ハイスクールD×G   作:オンタイセウ

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すいません、前回より時間が掛かってしまいました。
それと、お気に入り登録をしてくださった皆様、ありがとうございます!!
なるべく途切れないようゆっくり更新していきますので、何卒よろしくお願いいたします。
感想の方も待ってます!!

P.S.最近、作業用のBGMにパシフィック・リムの音楽聴いてます。ロケットパァァァンチ!!!
いやぁ、捗る捗る。


VS3  リアス・グレモリー

 

 

「おい、イッセー……。今朝の同伴登校は一体どういうことだゴラァ!!」

 

「これは……夢だ。よりにもよってイッセーがリアス先輩とくっつくなんて……。」

 

駒王学園一のエロバカ、兵藤一誠と学園みんなの憧れ二大お姉さまの一角、リアス・グレモリーの同伴登校は学園中に衝撃を与えた。

ある者は憤慨し、またある者は絶望し、またある者はこれは夢だと現実逃避をし、またある者は血涙を流す。

スクールカーストの最上位にいる者と、最底辺にいる者の恋愛疑惑。ここまでの異常事態の発生を誰が予見できたであろうか。

無論、松田・元浜両名も騒いでいる者たちと同じ心理状態にあった。松田に至ってはイッセーと出会って早々に延髄蹴りを食らわせていた程である。

 

「貴様ァァァ、モテない同盟の一員ではなかったのか!!」

 

同士の裏切り。これほどに人の心を傷つけるものはそうそうないだろう。松田の弾劾を責められる者はいないはずだ。

 

「まあ待て、とりあえず状況を確認したい。昨日、俺たちと別れてから何があったァァァ!!!事と次第によっては制裁もありうるぞォォォ!!!」

 

先ほどのダウナー状態から回復し、イッセーへ詰問する元浜。その声には多少ならぬ怒気が含まれる。

 

「松田、元浜……。」

 

「「あん、なんだぁ?」」

 

「……ナマ乳、見たことあるか?」

 

その瞬間、松田と元浜は凍りついた。

衝撃的。まったくもって衝撃的。

二人にとっては未だ到達したこと事ない秘境。

男がその秘境に到達するには金を払う払わないの違いはあれど、“そういう関係”にならなければ決してただり付くことは叶わない。

同じ穴の狢であったはずのイッセーが、そこへ到達したと言わんばかりの余裕と達成感を込めて先ほどの言葉をはなったのだ。

理解不能!理解不能!理解不能!

松田と元浜の脳内のCPUは演算能力を超えた情報により悲鳴を上げ、どこぞの戦闘民族の戦闘能力を測った計算機のように爆発と煙を上げる。

 

「おいィィィ……。」

 

突然、そう言ってイッセーの襟首を掴む者が現れる。

 

「だ、大助……。」

 

「ちょっと来い。」

 

言いながら、イッセーをフリーズしている松田と元浜から引き剥がし、人目のつかないところへと引きずっていく。

 

「だ、大助、昨日は助けてくれてありがとうな。」

 

「いや、今はそういうことはどうでもいいんだよ……。」

 

大助の言葉に静かな怒りを感じるイッセー。

これはアレだ。以前の女子逆説教事件の時とおんなじ雰囲気だ。

 

「俺ァよぉ、別に同伴登校のことはどうでもいいんだ。別にお前がどこの誰と付き合おうが構いはしない。その時は親友として祝福させてもらうよ。ただなぁ……。」

 

瞬間、宝田はイッセーの両肩を掴みかかる。

 

「さっきのナマ乳云々はどういう事だァァァァァ……。俺は昨日、お前が死にかけてグレモリー先輩に預けてから心配で心配でしょうがなかったんだぞォォォォォ……。お陰で一睡もできんかったわ。それをなんだ?さっきの話と今朝の状況から察するに、ナマ乳見たってのはグレモリー先輩のナマ乳を見たってことだよなぁ?人に心配かけさせといて、テメェはあのデカ乳を堪能だとォ?どうしてそうなったのか一から説明しろォォォォォ!!!!」

 

何故だろう。今のイッセーには宝田の背後に怒り狂う某怪獣王の姿が見えた。

 

