……俺は部長の涙を二度と見たくない。前のレーティングゲームの時、俺たちは負けたんだ。しかも、自業自得みたいな負け方でさ。俺なんかやられた時の記憶がないくらいボコボコにされてさ。ほんと、情けないったらありゃしねぇよ。……だけど、部長が泣いていたことだけははっきりと覚えてる。」

 

イッセーにとっては、正直な話思い出したくない記憶だ。

だが、話さねばならない。可愛い後輩が思い悩んでいることを考えれば、自分の苦しみを隠すことはできないのだから。

 

「……あれはキツいんだ。記憶の奥底に焼きついててさ、今でも夢に見ちまう。誰もいない中を走り回って、やっと部長を見つけるんだけど、泣いていて……でも、俺は何もできなくて……。」

 

自分の言葉で胸が詰まったその時、木製の扉が軋んだ音を立てて、少しだけ開かれる。

 

「僕はその時……いませんでした……。」

 

「ああ、わかってる。でも、それは仕方なかったことだ。それを責めやしない。だけど……これからは違うだろ?」

 

「……僕じゃ、ご迷惑をかけるだけです……。引き篭りだし、人見知りだし、神器はまともに使えないし……。」

 

そのタイミングでダイスケは、少しだけ開かれたドアをそれとなく確りと開ける。

 

「だったら、自分を変えちまえ。まあ、無理にとは言わないが神器をまともに使えるようになっときゃ“徳”かな。大体、お前の神器は俺には効かないんだ。何かあったら俺がお前を殴ってでも止めてやるよ。」

 

そしてイッセーはギャスパーの顔を両手で優しく抑えると、その両目を見据える。

 

「俺はお前を嫌わない。先輩として面倒見てやる。まあ、悪魔業はお前のほうが先輩だし、成績も比較になんねぇ。だけど、歳の上だけでは俺が先輩だから、任せろ。」

 

「―――っ。」

 

ギャスパーはその目を見開き、驚きを隠せないでいるがイッセーは構わず続ける。

 

「なあ、ギャスパー。俺たちに力を貸してくれ。一緒に部長を支えよう。お前が怖がるものがあるんだったら、俺たちがぶっとばす。これでも俺たち、伝説のドラゴンと怪獣王なんだぜ?」

 

イッセーは屈託のない笑みを見せるが、ギャスパーは突然の申し出に戸惑っている。

なにせ、人生で初めて自分の力と正面を切って向き合おうとする者が二人も現れたのだ。戸惑うのも無理はなかった。

 

「そうだ、俺の血飲むか?アザゼルの野郎の言う通りにするのは癪だけど、試してみる価値はあるぜ?」

 

「いや、でも童貞が吸血鬼に血を吸われたら同化させられるんじゃないのか?」

 

「どどどどどど童貞ちゃうわ!!!」

 

「どう見たって童貞だよお前。ゼノヴィアに迫られて、どうせ指一本もふれられなかったんだろ。」

 

「あ、あれは部長たちに見つかったからで……!」

 

「語るに落ちたな。」

 

「しまった!!!!」

 

だが、ギャスパーは首を横に振る。

 

「……怖いんです。生きている人から直接血を吸うのが。ただでさえ、自分の力を御しきれていないのに……これ以上何かが高まったら……。」

 

「ギャスパー。お前の先人の話をしてやる。」

 

そう言ってダイスケは瞑目し、語り始める。

 

「その吸血鬼はある能力に目覚めた。そして、その力がいかほどものか確かめるために部下に自分に向かって散弾銃を撃つように言った。すると、ほんの一瞬だが、時間が止まったような感覚に陥った。最初はスポーツ選手や、武道の達人が感じるっていう時間がゆっくり動いているような錯覚かと思ったそうだ。だが、その一瞬のうちに散弾の弾の一つをつまんでいたんだ……。」

 

「いや、それってあの奇妙な冒険のWRYYYで無駄無駄なあのお方の話ですよね……?」

 

「ギャスパー、言っても無駄だ。こいつ、こうなったら止まらねぇから。」

 

ギャスパーのツッコミにもかかわらず、ダイスケは続ける。

 

「そして、それが“時を止める能力”だと吸血鬼は悟った。その能力を授けた者はいった。『時を止められることが“当然”だと思うことが重要』だってな。そして、より時間を止める力を強力な形に完成させるために、ジョー○ターの血を求めるんだ。」

