ハイスクールD×G   作:オンタイセウ

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お久しぶりでございます。
あれや、これやと悩みながら書いていたらこんなに空いてしまいました。


VS23  ダイスケ&アーロン(その3)

ハンス=ウルリッヒ・ルーデルという人物がいる。

第二次世界大戦の東部戦線において戦車一個師団分を一人で撃破したエースパイロットである。

彼がその勇名を馳せることとなった最大の要因が急降下爆撃である。

誰もが知る通り戦車の装甲は非常に厚く、通常の歩兵が持つ兵器を通さない頑強さを持つ。

第一次世界大戦でイギリスがMk-Ⅰを投入したときは、有効打を持たないドイツ兵は成すすべがなかった。

だが、その戦車にも最大の弱点がある。

対空戦闘能力の低さだ。

そもそも戦車の装甲が最も厚い箇所は前面の装甲であり、側面以上に上面の装甲はそれほど厚くはない。

その戦車の頭上に高高度からの運動エネルギーと位置エネルギー、そして投下する爆弾ないし銃弾の威力によって確実に戦車を破壊するのが『急降下爆撃』だ。

この戦術により、先に紹介した人物は人類戦史において類稀な戦績を残したのだ。

そもそも地上戦力というものは、航空機による上空からの攻撃にはめっぽう弱い。

高速で飛び回る航空機に反撃できない地上の兵士に対し、航空機から見れば地上にいる兵士や戦車はいい的だ。

これは航空機というものが戦場にデビューしてからずっと変わらない定理である。

ダイスケは現在、その事実をその身をもって痛感していた。

 

キシャオォウンゥウン!!!

 

その身に宿るラドンの鳴き声と同時に飛び立ったアーロンは、まさに音を超えるスピードによってダイスケに上空から襲いかかる。

超音速で迫るそれは、それ自体が強大な破壊力を持つ弾丸である。

であるにもかかわらず、さらにその手に持った“暴龍の鎚《アンギラス・クラッシャー》”による一撃が相まって生身の人間が受ければ即粉砕されるような一撃が何度も何度も直撃する。

『蝶のように舞い、蜂のように刺す』とはまさにこの事だ。

勿論、ダイスケも為されるがままではない。

時折反撃の熱弾を対空砲のごとく撃つが、なまじの威力を持った熱弾は“暴龍の楯《アンギラス・ガード》”によって防がれるし、威力のある熱線は“大翼竜の音速翼《ラドン・ソニックウイング》”の生物らしい見事な運動能力によって回避されてしまう。

さらに、撃ち終えた隙を狙ってアーロンはスツーカよろしく急降下し、すれ違いざまに強烈な一撃をお見舞いしていく。

既にこのルーチンを十回以上は繰り返しており、未だにそのループから抜け出す道を見つけられずにいる。

 

(クソッタレ……!地上戦力には航空支援が必要不可欠ってのはタイマンでも有効なのかよ!)

 

戦車運用の基本に対して毒づくダイスケだが、理論に対して毒を吐いても解決策は見つからない。

せめて、自分も空を飛べればいいのだが……。

 

「あ。」

 

そこでふとある事を思い出す。

そう、それは数分前にアザゼルから貰った「シフトX」とかいう某玩具メーカーに正面切って喧嘩を売っているかのようなあのアイテムのことである。

ミニカーに似たそれは、形状こそ元ネタに非常に近いが、全体がメタルシルバーに塗装されていることと名前にわざわざ《X》の文字が入っていることを考えると、ゴジラ関連で言えば「アレ」しかない。

 

「……こうなりゃヤケだ!!試してやらァ!!」

 

すぐさま懐にあったGアタッカーを展開して乗り込み、エンジンをフルスロットルにして走り出す。

 

「ほう……ああいうものを持っていたか。」

 

ダイスケの隠し球に上空から多少の興味を抱いたアーロンだったが、速度そのものは大翼竜の音速翼に遠く及ばない。

 

「怪獣王の悪足掻き、打ち砕かせてもらう!!」

 

アーロンは言うなりすぐさまダイスケを追いかける。

だが、それよりも早くダイスケはアザゼルに言われた通りにシフトXをセットする。

 

「メーター部分にあるレールにこれを乗せる……よし!!」

 

《エ・ッ・ク・ス・コウカーン!!!スーパーX!!!》

 

セットしたと同時に、クリス・ペ○ラーそっくりの声が響く。

 

「そんなとこ拘るなやァァァァァ!!!!!」

 