「お、落ち着け。実は俺もよくわかってないんだよ。朝起きたらいきなり目の前にナマ乳があって、それがリアス先輩で、お互い裸で、それで悪魔とか訳わかんない話になって、リアス先輩の裸を堪能させてもらって、一緒に朝飯を食って今に至るんだよ。あ、言っとくけど、リアス先輩とはただ裸で抱き合って寝ていただけであって、本番行為とかはなかったんだからな!!」

 

本人処女だって言ってたし、と残念そうに付け加えるイッセーを見て、宝田はその言葉が真実であると直感でわかる。そもそもイッセーは馬鹿ではあっても、自分だけが助かろうとして嘘をつくような人間ではないと宝田は知っている。

 

「わかったよ。とりあえずはそういう事だって納得しておく。」

 

宝田はイッセーの両肩から手を離す。

 

「あ、そういえば、リアス先輩が事情を説明するから、使い送ってを呼ぶって言ってたぞ。」

 

「それは俺も聞いた。俺らに詳しい説明をしてくれるんだろうぜ。」

 

一体誰が現れるのか……。

期待とも不安ともいいようがない気持ちになる二人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

結局、使いらしい人物は現れていない。

込み入った話だろうから、各授業の休み時間に呼び出しはないはず。だから昼休みに現れるのではないかと予想を立てたふたりだったが、その時間にも現れなかった。

 

「結局来なかったな、誰も。」

 

「訳のわからないままこのお話はお仕舞いかぁ?」

 

二人が嘆息をついたその時、教室内が女子の黄色い歓声で包まれる。

 

「キャアアア!!木場君よォォォ!!!」

 

「なんで木場君がこんな所に!?」

 

学園一のイケメン王子、木場祐斗が現れた。あいも変わらず爽やかオーラを振りまいていやがる。

 

「「ケッ、イケメン王子様か……。死ね。できるだけ苦しい死に方で死ね。」」

 

イッセーと宝田が見事に一言一句違う事無くハモる。宇宙世紀の人類の革新並にお互いの心が重なった瞬間だった。

 

「ごめん、ちょっとお邪魔してもいいかな?」

 

「お邪魔だなんてそんな!!」

 

「どうぞどうぞ!」

 

「汚いところですけど、どうぞ!」

 

自分の教室が汚いところってどういう事だ、と宝田が考えていると、かのイケメン王子様は自分たちの目の前にやってきた。

 

「やあ、どうも。」

 

「何の用だよ、イケメン王子。」

 

「ここはお前のようなイケメン様がくる所じゃあねぇぞ、ゴラァ。」

 

爽やか木場くんに対して、不貞腐れるイッセーと何故か喧嘩腰な宝田。この二人にとってみればモテる男は敵。決して相容れない存在だ。自然と敵意むき出しになるのは……まあ、仕方ないのだろう。二人にしたら。

 

「……なんでそんなに敵意を持たれるのか解らないけど、僕はリアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ。」

 

「「え……じゃあお前が!?」」

 

あまりにも意外すぎる人物が、あのリアス・グレモリーの関係者。

一生縁のないであろう人物が自分から関わってきたのだから、二人はたいそう驚いた。

 

「じゃ、僕についてきて。案内するよ。」

 

「「お、おう。」」

 

おとなしく木場についていく二人。

 

「そんな!木場君がエロ兵藤と外道宝田と一緒だなんて!」

 

「最悪のカップリングよォォォォォ!!」

 

「いや、王子様とヤクザのカップリングだと思えば案外いけるかも……。」

 

女子たちが掛け算の話をしていやがるのを横目で見て、イッセーと宝田は心底ゲンナリする。

 

「クソッ、勝手なこといいやがって……。」

 

「腐っていやがる……バカすぎたんだ。」

 

行く先々で女子共が好き勝手なことを抜かす。好奇の視線を耐え抜き、辿り着いたのは旧校舎だった。

 

「さあ、入って。ここが僕らの“オカルト研究部”の部室だよ。」

 

