ハイスクールD×G 作:オンタイセウ
無理はしないつもりですけど、スピード上げてぇ……。
「ォオラァァァァ!!!」
ダイスケの叫び声とともに、腰にある尾のような部分が伸びる。
尋常ではない筋力によって振り回された尾は、多節棍のような働きをして魔術師達を打ち据えていく。
人間の力で打たれたのならば打撲で済むだろうが、ダイスケはその身にゴジラを宿す者だ。
当然、打撲で済むはずがなく、直撃を受けた者は上半身と下半身が見事に分離した。
この一撃で四、五人は屠ったが、続けざまに右手を一閃。
狙われた魔術師は防御しようと障壁を貼るが、虚しく障壁ごと切り裂かれる。
仲間が倒されたと同時に集中砲火を浴びせるが、強固な装甲にカスリ傷一つ付けられない。
「鬱陶しいッ!!!」
だが、蚊に集られるくらいにはダイスケを苛立たせることには成功し、熱線の一掃射を受けてほとんどがその高熱により蒸発する。
「シャァァァアアアアア!!!!」
また別の方を見れば、アーロンがその手に持ったモーニングスターで並み居る魔術師たちをゴルフのティーペックのように殴り飛ばしている。
例え遠距離から攻撃しても、アザゼルから中級悪魔クラスと呼ばれた魔力弾を左手に持った盾と見事な反射神経によって防御してしまう。
そして痺れを切らし、近接戦を挑んだ者がまたモーニングスターによって叩き潰される。
このように確実に、時に豪快に敵戦力を減らしていっている二人だったが、それにも関わらず一向に増援が途絶える気配はない。
戦力の逐次投入ほど愚かな戦術はないが、それも構わないらしい。
おまけにかなり戦力を減らしたはずだが、アザゼルが目的としている敵指令のお出ましもかなわないまま。
お互いに体力も充分余っているし、余裕もあるが、次第に二人は自然と取り囲まれてしまう。
「どうなってるんだよ、この数!?全然ボスが出てこねぇ。つーか、ザコばっかで飽きてきた。」
「ここまで雑兵根性を出されると、逆に敬意を払いたくなってくる。さながらレギオンだ!」
「ああ、マルコ第五章ね。」
「信者でもないのによく知っているな。」
「有名だもん。ごく一部、で!!」
軽口を叩きながらも手は止めない。
「しかし、ここまでの戦力を揃えるとは。“禍の団《カオス・ブリゲード》”の組織はかなり出来上がっていると見た!!」
「禍の団?なにその中二集団。」
「テロリスト集団さ。目的は世界の混乱。各神話大系からの過激派の寄り合いだ。まだ各勢力のトップも知らない存在だ。俺もヴァーリから教えてもらったばかりでよくは知らん!!」
「お前、ほんとに白龍皇と仲いいな!?」
「まぁな。……一緒に禍の団に誘われるくらいは。」
次の瞬間、アーロンのモーニングスターがダイスケの頭部を捉える。
それは、ダイスケにとって全く予想のつかなかった展開だった。
*
その時、木場祐斗は転送されるイッセーとリアスを見送っていた。
事態は木場が思っているよりも急展開と大きな規模を見せていた。
この状況を作り出した張本人は勢力を超えた組織を持つという『禍の団』、そしてその首領は“無限の龍神《ウロボロス・ドラゴン》オーフィス”。
その情報がアザゼルの口から明かされたあと、彼にとって聞き覚えのない声が室内に響く。
『そう、オーフィスが禍の団のトップです。』
響き渡った声によって首謀者の正体をサーゼクスが理解した瞬間、会議室の床に魔法陣が展開する。
その陣は見たことがない紋様だった。
木場とて、公爵家次期当主の騎士だ。72の主だった名家の魔法陣はすべて諳んじているし、メフィスト・フィレイス、ルキフグスといった番外悪魔《エクストラ・デーモン》の家のものも知っている。
だが、その木場が知らない魔法陣は確かに目の前に存在している。
「レヴィアタンの魔法陣……!」
サーゼクスの一言で、木場はさらに混乱する。
なぜなら、木場の知っているレヴィアタンの陣は目の前のものとは全く違うし、レヴィアタン本人は目の前にいるのだから。
だが、意外にもゼノヴィアがこの木場の混乱を解くことになる。
「以前、これと同じものをヴァチカンの資料で見たことがある。これは、旧レヴィアタンの召喚陣だ。」
ならば、現行政権が収める悪魔社会しか知らない木場が知らないのは当然だった。
かつて、冥界は二つに分かれての内乱に包まれていた。
