ハイスクールD×G   作:オンタイセウ

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どんどん投稿する間隔が長くなっております。



VS4 アーシア・アルジェント

「っと、散らばった荷物はこれで片付いたかな?」

 

「はい、ありがとうございます。見ず知らずの私にこんなに親切にして頂いて。」

 

「いやいや、これぐらい。なあ、大助。」

 

「そうそう、困ったときはお互い様ってね。」

 

イッセーと宝田は、謎の金髪少女が転んだ拍子にぶちまけたトランクの中身をかき集めていた。

困ったときはお互い様、などとカッコはつけているものの、結局はいいカッコしいのいい印象を与えたいというスケベ心満載の二人である。

 

「まあ、祖国で聞いたとおり、日本の方は本当に親切なのですね。」

 

「「いやぁ、それほどでも。アハハハ。」」

 

あまりにも純粋なその笑顔と言葉に、スケベ心を抱いていた二人も罪悪感を感じざるおえない。

 

「しかし、すごい荷物だな。旅行?」

 

宝田の言うとおり、彼女の荷物は非常に多い。旅行だとしてもかなり長い日数であろう。

 

「いいえ、私はこの街の教会に派遣されてきたんです。」

 

「……教会?」

 

イッセーの聞き間違いでなければ、彼女は間違いなく教会といった。イッセーは彼女の胸の辺りに奇妙な嫌悪感と合わせて、非常に嫌な予感を抱く。

 

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はアーシア・アルジェント。教会のシスターをやっております。日本で言うところの尼さん、と言えばわかりやすいですか?」

 

その一言で、イッセーの嫌な予感は見事に的中した。

よりにもよってこんなに純粋で可愛らしい少女が、自分の天敵である神や天使に使えるシスターだったとは。その彼女の胸元には十字架が燐く。

 

「あ、ああ、アーシアさんね。俺は兵藤一誠。よろしくな。」

 

「俺は宝田大助。イッセーと一緒の学校に通ってる。」

 

「ああ、それでお二人共同じ服をお召しになっているのですね。……日本の学校はみんなそれぞれに指定の制服があって、みんな同じ制服で授業を受けるんですよね。なんだか羨ましいです……。」

 

遠い目をするアーシア。純朴な彼女の憂いを込めたその瞳に、イッセーと宝田は何かを感じずにはいられない。

そう思っていた二人の耳に、子供の泣き声が聞こえる。その方角に目をやると、小さな男の子が転んでいた。

 

「……今日はよく人が転ぶ日だな。」

 

「軽い手当てぐらいはしてやろうぜ、イッセー。」

 

歩き出した二人の脇を小さな影が横切る。

アーシアだった。

 

「ほらほら、男の子がこのくらいで泣いてはいけませんよ。」

 

そう言って、アーシアは男の子の膝の傷口に手をかざす。すると、両手の中指に嵌められた指輪から淡い緑色の光が溢れる。

 

「おい、大助。あれは……。」

 

「神器……だな。」

 

みるみると塞がれていく傷口。泣いていた子供も、痛みが引いていくのを感じて泣き止む。

 

「はい、治りましたよ。」

 

ほんの数秒の間で完治に一週間はかかりそうな傷が治ってしまっていた。

 

「ありがとう、おねえちゃん!!」

 

礼を言って子供が笑顔で走り出す。アーシアも笑顔で手を振って応える。

 

「……びっくりさせてしまいましたね。」

 

少し後悔したかのような表情を見せるアーシア。本来であれば隠すべき力だったのだろう。しかし、自分の身可愛さに隠さず、泣いている子供のために力を使った彼女に驚異や嫌悪を抱く二人ではなかった。

 

「いや、すごい特技持ってるんだな。」

 

「純粋に自分の力をそういう風に他人のために使えるのはすごいと思うぜ、俺は。」

 

イッセーも宝田も、持つ力は戦い、破壊するだけのもの。他人のために力を振るえるアーシアが、いまのふたりには眩しく見える。

 

「ありがとうございます。でも、私はそんな大層な人間じゃあないんです。私はただ、主から与えられたこの力を誰かのために使うことができたらって……ただ、それだけなんです。」

 

