ハイスクールD×G   作:オンタイセウ

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今回、非常にサディスティックな描写がございます。こんなの嫌!という人はすぐさまブラウザバックした方が賢明かと存じ上げます。
それでもいい、という方はどうぞご覧になってください。
因みに、この描写の元ネタが分かった方には先着10名様にプレゼント!!……はありません。感想に「これの元ネタ○○だよね」と書き込んでいただければ幸いです。
ただし、歳がバレる危険性があります。


VS6  レイナーレ(後編)

そこは、神に祈る場に全く似つかわしくない雰囲気を漂わせていた。

悠然と立つ堕天使レイナーレ。

各々の武器を構え、殺気を放つ神父たち。

そして、己が自慢の前足を広げるカマキラス。

それに対するは、四人という圧倒的不利な状況のオカルト研究部の木場、小猫、イッセー、宝田。

状況は最悪だった。

 

シィイ……シィイ……

 

カマキラスが「おとなしく殺られろ」と言わんばかりに鳴き声を上げている。

 

「兵藤くん、宝田くん。君たちはあの化け物のことを知っているのかい?」

 

木場が二人に問う。

 

「ああ、ゴジラの映画に出てくる“カマキラス”っていう昆虫型の怪獣だ。……ソックリさんって可能性もあるけどな。」

 

「そうだとしても、モノホンだったらかなりヤバイぜ。マッハ0.5で飛んでくる上に、下手したら光学迷彩付きかもしれねぇ。」

 

イッセーと宝田からしたら、カマキラスは所謂雑魚にほかならない。

しかし、それは映画のように「相手がゴジラだったら」という前提付きでなければ、その認識は当てはまらない。

ゾルゲル島に最も最初に現れた個体は、目の前にいるものと同じ体長2m程の個体だった。それでもライフル弾(口径は分からないが)を数発食らっても平気だった。目の前にいる個体も同等か、それ以上の頑強さを秘めている可能性はある。

おまけにFINAL WARS版が小型化したものならば宝田の言ったとおり、光学迷彩能力を持つ可能性もある。

どちらにせよ、数の優劣から見ても悪魔側の四人が不利であることには間違いない。

だが、今ここで前に進まなければアーシアが危ない。神器を奪われて虫の息だが、それでもまだ生きていることには違いない。どうにかして、救わなければならない。

二律背反する現状に歯ぎしりするイッセー。それを見て、宝田が一歩踏み出した。

 

「カマキラスは俺に任せろ。」

 

「大助!?」

 

親友の行動に、イッセーは驚く。

 

「お前は木場と小猫の三人でアーシアを救え。コイツがどういう奴なのか知っている分、カマキラスの相手は俺が一番適任だ。」

 

「で、でも。」

 

「時間がない、行けェ!!」

 

イッセーの静止を振り切り、宝田はカマキラスへと吶喊する。

並み居る神父たちの頭上を跳躍し、右手を振りかざす宝田。

だが、それを待ち構えていたと言わんばかりに、カマキラスは前脚を使い宝田を捕まえる。

 

「大助!!」

 

「アーシアを助けてやれ、イッセー!絶対だぞ!!」

 

カマキラスは宝田を捕まえたまま、翅を広げ飛翔する。

そのままイッセーたちの頭上を飛び越え、降りてきた階段の入口へと進みドアを突き破って教会の外へ出る。

 

「このッ……調子に、乗るなァ!」

 

フリーになっている左手から、カマキラスの腹部に光弾を数発お見舞いする。

 

キシィイイイイ!

 

悲鳴を上げ、墜落するカマキラス。その拍子に、宝田を放してしまう。

 

「痛ッテェ!!」

 

地面にぶつかった衝撃もあるが、掴まれていた両肩口から出血していた。前脚の刺のせいだろう。制服の所々が破け、血が滲んでいた。

 

「この野郎……数少ない制服のスペアをお釈迦にしやがって……。」

 

余裕を見せながらも、内心焦っていた。光弾が着弾したはずのカマキラスの腹部には、少々の焦げ目しか付いていなかったからだ。

しかし、焦げ目をつけられて怒ったのか、翅も広げて威嚇してくる。

睨み合いが数秒続いたあと、その均衡は崩れた。

カマキラスの方から飛び掛ってきたのだ。

 

