ハイスクールD×G 作:オンタイセウ
もう、兎に角スゲェェェェェ!!の一言に尽きます。
一瞬、WO○OWとかの放送を待とうかとも思いましたが、劇場で観て大正解!
いやぁ、素晴らしかったです。
グレモリー眷属がライザー眷属とのレーティングゲームに望む際、十日間の猶予を与えられた。
少しでもトレーニングを積んで、戦力差を埋めるようにとのことだった。
無論、リアスたちは山に篭もり、自分たちに実力を上げるためのトレーニングに励んでいる。
しかし、共に出場するはずのダイスケの姿はそこにはない。
今は夜の11時。
ダイスケはアーシアが連れ去られた廃墟の教会にいた。ここであるものを探しているのである。
礼拝堂の中には、ダイスケが求めるものはなかった。そこで、木場、小猫のコンビと多数の神父たちが戦っていた地下に入る。
懐中電灯が照らす地下室は、多くの瓦礫で埋もれていた。戦闘の爪痕だろう。
ふいに、電灯の光を反射するものを見つける。そこに駆け寄り、辺りを掘り返すと……あった。
よく見れば、周辺にいくつも落ちている。
これだけあれば、自分のプランは完成したも同然。
「ククク……。あの焼き鳥野郎の恐れおののく姿が思い浮かぶようだぜ。」
この姿を見て、誰がこの男を主人公だと思おうか。
完全に、悪役のそれだった。
*
ゲーム開始まであと数十分。
メンバーは皆、いつものように部室内で待機している。
木場は魔剣の手入れを。
小猫は手にグローブを嵌め、着け心地の確認。
リアスと朱乃に至っては、いつものように紅茶を飲んでいる。
緊張でどうにかなってしまいそうなアーシアを除き、皆平常でいることにイッセーは感心せずにはいられなかった。
(さすが、二大お姉さま。頼りになるぜ。)
それに引き換え、ダイスケの様子は異常だった。
「クケケケ!あいつらに文字通りの地獄の苦しみを与えてやるのが楽しみで楽しみで仕方ねえ。……どうやって虐めてやろうか今から迷っちまうぜ。」
ノリがあの外道神父のフリードに近い。
自分達と分かれていた十日間で一体、ダイスケに何があったのか。イッセーは違う意味で心配になってきた。
それに、ダイスケが傍に置いているリュックの中身も気になっていた。あの中に、十日間離れていた理由があるのだろうか。
「なあ、ダイスケ。そのリュックの中身って、一体なんなんだ?心なしか、嫌な感じがするんだけど。」
「ん?ああ、これか。これはまだ秘密。ていうか、イッセーはあんまり触らないほうがいいぞ。」
「お、おう……。」
間違いない。コイツは何かヤバい物を持ってきている。それも確実に危険物の類だ。
「そういや、イッセーの方はどうだったんだ?何か収穫はあったか?」
「おお!、それなんだがな、部長達との特訓のおかげで、これまで目覚めていなかった赤龍帝の籠手の力の一部が発現したんだ!」
曰く、力の増加量の劇的な向上と、自身の実力の向上であった。
「すごかったんですよ、山の峰を吹き飛ばしちゃったんですから!」
アーシアが嬉しそうに言う。どうやら、イッセー自信も強力な戦力として目覚めたようだ。
「だけど、イッセー君って意外と体力あったよね。あんなに重たい荷物を背負っていても、最初から息切れしてなかったし。」
「たしかに、あれは意外でした。戦い方の基本も身に付いていましたし。」
木場と小猫が感心したように言う。
「ああ、実は俺、ダイスケの祖父ちゃんに昔鍛えてもらってたことがあってさ。それのお陰なんだ。」
「小学生の頃からだったか。祖父さんのシゴキを一緒に受けてたの。」
思い出される地獄の日々。正直、戦いを前に思い出したくない。
過去を思い出して、イッセーとダイスケの顔が暗くなっていく。
「「小学生にあの内容はキツすぎだよな……。」」
その一言で何かを察したのか、木場も小猫もそれ以上深入りしなかった。
「だけどまあ、今回は“コイツ”の威力を試すのにはいい機会だし。」
「だけどまあ、秘密の特訓で会得した必殺技を試せるし。」
「「本番が楽しみで楽しみで仕方ありませんなぁ……フッフッフッフッフ。」」
「……朱乃。私なんだかこの二人がとんでもない事をしでかしそうな気がするんだけど。」
