【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策   作:タマヤ与太郎

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そんなこんなで100話です。皆さんの応援、感想のおかげでなんとかかんとかここまで来れました。
おおよそラストまでの流れは大体できていますが、まだまだかかりそうなのでもう暫くお付き合いください
今回は大分未来の鵺原家のあれこれ。


転生ようじょ(元)、だいぶ未来。

 

地球が魔界に落ち、ガイア連合が【終末】と呼ぶ現象がひと段落してより暫く。

ここ宮城の地は終末における戦いの傷もすっかり癒え、宮城支部長『レン子ニキ』こと藤林蓮司の差配の元、近隣の他県の支部と連携し盤石の態勢を築いていた。

宮城県の片隅、〇〇町。そこにあるガイア連合の出張所にほど近い屋敷では、今日も賑やかな朝食が繰り広げられていた。

 

「……もうすぐ(ちち)上が起床して来られる。皆の者、一時箸を止めよ」

 

そう言い放つのは白髪の青年。長い髪を三つ編みの形に編み、その怜悧な眼差しで広い食卓を隅から隅まで見渡す。

その視線に反応し、食事を一時やめて箸を置いたのは10数人いる全体の半数程度。青年の眉間に深々とした皺が刻まれる。

 

「いいじゃねえのお兄ちゃん! やっぱ飯は美味いうちに食うのが一番だと思うんだよお兄ちゃん! それにお袋(親父)がその事で俺達を怒った事、一度もねえじゃん?」

 

「それは(ちち)上がお優しいからだ愚弟……あとその年になってまで「お兄ちゃん」は心底(マジ)やめよ! (ハズ)いわ!」

 

そう言って白髪の青年に笑うのは、すぐ隣に座っていた黒髪の青年。細身で引き締まった体格をした青年とは正反対に、その体格は白髪の青年より頭2つ3つはつ大きく、人好きのする笑顔を浮かべる頭が載る胴体はその三倍は分厚い筋肉の鎧が派手な柄のシャツを内側から張り詰めさせていた。

白髪の青年は『鵺原左虎(さこ)』。黒髪の青年が『鵺原右龍(うりゅう)』。〇〇町近辺を差配する宮城支部幹部にしてガイア連合黒札、『幼女ネキ』改め『ライドウネキ』*1、鵺原リンの長男と次男であった。

 

「ははは、良いではないか左虎! 右龍はそれほど左虎の事が大好きなのだから。それに、箸を止めるのには反対だ。起きてこられた(ちち)上を賑やかな食卓で迎える方が(ちち)上も喜ばれるだろう?」

 

「陽子、お前もか……はぁ、姉上もだが、我が弟妹達は少々自由過ぎる。こればかりは(ちち)上の悪い所を受け継いでいるな……」

 

食卓に着いていた金髪にオッドアイの、右龍並みに大柄な女性がそう言うと、左虎は頭を抱えて大きくため息を吐く。鵺原家次女、鵺原陽子。この三人は長女にして長子のイズナを除き、最初期かつ同時期に産まれた事もあり、後に産まれた弟妹達のまとめ役を担っていた。

左虎が締め、右龍がまぜっかえし、陽子がその時道理があると思う方につく。そんなバランスで兄弟たちをまとめ上げていた。

大勢が「賑やかに食べて出迎えるべき」で固まりそうなところに、追撃の手を入れる者もいる。緑の羽織を羽織った、大きな狐耳を持った女性だ。四女、鵺原雅。

 

「そうだぞ(もぐもぐ)虎の兄上。龍の兄上(もぐもぐ)も言う通り料理は美味い時に食べるべきで(もぐもぐ)あるし、陽の姉上の言う通り賑やかな食卓の方が(ごっくん)――――――(ちち)上も喜ばれると思う」

 

「雅、お前は食べるか喋るかどちらかにせよ」「もぐもぐ」「そこで食べるのを優先するのも(ちち)上の悪い所に似たな……」

 