「ッ!このォ!!」

 

カマキラスの突進を払う宝田。

だが、問題はそのあとに起きた。

カマキラスが姿を消した。

逃げたわけではないだろう。さっきはかなり宝田に対して怒りを感じていたからだ。そのままにして逃げるはずがない。ならば可能性は一つ。

 

「光学迷彩か……。」

 

場所は雑木林。

時刻は夜の10時。

ただでさえ身を隠すのにうってつけなのに、そこに光学迷彩なんぞを使われたらたまったものではない。

だが実際、カマキラスはそれをやった。

いつ襲われるか分からない、最悪の状況だった。

不意に、風を切る音がする。

 

「――ッ!」

 

刹那、肩の傷口の数が増えた。

宝田の血が舞う。

その姿を透明にしたカマキラスが切ったのだ。

宝田は飛んでいったであろう方向を睨むが、雑木林が広がるばかり。

 

「クソッ、どこに行った……?」

 

辺りを見回してもその姿は見えない。神器が覚醒してから強化された感覚でも、その姿を捉えることができない。

すると、また風を切る音がする。

今度は右足の太ももが切られた。

間違いない。徐々に体力を奪っていたぶるつもりだ。ミニラを寄ってたかっていじめていたのでも分かる通り、性格の悪さがよく出ている。その点、レイナーレと組んでいたのは納得といったところか。

だが、そのようなことを考えている暇はない。風を切る音がするたびに傷口が増えているのだ。

右の二の腕。

背中。

胸。

脇腹。

いたるところから出血している。

 

(このままじゃあ、ジリ貧だ。どうすれば……。)

 

ここで宝田はあることに気づいた。

 

(しゃあねぇ……やってやる!!)

 

すると宝田は教会の建物へと走り出す。

当然、カマキラスもそれを追う。

行き先は壁だ。そこにぶつかれば宝田の逃げ場はもう無い。

カマキラスはその時、止めをかけるのは今だと判断した。

建物内に入ろうとしたところを背後から、自慢の前脚の鎌による一閃。これがカマキラスのプランだった。

残り100m。宝田は一心不乱に走る。

残り50m。カマキラスが飛ぶ準備をする。

残り10m。教会の壁は目前だ。

残り5m。とうとうカマキラスはマッハ0.5の速度で飛び出す。

残り1m。これで最後、と言わんばかりにカマキラスは迷彩を解き、宝田の背中を斬りかかろうとする。

その瞬間、宝田は一気に振り返った。

 

「引っかかったな。」

 

カマキラスに、人間の言葉は理解できない。だが、宝田のその目から、何を言わんとしているかは解った。

 

「ドラァ!」

 

宝田の渾身の拳が、カマキラスの右目を完全に潰した。

宝田は建物内に逃げ込もうとしたわけではなかった。

壁を背にし、所謂「背水の陣」の形をとったのだった。そうすればまず襲ってくる方向は壁を背にした前方の±90°以内に限られる上、後方から時間差を置いて襲ってくることを考慮すれば警戒すべきは前方の±45°以内には確実に絞り込める。

 

ギシィイイイイ!!

 

悲痛な悲鳴。

だが、これで終わるはずがない。

 

「さあ、pay back timeだ。」

 

そう言いながら、宝田はカマキラスの腹部を掴む。と、同時に甲の爪が伸びて腹をしっかりと固定する。普通の柔らかいカマキリの腹ならば爪がすぐに突き破っていただろう。

だが、固い殻に覆われていたカマキラスの腹部にはしっかりと爪が食い込んで固定されている。

 

「はい、せぇえのぉ!!」

 

持ち上げ、地面に叩きつける。

一度目。後脚が千切れる。

二度目。翅が毟れる。

三度目。硬い胸の殻にヒビが入る。

それ以降は数え切れないくらい地面に叩きつけた。地面がその衝撃に耐えかね、大きな窪みができている。

ゴジラの映画を見た人ならわかるであろう。所謂『ゴジラプレス』だ。

 

「よいしょぉオオオ!!」

 

