ハイスクールD×G 作:オンタイセウ
取り残されないように頑張らないと。
その日、駒王学園は極度の緊張の中にあった。
校舎のいたるところに悪魔、天使、堕天使の軍勢でひしめき合っている。
一私立高校がここまでの厳戒態勢にあるのは理由がある。
三大勢力のトップが集う会談の日だからだ。
当然、天敵同士が相対するこの状況、ちょっとした切っ掛けで即戦争勃発ということにもなりかねないが、お互い外互いを牽制しているせいで学園がとてつもない殺気に包まれている。
会議が実際に行われているのは校舎の会議室だ。
特別の用意された豪華なテーブルには、各勢力から出席している実力者たちとオカ研メンバー、そして生徒会からも一部のメンバーが席についている。因みに、ギャスパーは出席を認められずに自室で待機中だ。
悪魔側からはサーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン、そしてサーゼクスの付き人としてグレイフィア・ルキフグス。
天使側からは天使たちの長、四大天使の一角、熾天使≪セラフ≫のミカエル、アーロン・ブロディ、幹部と思わしき女性天使。
堕天使側からはアザゼル、そし白龍皇のヴァーリ。
この場に参加する最大の資格は『神の不在』を知っているということ。
そして、全員がその場をわきまえ、あのセラフォルーですらフォーマルな格好をし、語尾に☆もついていない真面目な口調になっている。
だが、ただ一人世界の命運を分ける重大な会議を全く真面目に参加していない人物が一人。
ダイスケだった。
この男、長時間の会議だの話し合いだのが大の苦手。おまけに人目も憚らずに舟をこいているという体たらく。
そもそも話の内容が今のところ、先の大戦における実際の被害の規模だとか、信者の信仰を支えるための神が残したという『システム』の話が主だ。
自分が生まれる遥か昔、それも人間でない者たちの過去の話は神話なりで知っているし、そもそもダイスケが信仰するのは仏教と神道だ。いままで異教徒を弾圧してきたような宗教の信徒がどうなろうが知ったことではない。
それも、いまだに自分に関係するゴジラや怪獣の議題には入っていない。話半分で聞いているうちに睡魔に完全敗北を喫してしまったのだった。
ただ、初めのうちは隣にいる木場が起こそうと何度もダイスケの脇をこずいていた。
だが、コカビエル襲撃の話題になると聖魔剣についての説明をしなければならなくなってしまった為にダイスケの安眠を妨げるものがいなくなってしまったのだ。
まさかだた一人の参加者の睡眠が理由で会議を一時中断するわけにもいかない。なので、皆爆睡しているバカを放って会議は進んだ。
しかし、人間の聴覚とはうまくできているのもので、その内容だけはしっかりと聞こえていた。
ひとつ、このまま三竦みの状態を維持しても世界の害にしかならないので和平を結ぶこと。これは今更だろう。
既にミカエルがイッセーに聖剣『アスカロン』を託したことはダイスケも本人から聞き及んでいる。和平の気がなければこのようなことはしないはずだ。
次に、アザゼルが何らかの形でイッセーたちに協力しようと提示してきたこと。
これはレイナーレの一件も絡んでいることだ。あの時、どちらも思いもしない被害を被ったが、その原因はアザゼルが部下を制御しきれていなかったことも一因している。その埋め合わせのためだ。
そして、世界に影響を及ぼしかねない者たちの意見も聞きたいということ。これが現在の話題だ。
まず問われたのは白龍皇のヴァーリ。彼の回答は実に単純明快だった。
「俺は強い奴と戦えればそれでいいさ。」
ここまではっきりとバトルジャンキーを広言できた者がこれまでの人類の歴史にいただろうか。