アーシアの顔が少し、曇る。

場の空気が重くなったことを感じたイッセーは、雰囲気を変えるために別の話題を振る。

 

「ああ、そうだ!アーシアって、この町に来たばかりだよな。どこに行こうとしてたんだ?」

 

「あの、実は……赴任先の教会がどこにあるのかわからなくて迷ってたんです。この街の教会がどこにあるのか、教えていただけないでしょうか……?」

 

叱られた子犬のような目で懇願するアーシア。普段のイッセーなら美少女の頼みとあらば喜んで案内しただろう。

だが、行き先は教会。敵対勢力のアジトとも言っても良い場所。近づけばただでは済まないだろう。アーシアの頼みと自分の命。天秤にかけても答えは出ない。

 

「イッセー、お前確か今日は早く来いって先生に言われてるんだろ?俺が案内しておくから、お前は先に学校に行けよ。」

 

「え?あ、ああ、そうだったな。じゃあ、アーシアのこと頼むわ。」

 

宝田の考えに乗るイッセー。

長年の付き合いだからこその、言外の意思疎通。つまり、「悪魔であるお前は、彼女に関わらないほうがいい。」ということ。

 

「す、すいません。急いでいるところを邪魔してしまって。」

 

「いや、いいんだよ。じゃあ、またなアーシア。この街にいるんだったら、いつでも会えるさ。」

 

「はい、またいつかお会いいたしましょう。約束ですよ、イッセーさん。それじゃあダイスケさん、お願いします。」

 

「ああ、行こうか。」

 

宝田に導かれ、アーシアは行く。その背中を見て、イッセーは心の中で謝らずにはいられなかった。

 

(ごめん、アーシア。……約束、守れそうもない。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~……。」

 

放課後、イッセーはオカルト研究部の部室で今日配る分のチラシをまとめながらため息をつく。

 

「ふぉーふぃふぁいふぇー、ふぉまえふぁいひんふぁめいふぃふぁっふぁふぁふぉ。」

 

「食ってるパン呑み込んでから喋ろよ大助……。」

 

「ん……ゴクン。どうしたイッセー、お前最近ため息ばっかだぞ。」

 

イッセーの作業を手伝う宝田だが、菓子パンを食いながらというなんとも不真面目な格好で作業している。

 

「またリアス先輩に怒られちゃったんだよ、教会関係者には近づくなって。」

 

「ああ、道理で今日一日元気なかったわけだ。」

 

普段の学校生活の会話では、二人は悪魔関係の話は絶対にしないと決めている。だから放課後にしかこの手の話題は決して口にしていない。

 

「教会には神父や牧師、シスターの他にもエクソシストがいて、悪魔祓いをやってる奴らもいるんだってさ。そういう奴らに祓われたら悪魔は何も感じることもできずに消滅すんだって……。」

 

「ふーん。ていうか、あの子のこと部長に話したのか。」

 

「正直に話すしかないだろ。一応、敵対してる勢力の動きなんだから。あ、アーシアはちゃんと教会まで連れて行ってやったのか?」

 

「ああ、住宅地からちょっと離れたとこの教会だった。つーか、あそこはもう人はいないはずなんだけどな。ここで合ってるって言ってたから、別れたけど。」

 

キナ臭い何かを感じつつも、確証があるわけでもない。よって彼らには追求もできないのが痛かった。

 

「だけど俺、悪魔デビューしてからポカばっかでこのままいったら部長に見放されんじゃないかって心配なんだよ……。」

 

「今朝も言ってけど、お前はまだスタートラインに立ったばかりなんだ。このあといくらでも挽回できるさ。ほら、この菓子パン好きなスクールアイドルも言ってただろ?『ファイトだよっ♪』って。」

 

「ごめん、俺そのアニメ見てない。つーか、裏声きめぇ。ポーズをとるな。マジでやめろ。」

 

「ファイトだよっ♪」

 

「やめろ。しまいにゃ神器で殴るぞ。」

 

ハァ、と息をついて右手で顔を覆うイッセー。正直なところ不安だらけだ。このままでは本当に主に見捨てられるなんてことも……。

 

「気を落とさないでくださいな、イッセー君。部長はイッセー君に期待しているからこそ、厳しく接しているのですわ。」

 

「あ、朱乃さん!?いつの間に!?」

 