木場の誘導のまま、案内された部室とやらに入る。

すぐに目についたのは、室内の異様さだった。

まず、暗い。電気ぐらいつけろよ、と言いたくなるくらいの暗さ。灯りは燭台の蝋燭の炎ぐらいだ。窓もカーテンで閉じられている。

次に不気味な絵が多い。特に悪魔をテーマにした絵画が多い。無論、なかにはまともな絵もあるが部屋の雰囲気のせいで浮いてしまっている。

それ以外は、ロココ調の調度品や家具があってそこは優美さを感じるのだが、いかんせん先の特徴と相まって不気味な雰囲気を醸し出している。

そしてソファーに白髪の小柄な少女が座り、羊羹を食べていた。

 

「こ、この子は!!」

 

「知っているのか雷でn!……イッセー。」

 

「一年の塔城小猫さんだよ、兵藤君、宝田君」

 

木場の紹介に反応して、塔城というらしい少女が二人に顔を向ける。

 

「「あ、どうも。」」

 

「……。」

 

二人の挨拶を無視し、再び羊羹をかじりだす。

 

(……印象悪いな、こいつ。)

 

(いやぁ、まさか人気ロリっ子の塔城小猫ちゃんがいるとは!なんと嬉しいハプニング!)

 

そしてまったく真逆の印象を持った二人。

すると、白いカーテンの向こう側からシャワーの音が聞こえてくる。

部室にシャワー?と訝しむとイッセーはあることに気づいた。カーテンに映った人影である。

 

(ま、間違いない!あのボディーラインは!!)

 

「部長、お召し物です。」

 

「ありがとう、朱乃。」

 

聞いたことのない声と先日聞いたばかりの声。間違いない、シャワーをしているのは……

 

「あのカーテンの向こうでリアス先輩がシャワーをしているというのか!!!」

 

驚きと歓喜の声を上げるイッセー。今朝見た彼女の裸体フィードバックし、カーテンの向こう側の景色を妄想する。そして思いっきり鼻の下を伸ばす。

 

「……いやらしい顔。」

 

ボソリ、と小猫はつぶやく。

その小さな嫌悪の声にイッセーは驚くが、宝田は同意せざる負えなかった。

 

「なんなんだよ、そのジト目は。」

 

「……いや、別に。」

 

親友ながらこの男のスケベ根性には恐れ入る。昨日の件といい、自分の人生が左右されるかもしれない話があるかもしれないという時にこんなスケベ顔を晒せるのだから。

宝田がそう思っていると、一人の黒髪ポニーテールの少女がいるのに気づく。

 

「あらあら、あなたたちが新しい部員さんですね。お話は伺っていますわ。お二人のお名前も。」

 

「え、まあ、はい。」

 

「部員?なんの事ですか。」

 

なんとなく返事してしまうイッセーとなんの事だかさっぱりわからない宝田。

 

「あら、まだなにも聞いていないのですね。まあ、そこは部長に任せるとして……私は三年の姫島朱乃と申します。以後、何卒よろしくお願いいたします。」

 

「「いえ、こちらこそ。」」

 

この人物の名前は、宝田も駒王学園の二大お姉さまの一角として聞いたことがあった。

つまり、このオカルト研究部には四人の学園の有名人が揃っていることになる。

そしてもう一人……。

 

「お待たせ。」

 

部長、リアス・グレモリーの登場だ。

 

「いや、人呼び出しといて、自分はシャワーってどういう事なんですか先輩。」

 

「ごめんなさいね宝田君、イッセーの家に泊まったままだったから。」

 

「いえ、気にしていませんから!な、大助!」

 

「いや、普通気にするだろ……。」

 

「とりあえず、これで全員揃ったわけね。ようこそ、オカルト研究部へ。私たちはあなたたちを歓迎するわ。」

 

全員が席についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は、このオカルト研究部は仮の姿、隠れ蓑なの。まぁ、私の趣味みたいなものね。」

 

リアス・グレモリーが切り出した。

 

「じゃあ、本当の姿ってなんなんですか?」

 

イッセーの疑問は正しい。仮の姿があるものには必ず本当の姿があるからだ。

 

「単刀直入に言うと、私たちは“悪魔”よ。そして昨日の黒い翼の男は“堕天使”。」

 