「それに虎兄、あたしらも仕事あるしさ、皆だいたい燃費悪いんだから食べなきゃ持たないんだって……あ、ミディアさんおかわり」「はいただいまー!」

 

けだるげな様子で追従するのはブレザーを着て、椅子からサメのような尾を大きくはみ出させた少女。八女の絵恋だ。腐っても高位悪魔である(ちち)親の契約悪魔、ミディア*2をおさんどんに使えるのもこの弟妹ぐらいであろう。

そしてそこに現れるのは黒い長髪にはちきれんばかりの肢体を持った女性。*3リンの妻の1人、美しく成長した文であった。傍らにいる同じぐらいの女性の手を引きながら、食卓のもっとも上座へと移動し、女性を座らせると周囲に頬笑みかける。

この女性こそがかつて『幼女ネキ』と呼ばれ日本中で大暴れの限りを尽くし、成長し『ライドウネキ』と名を改めてからもその雷名はとどまる所を知らない黒札、鵺原家家長にして当代の『葛葉ライドウ』、鵺原リンであった。

……もっとも今は寝起き直後のぼんやりした頭であるらしく、文や遅れて入ってきたノワール達にかいがいしく世話をされつつ差し出される朝食をぱくついていた。

 

「それに、お(とう)様は寝起きで受け答えしても覚えてらっしゃいませんしね。左虎兄様の言う事ももっともではありますけど……」

 

「……それをいい事に言質を取らせようとしたのは誰だったかな、若藻」

 

「~~~っ! もう、錠平! あなたはまた昔の事を蒸し返して!」

 

「先週の事だろう。第一、その先週が一度目でもない辺り、これまでに何度やっているのやら」

 

狐耳にセーラー服の少女が口を開けば、隣に座っていた詰襟の少年が嘆息する。六女、鵺原若藻と、双子の弟である三男、鵺原錠平。

その横ではカジュアルな格好をした少年、四男の鵺原来人がくすくすと笑い、直後携帯に着信があったのを見ると立ち上がる。

 

「さて、僕は食べ終わったし、翔太郎が呼んでるから先に出るよ。(とう)さん、母さんたち、行ってきます」

 

そう言って来人はリンの方をちらりと見るが、その時、リンが寝ぼけ眼のまま来人の方を向く。

 

「らいと」

 

(とう)さん?」

 

「むりは、するな。わたしも、みんなも、かなしい」

 

「……うん、分かってるよ。……行ってきます」

 

リンが寝ぼけている時、それは己を理性で律していない時であり、その時の言葉に嘘偽りはない。

それを分かっている来人は先程よりも柔らかな笑みを浮かべると食器を片付け、相棒の下へと向かうのであった。

 

 

 

朝食から少しして。脳が活動を始め完全に目覚めた後、リンは子供達との歓談をした後自室で外出の準備を始めた。

 

「――――――では、行くか。ノワール、文、後は任せる。数日は戻れん、何かあればお前たちの良いように動かせ」

 

「かしこまりました。大方の所は左虎さんが上手くやってくれるでしょうし、私達は楽をさせてもらっていますけど」

 

「イズナが私に似て鉄砲玉気質だからな……あいつには世話をかける。文も、それとなく気遣ってやってくれ。

 ……あと、錠平もな。次代のライドウを目指しているようだが……まあ、あと何十年かはくれてやるつもりもないし……

 第一、当代のライドウの息子だからとライドウを目指さずとも良いのだ。それをあいつが心底望んでいるなら別だが」

 

「うん、分かってる。私の息子だもの。ホシノちゃんにもよろしくね。今度またうちにおいでって伝えてほしいな」

 

この十数年ですっかり逞しく、美しく育った文の返答に満足げな笑みを浮かべると、リンは黒スーツの上から黒字に赤い雲の意匠のあるマントを羽織り、軍帽を被ると部屋を出る。*4

そこに現れたのは数人の女性達。先頭に立つのはつややかな黒髪を長く伸ばし、狐耳を生やした女性―――すっかり大きくなった長女、鵺原イズナ。傍らにはパートナーであるアズサを連れている。