「あらあら、奇遇ですわね。……私もですわ。」
時は、開始十分前。部室内に魔法陣が現れ、グレイフィアが姿を現す。
「皆様、準備はよろしいでしょうか。開始十分前となりました。」
皆が応えるように立ち上がる。
「開始時間になりましたら、ここの魔法陣から戦闘フィールドへ転送されます。この駒王学園をほぼ完全に模したフィールドです。使い捨てのものなので、いくらでも派手なことをしていただいても構いません。思う存分暴れてくださっても結構です」
その言葉で、ダイスケは「うっし!」と声を上げて喜ぶ。が、一つだけ気なる点があった。
「あの、戦闘可能な区域は学園の敷地内限定ですか?」
「はい、その通りです。」
「なるほど。じゃあ、空と地面の中は?」
「……そういう疑問を持たれたのはレーティングゲームが始まって以来あなたが初めてかと。±100mが範囲内です。それ以上外へ出ようとすると、ペナルティとなりますのでご注意を。」
「わかりました。……それであの、プロポーズの件は……。」
「お断りさせていただきます。」
やっぱし、と項垂れるダイスケに、グレイフィアは懐からあるものを取り出す。
「なお、ダイスケ様は悪魔の駒を持ち合わせておりませんので、こちらの着用を願います。」
そういってグレイフィアが取り出したのは赤い腕輪だった。
「駒を持つ者がリタイアする際は自動で救護所へ移動されますが、これは装着者のバイタルを読み取り、危険であると判断された際に駒と同じように機能するものです。今回限りの、特別製ですよ。」
「了解です。着けときます。」
ダイスケはそれを受取り、左腕に嵌める。
「なお、今回は両家の皆様も他の場所から中継で戦闘をご覧になられます。さらに……。」
両家の関係者がこの試合を見るのはわかる。自分たちの行く末を占うのだから。だが、グレイフィアの話ようだとまた別のものもこのゲームに関わっているようだ。
「現魔王『サーゼクス・ルシファー』様もこの一戦をご覧になられますので、そのことをゆめゆめお忘れなきよう。」
魔王。ルシファー、ベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウス。この四つのポストに収まるものが魔王と呼ばれ、悪魔社会の内政、技術、外政、軍事を統括する。つまり、役職名が姓の部分に来るのだ。大戦以前はズバリその人(悪魔)がになっていたというが。
その、内政つまり日本で言う総理大臣に当たる人物が一婚約の成否に関わっている。ダイスケにはそこが気になった。
「そう、お兄様が……。」
つまり、リアスの兄、サーゼクス・グレモリーである人物がサーゼクス・ルシファー、つまり魔王となっている事だ。
家名を名乗っていない、ということは当主の地位の相続権がないということにもなる。
「……だから部長が次期当主にならなきゃいけなかったのか。」
イッセーも納得したようだ。
「そろそろ時間です。皆様、あちらの魔法陣の方へ。」
グレイフィアに促され、メンバーは魔法陣の中に集結する。
「なお、一度戦闘用フィールドに移動しますと終了するまでフィールド内及び“こちら”への転移は不可能となります。」
つまり、“ここ”に戻ってきたときは決着が着いた時、ということだ。
ゲームが、始まる。
*
チャイムが鳴る。戦闘開始の合図だ。
「さて、まずはライザーの兵士をいかに早く撃破(キャプチャー)するかね。八名全員が女王に昇格したら厄介この上ないから。」
相手の本陣、つまりこの旧校舎にライザー側の兵士をいかに近づけないようにするかが問題だ。
そして逆に、こちらの兵士であるイッセーをいかに敵本陣である新校舎にいれるかも重要になる。
「そういう戦略面もチェスみたいなんスね。」
「そうよ、ダイスケ。たいていの場合は砦や城、または塔ね。本来は森林や山、河川に湖を挟んで大規模な戦闘を行うのよ。祐斗。」
「はい。」
リアスに促され、木場は机の上に学校に敷地を表した地図を広げる。
「やっぱり地理的に見ても不利ね……。こちらの本陣である旧校舎は森に囲まれ、隠れるところも多い。でも、敵本陣である新校舎は開けていて旧校舎が丸見えね。」