え、とイッセーの息が詰まる。それもそうだ。“悪魔”も“堕天使”も空想の存在。それをさも「当然に実在するモノ」として語るとは頭がいかれているか、所謂厨二病のどちらかだ。

 

「あ、あれ堕天使だったんですか。てっきり海外かぶれの天狗かと思いましたよ。」

 

「し、信じるのかよ、大助!」

 

イッセーにすれば衝撃だった。確かに宝田は特撮、アニメ、SFにファンタジーが好きなのは知っている。だが、だからこそ、それらと現実にはっきりと線引きできているのも知っている。その宝田があっさり信じてしまったのだ。

 

「だって、現にお前は襲われただろ?しかも死にかけたんだ。自分の目で見ちまったら、信じる以外にないじゃないか。それに、俺の右腕の事もあるしな。」

 

そう、昨日の出来事はイッセーだけが体験した夢物語ではない。その場には確かに宝田もいたのだ。これは昨日の出来事が事実であることを裏付ける。

 

「現実だって……認めざるおえない、ってことか。」

 

「理解が早くて助かるわ。堕天使は神に仕える身でありながら、邪な心を抱いてしまった為に堕ちたモノたち。彼らと私たち悪魔は冥界、即ち地獄の覇権を巡って争っているの。そこに神に仕える天使達も加わって、三竦みの状態にあるわけ。あ、もちろん、日本神話等のほかの神話大系も存在するわ。海外かぶれの天狗がいるかどうかは知らないけれど。」

 

「ラッパーを目指していた河童は知り合いにいますけどね。」

 

ボソリ、と小猫が付け加える。

 

「で、でもいくらなんでも現実味がないというか……。」

 

それでも、とイッセーは食い下がる。

 

「あら、あなたは昨日の男以外の堕天使にも遭ってるのよ。」

 

「だ、誰にですか?」

 

「天野夕麻。忘れたわけじゃあないでしょう?デートまでしたんだから。」

 

イッセーは震える。皆が忘れ、自分だけが覚えていた少女の名。それをなぜこれまで関係のなかったリアス・グレモリーが知っているのか。

 

「あ、あの、そのことをどこで聞いたかは知りませんけど、オカルト云々で話されるのは困るっていうか、正直ムカつくんですけど……。」

 

「いや、それも事実だろう。天野夕麻は堕天使だ。」

 

「大助!?お前、忘れてたんじゃあ……。」

 

「すまん、実は俺も覚えていた。でも、あの場には松田と元浜も居た。ここは隠しておいた方が余計な混乱が起こらないと思っていたんだけど……余計にお前を混乱させるだけになってしまっていたみたいだな。本当にすまなかった。」

 

宝田が深く頭を下げる。

 

「……いいよ、謝らなくても。でも、どうして彼女が堕天使だってお前は思うんだ?」

 

「この前、人の視線とか気配とかに敏感になってきてるって言ってただろ。それと一緒に人の“匂い”の違いってやつに敏感になってきてるんだ。最初に彼女に会った時、自分の感覚の全てが『コイツは人間じゃあない』と感じたんだ。まさか堕天使だとは思わなかったけど。」

 

大助は続ける。

 

「でも、流石に相手の考えることまでは判らない。あの時は本当にイッセーに惚れたんだろうって思ったんだけど……こういうややこしい状況になってるってことは違うってことですよね、グレモリー先輩。」

 

「ええ、その通りよ。」

 

「じゃ、じゃあ携帯のアドレスが消えていたり、松田や元浜が夕麻ちゃんのことを覚えていなかったのは!?」

 

「それは彼女が事実を隠蔽するための力を使ったからよ。今朝、私があなたのご両親にしたようにね。」

 

その言葉でイッセーは今朝起きたことを思い出す。

けさ、イッセーはリアスと裸で抱き合って寝ていた。リアス曰く、体の傷を癒す為に魔力を送っていたとのこと。しかし、その時の一部始終を母親に見られた。

思春期における決定的シーンをすっ飛ばして、ストロベリーブロンドの外人美少女と不肖の息子のベットインを目撃したイッセーの母の混乱ぶりはすざまじかった。

そのことをリアスは「ただ添い寝をしていただけで、しかも最近の添い寝は裸で抱き合うのは当たり前」というとてつもない説明を、イッセーの両親にしたのである。

イッセーは、これで両親が納得するとは思えなかった。しかし、あっさりと二人は納得してしまったのだった。

 