 

「とうとう言っちゃいましたよ、ジョース○ーって。隠す気さらさらないですよ。」

 

「いろいろめんどくさくなってきたんだろ。」

 

イッセーはとうとう突っ込む気も起きなくなってくる。

 

「詰まるところ、俺が何を言わんとしているかって言うとな、自分自身にビビるなってことなんだよ。使いこなそうと思えば使いこなせる。それが当然だって思うことだその第一歩さ。」

 

「それは言えてるな。できないって思うから一歩を踏み出せないんだ。大体、俺からすれば時間停止なんて羨ましすぎる能力だぜ。赤龍帝の籠手と交換して欲しいくらいだ。」

 

えっ、とギャスパーは息を詰まらせる。

本人からすれば信じられない一言だ。

止まった時の中、何も感じることも考えることのできない中、相手に何をされるかわからない恐怖。

それが“時間停止”という異能の最大の効力だ。

下手をすれば相手に「コイツは何をするかわからない」という疑念も持たれかねないその能力を、イッセーは『羨ましい』と言ったのだ。

 

「だってよ、時間を止められるってことはその間止めている相手を好きにできるってことだぜ?それができたら俺はこの学校中の可愛いコの時間を止めて蹂躙するね!」

 

あまりにもあんまりなイッセーの煩悩まみれの欲求にギャスパーは面食らい、ダイスケは「またか」と顔を右手で覆う。

だが、二名のリアクションにも気付かずにイッセーは蕩々と己の妄想をたれ流し続ける。

 

「そしたらまず、スカートの中を覗き放題だ!しかも、ただスカートを捲るんじゃなくて、背中を床に這わせながら股の間を潜りつつ下から直に覗き込む!!そのあとは更衣室に入って、着替え中の女子のあられもない姿を堪能だ!!!いつもは物陰から覗いているだけだけど、時間を停止できれば堂々と正面切って眺めることができる!!!!いや、うまくいったらその体に直接触れて楽しむなんてことも……。ああ、そうだ!!!!!これは部長にやればいい!!そうすれば、あの99のバストが俺の手のひらの中で自由にこねくり回せて……そして、朱乃さんの100オーバーのおっぱいも揉み放題!!!うっは!妄想が止まらん!!やべぇ、鼻血出てきた!!!!」

 

情けなく鼻血とヨダレを垂れ流して、思いっきり緩んだ顔のイッセーにダイスケはもう言葉もない。

おそらくギャスパーも呆れているに違いない……と思ったが違っていた。

ギャスパーは意外にも、嬉しそうに微笑んでいたのだ。

 

「……イッセー先輩って、優しいんですね。」

 

相手は男とわかっていても、その柔らかい笑みに思わずイッセーもダイスケもぐらつきそうになる。

 

「そんな風に言ってくれたのはイッセー先輩が初めてです。それにそんな具体例まで……イッセー先輩って、楽しい方なんですね。」

 

「ギャスパー。コイツはそんなに頭が良くないから、ストレートにバカって言ってもいいんだぞ?」

 

「これって、ダイスケだけが俺を馬鹿にしてるのか?それとも二人とも俺のことバカにしてんのか?どっちだ、おい。」

 

「な?やっぱ馬鹿だろ?誰が何言ってるのか理解できてない。」

 

「あ?やんのかコラ。ちょっと旧校舎の裏まで来いや。」

 

「あぁ?お前なんか一発だコラァ。」

 

「あぁ?赤龍帝なめんなよ、コラァ。」

 

「あぁ?お前なんか赤龍帝じゃなくて“乳龍帝”だコラァ。」

 

メンチを切り合う馬鹿二人。

これではダイスケもイッセーのことを馬鹿とは言えない。

 

「……ぷっ!あはははははは!!!」

 

そのマンガみたいなメンチの応酬に、ギャスパーがたまらず笑い出す。

 

「ご、ごめんなさい。でも、あんまりおかしいもんだから……。」

 

「だよな、ギャスパー。イッセーは頭おかしいよな。色欲のせいで。」

 

「いえ、その“おかしい”じゃなくて。……お二人とも仲がよさそうで、なんだか羨ましいです。僕には、お二人みたいな関係になれる人がいませんでしたから……。」

 