探せば何人かは出てくるのだろうが、ダイスケが今知っている人間でいえばヴァーリだけだろう。
次にアザゼルに指名されたのはイッセーだった。
イッセーは困惑している。
いかに赤龍帝といえど、肝心の宿主は実に小市民的な感覚の持ち主なのだ。これまで世界云々など考えたこともない人間にそのようなことを問うても戸惑うのは詮無きことだ。
だが、アザゼルはイッセーに対して実に明快かつ分かりやすい噛み砕き方で聞き直した。
要約すれば「和平なら大好きな女とエッチし放題。戦争ならそんな暇なし。どっちがいい?」という聞き方だった。
こんな聞き方をされれば性欲間人イッセーのとる答えは一つだ。
わかっていてこんな聞き方をするのだから、誘導尋問もいいとこだ。
だが、的を得ているし正しい解釈の仕方ではある。一概にアザゼルの言い方を非難する気にはダイスケはなれなかった。
その次はアーロンだった。
彼はいまだ未知の怪獣神器を持っている。世界に影響を与える一人であるのには間違いない。
そのアーロンはヴァーリと同じように簡潔に答える。
「俺のやることは変わらない。与えられた命令を確実にこなす。一兵卒が大局を見ることはないのだから。」
思考停止ともとられかねない発言だが、手足はものを考えないのだ。手足が余計な考えを持てば、頭が下す命令をこなすことはできなくなる。
自分の存在を的確にとらえているからこその答えだった。
「さて次は……そこで寝ぼけているバカ。いい加減に起きろ。」
アザゼルの言葉で、ダイスケはようやく目を開ける。
「ふぁ~あ……。あ、大丈夫。話は聞いてたから。自分はどうしたいかでしょ。聞いてた、聞いてた。」
「本当かよ……まあいいや。お前さんはどうしたい?世界を破壊してしまう“怪獣王”サマよ。」
そのアザゼルの言葉で、そうとわかっていたグレモリー眷属達は思わず身構えてしまう。
これまでの状況証拠から、ダイスケがゴジラを宿し存在だということはわかっていたつもりだった。
だが、神器研究の第一人者たるアザゼルが断定したことにより、その事実がより大きな実感となったのだ。
「こういった場で話すのは初めてになるだろうから、最初にはっきり言っておこう。かつて俺がまだ堕天してもいなかったときにゴジラは突然現れた。あの時は俺もミカエルも青二才だった。なぁ?」
アザゼルに話を振られたミカエルはやや不機嫌そうな表情になる。
「嫌なことを思い出させないでください。あの時の出来事は今でも思い出したくないほどの恐ろしい思い出なんですよ。」
隣にいる女性幹部もそのことを知っているのか、ミカエルを見やって苦笑いをした。
それを横目に見つつ、ミカエルは続ける。
「かの怪獣王が現れた時、私たちはあまりに無力でした。思うがままに暴れるあの巨体が動くたびに幾百、幾千もの天使達がなすすべもなく傷つき、殺されていきました。ただひとつわかったのは、彼は純粋な怒りのみによって未曾有の大災害を引き起こしたということです。今は亡き我らが主神と、数々の名だたる異教の神々が大挙して封印せしめたときはこれまでに経験したことのない……いえ、二度と経験できないほどの安堵感を感じたものです。」
「だがまあ、あの一件が俺たちが堕天する原因の一因にもなった。ゴジラを御すことのできなかった神を、ほんの一瞬でも疑っちまったわけだからな。それから三つ巴の戦争が起きて、神が死んで……誰もがあの一件を忘れかけていた。すると二十世紀になって、みんなが忘れかけていたあのとんでもない暴れん坊の名前を人間の娯楽映画で知った時はさすがの俺も腰が抜けたね。」
アザゼルの言葉にミカエルも「私もそうでしたよ。」と不本意そうに同意した。