ダイスケの虚しい抗議と同時に、変化は起こった。

Gアタッカーが銀色の輝きに包まれたかと思えば、そこに巨大な炊飯器のようなものが走っていたのだ。

 

「……炊き出し用の自走式巨大炊飯器か?」

 

そのアーロンの呟きは鋭敏になったダイスケに耳に届いており、おもわず抗議してしまった。

 

「世界最強の炊飯器じゃ、ボケェェェェェェ!!!!!」

 

白銀の空飛ぶ要塞が火砲を轟かす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、駒王学園を舞台にした三大勢力の和平会談を狙ったテロ事件は混迷に混迷を極め、そしてその場にいた全員が我が目を疑った。

当事者たちはただでさえ混乱していた。

ギャスパーがイッセーの血を飲んで一時的に覚醒したとか、実はヴァーリが旧ルシファーの血統の人間と悪魔のハーフでアザゼル曰く歴代最強の白龍皇だとか、カテレアがオーフィスの力の分け身である“蛇”を飲み込んでパワーアップしたとかいろいろあった。

だが、その重大事実すら霞んでしまう怪現象が起きた。

銀色の巨大炊飯器が機関砲やらロケットやらレーザーやらを撃ちまくって、アーロンと空中戦をしているという怪現象を皆が目撃してしまったのだ。

 

「なに……あれ……。」

 

禁手化したイッセーの呟きは、その場にいた全員の心境の代弁である。

無論、その光景はアザゼル空中戦を繰り広げるカテレアの目にも止まる。

 

「な、な、な……!?」

 

その驚きようを見て大笑いしたのはアザゼルである。

 

「わはははは!!!上手いこといったみたいだな!!流石、“スーパーX”シリーズの一番機!弾幕の厚みがいい!!」

 

自身の子供と言ってもいい創作物の出来を見て、アザゼルはたいそう愉快であった。

 

「アザゼル!!貴方はこうも我らの邪魔を!!あまつさえ、あの怪獣王にあのような力を与えるとは……!!」

 

そのカテレアの目は信じられないものを見るような目と、怒りに染まった目が綯交ぜになったような視線である。

彼女からすれば、自分たちに最も脅威になりうる者がさらなる力を目の前の堕天使の長が与えてしまったのだ。彼に対して怒りを感じるのも無理はないだろう。

だが、当のアザゼルからすれば彼女こそ怒りの対象なのである。

 

「黙れ。相手がどんな者かも知ろうとせずに敵と見做して自分達のみが正しいと思い込み、果てはこの世界に生きる多くの者たちのことも考えずに支配だのなんだのを口にする輩に何も言われたくはない!!!!」

 

今、アザゼルの姿はイッセーにも見えている。

これまでイッセーが見たことのあるアザゼルの顔は常に悪戯好きな悪童のようなものであった。

だが、今のその顔はまさしく責任ある為政者の顔であった。

 

「なんだったらついでに見せてやるぜ。この俺の神器研究とダイスケの奴を観察して得たゴジラの情報をもって生まれたこの俺の最新の自信作をな……。悪いな、ファーブニル。今回、お前の出番はなさそうだ。」

 

言いながらアザゼルは懐から鉄とは違う、白銀のような輝きを放つダガーを取り出す。

 

「さあ、とくと見晒せ!!!コイツが俺が作った人口怪獣神器!!“白銀の機龍装《プラチナカラー・メカゴジラメイル》”のお披露目だ!!!」

 

ダガーが天高く突き上げられると、その刀身と同じ白銀の光がアザゼルを包む。

光の奔流はほんの数秒でおさまったが、その場には既に堕天使の姿を留めたアザゼルはいない。

その姿はまるで神器を展開させたダイスケによく似ていたが、いくつか異なる点があった。

白銀の装甲。

手の甲にある四本の円錐。

各所に配されたリベット。

黄金に輝く双眸。

肩に彫られた「MG」の文字。

 

《タイプ・バスター!!!!》

 

男性の声を模した電子音声が響く。

 

「まずはコイツを喰らいな、『フィンガー・ミサイル』!!!」

 

手の甲にある円錐物がカテレアめがけて、たて続けに飛んでいく。

当然それを避けようとするが、ミサイルはカテレアが回避したのを察知して軌道を変える。

 

「追尾式!?」

 

避けられないことを悟ったカテレアは、防御障壁を展開する。

だが、ミサイルは障壁を突き破って止まり―――

 

「ぶっ飛びな。」

 