つまり、こちらは敵の接近に気づきにくく、反対に新校舎に近づくものは丸見えなのだ。
「裏の運動場側から……ってのもダメですよね。素人の俺でも思いつくんだから。」
イッセーの言葉に、リアスは苦笑する。
「そうね。……ここは広いから、機動力のある騎士が最低一名配置されているはずよ。そして兵士が三名ないし四名が補助。これなら運動場全域の動きが把握できるわ。」
そこに木場が意見を述べる。
「部長、体育館を先に占拠しませんか?ここは新校舎と繋がっていますし、旧校舎からも近い。位置も真ん中で、ここを取ることで相手への牽制になります。」
「ああ、チェスでも真ん中を取ったら有利になるっていうもんな。」
そういうこと、と木場がダイスケの言葉に例のイケメンスマイルで答える。
その木場の意見にリアスも頷く。
「そうね、祐斗の言うとおりだわ。室内だから、相手が投入してくるのは破壊力重視の戦車ね。」
大体の流れが決まりかけているところへ、ダイスケが手を上げる。
「あの、機動力云々や陣地取りはいいとして、味方への支援攻撃ってどうなるんですか。」
「そこはわたくしが何とかしますわ。」
出てきたのは朱乃だった。
「姫島先輩は「雷の巫女」の通り名を持っていて、強力な雷を操ることができるんだ。部長がゲームに本格的に参戦していないから知る人ぞ知る存在なんだけど。でも、一部の間では有名だよ。」
「あらあら、木場くん。そんなことを言われては照れてしまいますわ。」
確かに、それならば砲撃支援は心強い。しかし……。
「でも、『一部の間では有名』ってことは、相手も朱乃さんを警戒してくるんじゃないか?相手は部長の婚約者であるライザーだぞ。それくらいの情報は既に持っているんじゃあないのか?」
『あ。』
全員が不意をつかれた。
確かにそうだ。ライザーはリアスと結婚したがっている奴だ。いくらリアスがゲームの素人だからといって手加減はしないだろう。それどころか決定的な勝利を掴み、リアスに服従を迫るはずだ。
「そこで俺の考えなんだけど……。」
ダイスケの目が、妖しく光る。
*
ゲーム開始から数十分後、リアスの読み通りに体育館で戦闘が起きた。
相対するは、イッセー、小猫のコンビと先日ダイスケに散々な目にあったミラと双子の三人の兵士と中国拳法を操る戦車の四人。
その四人は、見事に敗北した。相手を完全に見くびっていたのだ。
そして決定的な敗因。それはイッセーを相手にしたことだった。
イッセーが相手したミラとチェーンソーを振り回していた双子は、イッセーの手によって文字通りの丸裸にされていた。
控えめなその裸体が、すっぽんぽん。
「「「イヤァァァァァ!!」」」
「見たか、俺の必殺技『洋服崩壊《ドレス・ブレイク》』!!俺は脳内で女の子の服を消し飛ばすイメージだけを延々と……そう!延々と妄想し続けた!そして、俺にある魔力の才能すべてを女の子を裸にすることに使ったのだ!!」
最悪だ。
そして、イッセーはこの酷い必殺技の修行に十日間の間ずっと果物や野菜を使って練習し続けてきた。相変わらずエロには妥協しない男だ。
そして、相手の服に触ることで相手の衣服を弾き飛ばすイメージを魔力に乗せて送り、タイミングを見計らって術式を起動させる。
これが史上最悪の必殺技“洋服崩壊《ドレス・ブレイク》”の全容だった。
「最ッ低!!女の敵!!」
「「ケダモノ!性欲の権化!!」」
その罵りも、イッセーは賛美の声に聞こえてくるから不思議だ。
そもそも、本当の意味で女の敵と言えるようなライザーに仕えているお前らが言うな、という話なのだが。
「フハハハハ!!何とでも言えい!!そして、これはトドメの一発!」
そう言ってイッセーは彼女達にあるものを投げつける。
「痛ッ!なにこれ……うっ、ああああああああ!!」
「「痛い!痛いよォォォォォ!!」」
小猫に組みふせられた戦車が、彼女たちの痛がりように驚く。
「な、なんなの!?あの痛がりようは!?」
「すぐにあなたも同じになりますよ。」
そう言って小猫が同じようなそれを突き刺した。
「うっ!こ、この痛みは……まさか!!」
戦車が何かに気づいた。
が、彼女たちが痛がっている間にイッセーたちは体育館から脱出する。