その後ろには白髪にボディスーツ状の衣装を纏った女性と、水色の髪にクラシックなナース服を着た少女。三女の薔花、そして七女の美音だ。

 

「イズナ達か、どうした?」

 

「はい! (ちち)上がお出かけになられると聞いたので、ご一緒しようかと!」

 

「メシア教の本拠に行くのなら、護衛ぐらいは付けていくべきだと思う」

 

「……はぁ。薔花と美音も、同じ意見か?」

 

「私は別に護衛なんていらないと思うけど……でも、(とう)さんがホシノに会いに行くならドンパチ期待できそうだし、ついて行きたいかしら」

 

「私はアズサ義姉様と同意見です。お(とう)様やホシノの身の安全を守るためにも、護衛を連れていくべきです」

 

四者四様の返答を受け、リンは少し考え込み……口を開く。

 

「ならん。連れて行くのはキャナルと夢だけだ」

 

「えぇ!? ずるいです! 私も(ちち)上とお出かけしたいです!」

 

「イズナ、遊びに行くのではないのだぞ。護衛を護衛するなんぞ滑稽な話しだ。私がホシノの護衛なのだ、夢を連れて行くのはホシノと最も親しいからだし、キャナルはその母だ。

 私がいない間はノワールに全権を預けてある。このご時世だ、お前たちの仕事など山ほどあるぞ。美音は学校、イズナとアズサ、薔花は宮城を守れ。

 第一イズナ、お前は夜宵を監督していろ。良いな?」

 

「うぅ~……分かりました……」

 

ふくれっ面のイズナの頭を軽く撫で、他の3人にもそうした後、リンはその場を離れる。

その後に向かうのは孔雀明王の格納庫……ではなく、家からほど近い場所にある一神教調和派の教会。妻の1人である日向の家だ。

礼拝堂の扉を開ければ、そこでは母となり、一層美しくなった日向、豊かな黒髪を縦ロールにした少女、日向の娘である九女の武乃と、ラプンツェルの娘、十女の笑里が静かに祈りを捧げていた。

 

「……礼拝の時間だったか、悪い事をしたな」

 

「構いませんよ、リンさん。今日はホシノちゃんの所に行かれるんですよね?」

 

「ああ。その前にお前たちにも挨拶しておこうと思ってな。飯の時間は、目覚めた頃には食い終わって礼拝に行ってただろう」

 

「結構律儀な所ありますわよねお(とう)様。そう言うところがお母さま達に変わらず好かれる秘訣なのでしょうけど」

 

「好きでやっていることだ。大好きな妻や子供たちの顔を見る事を厭う程人でなしではないつもりだぞ、武乃」

 

そう言って武乃に笑いかけるリンであったが、笑里が足元に来て跪き、祈り始めたのを見て自分もひざを折る。

目線の高さを合わせれば笑里もにっこりと微笑み、リンに抱き着いて頬ずりをする。

 

「お母さまの無事をお祈りしておりました。お母さま、夢姉さまやキャナル母様もですけど、ご無事に帰って来て下さいね」

 

「……ああ、当然だ。お前は他の皆の言う事を聞いて、良い子にしているんだぞ。さて、お前らの顔も見たし、そろそろ出立する。

 何かあればノワールか文の指示を仰げ。まあ、今更我らに喧嘩を売って来る度胸もあるまいがな」

 

「……ご武運を、リンさん」

 

日向のその言葉を背に受けながらリンは礼拝堂を出ていき、そのまま孔雀明王の格納庫へと向かうのだった。

 

 

 

その後、メシア教穏健派本拠地。リンは帯同しようとするメシアンを無視し、無人の野を行くがごとく廊下を突き進んでいた。

その後に続くのはメシアンらしい僧衣を着た女性、そして緑の長髪の女性。一緒に連れて来たリンの五女、夢だ。

 

「ひぃん、お(とう)さん、もうちょっとゆっくり歩こうよぉ……」

 

「ラ、ライドウ様! お待ちください! ご案内しますので!」

 

「――――――それはホシノにこの腐ったLAW臭い空気を長く吸っていろと言う事か?