破顔していたギャスパーの顔が、徐々に曇っていく。

その様子に、イッセーとダイスケはメンチを切り合っている状態を解き、一瞬顔を見合わせる。

 

「だったら、この“中”に入ってこいよ。」

 

イッセーの申し出に、ギャスパーは戸惑う。

 

「い、いいんですか?」

 

「良いも悪いも……なぁ?」

 

「松田と元浜ももう入ってるわけだし、今更一人増えてもなんのマイナスもねぇよ。」

 

二人の返事を聞いて、ギャスパーは一瞬俯く。

だが、すぐに目元を袖でこすると顔を上げた。

 

「その……まだ神器を制御できない不束者ですけど、よろしくお願いします!」

 

さっきまで部屋に閉じこもり、延々と泣いていたギャスパーが大きい声で言った。

その反応を見て、悪友二人はニカリと笑う。

 

「よっし!よろしくな、ギャスパー。」

 

「まあ、先輩だと思って頼ってくれや。」

 

「はい!」

 

これはギャスパーが変わった第一歩だ。

問題が解決するという未来になったという確証ではない。

だが、ギャスパーには感じていた。この二人についていけば道は切り開けるかもしれないと。

その快方に向かった自分を思うと、自然と表情が明るくなっていった。

 

「すごいね、二人共。あっという間にギャスパー君と打ち解けちゃうなんて。」

 

二人を心配していて様子見していた木場が姿を現す。

これで、オカルト研究部の男子が全員ここに集結したということだ。

そのことに気づいたイッセーが「そうだ」と提案する。

 

「なあ、みんな。大切な話がある。」

 

「なんだい、イッセー君?」

 

「珍しいな、そんなに改まって。」

 

全員の視線が自分に集まったところを確認して、それらしくイッセーは咳払いをする。

 

「実は、ギャスパーの存在を知った時から温めていたアイデアがあるんだ……。だが、誰かに聞かれるとマズイ。取り敢えず、ギャスパーの部屋に入ろう。」

 

イッセーに促されて、残る三人も室内に入る。

そして、しっかりとドアの鍵を閉めた。

話が長くなりそうなので、取り敢えず各々椅子なりベットなりに腰掛ける。

 

「俺たちは全員男だ。」

 

「そうだね。でも、それがイッセー君の案に何か関係あるのかい?」

 

「大いにある。これは、俺たち男子メンバーでできる連携攻撃についてなんだ。しかも、実戦、レーティングゲーム問わずに行える実に汎用性が高い戦術だ。」

 

「……お前が“戦術”なんて言葉使うと嫌な予感しかしねぇんだけど。」

 

「僕は興味があるな。なんなんだい?その戦術って。」

 

一人は嫌な予感がし、残る二名は興味津々といった体で聞こうとしている。

 

「まず、俺が赤龍帝の籠手でパワーを貯める。そして、それをギャスパーに譲渡して周囲の時を止める。そうすれば俺は女の子の体を好き放題だ。」

 

そのとんでもない“戦術”を聞いて、木場が唖然とする。

だが、ある程度予想していたダイスケは「やはりか」といった表情だ。

 

「……これまたエッチな妄想をしてたんだね。でも、それだと僕とダイスケ君の出番がないんじゃない?」

 

「いや、ある。お前は禁手化してひたすら俺を守れ。そうすれば隙はない。どうだ、完璧な戦術だろう。」

 

「ねぇ、イッセー君。僕はイッセー君のためならなんでもするつもりだけど……一度真剣に今後のことを話そうよ。いいかげんにしないと、ドライグ泣くよ?」

 

『木場はいい奴だなぁ。』

 

伝説のドラゴンが涙声で訴える。

そのドライグの声を聞いて、木場とダイスケはドライグがどれほどイッセーの力の使いようで思い悩んでいるのかがよくわかった。

そんな不憫なドラゴンの事を考えると、いかに相手が伝説の存在とはいえ憐憫の眼差しを送らざるおえない。

 

「ドライグ、安心しろ。もしあんなふざけた戦術を使おうしたら、俺が責任をもってイッセーを警察なりなんなりに送る。それが世のためイッセーのため、果てはドライグと全世界の女性のためだ。」

 

『ダイスケ、その時になったら頼むぞ。』

 