突然後ろから声を掛けられて、かけていたソファーから飛び退くイッセー。

 

「宝田くんがポーズを決めて「ファイトだよっ♪」と言っている辺りからですわ。」

 

「え、聞いてたんですか。」

 

「はい。」

 

いかにも「弱みを握ったぞ」と言わんばかりの黒い笑みを浮かべる朱乃。

 

「うっわ、俺もう立ち直れない……。」

 

「まあまあ、それこそ『ファイトだよっ♪』ですわ。」

 

「勘弁してください……。」

 

今度は宝田が落ち込む番だった。そこへリアスが扉を開けて入ってくる。

 

「あら朱乃、帰ったんじゃなかったの?……って、どうしてダイスケがこんなに落ち込んでるの?」

 

リアスの問いに、朱乃が笑顔で答える。

 

「それについては触れてあげないでくださいな。ところで……。」

 

その直後、朱乃の表情は一気に真剣なものへと変わる。

 

「アガレス大公から連絡がありました。この街に、“はぐれ”が紛れ込んだようです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“はぐれ”もね、元々は悪魔の下僕だったんだ。」

 

月が輝く夜空の下、木場の説明を聞く宝田とイッセー。彼らを含めたオカルト研究部の面々は今、住宅地のはずれにある大きな廃屋の手前にいた。

 

「今の俺みたいな?」

 

「下僕って言うほど働いてないけどな。」

 

にへら、と笑う宝田のその一言にむっとするイッセー。お前は俺を励ましてくれるのか、落ち込ませたいのかどっちなんだとでも言いたげな表情だ。その様子に木場も「あはは……。」と乾いた笑いをあげるしかない。

 

「でも中には脱走したり、主を殺して好き勝手に生きようとする輩もいる。それが“はぐれ悪魔”さ。」

 

木場の視線が廃屋に向く。貴族の住むような洋館といった佇まいの建物だが、心なしか邪な気配がする。

 

「例のはぐれさんはこの建物の中へ人間を夜な夜な誘き寄せ、食べているとの報告がありましたの。」

 

「あ、朱乃さん。その食べてるっていうの、マジなんですか?」

 

「大マジですわ、イッセー君。それを討伐するのが、今日のお仕事です。」

 

先鋒として木場が木製の扉を開く。

 

「主と自制心を持たず、勝手気ままに力を求めた悪魔がどれほど醜悪な結果を齎すか……兵藤君は確り見ておいたほうがいい。」

 

「お、おう。」

 

木場を先頭にして続くメンバー達は洋館のエントランスホールへと足を進める。

 

「イッセー、前に悪魔の駒の話をしたのを覚えているかしら。」

 

「はい。下僕にしたいものを悪魔に生まれ代えさせて、眷属にするってヤツですよね。」

 

「そう。でも、それだけじゃあないの。主の私を王《キング》として女王《クイーン》、騎士《ナイト》、戦車《ルーク》、兵士《ポーン》の特性を眷属に与え、その力を行使することができるの。爵位を持つ悪魔の特権だけどね。」

 

「駒の特性……なんでわざわざそんなことを?」

 

「兎に角、今日はイッセーとダイスケに悪魔の戦いというものがどういうものなのか「一時の方角、仰角35度。」……え?」

 

宝田の言葉に反応して、メンバー全員がその方向を見る。そこにはにギリシャ建築風の太い石柱があった。

 

「……宝田先輩の言う通りです。柱の後ろにいます。……なんで人間の先輩が先に見つけられるんですか。」

 

「塔城よりカンがいいから。」

 

その言葉に反応したのか、一人の女が踊り出た。上半身裸で。

 

「不味そうな臭いがするぞ?でも美味そうな臭いもする……甘いのかな?苦いのかな?」

 

「ぬおぅぉぅぉう、おっぷぁい!!」

 

裸の女が見れてよほど嬉しかったのであろう、イッセーが歓喜の声を上げる。それと同時に小猫が「変態……」と言いたげな目でイッセーを見る。

 

「はぐれ悪魔バイサー……主の下を逃げ、己の欲求を満たすためだけに暴れまわる不逞の輩。その罪は万死に値するわ。よって、グレモリー公爵家の名において、あなたを消し飛ばしてあげる!!」