三竦みの戦争の傷跡を無視してでも他勢力との雌雄を決すべしとする一派と、それを否として種族の安定と復活に重点を置くべきとする勢力との内乱だ。
結果、前者は《旧魔王勢力》、後者は《現魔王勢力》と呼ばれる状態に落ち着いた。
本来なら、旧勢力は駆逐されるのが常である。
が、現魔王たちはそれを是とせず、あくまで種の保存を目的であるとして旧体制の駆逐を是としなかった。
当然ながら、旧魔王たちに政治的実権は与えられず、常に飼い殺しの状態が続いた。
だが、禍の団に加担することによって、その組織力と首魁であるオーフィスの助力を得てついに現行政権に対して反旗を翻したのだ。
そして今回の会議に各勢力のトップが揃うことを察知して、これを纏めて抹殺し、政権を簒奪すべくクーデターを敢行した。
その尖兵として現れたのは前レヴィアタンの血を引く、胸元が大きくあき、深いスリットが入ったドレスを身に纏った、それこそイッセーが見たら鼻血を垂らして喜びそうな美女、カテレア・レヴィアタンが現れた。
「カテレア、なぜ君たちは禍の団と?」
「サーゼクス、貴方達こそなぜ天使、堕天使と組もうとするのです?私たちは先代魔王を失いましたが、同時に最大の障害である神も身罷ったのです。これを好機としてこの世界を我らの手で革新すればよいものを……。」
カテレアは心底落胆したかのような表情を見せる。
「私たちは禍の団と組むことによって、強大な戦力を得ることができました。これを元に、我ら正統なる魔王が率いる悪魔が世界を手に入れ再構築するのです!!」
その理想を語る目は、狂気にも激情にも染まっていない正気の瞳だった。
自分たちが世界の覇権を握りうると、本気で考えているのだ。
「しかし、おたくらのトップであるオーフィスはそこまで考えているのかね?奴さんはそこまでこの世の中には興味のない奴だったはずだが?」
アザゼルの問にもカテレアは蕩々と答える。
「かの者は純粋な力の象徴。並み居る強者達を纏め、惹きつけるための役割です。私達が世界を統べた後は彼にシンボルになってもらうだけ。彼には彼の別の目的がある。」
「なるほど、お互いがお互いを利用……ってやつかい。だが、奴さんはお前さんらの思うように動くタマかな?」
「アザゼル、あなたの心配はご無用です。彼の為に新世界の神という席を開けています。統治するのは私たちが行いますのでご安心を。」
そして、外にいる魔術師達はその賛同者だということだ。
「カテレアちゃん、どうして!?」
セラフォルーは悲しげに叫び問うが、カテレアの表情は憎しみに歪む。
「よくも、私からレヴィアタンの名を奪っておいてぬけぬけと……!私は正当なる血統によりレヴィアタンの名を継ぐ正当性を有していたというのに!!私こそが魔王に相応しかった!!!」
「わ、私は……!」
「ですがセラフォルー。もうそのことで貴女が思い悩むことはありません。今日、この場であなた達を皆殺しにしてその懊悩も永久の冥府の闇の中に消えるのですから。……さあ、貴女たちの時代の終焉です。」
その言葉で、首脳陣の表情に影がかかる。
だが―――
「―――クッックックック、……アーハッハッハッハッハ!!!!」
アザゼルが愉快そうに嗤う。
まるでジョークを聞いたかのようなリアクションだった。
想定していないリアクションに、カテレアの顔に驚きの色が加わる。
だが、それとは反対にアザゼルの顔は悪童のような邪悪な笑みが浮かんでいる。
「……何が可笑しいのです?」
「可笑しいさ。旧体制にしがみつこうとする連中が、よりにもよって世界の変革を謳うんだからよ。それもその大義名分が『血筋故に』と来たもんだ。事が終わった後の他の神話大系に対する姿勢の如何も、人間に対する戦後処理のことも何も無し。さらに言えば、各地の存在する怪獣達への対処も何もないと来た。これを笑わずに何を笑えってんだ?」
「怪獣相手、特に怪獣王相手の対処法は既に決まっていますよ。」
その言葉の直後、壁を突き破って何かが室内に侵入してくる。
「いだだだ……。あの野郎、思いっきり人の頭ぶん殴りやがって……。」
「ダイスケ君!?」
予想外の乱入者に、木場は大いに驚いた。
第一、ダイスケは外でアーロンと共に魔術師相手に大立ち回りを演じていたはずだ。
それがなぜ?