止めとばかりにボロボロになったカマキラスの巨体を叩きつける。

文字通りの「虫の息」だ。何とかして逃げようと、なんとか原型を保っている右前脚で地面を這いずる。

が、それを見逃す宝田ではない。

止めの光弾を放とうとするが、先ほどの結果を思い出して躊躇してしまう。

その時、頭に浮かんだのはリアスの言葉。

 

『神器はね、その人の想いが強ければ強いほどそれに応えてくれる。』

 

そうだった。昨日、バイサーを叩き潰そうとした時も、右腕にしかなかったガントレットが左腕にも現れた。あれは、神器が自分の怒りに答えてくれた結果なのだ。

ならば、宝田が思うのは一つ。

 

「徹底的に……焼き尽くす!!」

 

右手をかざす。

すると、これまでとは比較にならない規模のエネルギーが溜まっているのがわかる。

溢れ出す青白いエネルギー。大気が完全燃焼している証拠だ。

 

「消えろ。」

 

膨大なエネルギーが放たれた。

それはもはや「光弾」ではない。

「熱線」だった。

その熱線は、カマキラスの体を容易に焼き尽くす。地面に更なる窪みをあけ、雑木林の一角が吹き飛んだ。

 

「ふう……。」

 

体は傷だらけ。

だが、宝田の勝利に間違いなかった。

勝利の余韻に浸るよりも、疲れを少しでも取るのが先だ。まだ地下には三人が残って戦っているはずだからだ。

 

「うし、行くか!」

 

呼吸を整え、ドアに向かおうとした矢先。

 

「ギャアアアアア!!」

 

何かが頭上のステンドグラスを突き破って飛んでくる。

 

「や、やべぇ!!」

 

ガラス片に突き刺さられてはたまったものじゃない。急いで離れる。

が、その宝田に向かって落ちてくる物体がひとつ。ステンドグラスを割ったものだった。このままでは直撃だ。

 

「危ねぇ!!」

 

宝田は思わずソレをオーバーヘッドキックで蹴り飛ばす。

見事に決まり、ソレは壁をぶち破って建物の中に入った。

 

「……あれ、今のレイナーレ?」

 

全くの無意識で別の奴にも止めを指していた宝田だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人で堕天使を倒しちゃうなんてね。」

 

「……おせえよ、イケメン王子。」

 

大腿部に怪我を負い、崩れかけたイッセーを支えたのは木場だった。

 

「君には手出し無用だって、部長に言われてたんだ。」

 

「部長に……?」

 

イッセーがそう言った瞬間、壁を何かがぶち破って入ってくる。

レイナーレだった。

 

「……あれ、今のレイナーレ?」

 

穴があいた壁の向こうから、宝田の姿が見えた。

その言葉で、イッセーには何が起こったのか理解できた。

 

「大助、お前も無事だったんだな。」

 

「無事じゃねえよ。ところどころ血まみれな上、スペアの制服もパーだよ。」

 

確かにその通りだったが、いつもの口調になっているのを見ると取り敢えず無事なのだろう。

イッセーは胸を撫で下ろす。

 

「そういや、アーシアは?」

 

「……あそこだよ。」

 

宝田に問われ、イッセーが示したところには、長椅子に横たえられたアーシアの姿があった。

 

「駄目だったのか。」

 

「……すまねぇ、俺のせいだ。」

 

イッセーの顔が悔しやとやるせなさに歪んだ。

 

「いや、お前はよくやった。ああ、よくやったともさ。」

 

「ダイスケの言うとおりよ、イッセー。あなたはよくやったわ。それに、貴方ならできるって信じていたもの。」

 

祭壇のあったところから声が聞こえる。

地下から上がってきたリアスだった。

 

「部長……。」

 

「私の方の用事が済んだから、ここの地下にジャンプしてきたの。そしたら、祐斗と小猫が大勢の神父を相手に大立ち回りしてるじゃない?」

 

「部長のお陰で、助かりました。」

 

「ありがとうございます、部長。」

 

木場と、リアスに続いて地下から上がってきた小猫が礼を言う。

 

「……みんな部長のお陰で無事だったんだ。心配して損した。」

 

再び胸を撫で下ろしたイッセー。

リアスはその様子に微笑んだあと、視線を気絶しているレイナーレに向ける。

 

「部長、コイツどうします?」

 

宝田が問う。

 

「そうね、一応挨拶をしたいんだけど。起こしてあげてくれない?」

 