「に、逃げる気!?ここは重要拠点なのに!!」
その行動に驚く戦車。だが、謎の痛みで身動きができない。
「部長!プラン通りに行きました。小猫ちゃんと脱出してます!」
イッセーが逃げながら、リアスに連絡を取る。
ゲームの参加者全員には、イヤホン型の通信機が配られており、それを使ってお互いに連絡を取り合うことができる。
『わかったわ、イッセー。なるべく早く離れなさい。作戦通りにね。』
イッセーの報告を受け、リアスは二人に速やかなる退去を命じる。
確かに体育館は重要な拠点の一つだ。だが、それはその場所を確保し続けるだけの戦力の余裕があればの話。
イッセーたちには元々、本陣の他に拠点を構える余裕はない。ならば、欲しければくれてやるだけだ。
そこに居続けられれば、の話だが。
脱出し終えたイッセーは隙かさずに連絡を入れる。
「ダイスケ、こっちは脱出した。獲物も餌に食いついて檻の中だ。お前がくれたアレのおかげで、足止めも成功だ!」
『了解、了解。これより体育館に熱線一発食らわせる。』
直後、体育館が青い光の柱の中に消える。
『ライザー・フェニックス様の兵士三名、戦車一名、リタイヤ。』
審判役のグレイフィアのアナウンスが聞こえる。
「うお!……相変わらずすげえ威力。」
「イッセー先輩に負けず劣らずですね。」
二人が感心する一方、ライザーは面食らっていた。
「なんだ今のは!?雷の巫女の一撃じゃあないぞ!?あんな攻撃ができる眷属は、リアスのところにはいなかったはずだ!!」
そう驚く内、再び青白い光の柱が見える。
『ライザー・フェニックス様の兵士三名、リタイヤ。』
ライザーは再び驚く。
瞬く間に自分の手駒が七名も失われた。
しかも、やったのはマークしていた朱乃ではない。攻撃方法が違う上に、マークはライザーの女王が勤めている。動きがあれば何か報告があるはずだった。
そこで、ある可能性にたどり着く。
「まさか……宝田大助か!?」
そうであれば説明がつく。
だが、離れた二箇所を続けざまに攻撃できた理由がわからない。
「なんだ……。何が起こっている!?」
その答えは、作戦会議にまで遡る。
リアスの作戦の穴をダイスケが指摘した時だった。
「多分、あの焼き鳥は朱乃さんに女王でマークするつもりだ。そこを利用する。」
「利用って、どうするんだよ?」
イッセーの疑問を呈する。
「朱乃さんには徹底的に技術面でのサポートをしてもらって、基本的に派手な動きを避けてもらう。そうすれば、大規模な攻撃を行なっても、朱乃さんが動かなければ奴らは混乱する。」
「なるほど、そうすれば朱乃が女王を引き付けるだけじゃなく、敵の情報を乱すこともできるというわけね。でも、支援そのものは誰がするの?広範囲の攻撃ができるのは朱乃だけよ。」
リアスの疑問はもっともだった。
木場と小猫は一対一が得意な典型的な歩兵の役割だし、イッセーには敵本陣に入って昇格しなければならない役割がある。
回復役のアーシアも問題外だし、リアスは大将なので動けない。となれば答えは一つ。
「その役割は俺がやります。」
ダイスケが名乗りを上げる。だが、リアスはその申し入れを却下する。
「ダメよ。朱乃が広範囲を攻撃できるのは雷だけじゃなくて、空を飛んで戦場の全体像を見渡せるからなの。空を飛べないあなたにはできない役割だわ。」
そのリアスの言葉に、ダイスケはいやいや、と首を振る。
「できるんですよ。しかも、相手に見つからずに戦場全体を攻撃圏内に入れる方法が。」
そういってダイスケが下を指差す。
「下って……地下か!?」
イッセーの言葉に、ダイスケは頷く。
「グレイフィアさんが言ってただろ。バトルエリアは駒王学園の敷地内。そして上空と地下の±100mって。この学校の地下にはな、かなり大型の下水道が通っている。そこを利用するんだ。みんなで敵の眷属を足止めし、そこに俺が熱戦で砲撃する。」
「確かにそれならいけるかもしれないわね。でも、フィールド内に収まるの?」
リアスの言うとおりだ。いくら地下がフリーゾーンと言っても、フィールド内に収まっていなければ意味はない。