「私はその時生を受けていなかったわけだが……それでも魔王の地位に就いたとき、過去の文献から大昔の伝説ぐらいにしか知らなかった伝承の詳細を知って寒気を覚えた。なにせ、それを裏付ける他の怪獣たちの存在も確認されるようになったのだ。再び神代の大災害が起こらないと誰が言い切れようか……。」
災害は忘れた頃にやってくる。
サーゼクスの言う通りである。実際、それは人間の世界でも言えることであるし、歴史の図書館はその記録でいっぱいだ。
その言葉で、幹部たちとイッセーを除いた皆が不安げな目でダイスケを見た。
特に、グレモリー眷属たちはそうだった。
彼らは既に、映画でゴジラがどのような存在なのか認識している。その映像作品の中のエンターテイメントとして生み出された架空の災害が現実になるかもしれないのだ。
口には出さなくのとも、その不安を持ってしまっているのは確かだ。だが、誰も彼らを責めることはできないだろう。
現実にそれが起きたらどのような結果となるのかが分かってしまっているのだから。
それを踏まえたうえでサーゼクスは「しかし」と続ける。
「たとえ君がその怪獣王を身に宿しているとしても、一人の意思を持った人間であることには変わりないのだ。幸いにもゴジラの意思は表面化していない。であれば、君はその力を制御できるはずだ。少なくとも私とミカエル、そしてアザゼルはそう信じている。」
「サーゼクスの言う通りだ。確かに、怪獣神器にはデメリットもある。他人を傷つけないために孤独になろうとするとかな。そうだろ、アーロン・ブロディ?」
アザゼルの問いに、アーロンは肩をすくめるジェスチャーをする。
イッセーは既にその事に知っていたが、ほかの眷属や主はその時初めて「怪獣神器の宿主は自ら他人から離れようとする」ということを知って納得した。
ここ最近に感じたダイスケへの圧迫感や隔たりは錯覚ではなかったのだと。
「だが、問題なのは怪獣神器の影響ではなくて使う本人の意思だ。俺の研究では神器の力に飲まれたものはいても、神器に封じられたものに飲まれた者はいないんだからな。その力の赴くままに世界を破壊するか。それとも力を知った上で制御して、世界の安寧を求めるか……選択を聞こう。」
アザゼルの問いを聞いていたダイスケに皆の視線か集まる。
「この場合答えなければならないのは二つだな。まず、三大勢力の和平に賛成するか、それと自分自身はどうしたいか……。まず、和平については賛成だ。イデオロギーの対立が招いた騒乱ほど厄介なものはない。今でも世界に起こっている騒乱の大半は、主義主張の対立なんだからな。相手を屈服させるまでキリがない消耗戦になるのは目に見えている。辞めるのは大正解だ。」
一つ目の意見を聞いて、会議の出席者たちはひとまず胸をなでおろす。
本来なら何の組織的背景を持たないダイスケにここまで神経を使うのは異常だろう。が、実力者であることには間違いない。
これでこの会議に集った実力者全員が和平“そのもの”には合意したことになる。
だが、問題はダイスケがどうしたいかだ。
既にグレモリーの女子たちは一度ダイスケを除け者にした前科がある。これからもないとは言い切れない。
故に、ダイスケの二つ目の回答を心拍数が上がった状態で待つ。
「それと、自分がどうしたいかだけど……正直、自分でも考えがまとまっていない。勿論、この力を使いこなせるようにはなりたい。だけど、俺はイッセーみたいに明確な目標があるわけじゃない。大体、これまで普通に生きていた人間が―――」
その時、ダイスケの周囲の時が止まる。
その時紛れもなく、ギャスパーが神器を使った感覚があった。
*
「おっ、赤龍帝のお目覚めだ。」
イッセーが気がついて最初に聞いたのが、アザゼルのその一言だった。
辺りを見渡すと、周囲の様子がやや慌ただしくなっていることに気づく。