「水でも持ってきましょうか?」

 

小猫が水道を探して水をぶっかけようとする。

 

「いや、これで十分だろ。」

 

そう言ってレイナーレの傍にしゃがみ込み、その頬に連続して張り手を食らわす。

 

「あれ、起きねぇな。」

 

次第にビンタが苛烈になってくる。みるみるうちに両頬が真っ赤になってきた。

 

「宝田くん、堕天使とはいえ一応女性なんだからさ。しかも神器を出したままだよね?」

 

フェミニストで通っている木場が、宝田に苦言を呈する。

 

「いや、俺って男女平等主義だからさぁ。」

 

「木場、コイツの場合の男女平等って「男も女も関係なしにしばく」だから触れないほうがいいぞ。」

 

この中で一番宝田を理解しているイッセーが言う。

 

「うぅ、この両頬の痛みは一体……。」

 

「しゃぁねぇ、ビンタやめてグーでいくか、グーで。」

 

「ダイスケ、もう起きたから。それ以上やったらまた気絶するから。……はじめまして、堕天使レイナーレ。」

 

「お、お前は……。」

 

レイナーレがリアスに向けて顔を上げる。

 

「私はリアス・グレモリー。グレモリー公爵家の次期当主よ。」

 

「グレモリー一族の娘か!」

 

「どうぞお見知りおきを。短い間でしょうけど。それと……。」

 

リアスがポケットから3枚の漆黒の羽根を取り出し、レイナーレの目前に落とす。

 

「訪ねてきたあなたの『お友達』を私が消し飛ばしておいたわ。」

 

「な……!」

 

文字どおり、レイナーレの顔面が蒼白になった。

 

「消し飛ばしたって……。」

 

「部長には“紅髪の滅殺姫《べにがみのルインプリンセス》”っていう二つ名があるんだ。」

 

イッセーの問いに木場が答えた。

 

「滅殺……!?そんなにすごい人の眷属になったんだな、俺。」

 

イッセーがその二つ名に感嘆する。

 

「なんか厨二臭くね、それ。」

 

「お黙りなさい、ダイスケ。」

 

そのやりとりを前に、レイナーレが悔しげに拳を握る。

 

「グレモリーの小娘が……よくも!」

 

「以前イッセーがドーナシークに遭遇したとき、複数の堕天使がこの街で何か企んでいたことは察していたわ。私たちに累を及ぼさないのであれば無視してあげてたんだけど……。」

 

「部長、じゃあ俺のためにわざわざ……?」

 

「ええ、そうよ……あら、イッセー。その神器……。」

 

「あ、いつの間にか形が変わっていて。」

 

「え、そうなのか。最初からそんなんなのかと思った。」

 

宝田はイッセーの神器をよく見ていない。

 

「赤い龍……そう、そういうことだったのね。」

 

リアスが何かに思い当たった。

 

「堕天使レイナーレ。この子、兵藤一誠の神器は龍の手ではないわ。」

 

「なに?」

 

「持ち主の力を“十秒ごとに”倍加させ、魔王や神をも滅ぼす力を齎すと言われている13種の神滅具の一つ……“赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》”。」

 

「そんな、神をも滅ぼすという代物がこんな子供に……!!」

 

「どんなに強力でもパワーアップには時間が必要だから、決して万能ではないけどね。相手が油断していたから勝てたようなものよ。肝に銘じておきなさい、イッセー。」

 

はぁ、とイッセーは自分の左手をまじまじと見つめる。そこに宝田が口を挟む。

 

「あの、部長。俺のは……。」

 

「ごめんなさい、まだわからないわ。」

 

「やっぱし……。」

 

ガックリと項垂れる。

 

「さてと……そろそろ消えてもらおうかしら。堕天使さん。」

 

リアスがレイナーレに向かって振り返る。ところが。

 

「イッセー君……。」

 

レイナーレが声色を変えた。

 

「あんなこと言ったけど、堕天使としての役目を果たすために仕方がなかったことなの。」

 

「夕麻ちゃん……。」

 

イッセーが戸惑うが、レイナーレが畳み掛ける。

 

「ほら、その証拠にこれ、イッセー君が買ってくれたアクセサリーは捨てずに持っていたの……忘れてないわよね?あなたに、買ってもらった……。」

 