 それに今日はショタおじの誕生日。一刻も早く本部に戻り、ショタおじとホシノを引き合わせねばならん。親子の団欒をお前に邪魔する道理があると?」

 

歩調を緩め、後を追う2人を振り返るリン。その目は鋭く細められ、殺気すらにじませながらメシアンの女性を睨んでいた。

終末が過ぎて暫く、メシア教系のシェルターも数多く、その庇護のもと暮らしている人間も多い。しかし、子宝に恵まれた今ですら、リンのメシア教嫌いは健在なのであった。

 

「ショタおじがどうかは知らんが、私が貴様ら腐れ破戒僧(メシアン)共の存在を認めているのは、お前たちのトップがホシノだからだ。

 ホシノはショタおじの娘、それがトップに立っているからこそ私はお前たちに必要以上の締め付けは行っていない」

 

(……でも、その『必要』って完全のお(とう)さんの主観と認識だから、余所から見ると苛烈なメシアン弾圧にしか見えないんだけどね……これ言うとお(とう)さん怒るから言わないけど)

 

冷や汗を垂らしながらもユメは内心でひとりごちる。夢が産まれた頃からリンはこうなのである。

『メシアンのせいで魔界に落ちたこの世界の現状を認識してもなおメシアンを名乗るなら、これまでの、そしてこれからのメシアンによる責をメシアン自身が背負い償わねばならない。己の行動に対する責任を己で負う、その程度も出来ない奴が私に意見するな』。

夢の実母であるキャナル、そしてリンの妻のまとめ役であるノワールに聞いても、(ちち)は末の妹、笑里より幼いころからこうなのであると言う。

確かに自分もメシアンってちょっとね……と思う事はあれど、流石にここまで苛烈に弾圧、排斥する気にはなれない。母譲りの穏やかな気性である夢には、その辺り、リンにしかわからない事情があるのだろうなあ、と思っている。

 

「―――そして、私にとって貴様らメシアンがどうなろうと私の知った事ではない。私が守るのはホシノだけだ。そうあれの母と約束したこともあるが……

 あれが望んだにしろ望まなかったにしろ、ホシノはメシアンになるしかなかった(・・・・・・・・)奴だ。あいつは腐ってもかつての穏健派トップの娘だからな。あれが纏めねば、もっと混沌としていたろう。

 産まれた子に罪はない。あいつがメシアンのトップに立った選択を否定はすまい。それで助かっている同胞も数多い……だが」

 

「ひっ」

 

刃の如き視線に射竦められ、メシアン……たまたまリンの応対に出ただけの司祭位のメシアンは、息を詰まらせる。

 

「それに引き換えお前らは何だ? なぜおまえたちがホシノに代わってメシアンを纏めなかった?

 お前たちがメシアンを纏め、ホシノをショタおじに預けていれば……ホシノが家族で離れ離れになることはなかった。

 黒星と、輝子と、そしてショタおじと、家族仲良く暮らしていく未来もあった。だがお前たちがそうさせなかった。お前たちはいつもそうだ、誰かに頼り、縋り、自分からは何もしようとしない。

 貴様らのような屑がいるから、ホシノという少女が祭神輿に担ぎ上げられ、満足に家族とも会えん環境に追いやられていると何故気づかん?」

 

「まあまあ先生、その辺にしといてあげてよ。その子何にも知らないんだからさ」

 

「む」

 

横合いから入って来た言葉に振り向けば、そこにはリンよりも頭1つか2つは小さい少女がそこにいた。現メシア教穏健派一応のトップ、ホシノこと峰津院ホシノ。リンが迎えに来たショタおじの娘であった。

リンはその緩い空気に当てられたか殺気を収め、憮然とした顔で改めてホシノに向き直る。

 