「大丈夫です。建築基準法とか、土地関連の法律だと地下30m以下は自由に開発していいんです。それに、下水道が配管されているのは最低でも地下4.5m以下。マンホールも敷地内にいくつもあるんでどこからでも出入りできますし、万が一襲われても警戒するのは前と後ろの両方で済みます。」
「そうか。じゃあ、俺たちも下水道を使って移動すれば!」
「いや、それはダメだイッセー。あくまでもこれは相手が「常識の範囲内」で戦っている時に有効なんだ。だからこそ、眷属の皆は「普通」に地上で戦う必要がある。」
ダイスケの案に必須なのは、相手に同じ土俵の上で戦っていると思わせること。だから、眷属全員が地下から奇襲をかけるというのはできない。
「うん……なら、この案はいけるわね。だけど、よく下水道を利用するなんて思いついたわね。」
リアスが感心し、ダイスケが答える。
「この前、たまたまうちの近所で下水道の工事をやってて、その時に作業員さんに色々と教えてもらったんですよ。休憩中とかに。」
「なるほど、それで思いついたのか……。でも、地下にいるときの現在位置の確認はどうするんだい?それがわからないと、君の熱戦で正確な砲撃が出来ないよ?」
木場の言うとおりだ。地下では相手の位置はおろか、自分の位置も見失いかねない。
「それについては朱乃さんにお願いがあるんですけど……。」
「あら、私に?」
ダイスケがおずおずと朱乃に頼む。
「俺のつけている時計に地図がホログラムで出るようにして欲しいんですよ。それも、自分の位置や方角もナビしてくれるような。それができないと、この作戦が成立しません。……お願い、できますか?」
ここまで下手に出るダイスケは珍しい、とイッセーは思う。
普段のダイスケは、たとえ相手が女であろうと先輩であろうとも容赦ない対応をする。
だが、朱乃は別だ。
これまでで何回もダイスケは朱乃に弱みを握られている。その上借りを作ったら何を要求されるか、いや、脅迫されるかわからない。
「わかりました。ダイスケくんのため為のみならず、部長のためでもありますわ。やらせていただきます。」
「あ、ありがとうございます!!」
意外なほどあっさりと快諾する朱乃。だが。
「その代わり、うふふふ……。」
「な、なんなんですか!?何をさせようって言うんですか!?」
朱乃の黒い笑みに戦慄するダイスケ。
「まあ、今は状況が状況ですし、またこんどということで。」
フェイントだったようだ。
「し、心臓に悪すぎですよ……。」
「まあ、覚悟を固めておきなさいな。だけど、相手も移動するのよ?通信で相手の位置を知るにしても、足止めしないと。」
リアスの指摘はもっともだ。
「そこで、コイツの出番です!」
そう言ってダイスケがリュックから取り出したのは、鉄の棒、いや針だった。直径は8mm。長さは30cmほどの暗器になる鉄針だ。
無論、ただの鉄針ではない。
「コイツの持ち手は一般的な鋳鉄です。ですが先端は、十字架を溶かした銀の棒を溶接してあります。」
その言葉に全員が驚いた。
十字架は、悪魔にとっては毒物に等しい。しかも、日常で目にかける機会は少ないものだ。それをどうやって加工ができるほどの量を確保したのか。
「みんな、アーシアが堕天使にさらわれた件は覚えているよな?あの教会の地下で拾ってきたんだ。」
ダイスケの言葉に、木場があることに気がつく。
「ひょっとして、その十字架って僕や小猫ちゃんが戦っていた神父達が身につけていたものかい?」
「Exactly(そのとおりでございます)もしかしたらって探したんだけど、いやあ、出るわ出るわ。ほかの貴金属でできた聖具とかもさ。思わず半分ほど貴金属屋に売っぱらってやったぜ!」
ダッハッハ!と笑うダイスケだが、やってることは完全な拾得物横領だ。しかし、木場はダイスケの強かさに感心せずにはいられない。
「まったく、よくそんなアイデアを思いつくよ。たしかに十字架を溶かして作った銃弾は吸血鬼退治にも使われるからね。悪魔にも充分効くよ。」
「本当によくそこまで相手を苦しめるのに頭が回るわね……。しかも私たちも使えるように持ち手を鉄にするなんて。どうやって作ったの?」
リアスが感心してダイスケに問う。