「じゃあ、あの時俺の両親が納得したのって、その力を使って……。そして夕麻ちゃんも同じように。」

 

「でも、どうして天野夕麻はそれほどのことをやらなければならなかったんですか?俺には、その理由がわからないんです。そして……。」

 

言葉を続けるのを躊躇う宝田。しかし、意を決して続ける。

 

「天野夕麻とのデートがあった次の日から、イッセーが先輩たちと同じような匂いになっているっていう事も。」

 

「……え?」

 

イッセーの時が止まった。

この友人は何を言っているのだろうか。自分が知らぬ間に人外の存在になっているなど、有りうるはずがない。

 

「じょ、冗談よせよ。俺が人間じゃないって……いくらなんでもそれは笑えないジョークだぜ。ですよね、リアス先輩?」

 

話を振られるリアス。振ったイッセーは笑っているが、リアスは真面目な顔をしていた。

 

「……ちょうどいいわ。その事も含めて説明してあげる。」

 

イッセーは狼狽える。なぜだか、触れてはいけないナニカに触れるような気がして。

 

「彼女の目的は、イッセーの中に睡るモノ。それがどういうものなのかを調査するためよ。そして調査の結果、危険と判断されイッセーは……殺された。」

 

―死んでくれない?―

 

イッセーは思い出した。あの日、何があったかを。

デートの最後、公園の噴水広場で彼女は先の言葉を放った。

曰く、自分の身には大きな力があり、その有無を調べるべく近づいた。

曰く、その危険性を確認したので殺すことにした。

そしてイッセーは、昨日の黒翼の男と同じ黒い翼を生やした彼女に光の槍でその身を貫かれ、自分流れる血でリアスのストロベリーブロンドの髪を思い出しながら息絶えた。

 

「そうだ……俺、夕麻ちゃんに……。」

 

「どうやら自分で、殺された時の記憶を封じ込めていたみたいね。ショックが強すぎたせいかしら。」

 

恋人だと思っていた彼女に裏切られた。それも、目的は自分を殺すこと。

あまりのショックに、イッセーは項垂れる。

 

「……じゃあなんで俺、今ここにこうして生きているんです?」

 

「それはこれ、“悪魔の駒《イーヴィル・ピース》”のお陰よ。」

 

「チェスの駒っすか、それ?戦車《ルーク》の。」

 

宝田の言うとおり、リアスの手には赤いチェスの駒が握られている。

 

「あら意外、宝田君はチェス知ってるの?」

 

「まぁ、ルールくらいは。で、その駒がイッセーとどう関わるんです?」

 

「この駒はね、悪魔が眷属にしたい相手に使うモノなの。そして眷属になった物は悪魔として生まれ変わり……つまり“転生悪魔”となる。そしてそれは死んでしまったものも同様。ここにいる私以外のオカルト研究部のメンバーも皆、転生悪魔よ。みんな、証拠を見せてあげて。」

 

『はい、部長。』

 

するとメンバー全員が立ち上がる。すると皆、背中から蝙蝠のような羽が生えた。

 

「うっそ、マジで……って、うわ!!」

 

目の前で起きた事態に驚くイッセーの背中にも、同様の羽が生える。これでもう、疑う余地は無くなった。

 

「でも俺、いつの間に眷属になんて……。ってうか、リアス先輩ってあの場にいたんですか?」

 

「いいえ、あの場にはいなかったわ。でも、あなたはこの紙を持っていたでしょう?」

 

そう言って、リアスは机上に山積みにされた一枚の紙を見せる。その紙には魔法陣が描かれていた。

 

「あ、それは駅前で綺麗なお姉さんが配っていた……。」

 

「それ、私の使い魔よ。そしてこの紙は、悪魔に願いごとを叶えてもらうための召喚用の魔法陣。で、死の間際にあなたは私を呼び出し、私はあなたを下僕にしたってわけ。」

 