大爆発。

その爆風でカテレアは吹き飛ばされるが、第二波が彼女を襲う。

 

「何度も同じ手を……!」

 

今度は先ほどと同じ状況に陥らぬよう、何重の防御障壁が張られる。

しかし、今度のミサイルは障壁を突き破っても爆発しない。

不発か、と思ったその時、同じ箇所を他のミサイルたちが集中して突き刺さっていく。

そしてついに何重もの防御壁を突き破ってカテレア本人に突き刺さる。

 

「カハッ……!」

 

悪魔の鮮血が飛散し、その口の端からも吐血が見える。

 

「これで終わりだと思うなよ!!『クロスアタックビーム』!!!」

 

胸部の装甲が開き、稲妻状の光線が放たれる。

 

「グァァァァァァアアアアア!!!!!」

 

高電圧のそれを受け、カテレアのその身は痙攣し、一瞬の間気絶してしまう。

それでも目の前の男に勝たなければならない、という矜持のためにすぐさま意識を取り戻す。

 

「おのれ、アザゼルゥゥゥゥゥゥウウウウウウ!!!!」

 

体勢を立て直そうとするが、そこへ再び放たれたミサイルが突き刺さる。

如何に自身を強化したといえど、埋めようのない圧倒的な力の差。

そのような相手を満身創痍の身で倒すには、もはや手段は一つ。

意を決したカテレアのその四肢に、呪術的な文様が浮かび上がる。

自爆用の術式である。

 

「こうなればせめて、貴様だけでも道連れにしてくれる!!!」

 

そして、その右腕は触手と化し、アザゼルを捉えようとまっしぐらに進んでいく。

 

「やれやれ。しつこい奴は、女も男も関係なく嫌われるぜ?」

 

キザな軽口を叩いた瞬間、黄金の双眸から虹色の光線が放たれる。

スペースビーム。

溶解光線とも呼ばれるそれは、メカゴジラの主力武器にして最強兵器である。

初めてゴジラとメカゴジラが対峙した時、ゴジラの熱戦とほぼ同等の威力を見せた虹色の光線が、迫り来るカテレアの触手を先端から焼き尽くしていく。

 

「そんな……!私は、正しき世界を……。」

 

光線の大元のエネルギー元はアザゼルの持つ“光”である。

そのため、自爆術式ごとカテレアは消滅していった。

それを見届けたかの如く、アザゼルの鎧は解除される。

 

「流石に未調整だとキツいか。しかし……。」

 

目の前にはカテレアだった細やかな塵が舞い、一瞥してアザゼルは毒づく。

 

「誰かの為だけの『正しき世界』か。……クソ喰らえだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラオラ、さっきのお返しじゃァァァァァ!!!!」

 

ところ変わって、巨大炊飯器もといスーパーXを駆るダイスケである。

先程までいいように嬲られていたお返しと言わんばかりにレーザーやらロケットやらバルカンやらを某細目の艦長もご満足な弾幕でアーロンを追いかける。

アーロン自身は必死で回避し続けているため、一向に被弾した様子はない。

だが、割をくらっているのは地上で戦っていた有象無象達だ。

ほとんどの流れ弾が地面に向かい、その地上で戦っていた者達が全てその巻き添えを食ってしまったのだ。

 

「なんで、僕までぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!??」

 

「殺される!!味方に殺される!!!」

 

無論、その中には地上で魔術師たちと戦っていた木場とゼノヴィアも含まれている。

こんなことなら、プール開きの時に無理にでもダイスケを誘うべきだった。

そう後悔してももう遅い。

いずれにしろ、後々もっと恐ろしい報復を受けるのだが……。

当のダイスケはそんな他人のことなど露知らず、一方的に攻撃しまくっていたのだが。

 

「は?なにこれ。『EMPTY』?弾切れかよ、おい!!!」

 

メーターの部分に空中投影された文字を見て、ダイスケはモノに対して起こりそうになるが、そうする前に強制的にスーパーXの装甲とGアタッカーの変形が強制解除されてしまう。

 

「なッ!?あの不良中年、強制解除とか巫山戯るなよ!!!!」

 

当然の如く、今ダイスケがいるのは空中である。

このままでは地面落下し、死にはしないまでもダメージを受けて犬○家状態になることは明白。

しかも時間がない。刹那の判断での危機回避が必要となるが、それはほとんど無理な相談である。

だが、ダイスケはこの場の誰よりもゴジラについて知り尽くしている。

一般人なら誰でも思うだろう。

「いくらゴジラでも、流石に空は飛べないでしょ。」と。

だが、流石は怪獣王。空を飛んだ実績があるのだ。

 