「そこは祖父ちゃんの知り合いの金属加工一筋ウン十年のベテランに頼みました。鉄棒の切断や針への加工は、ノコ盤や旋盤使って俺も手伝いましたけどね。」
先ほどの十字架を売って得た資金から、その工賃が出ている。それでも利益が出ているのだから抜かりはない。
「決まりね。ダイスケの案に乗るわ。」
このリアスの決定により、現在の状況が作られていた。
『しかし、下水道の中の汚水まで再現されてないのは助かったぜ。移動もスムーズにできる。』
「そうか、それは良かったな。取り敢えず指示通りに俺と小猫ちゃんは木場と合流する。」
通信を切り、イッセーたちは木場との合流に急ぐ。
「よし、いこうか。小猫ちゃん。」
そう言って肩を叩こうとしたら、彼女はさらりとそれを避けた。
「……触れないでください。」
明らかに性犯罪者を見るような目付き。
「だ、大丈夫だよ。流石に味方には使わないから。」
「それでも最低な技には変わりありません。」
完璧に嫌われた。イッセーはその事実に涙する。自業自得だが。
「と、取り敢えず、作戦の第一段階は成功したわけだし、木場との合流を急ごう。」
第一段階。
それはイッセーと小猫が餌となり、重要拠点である体育館を敵の戦闘員ごと消し去ること。
そして、バックアップに徹している朱乃が幻術で生み出した偽の旧校舎にさらに別の眷属たちをおびき寄せて木場が足止め。
そしてやはり地下からの一撃で一網打尽にする、というものだ。
次に目指すのは運動場に陣取った敵戦力をイッセー、木場、小猫の三人で強襲し、足止めをしてまた地下から始末する。
その為にイッセーと小猫は移動を開始するが、アクシデントが起こる。
突然の爆発音。
その音の出処にイッセーが目を向けると、見えたのは煙を上げて倒れる小猫の姿だった。
イッセーはその姿を見て、急いで駆け寄り介抱する。
その体は爆発に巻き込まれたかのようだった。
「撃破(テイク)。」
イッセーの頭上から声が聞こえる。そこには空中の魔法陣の上に立つ魔術師風の女が一人。ライザーの女王だ。
「ふふふ。獲物を狩るとき、獲物が何かをやり遂げた瞬間がもっとも隙だらけとなって危険になる。ハ○ター×○ンター第三巻でも見直してきなさい。」
女は嘲笑しながら続ける。
「こちらは多少の駒を犠牲(サクリファイス)にしてもあなたたちを一つ狩れれば十分。ただでさえメンバー不足なのですもの。それだけで大打撃でしょう?それに私たちを倒せてもライザー様は倒せない。元々あなたたちに勝ち目はないのよ!」
女は愉快そうに嗤う。
そこに、小猫が消え入りそうな声でつぶやく。
「……イッセー先輩、すいません……。」
「謝るなよ!大丈夫、アシーアがすぐに回復してくれる!」
「……もっと、部長たちの……お役に立ちたかったのに……ごめんな……さい……。」
イッセーの腕の中の小猫の体が光に包まれる。
次第に体が透けていき、ついに完全に消失する。
『リアス・グレモリー様の戦車一名、リタイア。』
無情のアナウンス。
小猫が無事に救護所に転移されたというのはわかる。
だが、そう頭で理解してても、あの体の重みがなくなっていく感覚、そして彼女が目頭に貯めていた涙。それらがイッセーの怒りを爆発させるのに十分な効果をもたらした。
「降りてきやがれ、この阿婆擦ビッチがァァァァ!!!俺が相手になってやる!!」
次の作戦があることはイッセーにもわかっている。
だが、怒りがイッセーの正常な判断力を麻痺させていた。
「うるさいボウヤだこと。ならばあの戦車と同じく爆散なさい!!」
女の手がイッセーに向けられる。
撃たれる!そう思った時だった。
「あなたのお相手はわたくしがいたしますわ。『爆弾女王(ボムクィーン)』ユーベルーナさん。」
朱乃だった。必要のなくなった幻術トラップを捨てて、イッセーの援護のためにここまで飛んできたのだ。
「あ、朱乃さん!」
「小猫ちゃんの敵は私が取ります。あなたは早く木場くんと合流を!」
「は、はい!」
朱乃に促され、先を急ぐイッセー。
ゲームは中盤戦に入る。
というわけでVS6でした。
次回は話の都合上、ちょっと短いです。
ライザーとのレーティングゲーム決着!
それだはまた次回!!いつになるかはわかりません!!