「無知は罪だ。知る必要がありながら知ることを怠るならば、それは死にすら値する大罪だ。

 ……いや、知っているからこそか? 全方位から敵意を向けられているメシア教という現状を直視してしまえば狂ってしまうかもしれん。

 まあ、その程度で狂う程上等な脳味噌はしておるまいが」

 

「先生ってほんと誰に対しても容赦ないよね……もうちょっと手心とか……」

 

「私は努力をこそ尊ぶ、それだけの話だ。手心を加えてほしいのならばそれに見合う努力をするのが道理。お前のようにな。

 こいつらメシアンはそもそも、地球を魔界に堕とし、幾多の罪なき人間を殺め、辱め、それでもなお恥知らずにもメシア教を名乗る社会のゴミだ。

 そのゴミ山の天辺に座らざるを得ないお前が心配でならんよ、私は。代わってやろうか?」

 

小首を傾げたその問いに、ホシノは深々とため息を吐く。この人はいつもこうだ。何かとこのメシア教穏健派の本拠地でもあるシェルターに出入りこそするが、メシアンに対しては嫌悪と侮蔑を隠しもしない。

ガイア連合の盟主である父への義理と、先代の穏健派トップである母との『約束』からか自分に対しては非常に親身になってくれているが、それでも事あるごとに自分を穏健派のトップから降ろそうとして来るし、制止しようとしたメシアンを殴り飛ばしたことなど数知れない。

 

「そりゃ代わってくれるなら代わってほしいけどさ……そしたら先生、一族郎党皆殺しにするじゃん?」

 

「失敬な、私とて今の穏健派がいる事の重要さ程度は理解するぞ? 全員は殺さんし、殺すにしても無駄には殺さんよ」

 

「……具体的には?」

 

中身()だけ入れ替える。これでも受け答えのできる簡易シキガミ程度は作れる、保護しているシェルター民以外の全ての中身をシキガミコアに入れ替えれば解決だ。

 ガイア連合に歯向かうことなく、各地のシェルターを維持することができるのならば問題なかろう。メシアン共も己の肉体で真に世界に貢献できる。うぃんうぃんという奴だな」

 

「問題しかないけどね!? 夢ちゃんほんと先生のこれどうにかなんない!?」

 

ホシノは思わずツッコミを入れながら夢を見るが、夢は夢で半泣きになりながら首をぶんぶんと横に振る。

 

「ひぃん……お(とう)さんの気持ちもちょっとは分かるし、何よりお(とう)さん、この手の事については絶対に譲らないんだもん……」

 

「譲る道理がないからな。今まで散々異教徒を玩具にしてきたのだ。今度はこいつらの番が来たというだけの話だぞ?

 第一、私は入れ替えた後の魂はきっちり葬ってやるぞ、神道式で。過激なアンチメシアンに比べたらまだ穏当な方だと自負しているが」

 

「いやまあ……そう言われるとなんとも言えないけどさ……まあ、いいや。仕事も片付けたし、行こうか先生。これ以上居ると先生がここ吹っ飛ばしそうだし」

 

「そうか。ならとっとと行くぞ。荷物は持ったな? ショタおじに手土産がいるならどこぞに寄っていくか?」

 

そう言って即座に踵を返すリン。その背を追いながら、ホシノと夢は苦笑しながらも盛大な溜息をつく。

 

「……夢ちゃん、先生ってホントこういうとこだよね……」

 

「これにずっと付き合ってるお母さん達ってホント凄いと思う……」

 

 

 

「――――――そういえばさぁ」

 

それから、少しして。山梨へと向かう孔雀明王の談話室で、ホシノはぐったりとテーブルに身体を投げ出していた。

それはメシア教穏健派のトップという重責から一時でも逃れられたという解放感でもあり、この目の前にいる『鵺原リン』という恩師であり来るたびに騒動を巻き起こす核爆弾と一緒にいる心労からでもある。

 

「どうしたホシノ、腹が減ったか? 私も調度小腹が空いたところだ、キャナルに何か作らせよう、少し待て」

 