もはやこのドラゴン、宿主よりも周囲の人間の方に信頼を寄せている。

 

「なんなんだよ、お前ら!!……まぁ、いい。ギャスパーが前向きになってくれたんだ。こうなったら男同士……腹を割って話そう!!」

 

「そのフレーズ、何か嫌な予感しかしないんだけど。どうでもいい話に長時間付き合わされそうなんだけど。」

 

「シャラップ!!それでは第一回『女の子のこんなところがたまらなく好きだ選手権』!!まずは俺だ!!俺は言わずもがな、おっぱいとスラリと伸びた脚だ!!」

 

呆れるダイスケが他二名を見ると。苦笑しつつも嫌がっている素振りはなかった。

だが、ダイスケは見逃さなかった。ギャスパーの手が震えているのを。

おそらく、何かの拍子で時間を止めてしまうかもしれないという危機感がそうさせているのだろう。

そのギャスパーの震えにはイッセーも気がついた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「す、すいません。ダンボールの中でもいいですか?その、蓋は閉めないので。ダンボールの中にいれば、人と話ししていてもまだ落ち着けるので……。」

 

ダンボールの蓋を閉めない分、いくらか成長したということか。あまり無理をさせてもいけないのでイッセーとダイスケはそれを許す。

 

「あ~、これですぅ。落ち着きますぅ。ダンボールの中は僕のオアシスですぅ……。」

 

これはなるべく早急にダンボールから卒業できるようにしなければならないだろう。

まさか、ダンボールに箱詰めされた状態でレーティングゲームに出すわけにもいかない。

それこそホントのダンボー○戦機だ。

 

「あ、そうだ。そんなに人と目を合わすなが嫌なら……これとかどうだ?」

 

そう言ってイッセーは身近にあった紙袋に覗き穴を二つ開けて、ギャスパーの頭にかぶせる。

 

「「「こ、これは……。」」」

 

薄暗い部屋の中に佇む、紙袋をかぶった女装少年。

その開けられた覗く穴からは、闇の中にぎらりと輝く赤い双眸。

 

「どうですか~?僕、似合ってますか~?」

 

フラフラと歩くその様子はゾンビかはたまたキョンシーか。

この状態で住宅街の路地でも歩こうものなら、即刻通報されるだろう。

つまり、ただの変質者。

 

「いや、これだとただの変質者だ。……そうだ、こうしよう。」

 

そう言って今度はダイスケが身近にあった白い布に、黒マジックで模様を描いて紙袋と同じように覗き穴を開ける。

そのまま紙袋を脱がせたギャスパーの頭に巻きつけ、なぜか室内にあったソフト帽をかぶせる。

 

「どうよ、こういう風にちょっと工夫すれば、変質者が立派なヒーローに。」

 

「ただのロール○ャッハじゃねぇか!!!」

 

イッセーが突っ込んだ通りだった。

しかも、ヒーローといってもいろいろと問題のあるヒーローだ。

 

「え、僕って今ヒーローなんですか?」

 

「ああ、これくらい精神が強くなってほしいという俺の願いも込められている。」

 

「目標高過ぎだよ!!っていうか、精神が強くなる代わりにいろんなもの失っちまうよ!!!」

 

主に風呂に入らなくなったり、友達を作ろうとしなくなったり。

 

「あ、でも、これ……これもいいです。僕にぴったりかも。」

 

こころなしか、覗き穴から漏れる赤い瞳の眼光が強くなった気がする。

 

「ギャスパー、俺ははじめてお前をスゴイって感じたよ。」

 

「ほ、本当ですか!?こ、これをかぶれば、僕も吸血鬼としての箔がつくかも……。」

 

箔がついたのは吸血鬼ではなく変質者としてだ、とイッセーは突っ込みたかったが、喜んでいる後輩の姿を見るとどうしてもそう言えなかった。

こうして赤龍帝、怪獣王、騎士、ロー○シャッハの夜通し猥談が始まった。

この時分かったことだが、木場も意外にスケベだった。




ということで、ギャスパーが精神的超人に一歩近づいたVS20でした。
そういえば、感想に「あらすじがバカ丸出し」とあったんですが、ひょっとしてあらすじで損してる……?参考までに感想でそこのところもどうなのかお伺いしてみたいです。
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!
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