「つまり、イッセーは偶然に偶然が重なって助かったってことですか。いや、運いいなお前。」

 

「いや、殺されてる時点で運は良くないだろ……。」

 

なんとも奇跡的な巡り合わせ。不運であろうとなかろうと、友人の巡り合わせの良さには宝田も感心せずにはいられなかった。

 

「でもイッセーに特別な力がなければ、こんなにややこしい事態に巻き込まれることはなかったのか……。」

 

「そうなんだよな。でもその特別な力がなかったらリアス先輩ともお近づきになれなかった訳だから……これでイーブンなのか?」

 

「それでイーブンでいいのか、イッセー?……あ、そうだ。そもそも“特別な力”ってなんなんですか?殺される理由になるほどのものなんでしょう。そんなに凄いものなんですか、これ?」

 

そう言いながら、宝田は右腕に昨日と同じ黒いガントレットを出現させた。疑問を投げかける宝田に、朱乃とリアスが答える。

 

「それは“神器《セイグリット・ギア》”と呼ばれるものです。人間にしか発現しない特別な力で、歴史上に名を残した偉人の多くがこれを宿していたと言われていますわ。」

 

「そしてその中には、神をも滅ぼしうる力を有するものがあるの。堕天使たちもそれを恐れていた、というわけね。ちなみに祐斗も神器の保有者よ。」

 

リアスの紹介により、木場が歩み出る。

 

「僕の神器は“魔剣創造《ソード・バース》”。あらゆる属性の魔剣を生み出すことができるんだ。まあ、オリジナルには及ばないんだけどね。」

 

そう言って手にひと振りの剣を生み出す。なるほど、確かに魔剣というだけあって禍々しいオーラを纏っている。

 

「なるほど、相手の特性と弱点に合わせた攻撃ができるってことか。RPGに木場みたいなキャラがいたら便利なんだけどな。」

 

「それじゃあゲームバランスが狂っちゃうんじゃあないかな。まあ、宝田君の言うとおり、戦う時には便利な能力ではあるよ。」

 

そう言って、手にした剣を木場は消した。出現も消滅させるのも自由らしい。

 

「……で、俺のは何なんです?頑丈で、手から光弾を出すだけで、木場の神器みたいに使い勝手の良さそうなものじゃあないみたいですけど。」

 

宝田は詳しいであろうリアスに問う。

 

「そうね、形状からすると“龍の手《トゥワイス・クリティカル》”かしら。比較的ありふれた神器で、ドラゴンを封印したもの。能力は『使い手の力を一定時間の間倍加させる』よ。」

 

「でも部長、龍の手に黒い個体、それも青白い光弾を発射する能力なんてありましたっけ?」

 

「朱乃の言うとうりなのよねぇ……。冥界の研究機関に問い合わせても、堕天使側ほど研究が進んでいないから解らないかもしれないわね。」

 

「あの、こいつはそんなにイレギュラーなんですか?」

 

どうも釈然としないリアス達に宝田は問う。

 

「ええ、普通の神器はそれぞれ一つに一つの能力なの。能力が複数あるのは“神滅具《ロンギヌス》”とって極々稀少で13種しか存在しない上に、それぞれがどういうものなのかも分かっているわ。」

 

「なのに宝田君の神器は形状こそ龍の手ではあるものの、神滅具でないのに『使い手をパワーアップさせる』と『青白い光弾を放つ』という二種類の能力を備えているのです。私たちは神器のプロフェッショナルではありませんから、調べようもありませんわ。」

 

「色が黒いっていうのも判らない理由の一つなんだ。確認されている龍の手は殆どが赤、青、緑等のドラゴンらしい色合いで、黒い龍っていうのは大体が邪龍だからね。それに相応した神器になるはずなんだよ。」

 

「……要するに正体不明。」

 

リアス、朱乃、木場、小猫の言葉で宝田は不安になる。あの奇妙な冒険漫画の能力者たちですら自分の能力を把握しきれているのに、自分のは一体なんなんだろう。

この身に火の粉が降りかかる状況が起こるかもしれないのに、このザマで自分は生き残ることができるのだろうか?