見ればミカエルが窓から外の様子を確認し、サーゼクス達悪魔のトップ陣営も真剣な面持ちで何かの話をしている。
「な、何かあったんですか?」
さらに周囲を見渡せば、止まっている者とそうでない者がいることがわかる。
まず先に行ったとおり各陣営のトップ陣、そしてヴァーリとアーロンは動いている。
だが、アーシア、朱乃、小猫、ソーナは停止しており、ダイスケまでもが止まっていたのだが―――
「おい、ダイスケ。動けるのは分かっているんだぞ。」
「……。」
「よし、お前から借りてたあのゲームソフト、帰ったら即刻中古屋に売るわ。」
「おい、いくらなんでもそれは犯罪だぞ。」
やはり巫山戯ていただけだった。
そもそも、ダイスケに時間停止が効かないのは先刻承知だ。事情が分かっているものからすれば騙されるはずのないペテンである。
「眷属の中で動けるのは私とイッセー、祐斗にゼノヴィア、それからダイスケだけのようね。」
リアスが動いている様子を確認し、ひとまずイッセーは安堵する。
だが、イッセーには朱乃やソーナまでもが止まっているという事実に驚かざるをえない。
「イッセーには赤龍帝、ダイスケには怪獣王。祐斗は禁手に至っている上にいれぎゅらーな聖魔剣を有しているから無事だったみたいね。ゼノヴィアはさしずめ時間停止の直前になってデュランダルを発動させた、といったところかしら。」
見れば、ゼノヴィアがデュランダルを普段仕舞っている空間のひずみに格納しているところだ。
「私はギャスパーの特訓中に何度も時間停止をくらっていたからな。その予兆の感覚は体で思えた。直前にデュランダルを出せば防げるかもしれないと思ったんだが、うまくいってよかった。」
「お前は相変わらず本能で生きてるのな。」
「褒めるな、ダイスケ。そう簡単に私は靡かんぞ?」
「褒めてねぇよ、この脳筋。」
ゼノヴィアのセリフにイッセーは驚くが、それよりも重要なことがある。
なぜ自分たちは時間停止を食らったのか。
そして、現在の状況がどういうものなのかということだ。
「なあダイスケ、何がどうなってるんだよ?っていうか、どうして時間が止まってるんだ?」
「外見りゃわかるよ。」
言われるがまま、イッセーは窓から外を覗こうとする。
が、突然目の前に閃光が広がる。
「な、なんだ!?」
「テロだよ。現在絶賛攻撃されてる最中ってとこだ。」
アザゼルの説明に、イッセーは我が耳を疑った。
「てててててててテロオオオオオオオォォォォォォォ!?世界情勢がどうのっていう大事な会議の真っ最中に!?なんで!?」
「大事な会議の真っ最中だからさ。いつの時代も和平の動きがあればそれに反対する連中がいるんだよ。人間の歴史もそうだろ?」
「ああ、爺ちゃんが言うところの“大東亜戦争”の終わりには軍部の中で色々あったらしいからなぁ。」
アザゼルの言うことに思うところがあったのか、ダイスケが遠い目をする。
戦争という行為そのものは人道主義などで見えなくなってしまっているが、『紛争解決手段』の一つである。
それが今日というこの日に『解決』への道筋と合意が決まった。であれば、もう続ける必要はない。
闘争において最も重要なことは「どう続けるか」ではなくて「どう終わらすか」ということなのだ。
それがわかっていないと闘争の目的が「どうすれば相手を滅することができるか」という目的にすり替わってしまう。
またそれだけではなく、戦争が巨大な消費活動であることに目をつけて利益を得ようとする者もいる。
そういった争いを続けることで利を得る者たちが今回の騒動を引き起こしたのだ。
「で、あいつらなんなの?なんか、黒いローブみたいなの着込んでるけど。」
ダイスケの問いに、アザゼルが不敵な笑みを浮かべて答える。