「おい、気をつけろ!!裏切り者はアーロンと―――」
言い終わる前に、何かが白い光跡を残して高速でダイスケに近ずいた。
「そう、俺だ。」
禁手化した白龍皇、ヴァーリだった。
その拳はダイスケに阻まれてはいるが、誰が仕掛けてくると分かっていなければ確実にダイスケはいい一撃をもらっていただろう。
ヴァーリはそのまま取っ組み合いをすることなく、すぐに離れてカテレアの傍らに立つ。
さらにダイスケが飛び込んできた穴からもう一人現れる。
「ふむ、やはりあの一撃でも死なないか。怪獣王の強固さ、実に厄介だな。」
アーロンである。
彼もまた、カテレアの傍らに立つ。
「アーロン……。貴方には私の切り札《JOKER》にもなってくれると思っていたのですが。」
「今まで気を掛けて頂いたのに申し訳ありません、ミカエル様。しかし、私にも譲れぬものがあるのです。」
「譲れぬもの?」
サーゼクスが問う。
これまでミカエルの下で身命をかけて働いてきた者が、それでもなお裏切ってでも譲れないものにサーゼクスは興味を惹かれた。
「ええ、魔王殿。私は自分の力を知った時、心を許せるものを持つことのできない、そして常に孤独と戦わなければならないということと向き合わなければなりませんでした。幸いにもミカエル様のおかげで居場所を得ることのできた私ですが、この世には私以外も同じ境遇にある人間は他にもいます。そこで気付きました。怪獣の力を持つ者同士で共に生きていけば、過度に他人を傷つけることを恐れなくてもいいという事に。ですが、ただでさえ稀有な怪獣神器持ちを探すには正攻法で探すのは非常に困難。それでも、力を持つ者は力を持つ者に引き寄せられる。怪獣同士はまさにそれです。その為に、強者が集まる禍の団につく事で少しでも多くの仲間を探したいのです。」
「じゃれ付き合い、傷つけ合っても恐る必要のない怪獣の力を持つ者同士の為のコミニュティ……いや、社会を作るつもりなのか。ならば尚の事……。」
「サーゼクス様は『私たちにつく方が良い』と仰りたいのでしょうが……。貴方方は受け入れてくれたとしても、その下にいる力なき者たちが私たちを恐るでしょう。であれば、貴方がた同盟に組みしても益がないことは明白。……残念ですが。」
「アーロン、すいません。私ともあろうものがあなたの心の内を察することができなかったとは……。」
「貴方が謝ることはないのです、ミカエル様。ですが、今は……!」
再び、アーロンは盾とモーニングスターを構える。
「……皆、降るつもりはないのだな?」
そのサーゼクスの一言は最後通牒である。
いかに反逆者といえど、同胞と無くすには惜しい実力者だ。女々しいと言う者いるだろうが、それがサーゼクスの本心である。
「サーゼクス、貴方は良い魔王でしたが、最高の魔王ではない。故に、私たちが最高の魔王になります。」
「……そうか。残念だ。」
その確認の言葉を聞いたアザゼルは、サッと右腕を振る。
すると、アザゼルの右側にあった壁が光の一撃で豪音と共に消し飛んだ。
「悪いが、カテレアの相手は俺がさせてもらうぜ!!俺の趣味の時間を下らん理由で滅茶苦茶にしようとする奴はこの手でとっちめてやる!!!!」
「相手になりましょう、アザゼル!!終末の怪物の名を持つ私と、堕ちた天使の長でハルマゲドンと洒落込みましょう!!!」
二人はそのまま崩れた壁の穴から飛び出し、光の力と魔力の激しい空中戦を繰り広げ始めた。
木場はただ、その次元の違いに圧倒されるのみだったが、サーゼクスからの指示を受ける。
「木場祐斗君。私とミカエルはここで結界を維持し続けなければならないから動けない。それにグレイフィアが敵の転送術式の解読する時間も欲しい。その為にも君とゼノヴィア君に敵魔術師達を迎撃して欲しい。頼めるかな?」
「サーゼクス様からの勅命、光栄の極みでございます!我が聖魔剣にかけて、この命を完遂いたします!!」
「よもや、私が魔王様から頼られるとはな。ご期待には応えよう。」
そう言って二人も魔術師たちが犇めく工程へ舞い降りるが、木場には気がかりな事があった。
ダイスケ、アーロン、ヴァーリの三人が既に姿を消していたことだった。