 

「まあまあ、気を落とすなよ大助。そのうちわかるさ。まあその点俺は堕天使に直接命を狙われたくらいだから、強力な神器を持っているのは確実なんだけどな。だっはっはっはっは!!」

 

不安に落ちる悪友を傍目に余裕綽々のイッセー。あからさまに自信満々な上に状況証拠まで揃っているからなんとも腹立たしい。

 

「それじゃあ、イッセーの神器も見せてもらいましょうか。」

 

「はい、リアス先輩!いでよ……神器ァァァァァ!!」

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出てこない。

 

「……あり?」

 

「イッセー、自分の中で一番強いと思うものを想像しなさい。そうすれば出てくるはずよ。」

 

「はい、リアス先輩!ならばもう一度。いでよ……神器ァァァァァ!!」

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やっぱり出てこない。

 

「プッ!!お、お前、あれだけ自信満々で結局出ないとか……マジでダッセェ!!」

 

散々自信満々で神器を出そうとしていた先ほどのイッセーを思い出して笑い出す宝田。

 

「お、俺だってなぁ!!なんとか集中して出そうとしたよ!でも、机に座ったリアス先輩の太ももに意識が行ってダメだったんだよ!あんな素晴らしい太もも見せられて集中できるかってんだ!!」

 

「まあまあ、イッセー。神器の発現は人それぞれよ。悪魔の一生は長いの。気長にやりましょう?」

 

「うぅ……リアスせんぱぁい……。」

 

優しい主の言葉に思わず涙ぐむイッセー。心底この人の眷属になってよかったと思う。

 

「とりあえず、イッセーと宝田君の二人にはオカルト研究部に入って欲しいの。イッセーは眷属だし、宝田君には私たちに力を貸して欲しい。万が一、敵勢力にこの学校を襲われた時に生徒を守ってくれる人が一人でも多いと心強いの。ダメかしら、宝田君?」

 

「……他の勢力に取られたくないっていう悪魔的な思惑もあるんでしょうけど、俺もこの学校は好きですからね。できる限り協力させてもらいます。」

 

「ありがとう。それ相応の報酬は用意させてもらうわ。あ、あなたもオカルト研究部の一員になったのだから、イッセーみたいにダイスケって呼ばさせてもらうわね。」

 

部活の先輩になる人だ。それぐらいはいいだろうと宝田は思う。

 

「ご自由にどうぞ。」

 

「そう。それとイッセー。あなたには早速、悪魔としての仕事があるわ。」

 

「はい!なんでしょうか!!」

 

「これを各家庭に配ってきて欲しいの。今時、わざわざ魔法陣を描いて悪魔を召喚しようって人は少ないから。」

 

リアスは机上に山積みにされた例の魔法陣が描かれた紙の山を指さす。

 

「悪魔っていうのは、人間に召還されて依頼をこなし、その対価をもらうことで力をつけるの。あなたは今下僕、下級悪魔だけど、力をつけていけば私と同じ上級悪魔になって眷属を持つこともできるわ。」

 

「眷属……ってのはアレですか、今の俺みたいな下僕を作れるってことですか?」

 

「ええ。」

 

「下僕ってのはアレですよね、俺のいいなりに出来るってことですよね?」

 

「もちろんよ。」

 

「じゃあ、可愛い女の子ばかりの眷属にして、エッチな命令をさせることも……?」

 

「あなたの下僕ならいいんじゃあないかしら。」

 

「なん……だと……?」

 

始まった。いつものエロ兵藤モードが。

ときどき宝田は思う。こいつのエネルギー源は三大栄養素ではなくエロなのではいかと。

思えば、イッセーが駒王学園への進学を決めたのだって、彼女を作ってエロい事したいというのが動機だった。多分今も、「上級悪魔になれば可愛い女の子だけの眷属を作ってハーレムを作りたい!」思っているのだろう。偏差値的に無理と言われていた駒王学園の入試も、彼女がほしいという煩悩によって突破したのだ。この兵藤一誠なら、どのような困難が待っているとしても、上級悪魔を目指すのだろう。ハーレムの為に。

 