「魔法使いって連中さ。悪魔の魔力体系をかのマーリン・アンブロジウスが人間向けに再構築した魔力技術を使役する連中さ。言っておくが、三十過ぎた童貞って意味じゃねぇぞ。」
「この校舎、攻撃されてるみたいだけど、それは大丈夫なのか?」
「それについては心配しなくていい。俺とミカエルとサーゼクスが一緒に張った超強力な決壊の中にいるわけだからな。外には出られんが、破られることはないさ。まあ、相手は中級悪魔クラスの攻撃を放っている訳だがな。」
「素の俺より上の連中がわんさかいるのか……。」
アザゼルの説明はイッセーにとって非常にわかりやすいものだった。
だが、わからない点がもう一つ。
「じゃ、じゃあ、時間を停止させたっぽいのは?」
「連中の内の誰かに、力を譲渡させる神器を持ってる奴がいたんだろう。それで例のハーフヴァンパイアを強制的に一時的な禁手状態にしたんだろうぜ。まあ、俺たちを止めるには出力不足だったがな。」
「ギャスパーがテロリスト連中に武器にされているってことね……。どうやって私の下僕の情報が漏れたのかしら……。しかも、よりにもよってこんな形で使われるなんて!!!これほどの侮辱はないわ!!!!」
リアスが怒りのあまり紅いオーラをほとばしらせる。
自分のかわいい下僕がよりにもよってテロリストに利用されているのだから、リアスの怒りはもっともだった。
「しかし、外で待機していた連中を悉く停めちまうとはな。お前さんの妹の眷属は末恐ろしいなぁ、おい。」
振られたサーゼクスが苦笑いするのを見ると、アザゼルは右手を窓の外へ向けてそっとかざす。
すると、幾百幾千もの光の槍が現れ、瞬く間に魔術師たちを貫き、薙ぎ払っていく。
あっという間に校庭に魔術師たちの死体の山が築かれる。
目の前のスプラッタな光景に思わず吐き気を催したイッセーだったが、間髪入れずに魔方陣がいくつも展開し、また何十人もの魔術師が現れた。
「さっきからこれの繰り返しだよ。この学園は結界に囲まれているっていうのに転送用魔方陣を使って外から戦力を逐次投入するときたもんだ。こうやって時間稼ぎをして俺たちを足止めし、時間をかけて強力にした停止結界で全員を止めて一網打尽……っていうのが奴らの算段だろうな。しかし、タイミングの良さといい、テロの方法といい、こっちの内情に詳しい奴がいるのかもな。下手すりゃ、案外近いところに内通者がいるのかもしれん。」
その可能性は大いにあり得た。
第一、結界に囲まれた中に転移してきている時点でおかしいのだ。
この会議のセッティングに関わったものの中に裏切り者がいる可能性は大いにある。
「学園から脱出ってのは無し?」
繰り返される現状にいら立ちを覚えるダイスケだが、アザゼルはそれを止める。
「やめとけ。外へ出るには学園全体を覆う結界を解かないと無理だ。だが、それをすると人間界に被害が出るかもしれん。俺としてはここで粘って、敵の親玉が痺れを切らして出てくるのを待ちたいところなんだ。そうすれば敵の親玉の顔も割れるし、事はここの結界内で済ませられるからな。」
「だが、それの下調べの為には私たち首脳陣は動けない。だが、まずは旧校舎からギャスパー君を救出することが先決だね。現在最大の懸案事項を取り除けば、状況は我々の側に好転する。」
サーゼクスの提案にリアスが一歩前に出る。
「ギャスパーの救出には私が行きます。旧校舎においてある未使用の戦車の駒でキャスリングを行えば、敵に気取られることなくギャスパーの元へ行けます。」
キャスリングとは、チェスにおける駒の移動法の一つである。
もしも王が危機に陥った時、戦車が身代わりとなって位置を交換することができるのだ。
「なるほど、それなら確実だね。だが、一人では危険だ。グレイフィア、キャスリングを私の魔力方式で複数人転移はできるかな?」