レイナーレは、その右腕に付けられたアクセサリーを見せる。たしかにイッセーが購入したものだった。

 

「なんでまだ……そんな物を……!」

 

「だって、私はあなたの事を……!」

 

イッセーの心が揺れる。

 

「私を助けて、イッセー君!」

 

「お前……どこまで……!」

 

イッセーは震える。自分の命を奪い、あまつさえ友達となったアーシアの命をも奪う。その上、イッセーの心を踏みにじり続けたというのにこの悪あがきよう。

我慢の限界だった。その時。

 

「だははははは!うひぃうひぃ!ぶわハハハハハハ!!!」

 

宝田が笑った。

 

「ギャハハハハハ!!コイツは傑作だ!自分が殺した相手に命乞いなんざ、初めて見たぜ!!いやぁ、悪魔に関わって大正解だ。こんなおもしれェ茶番が拝めるなんてよォ!!」

 

「大助……?」

 

親友の奇行に、イッセーは戸惑った。

それをよそに、宝田はレイナーレの前にしゃがみこむ。

 

「いやー笑わせてもらった。レイナーレだっけ?お前さん、鼻に何かついてるぜ。」

 

「え?」

 

指摘され、自分の鼻を押さえるレイナーレ。

すると、神器を解除した左拳による一撃をもらう。

 

「ウグッ……!」

 

「他人を舐めるのも大概にしろよ……?」

 

宝田は怒りは有頂天だった。

友を殺し、さらにその友をも殺した相手を許すはずがない。

 

「あーあ、鼻血でちゃってるよ。イッセー、ハンカチでこいつの鼻吹いてやれよ。元カレだろ?」

 

その言葉で、宝田が何をしようとしているかイッセーには解った。

 

「……そうだな。」

 

そう言ってイッセーはポケットからハンカチを取り出し、レイナーレの鼻を拭ってやる。

が、そこに同じくイッセーの右の拳が入る。

 

「ガハッ……!」

 

思わぬ一撃に、レイナーレは恐怖した。

 

「あ、怒っちゃた?」

 

「そりゃそうだろ大助。散々馬鹿にしてた相手にここまでやられたんだから。俺たちこれからアーシアを連れて行くけど……後ろから撃ってもいいんだぜ?背中を向けることになるし。」

 

「こいつにそんな度胸ねえよ。自分が殺した相手に命乞いするような奴なんだから。」

 

「そりゃそうだな。」

 

そう言って、二人はレイナーレに背中を向けた。

 

「じゃあな、ゴミ溜めのカラス。」

 

「お前の大好きだっていう、アザゼル様だかシェムハザ様だかに泣きつくんだな。」

 

「ああ、堕天使のお偉方か。」

 

レイナーレはプライドを散々に傷つけられた。

自分が侮辱されるのはともかく、敬愛する堕天使の総督達を馬鹿にされたのが許せなかった。

最後に残った自尊心と力を振り絞り、レイナーレは立ち上がる。

手にあらん限りの力を込めて、最大の光の槍を作る。

アーシアに気を取られて、誰もレイナーレの方を向いていない。

やるなら今だった。

 

「くたばれェェェ!!」

 

イッセーと宝田に向けて、光の槍を放つ。

が、それを察知していたイッセーと宝田はそれぞれ左手と右手をかざした。

すべてが刹那の中の出来事。

光の槍を放つと同時に、レイナーレは光の槍ごと二つの大きな力の奔流に飲み込まれた。

一つは、赤き龍帝の怒りの赫い一閃。

一つは、青白く輝く熱線。

二つの圧倒的な力に飲まれ、レイナーレは跡形もなく消滅した。

膨大なエネルギーが駆け抜けて行った跡には、奪われていたアーシアの神器が落ちている。

その様子を見て、宝田は不安げにイッセーに問う。

 

「……正当防衛だよな?」

 

「……当然だろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございまーす。」

 

日曜だったが、イッセーは部室を訪れていた。

 

「おはよう、イッセー。」

 

既に部室にはリアスがいた。手にティーカップを持っている。

 

「ちゃんと来たのね。傷はどう?」

 

「アーシアのお陰で、俺も大助の傷も完璧に治りました。」

 