「イチかバチか……今だ!!!」

 

両手を地面に向けて、熱戦を発射。

それがロケットブースターのように働いてダイスケの体を中に浮かす。

これはゴジラがヘドラと戦った時、逃走するヘドラを追撃するためにとった手段である。

本来なら空を飛ぶ手段として最初に思いついて如かるべしだが、如何せんたまたまアザゼルにシフトXを渡されていたので思い至らなかったのである。

一旦滞空したあと、下方へと熱線の威力を上げながら下降。

位置エネルギーと運動エネルギーの変換により、相応の加速を得た後にアーロンを追う。

 

「疾い……!」

 

落下速度に加えて高威力の熱戦の反動を利用した飛行法に驚くアーロン。

等身大のゴジラの熱線の威力を人間が用いているので劇中以上の速度を得ている。

飛行を専売特許とするラドンの能力にも匹敵する速度を人の身に宿ることで獲得したのだ。

下方から急襲する形となってアーロンに襲い掛かる。

突き出される拳を盾で防ぎ、いなしながら槌で顔面を叩き割りにかかるが、自分の顔面に熱戦をゼロ距離で打たれて避けることに専念せざる負えなくなる。

 

「よくやる!!」

 

感心しながらも脇腹にアーロンは蹴りを入れる。

が、そのお返しにダイスケは空いた左手でアーロンの腹に一撃を入れる。

お互いの一撃が決まり、距離を取り合う結果になる。

 

「……なるほど、空を飛べることは俺にとってのアドバンテージではなくなったということか。」

 

滞空するダイスケに向かい合うアーロンが口からそう漏らす。

絶対有利のフィールドであったはずの空中から、諦めてアーロンは地上に降り、ダイスケもVTOL機のように着陸する。

なまじ空中戦を展開するより、事ここに及んでは踏ん張りの効く地上で戦ったほうがいいと双方とも判断したのだ。

周囲には浮塵子のように集っていた魔術師達はダイスケの乱射で一掃された。

おまけに木場とゼノヴィアは巻き込まれて死屍累々の中。

横をチラッと見れば、イッセーの右腕が何故か白くなっていてヴァーリを「おっぱいが半分で云々」といいながら殴っていたが、そんなことはどうでもいい。

お互い構え直し、長い沈黙が二人の間の狭い空間を支配する。

少しづつにじり寄り、隙を伺い合う。

傍から見れば、さながら宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘を見ているようである。

互いに限界が近づき、いざ飛びかからんとしたその時。

 

「アーロン、頃合だ。引くぞ。」

 

いつの間にかアーロンの背後にイッセーと戦っていたはずのヴァーリがいた。

 

「盛り上がってるとこ悪ぃが、カテレアがしくじっちまった以上、長居は無用だ。赤龍帝の奴も限界みてぇだし、さっさとずらかろうぜぃ。」

 

そして突如として現れた謎の男。よく見れば周囲に濃い闇が漂っている。

 

「……名残惜しいがわかったよ。引こう、ヴァーリ、美猴。」

 

美猴。

ダイスケはその呼び名に心当たりがある。

西遊記の孫悟空。彼はいくつかの名があるが、花果山の王であるときに名乗った名が『美猴王』である。

それに手にした棍と頭に嵌められた金の輪を見る限り、導き出される答えは一つ。

 

「闘戦勝仏の孫悟空か!?」

 

「おう、オレッチのことが分かるのかい。だが、俺は西遊記の孫悟空、斉天大聖の子孫の美猴ってんだ。よろしくな、怪獣王。」

 

カラカラと笑いながら気さくに答える美猴。

この男とヴァーリの介入、そしてアーロン自身が闘争心を収めてしまったので結局お流れになってしまった。

第一、このように気さくに話しかけられてはこちらの戦意が嫌でも削がれてしまう。

 

「今回はこれで引かせてもらうが、俺はお前のことを完全に諦めたわけじゃない。……また会おう、宝田大助。」

 

その言葉とともに、三人が覆い尽くす闇の中へ消えてゆく。

ダイスケとしてはその闇がどのようなものであるかわからない以上迂闊に手は出せないし、イッセー達が無事かどうかも気がかりだ。そのまま見送る。

だが、もっと気がかりなことが一つ。

 

「『完全に諦めたわけじゃない』って……あいつホモの気があるんじゃねぇのか?」

 