 

ニタリ、とバイサーは嗤う。

 

「小賢しい小娘だこと……。貴女の身をその髪のように鮮血で染め上げてあげましょうかァァァ!?」

 

目の前のリアスの命を手折る事を前に、喜びよがるバイサー。

 

「これがはぐれ悪魔……ただの見せたがりのおねいさんにしか。デヘッ。」

 

もう、女の裸ならなんでもいいのだろう。事前にその所業を聞いているにも関わらず、バイサーに痴態にイッセーは思いっきり鼻の下を伸ばす。

 

「イッセー、よく見てみろ。上半身が見えているのはあんなに高いところにある光採りの窓の位置だ。あいつの上半身は見えているのに下半身はじゃあどうなっている?」

 

「宝田君、よく見えているね。兵藤君、さっき言っただろう?箍を外した悪魔は、その身も心も醜悪になるって……。」

 

え?と声を上げるイッセー。するとバイサーが、自ら歩み寄って来た。月の光に照らされ、バイサーの全身が見える。

その姿は上半身は女、下半身は巨大な獣のような脚を持った怪物だった。

 

「のわぁあぁあぁあ!完ッ全に化物ォォォォ!!」

 

「だから言ったろう?兵藤君。」

 

飛び退くイッセーと対照的に戦闘態勢を取る騎馬を先頭にした眷族とその主たち。が、それとは対照的に、宝田は一人バイサーの元へと歩み寄る。

 

「ほう、自ら食われに来たか?」

 

「ダイスケ、ダメッ!退きなさい!!」

 

悲痛な声を上げるリアスに、宝田は背中を向け人差し指を天に指す。

 

「バイサー、一つだ。一つ、聞いておきたいことがある。」

 

「自ら食われに来てくれた礼だ……答えてやろう。」

 

「お前が人間を喰らってきたのは、生きていくために仕方がなかったことなのか?人間を食わなければ生きていけなかったのか?」

 

フッ、とバイサーは鼻で嗤う。

 

「バカが、私が人間を喰らうのは肉が美味く、喰えば心地よいからだ!快楽を得る以外の理由なぞあるものかァァァ!!」

 

バイサーが、その巨大な足を宝田目がけて振り下ろす。

 

「いけない!」

 

木場が宝田を振り下ろされる足の攻撃圏外へと連れ出すべく、あらん限りのスピードで近づく。しかし、間に合わない。

 

「踏み潰してから喰らってくれる!!」

 

そのバイサーの言葉と共に起こる衝撃音と土煙。誰もが宝田が死んだと思った。

みるみるうちに土煙が晴れる。

 

「そうか、そうか……じゃあ、遠慮はいらねえェなァ……。」

 

宝田は立っていた。展開した右腕の神器で、かの巨大な足を持ち上げて。

 

「ウラァ!!」

 

圧倒的な体躯の差があるにもかかわらず、宝田はバイサーの巨大な体を片手で投げ飛ばす。

 

「ガァァァァァ!!!」

 

獣のような叫びを上げるバイサー。投げ飛ばされたその体は、2~3本の石柱を砕いてようやく止まる。

 

「人間はな、生きていくためには何かの命を奪って喰らうしか生きていくすべはない。だが、その命の重さを理解し、感謝を持って食べるんだ。そして自分の命にする。他の奴はどうかは知らないが、少なくとも俺はそうだ。」

 

ゆっくりと倒れるバイサーに歩み寄る宝田。見ればその左手にも、右手のものと左右対称なガントレットが現れている。

 

「それをお前はなんだ?『快楽のために人間を食い殺した』だぁ?……巫山戯るのも大概にしろよ。」

 

バイサーはおろか、リアスたちも怒れる宝田のその姿に圧倒され、身動きができない。

今、宝田を動かしているのは純粋な怒りだ。掟のために、身内の恥を雪ぐために動こうとするリアス達とは違い、彼は「同じ人間を殺された」という事実に対する報復のために動いている。

決定的な違いだった。

 

「おまえが殺した人間の家族は、きっと今でもその帰りを待っている。だが、それは叶わない。お前が殺したからだ……。」

 

宝田のその手が握り締められる。すると、両の手の甲からそれぞれ四本の鋭い爪が現れる。

 