ダイスケは恐らく、二人を倒すために既にこの場を離れたことは確実だろう。
だが、先ほどのアーロンの独白のことがある。
既に、木場達はダイスケの事に気付けずにいた。
自分たちは幾度かダイスケに救われているといのに、自分たちは何もできなかった。
もしそれが響くとしたら……。
ただ、自分たちが犯してしまった不誠実がこの状況を悪化させない事しか、今の木場にはできなかった。
*
青白い熱戦が二条、戦場を走る。
狙われた一方のヴァーリは華麗な空中機動によって回避し、もう一方のアーロンは強固な盾で防ぐ。
熱戦を撃ったものは撃ち終わった一瞬の隙ができている。
その隙を狙ってヴァーリは突貫するが、それを既に予測していたダイスケは回し蹴りによって軌道を変えさせ、盾を構えて前が見えていないアーロンに向けて走り出す。
だが、モーニングスターの射程に入ったその瞬間、神速の突きがダイスケを襲う。
得物そのものの質量と、怪獣神器によって強化されたアーロンの怪力によってダイスケは遥か後方に突き飛ばされる。
その勢いを殺しきったのは、ダイスケがアーロンから10mも離れた時だった。
ダイスケが一旦体勢を整えるのを待って、アーロンとヴァーリは並び立つ。
「流石、白龍皇と元ミカエル直属のエクソシスト……。一筋縄ではいかない、か。」
そもそも、この二人を同時に相手取ろうとするダイスケの方が異常である。
お互い本気も奥の手も出していないとはいえ、ここまで食い下がれたのは本人も驚いているくらいだった。
だが、突如ヴァーリがアザゼルとカテレアが戦っている方を見る。
「……あの口だけ女、大層な口をきいておきながらアザゼルに押されているな。まだ『蛇』は飲んではいないし、アザゼルの奥の手を出してはいないが……すまないアーロン、怪獣王を頼む。」
「任せろ。」
アーロンの受諾を聞いたヴァーリはすぐさま目的の方向へ飛翔する。
ダイスケはそれを追おうとするが、アーロンの存在がそれをさせない。
「折角、二人きりになれたんだ。俺の話を聞いてくれないか?」
「いきなり人の頭ぶん殴っておいてよく言うぜ……。」
口は反感丸出しだが、態度はそうではなかった。
それを察したアーロンはある提案を持ちかける。
「なあ、俺と一緒に来ないか?お前も感じているだろう。周囲の人間の自分を見る目が変わってきていることを。嫌悪とはいかないまでも、自分を避けているその視線を。」
それは事実だ。
いかに前評判の悪いダイスケといえど、今までと現在の周囲の変化に気づかないほど鈍感ではない。
実際、自分の所為でグレモリー眷属にも軽く距離を取られてはいるし、廊下ですれ違う女子も今までとは違っている。
これはアーロンも体験したことなのだろう。
それを今、ダイスケは現在進行形で味わっている。
「お前はまだ不完全とはいえ、確実に怪獣王の力に目覚めつつある。その途上である今でこの状態なんだ。他人のお前に対する姿勢はさらに酷くなる。怪獣達は力と恐怖の象徴。いずれ周りの力無き人間たちもお前に無意識の恐れを感じて忌諱するだろう。ならいっそのこと、そんな他人共なんぞ捨ててしまえ!同胞と共にあることこそ、お前にとっての真の幸福のはずだ!!」
ダイスケにとって、アーロンの誘いは嬉しかった。
周囲は徐々に自分との裂け目が出来つつある。その自分に居場所をくれるというのだ。
そしてアーロンの真剣な表情から、この申し出は損得勘定抜きで出されたものなのだということもわかった。
その心の動きを読み取ったアーロンは追撃をかける。
「ここにはいないが、既に何人かの同胞は集っている。皆、実力者ぞろいだが、そこにお前ほどの者が加われば心強い。もう一度言う。……俺と一緒に来ないか?」
アーロンの右手がダイスケに差し出される。
短くも長い時間がダイスケの中を過ぎていく。
周囲の喧騒も思考から切り離され、多くの事象が脳内を駆け巡って一つの決断を下す。
「……お前の申し出は正直な話、本当に嬉しい。」
「そうか、なら―――」
「だが!」
アーロンは表情は一瞬、喜色に染まった。
しかし、それは束の間だった。