イッセーがリアスの向かいのソファに腰掛ける。

 

「ふふ、“僧侶《ビショップ》”として早速頑張ってくれたわけね。」

 

アーシアは昨日、確かに人としての生を終えた。

だが、その力を見込んでリアスがアーシアを転生悪魔として蘇らせた。その為、アーシアは文字どおりの2度目の人生を歩むことになった。

イッセーは喜んだ。

宝田もそれを見て喜んだ。

ただ、家に帰ったあとの祖父への対応がまた大変だったようだが。

イッセーにとっては自分が一度死んだり、アーシアも死んだりで裏切り等辛いことがたくさん起きた。それでも、この決着には満足していた。

しかし、それでも胸の奥に引っかかっていることがひとつだけ……。

 

「あの、部長。眷属ってこれからも増えていくんですよね。残っている悪魔の駒は、戦車と騎士が一つずつと、後は兵士が七つ……。ということは、俺と同じのがあと7人ふえるってことですか……?」

 

「え?」

 

紅茶を飲むリアスの手が止まり、一瞬だけ戸惑う。が、一度溢れ出したイッセーの不安がそれに止まることなく流れ出てくる。

 

「いや、仲間が増えていくのは嬉しいっすよ?でも、宝田の奴も転生したりして、ライバルが増えていくのはなぁ……なんて。って、何言ってんだよ俺。」

 

ふとイッセーが不安に俯いた顔を上げると、リアスの意表を食らった顔が見えた。

 

「い、いや!冗談すよ、冗談!!」

 

イッセーの不安がなんなのか理解したリアスは、ティーカップを受け皿の上に置く。

 

「私の兵士はイッセーだけよ。」

 

「え?あの、それって……。」

 

リアスは立ち上がり、イッセーの座るソファーの肘掛に腰掛ける。

 

「悪魔の駒を使って人間を転生させるとき、その人の能力や才能によって消費する駒の数が変わってくるの。」

 

「え、じゃあそれって……って、うわ!」

 

流れるような動作でイッセーの背後に廻り、リアスがその背中を腕の中に収める。無論、その豊満なバストがイッセーの背中に柔らかく当たっているのは言うまでもない。

 

「あなたを転生させたときに持っていた悪魔の駒は、戦車、騎士、僧侶が一つずつ。そして兵士が八つ。その八つの兵士の駒を全て使わなければ、あなたを転生させることができなかったの。」

 

「お、俺一人に八個も使ったんですか!?」

 

顔を真っ赤にしているイッセーをよそに、リアスは続ける。

 

「それがわかったとき、あなたを下僕にしようって思ったのよ。そんなポテンシャルを持つ人間なんて滅多にいないもの。だから、私はあなたに賭けた。神滅具を持つあなただから、今回のような事があったわけだし、その価値があったの。」

 

「俺の神滅具……赤龍帝の籠手。」

 

「それと、ダイスケが眷属にっていう話だけど、それはないわ。安心しなさい。」

 

「え!?」

 

「一度、彼の承諾のもとに試してみたのよ。眷属になれるかどうか。そしたら、何度やっても駒が反応しなかった。いえ、彼の肉体自身が駒を撥ね退けたと言った方がいいわね。」

 

「そんなことがあったんですか……。」

 

取り敢えず宝田がライバル候補に成りうる可能性が消えたことにイッセーが胸を撫で下ろすと、リアスがイッセーの顔を引き寄せた。

 

「な、な、な、な……!」

 

「紅髪の滅殺姫と赤龍帝の籠手。紅と赤で私たちの相性はバッチリね。」

 

「え?あ、ああ、そうっすね……。」

 

「最強の兵士を目指しなさい。だって、私の可愛い下僕なんだもの。」

 

「最強の兵士……なんていい響き!!部長、俺……。」

 

部長のためにも、自分の野望のためにも頑張ります!と言いかけた時だった。イッセーの額になにか柔らかいものが触れる。

なんだろうと顔を上げると、リアスがイッセーの額に口付けをしていた。

口付け。

接吻。

キス。

一瞬、何が起こったのかわからなくなった。

完全なる思考停止。

またはthe world(時よ止まれ)。

脳内のCPUが再起動し、状況の把握に数十秒かかる。

その演算処理の途中に、唇が離れた。

その一連の動作から、イッセーはようやくリアスが自分の額にキスしたのだと理解した。

 