「お前がやったことは、被害者にもわからないし、人間の法でも裁けない。なら……。」

 

鋭い爪を持った右手が、大きく振りかざされる。

 

「俺が裁く。」

 

鋭い一撃。

その一撃はバイサーの下半身を大きく抉る。

バイサーは呻こうとするが、続けざまに放たれた左手の一撃に妨げられる。

今度は巨大な前足が吹き飛ぶ。

吹き出る鮮血。飛び散る肉塊。

それらに構わず、宝田は殴り続ける。

バイサーの肉体でその原形をとどめているのは、もはや人の形を残した上半身だけだった。その顔も形容し難い苦痛に満ちた表情になっている。叫び声一つ上げるのもままならない。

 

「ダイスケ、もういい!!後の始末は私がするわ。」

 

リアスのその言葉に、宝田は振り上げていた拳を止める。

 

「あなたの気持ちはよくわかる。こいつを殺してやりたいっていうのも。でも、このはぐれの討伐は大公家から私に下された勅命なの。そこに人間のあなたが関わったとなれば大事になるわ。」

 

「貴族社会における不文律を人間の宝田君が破ったとなれば、それに関わる私たちもあなたを捕縛せざるを得ません。そうならない為にも、この始末は部長につけさせては戴けませんか?」

 

リアスと朱乃の言葉を受けて、宝田は展開していた神器をしまう。

 

「……わかりましたよ。」

 

バイサーから離れる宝田。それと入れ替わり、前に立つリアス。

 

「バイサー、言い残すことは?」

 

「早く……楽に……!!」

 

リアスの手のひらに黒いオーラを放つ球体が現れる。

 

「……滅びなさい。」

 

球体が放たれ、バイサーの肉体と存在はこの世から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日は休日だった。

宝田は近所の海の突堤に来ており、そこで釣り糸を垂らしている。

昨日、戦いながら教えてもらうはずだった駒の特性については部室で聞かされた。

木場がスピードを活かす“騎士《ナイト》”であること。

小猫が堅牢さとパワーを兼ね備える“戦車《ルーク》”であること。

朱乃がすべての駒の特性を兼ね備えた“女王《クイーン》”であること。

そしてイッセーが一番下っ端の“兵士《ポーン》”であること。

この事実を知ったとき、イッセーはかなり落ち込んでいた。一応、宝田は兵士も大切な駒なんだぞ、と言っておいたが、チラシ配りと悪魔の仕事に向かうイッセーの足取りは重かった。

だが、その後が大変だった。なにせ血まみれの服を持って体操着で家に帰ったのだから、たった一人の家族である祖父はたいそう驚いた。

 

「貴様!!喧嘩っ早い奴だとは思っていはいたが、とうとう人を殺したか!?」

 

これが第一声だった。

正直、軽くショックだった。

そのあと、「お前に宝田流戦闘術を教えたのは人を殺めるためのものではない!」とか「死んだバーさんも草葉の陰で泣いておるぞ!!」とか散々であった。ちなみに宝田流戦闘術とは、軍隊上がりの祖父が勝手に立ち上げた流派にもならない流派である。

そのあとなんやかんやで、人を殺してきたわけではないと理解してもらうのに三時間はかかった。

血濡れの制服の処理も大変だった。こびり着いた血が、洗っても洗っても落ちない。漂白はしたが、あれで取れるだろうか、と心配する宝田である。

一応リアスの実家がが学校の経営をしていることと、オカルト研究部の活動でこうなってしまったということで替えの制服を近いうちにもらうことになったので良しとするか。

だが、宝田にはまだ胸の奥でつっかえている“ナニカ”があった。

 

「おし、食った。」

 

リールを巻いて、サビキを回収する。

サビキには四匹のキスが掛かっていた。

 

「おう、兄ちゃん。やってるな。」

 

声をかけてきたのは、宝田が最近この釣り場で知りあった日本語の堪能な外国人の男。短くした黒い頭髪に、前髪だけの金髪が映えている。さらに、整えられた短い顎鬚がその男の奔放さというかチョイ悪加減を引き立てていた。

 

「あ、どうも。今日も兄さんは釣りっすか?」

 