「いや先生、さっきどんぶり飯で5つは軽く平らげたじゃん、どんな燃費してんのさ……いやさ? 先生って私が生まれた時からずっと私の事かまってくれてるけど、なんでなのかなって。私がパパの娘だから?」

 

そう言えばなんでだろう、とホシノは思う。この黒札、『ライドウネキ』こと鵺原リン。超ド級のメシアン嫌いであると有名である彼女は、ホシノが物心つく前から良くホシノのもとを訪れては、

ホシノを誘k……もとい連れ、ちょくちょく山梨へと向かい父親である峰津院堂満……ガイア連合でいうところの『ショタおじ』『神主』の下へと連れて来てくれた。

元々専用の電脳異界において会う事こそしていたが、それはそれとして現実世界で面と向かって出会う事も大事だと譲らず、節目節目に『時間を空けておけ、余計な被害を出したくなければ』*5と一言言ってから訪れ、こうしてホシノを山梨へと連れて行ってくれている。

その流れでリンの本拠である宮城で様々な人たちと触れ合ったり、命を狙われた際に守ってもらったりなどしていたが……思えば面と向かって理由を問うたことがない事に、ホシノは気が付いた。

ホシノのその問いに、リンはきょとん、とした顔で暫し呆け、不思議そうな顔で口を開く。

 

「子が親に会うのに理由がいるのか?」

 

「……え、もしかしてそれだけ?」

 

「それだけだが。まあ厳密に言えばお前の母親とした約束もあるし、ショタおじへの恩義もあるが……突き詰めればそれだけだ。

 親兄弟、お前で言うならばショタおじや黒星、輝子に会うのに理由なぞいらんだろう。カス共の中にはショタおじに多大な恩を受けておきながらお前の命を狙う奴らもいるが……

 子が親を慕う心、子が親の愛を受ける権利、それは阻害されてはならんことだ。邪魔をするならば同胞(くろふだ)であろうと斬る」

 

静かだが、断固たる言葉だった。

そう、ホシノは命を狙われたことがある。それは過激派のみならず穏健派(身内)にもあるし、何だったら、『ショタおじ』の子でありながらメシアンである事に対し、黒札が命を狙ってきたこともある。

無論父親(ショタおじ)に近い者達は自分の事を認めてくれているし、そうでなくとも手を出してくることなどまずない。手を出してくるのは大抵そういう主流からは外れた者達だ。*6

これはガイア連合がそもそも『組織というよりは同好の士の寄合サークルに近いもの』であるので、根本的には一枚岩ではないからとリンは言っていたが……

 

「ホシノさん、お(とう)さん、本当にそれだけだと思うよ。お(とう)さん、ホシノさんにお(とう)さんの両親の話、してなかったっけ?」

 

「……ふむ、そう言えばした覚えがないな? 聞かれてもいなかったし、喧伝する事でもないしな」

 

夢にそう言われリンが語るのは、自分が生まれるよりも昔、地球が魔界に堕ちるより前、その寸前で辛うじて世界が踏みとどまっていた時代の事だった。

大きな争いの後、日本の霊能家系の多くはメシア教により断絶の憂き目にあった。そこから暫くし、『終末』の7・8年ほど前、リンは産まれた。

元々日本の霊能家系の生き残りとして日本中を逃げ回っていたリンの父母はある年の瀬いよいよもって追い詰められ、逃がす目的でリンを寒空の下捨てたのだという。

そこから心ある人間に拾われ、紆余曲折あった後、自分も良く知る宮城支部長の『レン子ニキ』に救出され、リンはガイア連合へと加わった。

義兄同然のレン子ニキやその妹達、後に出会う事となった曾祖母との出会いこそあったが、リンには親に抱かれた思い出も、愛された記憶もほとんど持っていない。*7

だからこそ、リンは家族の、肉親のつながりというものを非常に大事にしているのだった。

 

「私は様々な人たちからの愛を受け今ここにいる。だからこそ、人間が人生においてはじめて受けるだろう『愛』、肉親からの愛情を受けられない、などという事はあってはならない。