「部長!俺、やります!いつか上級悪魔になって、眷属でハーレム作ります!!でもまずはチラシ配りという第一歩から。イッセー、行きまーす!!」

 

机上にあったすべての紙束をもって、イッセーは部屋を出ていった。「がんばってねー。」というリアスの言葉を背中に受けて。

 

「しっかし、部長も人を働かせるのがうまいですね。流石は悪魔ってところですか。」

 

「あら、人聞きが悪いわねダイスケ。私は嘘は言っていないわ。それに……。」

 

「それに?」

 

「あれくらいの勢いと元気がなければ、私の眷属とは言えないわ。おバカな弟ができたって感じで楽しいし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

「うぃ~す……。」

 

「おい、イッセー昨日の元気はどうした?」

 

イッセーは憔悴しきっていた。昨日の勢いはどこへやら、落ち込んでいるようにも見えた。

 

「いや、昨日の夜さ、チラシを配り終わった後に早速依頼があってさ。」

 

「おお、よかったじゃあないか。」

 

宝田の言葉とは裏腹に、イッセーは首を横に振る。

 

「元々は小猫ちゃんの依頼だったんだけど、ダブルブッキングしててさ。それで俺が行くことになったんだけど……。」

 

「だけど?」

 

「転送用の魔法陣が俺の魔力不足のせいで動かなかった。チャリで行く羽目になった。依頼主にほんとに悪魔かって疑われた。アパートの玄関先で泣きそうになった。お茶ご馳走になった。いつの間にか『ドラグ・ソボール』の話題で盛り上がった。結局依頼果たせなかったイコール報酬ゼロ。」

 

淡々と述べるイッセーに、宝田は同情せずにはいられない。聞いていて朝からいたたまれない雰囲気になってきた。

 

「まあ、お客様の感想は良かったみたいでホッとしたけどさ、問題はその後に堕天使に襲われたって事なんだよなぁ。」

 

「はぁ!?堕天使に?用がなくなったから撤収したんじゃあないのかよ!?」

 

「もう、俺もびっくりでさ。なんとか神器が目覚めてくれて助かったんだけど、無茶するんじゃあないって部長に怒られちゃったよ……。」

 

あれ、絶対まだ怒ってるぜ、とイッセーは力なく呟く。せっかくの初仕事が大失敗に終わったのだから仕方がない。

 

「でも、神器の方は目覚めたんだろ?だったらこれからって事じゃあないか。あ、後でどんな神器なのか見せろよ。」

 

「うん……そうだよな。始まったばかりなんだもんな、俺のハーレム王への道は。」

 

「遠いな。」

 

「ああ、遠い。」

 

励ましてやったことで少しは元気になったろうか。そう思い、宝田がイッセーの顔を見ると、少し晴れやかな顔をしていた。

 

「あ、そういえば大助はあの後どうしたんだ?」

 

「そのまま帰った。眷属じゃないからチラシ配りはしなくていいってさ。」

 

「な!お前も手伝ってくれよ!なんならお前も眷属になってさ。」

 

「馬鹿言うな。お前の場合とは違うんだぞ。そんな、バイト感覚で人間やめてたまるか。」

 

「そんなこと言わずにさぁ~。」

 

そんな風にだべっていると、目の前で「キャ!」という可愛らしい悲鳴が聞こえた。

 

「おい、イッセー。」

 

「ああ!」

 

二人は声をした方向へ走り出す。すると、そこには道端で倒れている人がいた。ベールを被っているため、顔は判別できない。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「何かあったんですか!?」

 

「だ、大丈夫です。ちょっと転んでしまっただけですから……あ!」

 

不意に風が吹き、顔を覆っていたベールがめくれる。

そこにあったのは、美しい金髪のロングヘアーと蒼い瞳を持つ人形のように可愛らしい少女の顔だった。

 

「「……可愛い。」」

 

イッセーと宝田の心が、また一つになった一瞬だった。

 




主人公の神器の正体、一体何ゴジラなんだ……ってな感じで説明だらけのVS3でした。
因みにこの小説は表現の都合上、イッセー視点の部分が一部少ない仕様となっております。
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!
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