「時間がないので簡易式でしかできませんが……お嬢様ともう御一人ならば可能です。」
「サーゼクス様、俺が行きます!!」
イッセーが名乗りを上げる。
本来なら木場あたりが適任なのだろうが、今回はギャスパーが関わっている。
眷属の中ではおそらく、一番リアスとギャスパーのことを想っているはずだ。
「なら兵頭君、リアスを頼む。だが、敵がリアスたちの侵入を知った場合、君達は窮地に立たされることになる。陽動が必要になるな……。」
「それは俺がやりますよ。」
今度名乗りを上げたのはダイスケだ。
「いいのかい?敵のど真ん中で大暴れしてもらって注意をひきつけてもらうことになるのだが。」
「大丈夫です。頑丈さは伊達ではないので。」
そう言ってサーゼクスに対して不敵に笑う。
やや逡巡したような顔を見せるが、サーゼクスはすぐに了解した。
「では頼む。」
「いえ、彼一人だけでは数の上では不利です。アーロン、彼とともに敵前面に出て攪乱をお願いします。」
「畏まりました、ミカエル様。」
「おお。さすが、サービス精神は三大勢力随一のミカエルだな。だったら、俺からはこれを渡しておこう。」
そう言ってアザゼルはミニカーのようなものをダイスケに渡す。
「これは『シフトX』といってな、お前に前渡したGアタッカーのメーター部分にあるレールにこれを乗せるんだ。そうすればマシンに追加武装が施されるようになってる。」
「それ、どこのシフ○カー!?早速ドライ○からインスパイアか!?」
「いやー、日曜朝八時を見ててつい。」
「ほんと、いつか訴えられるぞ、総督……。」
だが、今はそれをとやかく言う場合ではない。
すぐさま二人は窓から飛び降りる。
おそらく今頃ギャスパーの元へキャスリングをする準備の真っ最中だろう。
それを気取られないために、今は現れた二人に対して攻撃態勢を取った魔術師たち相手に派手な大立ち回りをしなければならない。
「さて、一暴れするか。」
そう言ってアーロンは例のモーニングスターと棘だらけの盾を構える。
「そういえば、宝田大助。君は殺しをしたことは?」
こちらの出方をうかがっているのか、魔術師たちはまだ攻撃はしてきていない。どう出てくるかの様子見だろう。
「前に堕天使を一人。それくらいだ。」
「ほう、童貞卒業済みか。なら、余計な心配をすることはないか。」
「なるべくなら違う童貞を卒業したかったぜ……。」
ダイスケの体を、漆黒の鎧が覆う。
マスクから覗く双眸がギラリと光る。
「なに、一度卒業すれば、あとは人数を重ねるだけだ。良かったな、今回がいい機会だ。」
「あいにく、経験人数を自慢するような趣味はない。」
「いや、それは俺も同じだ。ただ―――」
二人が戦闘態勢に入ったことを確認すると、魔術師たちは遠慮仮借のない砲撃を浴びせる。
それまで校舎を揺らしていた砲撃が、たった二人の人間めがけて襲ってくる。
着弾と同時に巨大な爆発が上がる。
常識的に考えれば、この中級悪魔クラスの攻撃を何十人分も浴びて無事な人間はいない。
だが、それは並の人間の話だ。
倒したと魔術師たちが皆そう思った瞬間、煙の中から何かが飛び出す。
それとほぼ同時に、数人の魔術師たちが赤い花を咲かせて飛び散っていく。
「「ひたすら暴れるだけだ。」」
二人のその眼は、既に人間のそれではない。
闘争を欲する、大いなる怪獣の瞳だった。
というわけで久々の戦闘開始なVS21でした。
こういう怪獣神器どうよ、とかこのキャラを強化したってや!!というご意見がございましたらぜひ感想の方へおねがいします。絶対にネタにする、という確証はありませんが、自分とは違う意見も聞いてみたいので参考程度によろしくお願いします。
それではまた次回!!いつになるかはわかりません!!