 無論、お前の事をショタおじが愛しているのはお前も知る所だろうが……親の誕生日ぐらい、面と向かってショタおじに甘えても良かろうさ」

 

「……夢さん、ちょっと私のほっぺたつねってほしい。先生がまともなこと言ってる。私今仕事しすぎて寝落ちしてるのかも」

 

「あのね、ホシノさん、気持ちはすっごい分かるけど今お(とう)さん真面目な話してるからね?」

 

「……私にここまで言わせてそのリアクションとは良い度胸だな? そう言えば黒星が、『また姉貴が『パパのお嫁さんになる!(ガチ)』つってたからシメてやってくれ』と言っていたな……お前、いい加減諦めろとあれほどいったろうにまだ懲りんか」

 

「ヒェッ……で、でも! 私のこと人間扱いしてくれて! 夫婦の時間を大事にしてくれて! メシア教のことまで考えてくれる人なんてパパしかいないじゃん!」

 

「実の父親である時点で論外だ馬鹿垂れが!」

 

ホシノの頭にげんこつ(カミナリ)が落ちる。そう、この間の団欒の時の事、『結婚相手として求める条件』としていくつか挙げた際に、最後の1つを聞いた異母弟、黒星がそう言って切り捨てたのだ。その一件がどうやら本人から漏れたらしい。

 

「黒星の『24時間中48時間働いてるやつぐらいだろ』に『パパならできたよ?』と返しもしたそうだな……*8お前は実の娘に貞操を狙われる父親の気持ちを考えた事があるのか!

 私はイズナがアズサとくっつくまで気が気ではなかったのだぞ!? 昼寝してて寝ぼけてる所に一発キメようとしてきたり、ちょいちょいエロ自撮り送って来たりされた父親の気持ちが分かるか!」

 

「先生それ今初めて聞いたんだけど!? 知りたくなかったよそんな事実!」

 

「私とて言いたくなかったわ! とにかくホシノ、いつもの復唱!『ショタおじの可能は我らの絶対不可能!』repeat after me!」

 

「ぱ、パパの可能は私達の絶対不可能!」

 

「よし! 次そんな事言いだしおったらミナミィネキの所にぶち込むからな! 穏便かつ濃厚に処女を奪われるがいい!」

 

「あの人女だよ!?」「私も女だが」「そういやそうだった?!」

 

一時しんみりした空気を吹き飛ばすようなドタバタを繰り広げながら、孔雀明王は山梨へと飛ぶ。

その後の事は……ノワール達に送信された『子供たち3人に囲まれて満面の笑みのショタおじ』の写真が、全てを物語っているだろう。

 

 

 

*1
流石に中学正ぐらいになった時点で幼女ネキから切り替えた

*2
前回仲魔にした一般通過吸血鬼。終末後だとあれからもっとレベルが上がっていると思われる

*3
外見的なイメージは『ブルーアーカイブ』の羽川ハスミ(ただし黒い羽はない)

*4
『幼女ネキ』時代から愛用している暁マントと十四代ライドウの制帽

*5
※来た時に仕事をしていたりすると問答無用で誘拐していく

*6
自己解釈。でも実際ガイア連合上層部からは容認、あるいは黙認されてそう

*7
全くないわけではないが、大抵物心つく前の記憶がフラッシュバックした記憶であり実感はあまりない

*8
『小ネタ エイプリルフールという名の未来の可能性ネタ』イズナほどガチに考えてはいないだろうが




そんなわけで100話、未来の鵺原家のお話でした。5男10女(+嫁)の大家族です。多分ここから増える可能性もままあります。
前書きでも書きましたが、ここまでこれたのは応援や感想をくれた方々、各三次で取り上げてくれたりした三次作者の方々、そしてカオ転本編を書いてくれたどくいもさんに、惜しみない感謝を。