「ああ、今はキスのシーズンだって釣具屋で聞いてさ。いてもたってもいられず。」

 

そう言って男は自分の竿を見せる。かなり値段の張る竿だ。そのほかのリールやライフジャケット等を見ても、この男がかなり裕福であることがわかる。以前聞いた話では、海外で株やら先物やらで儲けて会社の経営もやっているらしい。

 

「また、新品のロッドとリールっすか?しかもそれ、先週出たばっかりの新製品でしょ。」

 

「また買っちった。」

 

ニカッと男は笑うが、宝田にとっては正直憎たらしい。

いつも中古品をかなりの割引になるまで待って買う人間の宝田からすれば、信じられない行動だからだ。

 

「いつも言ってるでしょ。高い物買ったって、釣れるとは限らないって。」

 

針に青イソメをつけながら、宝田がぼやく。

 

「だってさ、金があり余っちゃてるんだもん。」

 

「へぇへぇ、そうやって日本の景気向上に貢献してくだせェ。」

 

そして二人は同時にキャスト。折りたたみの椅子に腰掛ける。

遠投したあと、徐々にサビキを巻いていくのがキスの釣り方だ。二人はゆっくりとリールを巻く。

 

「どうした、元気ないぞ。」

 

男の言うとおり、宝田の顔には影があった。その視線の先には、パックに入った青イソメがある。

 

「……昨日、どうしようもなく許せないヤツを殴ったんですよ。」

 

「ほう、喧嘩か。」

 

「そんなもんです。そいつは赤の他人を自分が楽しからって傷つけるような奴で……許せなかった。」

 

自然と、竿を握る力が強くなる

 

「でも考えたら、俺も釣りっていう楽しみのためにイソメやらオキアミやらを犠牲に釣りをやってる訳で……偉そうなことを抜かしても結局、あいつと俺は一緒なんじゃあないかなって。」

 

「なるほどね。」

 

男は、またリールを巻く。

 

「まあ、人間とイソメを同列に扱うのはどうかと思うけどよ、確かにお前さんの言うとおりかもな。」

 

でもな、と男は続ける。

 

「お前さんとそいつは決定的な違いがあるぜ。」

 

「違い?」

 

「さっき言ったことを自覚できているかどうかさ。」

 

回収したサビキを見て「ありゃ、一匹だけか」と言って男は続ける。

 

「そこに気づけない奴っていうのは、結局は畜生以下だ。お前さんの怒りは間違っちゃあいないと思うぜ。」

 

「そう……ですか。」

 

「まあ、多感な時期なんだからそんなこと考えるようになったんだろうけどさ、悩みがあるんだったらお兄さんがいつでも聞いちゃるぜっと。」

 

イソメを付け終え、再びキャスティングする男。先ほどよりも遠くへ仕掛けが着水する。

 

「ありがとうございます。話、聞いてくれて。」

 

「いやいや……って、もう終わるの?」

 

宝田は自分の道具をかたずけ始める。そもそも、今日釣りに来たのは釣果よりも、一人で先ほどの悩みについて考える時間が欲しかっただった。問題が解決した以上、長居をするつもりは無かった。

 

「はい。あ、良かったらイソメ、使ってください。」

 

「おお、サンキュー。でも、お前釣れたのかよ。」

 

宝田は黙ってクーラーボックスを開ける。そこにはみっちりとキスが入っていた。

 

「今夜はキス尽くしっすわ。」

 

「な!?……よっしゃ、絶対お前より多く釣っちゃる!!」

 

がんばってねーと声をかけ、その場から離れる宝田。

自転車に荷物を載せ、いざ帰らんとサドルに跨ろうとした。その時、携帯の着信音が響く。相手はイッセーだった。

 

「おう、イッセー。どうした?実はな、さっきで釣りしてたんだけどキスが大量に連れてな。お前んちに御裾分けで持っていこうかとしたんだけど……。」

 

『それどころじゃないんだ大助!!アーシアが……アーシアが夕麻ちゃんに、堕天使に拐われた!!』

 




はい、ということでVS4でした。
主人公の神器、実はかなりマーベルを意識しています。
手からビームはアイアンマン、飛び出す爪はウルヴァリンです。こっちは爪4本ですけどね。
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!
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