「ぶ、ぶ、ぶ、ぶ、部長!?これは一体!?」

 

「あなたが強くなれるように、という意味のおまじないよ。励みなさい、イッセー。」

 

「うおォォォォ!!部長!俺頑張ります!!!」

 

またイッセーのスケベ根性に火が付いた。だが、今回はそれだけではない。自分のことを期待してくれる人がいる。その期待に応えたいという、純粋な向上心も芽生えたのだ。

 

「と、あなたを可愛がるのもここまだでにしないと。私とあなたが新人の子と、準メンバーにそれぞれ嫉妬されてしまうかもしれないから。」

 

「へ、嫉妬?」

 

すると、背後から二人分の視線を感じて振り返る。

 

「い、イッセーさん……。」

 

「イッセー、手前ェ……ガルルルル……!」

 

涙目のアーシアと、体育服姿で完璧な野獣の唸りを上げる宝田がいた。

 

「あ、アーシア!大助!」

 

突然現れた二人に驚くイッセー。

 

「イッセー……アーシアというものがありながら部長にまでフラグを立てるたァどういう了見でィ……?」

 

「そうですよね。リアスさん……いえ、リアス部長は素敵な方ですし、それはイッセーさんも好きになってしまいますよね……。ああ!ダメダメダメ!邪なことを考えては!主よ、私の罪深い心をお許しに……はぅわ!!」

 

祈るアーシアが突然頭に痛みを感じ、そこを押さえてしゃがみ込む。

 

「お、おい!」

 

「大丈夫か、アーシア!?」

 

宝田が攻撃態勢を解いてアーシアを支え、イッセーも心配になって駆け寄る。

 

「急に頭痛が……?」

 

「当たり前でしょ、あなたは悪魔になったのだから。神に祈る悪魔はいないわ。」

 

リアスが呆れてアーシアに教える。

 

「そうでした……私、悪魔になっちゃたんでした。」

 

残念そうに呟くアーシアに、リアスは問う。

 

「後悔、してる?」

 

その問いにアーシアは明るい顔で答える。

 

「いいえ。どんな形であれ、イッセーさんや皆さんと一緒にいられるのですから。」

 

「アーシア……あれ?その格好……。」

 

イッセーがあることに気がついた。アーシアが駒王学園の制服を着ているのだ。

 

「あ、似合っていますか?」

 

「……ってことは、この学園に?」

 

「はい!リアス部長の計らいで!」

 

「前に言ったでしょう、私の父はこの学校の経営に携わっているからこのくらいなんてことないわ。」

 

「さすが悪魔の所業。やることが半端ないっすね。で、半端ないついでに俺の制服……。」

 

「大丈夫、今日中に届くわ。追加分もちゃんと発注しているから心配しないで。」

 

ほっ、と宝田は胸を撫で下ろす。これで明日、体育服登校をする必要がなくなった。こちらの問題もなんとか解決したようだ。

 

「おはよう、イッセー君、ダイスケ君。」

 

「おはようございます、イッセー先輩、……ダイスケ先輩。」

 

木場と小猫が入ってきた。

 

「あ、ああ、おはよう。」

 

「おう……ってあれ?なんで名前呼び?昨日は苗字で呼んでただろ。」

 

突然の変化に宝田は驚く。その疑問に木場が答えた。

 

「昨日、イッセー君と約束したんだ。『生き残ったら名前で読んでくれ』って。ちゃんと生き残ることができたし、ダイスケ君もオカルト研究部の一員だしね。」

 

「……ダイスケ先輩はついでですよ。ついで。」

 

小猫がボソッと不服そうに呟く。

 

「なるほど、そういうことか……じゃあ、改めてよろしく頼むぜ、二人共。それにしてもイッセー、お前なかなかカッコイイこと言うじゃん。」

 

「な、茶化すなよ!」

 

「でもまあ、それそれ。これはこれ……改めてさっきのキスについて質問させてもらおうかァ!!」

 

態度を豹変させ、イッセーにスリーパーホールドを決める宝田。

 

「な!ちょ!ギブギブ!!」

 