ただ、その一点が心配だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西暦20XX年七月某日。

ミカエル、アザゼル、サーゼクス・ルシファーの三名の三大勢力各代表により、和平協定が結ばれる。

以降、天使、堕天使、悪魔間での抗争は禁止事項とされ、協調体制が結ばれることとなった。

因みに、本協定は会談場所となった駒王学園から名をとって『駒王協定』と呼称されることが決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とまあ、そんなこんなで今日から俺がこのオカルト研究部の顧問となった。気軽にアザゼル先生と呼べ。総督、とか閣下でもいいぞ。」

 

『いや、その「そんなこんな」を詳しく説明して欲しいんですけど。』

 

オカ研メンバー全員がハモる。

アザゼルは一言であっさりと済まそうとしていたが、実際には一言では済まないほどの多くの出来事があった。

まず、イッセーはあることをミカエルに頼んだ。

アーシアとゼノヴィアが神に祈る時に、ダメージを負わないように頼んでいた。

もともと敬虔な信徒であった二人は、普段から何かあるたびに祈る癖がある。そのせいで日常的に頭にダメージを負っているのだ。

ダイスケは傍から見ている分笑えるのだが、当の本人たちからすれば大問題である。

そのことに関して、イッセーは普段からアーシアと生活している分心配していたのだろう。この事をなんとかできないものかとミカエルに相談したのだった。

するとミカエルは二人に「神が不在だと知った今でも、祈る気持ちは変わらないか?」と聞いた。

無論、二人の答えは是である。それを受けて世界を管理する“システム”の一部を少々弄って解決してくれることを約束してくれた。

このことに関して一番感心したのがダイスケである。

普通であれば「祈らないように気をつけろよ」というだけで済まそうものだが、よくぞイッセーはミカエルに直談判したものだなと心密かに感心したのだ。

次にあったのが事後処理だ。これが一番大事である。

突如として現れたテログループ“禍の団”に関する情報収集に各方面への警戒の要請。

それに呼応した各神話勢力への協力の要請と同盟の締結への始動。

そして、各地に潜んでいるであろう怪獣と、怪獣神器保有者の探索である。

ただ、ただでさえ人目につかない秘境に潜んでいるであろう怪獣の探索は非常に困難である。

故に、これに関しても各神話勢力の協調が採られることとなった。

さらに、木場たっての願いにより、聖剣に関する非人道的な実験も今後決して行わないことも確約された。

恐らく世の中少しはマシになるようになってきた、ということだろうか。

 

「まあ、禍の団なんて連中が出てくるような世の中だ。これでようやく釣り合いが取れたってことだろうさ。」

 

ダイスケの心中を察したかのようなアザゼルの一言である。

確かに一つの勢力の内輪がうまくいくようになったくらいで世の中そうそう良い方向にはいかないだろう。

だが、世の中の膿がある程度一箇所に集まる状況になっているのは確かだ。

この膿をなんとかすれば少しはより良い世の中にはなるだろう。

 

「俺がこの学園に滞在する最大の理由は、この学園にいる未成熟な神器保有者を正しく成長させるとこだ。まあ、俺の神器マニア知識が世のため、人のためになるってことだ。」

 

「ってことは、最終的に俺はもう一度ヴァーリと戦うことに……?」

 

「その通りだイッセー。っていうか、お前らグレモリー眷属とダイスケが将来的な禍の団に対する抑止力になりうると各方面から期待されている。特にダイスケがこちら側にいるっていうのが大きいな。」

 

「えっ、俺の存在ってそんなに重要……?」

 

「あったりまえだろ。お前が味方ってだけで悪魔方の上層部が大喜びしてたんだから。」

 

全世界の神々相手に大暴れした者が自分たちの見方をしてくれると表明したのだ。

わかりやすく言えば某変身ヒーローの『四国安全都市宣言』である。

 

「だが、問題は連中の規模だ。ヴァーリが自分のチームを持っているっていうのは間違いない。解っているのはヴァーリ、美猴、アーロンと数名。その中には怪獣神器持ちもいるらしいのも確かだ。」

 

「じゃあ、ヴァーリ達はまたここへ攻め込んで来るってこと?」

 

リアスの問いに、アザゼルは首を横に振る。

 

「いや、三大勢力のトップを一度に討つ集まる絶好の機会を逃した以上、ここにはもう用はないさ。奴らの当面の相手は天界と冥界だ。まあ、冥界は悪魔と堕天使が手を組んでるし、天界には天使たちだけじゃなく居候している神獣たちもいる。赤と白の雌雄を決するのはまだまだ先さ。」