「お前は世界の毒となる組織に組みした!いかに最も効率で確実に仲間を見つける方法だといえど、お前のやり方は俺の身の回りにいる人たちや、なんの関係ない人たちに大きな危険を及ぼしかねない!!」
大音声、且つ怒声を持っての明確な拒絶表明だった。
だが、それを聞いてもなおアーロンは食い下がる。
「その他人達がお前自身を傷付けることになっても、か?」
「まだそうなるとは限らねぇし、そうなったとしても一人二人の例外だっているかもしれない。第一、これは自分自身も問題だ。俺自身が力を制御しきれるようになればいいだけだ。第一、俺とお前は違う。お前の結果と俺の結果だって違うんだ。……いや、そうしてみせる。」
「それは文字通りの茨の道だぞ?」
「そんな茨、俺の熱戦で焼き尽くしてやるよ。だからさっき言えなかった分、俺はここではっきりと言わせてもらう。俺は俺の大切なものを守り、何の関係のない人達を神話の災厄から守るためにこのゴジラの力を振るう!!!それを邪魔する奴は怪獣王の、破壊神の名にかけてブチのめす!!!!」
その一言を聞くと、アーロンは心底残念そうな表情をして俯く。
瞑目し、長い溜息を吐き終えたあと、アーロンの目には決意の炎が灯る。
そしていま一度、戦闘態勢をとった。
「解った。ならばお前は俺たちの最大の障害だ。全力を持って……お前を倒す。」
そう言うとアーロンはモーニングスターを一旦振って地面に乗せる。
すると地面に窪みが生じ、どこからか獣のような呻き声が響く。
キァァァアアアアウゥゥゥゥゥゥゥン!!!
「宝田大助、君ならわかるだろう。この鳴き声の主を。」
アーロンの言う通り、ダイスケにはその声の主である怪獣の正体が分かっていた。
「……アンギラス、だな。」
暴龍アンギラス。
ゴジラと同じく核実験によって目覚めた怪獣にして、確認される中でゴジラが初めて戦ったと言われる怪獣である。
実を言うとダイスケは盾に生えた無数の刺と、モーニングスターの槌の部分がアンギラスが丸まった姿に似ていたことから既に見当はついていた。
それでも明言を避けたのは確証がなかったからだが、これで予想が正しかったと証明されたのである。
だが、そこへアーロンが衝撃の事実を告げる。
「実は、お前に一つだけ言っていないことがある。以前、『怪獣神器が使えるかどうかはその怪獣に認められる必要がある』と言ったのを覚えているか?」
「ああ、『封印されていない怪獣相手でも怪獣自ら神器になるケースもある』とも言っていたな。つまり、お前がアンギラスに認められるほどの実力者だって事なんだろ。」
だが、アーロンはその言葉に首を横に振る。
「俺がこのアンギラスの力、“暴龍の鎚楯《アンギラス・クラッシャー&ガード》”を得たのは生まれつきだ。だが、俺はもう一匹の怪獣にも認められたんだ。」
その一言で、ダイスケのマスクの下の表情は驚きに染まる。
聞けば、神器は一人に一つ。
それは“システム”の下において不変のルールであるはずだ。
それをアーロンは逸脱したというのだろうか?
「実は怪獣神器は通常の神器と違って、一人の人間が複数の神器を所有できるという特徴があるんだ。まあ、俺の知っている限るでは俺ぐらいだが。」
ダイスケの「まさか」という不安は的中してしまった。
しかも、会談中にミカエルがそのことに言及していないことを考えると、天使の長にさえその情報を秘匿していたということである。
「俺は五年ほど前、九州の阿蘇に未確認の怪物を退治するために派遣されたことがある。その時に奴に認められたんだ。」
途端にアーロンの周囲に猛風が吹きすさぶ。
九州の阿蘇。
ここまで場所を特定されると、考えられるアーロンがもう一つ持つという怪獣の正体は一つしかない。
すると、アーロンの背中から巨大な翼が現れた。
「紹介しよう!俺のもうひとつの怪獣神器、“大翼竜の音速翼《ラドン・ソニックウイング》”だ!!!!」
はい、ということでひっさびさのまともな戦闘突入です。
こんな怪獣神器どうよ!!は引き続き募集中ですので、ご気軽にご感想の方へ書き込んでください。
それではまた次回!!いつになるかはわかりません!!