「イッセー、早く答えろ。“質問”は既に“拷問”に変わってるんだぜ……?」

 

どこぞのイタリアンギャングのセリフを吐いて、さらに締める力を強くする宝田。

その様子を見て笑う、眷属仲間と主達。

 

「ちょ、みんな笑ってないで止めてくれってば!!」

 

「ホントに仲いいね、二人共。」

 

「木場!そんなこと言ってる場合じゃ……あ、ヤバッ。」

 

「ダイスケ先輩、手伝いましょうか?」

 

「おう、レバーに数発入れてくれ。」

 

「ちょ、小猫ちゃぁぁぁん!?ゴフッ!」

 

そこにカートを押している朱乃が現れた。

 

「あらあら、みなさん楽しそうですわね。イッセー君も大分面白いことになって。」

 

「朱乃さぁぁん!!笑ってないで助けてくださいよ!!」

 

「イッセー、言い忘れてたけど、朱乃はドSよ。こういう状況を見たら助けるどころか、一緒になっていじめ抜くタイプよ。」

 

「部長、その真実は知りたくなかったです!!」

 

絶望的な状況に、イッセー涙する他なかった。

 

「確かに宝田くんに協力したいところですが、新人さんの歓迎会を優先させましょう?」

 

朱乃が押してきたカートの上には、普段お目にかかる事のできないような大きさのワンホールケーキが乗っている。そして、その中央のチョコプレートには『wellcome Asia Argento』とある。

 

「おお、スゲェ!ケーキなんて食べるの十年ぶりだ!」

 

感動した拍子に、宝田はイッセーを離す。

 

「ゲホッゲホッ!少しは加減しろよダイスケ!……って、ケーキ食べるのが十年ぶり!?昭和でもないとそんなことないぞ!?」

 

「うちの爺さんが洋菓子苦手なんだよ。特にクリーム系。」

 

ああ、そういうことか、とイッセーは納得した。

そこにリアスが話しかける。

 

「イッセー。」

 

「はい?」

 

改めて何を言われるのだろう。

 

「あなたは……最高だったわ。」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

この時、本当の意味で、イッセーの悪魔としての人生が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、おれだ。……そうか、コカビエルの奴が。ああ、監視の目は光らせておいてくれ。ヴァーリの奴にも、監視を怠るなって言っておいてくれ。」

 

駒王町の浜辺。男が一人、太公望を決めながら電話をしている。

竿先に反応はない。

 

「で、研究施設から消えてた例の新種は?……そうか、発信機ごと消滅したか。いや、それならそれでいいんだ。例の独断専行してた奴らも、この街の悪魔達がケリをつけてくれた。俺たちが出向く必要はなくなったさ。」

 

何かに納得して、男は話を続ける。

 

「ああ、それと、昨日観測した強力なエネルギーの件なんだが。……そうか、予想が的中したってか。そりゃそうだ、こんな街中にあれほどのエネルギーを発生させるものなんてそうそうないからな。赤龍帝と一緒に、そっちの方も観察しとくさ。」

 

相手が何か言ったのか、男は慌ててそれを否定する。

 

「あ?補助のスタッフ?いらねえよそんなん。うじゃうじゃいたって、悪魔側に余計な刺激を与えるだけだ。……いや、そんなんじゃねえって!監視されなくても仕事はきっちりこなすよ!!ったく、お前は生真面目すぎるんだから。……うん、わかってるって。切るぞ。」

 

パチン、と男は所謂ガラケーを閉じて、ポケットにしまう。

 

「ちゃんと観察させてもらうさ。なんせ相手は今世になって始めた現れた規格外の奴なんだ。そんなのを相手にするなんて、研究者冥利に尽きるってもんだ。」

 

独り言を呟きながら、再び男は竿を構える。

 

「早く直接お目にかかりたいもんだ。数多の神々やオーフィス、あまつさえグレートレッドをも恐れさせた文字通りの破壊神……“ゴジラ”さんよ。」

 




というわけでVS6でした。
いやぁ、ここまで特定のキャラに対するヘイト行為やったあとだと評価が怖いです。ですが、冒険をやってみてよかったと思っています。
一度設定集を書いたあとからは焼き鳥編です!さあ、どうやっていじめてやろうか……(ゲス顔)。
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!
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