 

「戦争状態ってことね……。」

 

「いや、まだ小競り合いの規模だ。まだその準備期間だ。まあ、お前ら全員が大学部を卒業する時分でもなければ本格的な抗争は起きないさ。学生生活を満喫できる時間はあるさ、安心しな。」

 

「そうっすか……。」

 

「まあ、イッセーよ。お前は頭が足りないんだから、深く考えるな。お前の敵はあくまで白龍皇ヴァーリだ。それを忘れなきゃ十分だ。だがダイスケ、お前は違うぞ。どこのどんなやつがお前の敵になるかわからないんだからな。まあ、白昼堂々と怪獣王を奇襲しようっていうバカはいないだろうけどさ。」

 

そもそも、ライバル候補は山ほどいるゴジラである。

イッセー以上の警戒と鍛錬が必要になるだろう。まあ、最低限のセキュリティーぐらいはかけてくれるだろうが……。

 

「それとだ、イッセー。今回勝てたのはヴァーリが油断してくれてたのと、アスカロンがあったおかげだ。それと、取り込んだ白龍皇の力も鍛錬しなけりゃ使えんぞ。それからスタミナもだ。これはグレモリー眷属全員に言えることだからな。あのヴァーリだって禁手を一ヶ月は持たせられるんだからな。」

 

『いや、全く返す言葉もございません……。』

 

よくよく考えれば今回は眷属の半分が役立たずとなる結果に終わっている。

戦ったもう半分の内、またもに戦えたのはダイスケだけで、一人は敵の油断のおかげで勝ち、二名は味方の攻撃に巻き込まれてグロッキー、あまつさえ一名は自身の能力を使いこなせていない所為で足でまといにまでなってしまった。

 

「まあ、現状は酷いにしても、それを正すために来たんだ。大船に乗ったつもりでいろ。そのためには自分の力がどのようなものなのか知り、受け入れることから始まるわけだが―――」

 

言いながらアザゼルの視線は朱乃へ向かう。

 

「まだ俺たち堕天使が……いや、バラキエルの奴が憎いか?」

 

「許すつもりはありません。母はあの男のせいで殺されたのですから。」

 

「……まあ、いまはそれでいいだろうさ。」

 

暗い表情の朱乃と事情を知る故に深く追求できないアザゼル。

さらに、何らかの理由で事情を知っているらしいイッセー。

まさかここで「何かあったんスか?」と聞くわけにも行かないダイスケはまあ、あとでイッセーに聞けばいいやと思うが、この気まずい空気はなんとかしなければならない。

何かいい手はないものか、と少々考えこむうち、あることを思いつく。

 

「そういえばさ、この前メールでプールの件で礼しろっていっただろ?それ、何してもらうか思いついた。」

 

え?となる全員。

そういえば、と思い出している。

確かに数日前、ダイスケは件の内容のメールを送っている。

 

「この前は俺だけいなかったからさ、俺がメインでみんなに俺の手料理をお見m……振舞おうと思ってるのよ。あ、勿論材料費はそっち持ちね。」

 

「それくらいなら負担できるけど……それでいいの?」

 

「ええ、もう。部長たちにそれぐらいのことをしてもらえればそれでいいですよ。」

 

少々顔が明るくなる女性陣+二名だが、イッセーただ一人が青ざめた顔をしている。

 

「お、お前、まさかアレをやるつもりなのか……?」

 

小声で耳打ちして聞くイッセーだが、ダイスケは明るい表情で「命が惜しければ黙っていろ」という顔をする。

 

「おいおい、なんか面白そうだな。それって俺も参加していいのか?」

 

「OK,OK。歓迎しますよ。」

 

これにてアザゼルも参加が決定。

後々、これが悲劇の始まりになるとは気づかずに……。

 




                   予告編


               (BGMギャ○ス逃げ去る)

               「いらっしゃいまほ。」

        「俺だって、やりたくてやってるわけじゃねぇんだよ……。」

               「おい、吐いたぞ!!!」

           「なんでこんな目に遭わなきゃならないのよ!?」

              「お見舞いしてやったよ!!!」

             「ゲホッゲホッゲホッゲホッ!!!!」

               「朱乃さん、むせた!!!」

                 「あの……涙が。」

              「おい、それ入れるのか!!??」

           「じゃあ、なんでお前そんなに赤いんだよ。」


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