□解説

・幼女ネキ(改めライドウネキ)
あの後嫁全員順繰りに孕ませて産ませたやつ。昔言ってたようなボンキュッボンのナイスバディに育った。身長180cmぐらい、ノワールよりちょっと低い。
ホシノの後見人兼外出時の護衛みたいなことをしながら宮城の平和を守っている。子供達との年齢差が姉と弟妹ぐらいの差しかないのは大して気にしてない。
家族に囲まれて超満足しているが、性欲は据え置きなので多分最終的にもっと子供は増える。
↓ざっくりした外見。

【挿絵表示】


・文&日向
だいたいどっちも20代前半ぐらいで外見上の老化が止まっている。文は羽のないブルアカのハスミそっくりの外見になり、日向は日向で超美人かつ数段ナイスバディになってる。

・他の嫁ズ
日々リンに愛情を注ぎ注がれして幸せな毎日を送っている。タマは孫ができたりもした。

・イズナ&アズサ(大人のすがた)
あれから大分たってすっかり大人になった二人。色々あって結婚、アズサは『鵺原アズサ』となった。ギリギリイズナの性癖修正は成功した。
外見的には20代ぐらいに成長した上で、イズナがロングヘアになってセーラー部分が忍者装束になった感じ、アズサは髪を三つ編みにした上で、上着がイズナ同様の着物を羽織っている。
性格的には年月が経ったことで深みは出ているけどほぼそのまんま。婦婦(ふうふ)揃って近隣の青少年(たまに女の子も)の初恋キラー。
三十路ぐらい。

・左虎&右龍&陽子
「転生ようじょ、ちょっと未来。」で孕んだと言及されていたやつら。それぞれ左虎がブラン、右龍がノワール、陽子がラプンツェル。陽子は両性。
それぞれ外見が『忍者と極道』の左虎&右龍、『FGO』のバーゲスト。職業は左虎が医師、右龍がレスラー、陽子が専業デビルハンター。
戦闘スタイルは大体原作に準じるけど、左虎はブラン(デモニカ系シキガミ)の子なので部分変化や全身変化も可能。最終手段として右龍が左虎(ないし他の弟妹)を鎧として纏う形態もある。
陽子はFGOのバーゲスト的鎧の代わりに先生ネキ謹製の専用デモニカ「ラインバレル(外見は鉄のラインバレルの同名機)」を所有。
それぞれ物理に加えてブフ、ジオ、アギ系が得意。産まれ順としては左虎と右龍が数秒差ぐらい、そこから1~2か月ぐらい経って陽子誕生の順番。
20代後半~三十路手前ぐらい。

・薔花&雅
外見は「勝利の女神:NIKKE」の薔花と「ゼンレスゾーンゼロ」の星見雅。薔花が紅蓮(マタドール)の子、雅がタマの二番目の子。双方専業デビルハンター。
薔花が物理特化(+マタドールのスキル)、雅が物理系+ブフのペルソナ使い。性格は薔花が言動は原作ままだけどバトルジャンキー、雅が原作に加えはらぺ子属性付き。
20代前半ぐらい。

・夢
外見は「ブルーアーカイブ」のユメパイ。キャナルの子。兼業デビルハンター(大学生)。ホシノの方が年上(ホシノを懐妊した時期的にイズナのちょい下ぐらい、左虎達と同年代ぐらいと推測)。
戦闘時は射撃スキルを使いつつ盾でタンク役をしていくスタイルだけど、キャナルの子なのでロボット系の簡易シキガミを複数並列運用して戦ったりも出来る。性格はユメパイまんまだけど実は大分頭が良い。
19歳ぐらい。

・若藻&錠平&美音
外見は若藻が「ブルーアーカイブ」のワカモ、錠平が「デビルサマナー葛葉ライドウ」のライドウ、美音が「ブルーアーカイブ」の青森ミネ。学生。若藻と錠平が文の子(双子)で美音がミネルヴァの子。若藻が狐耳なのは文に宿るタマの加護の影響。
戦闘スタイルはサマナースタイルで銃ベースなのが若藻、剣術ベースなのが錠平。若藻は文のワカモスーツをさらにバージョンアップしたものを使用、錠平は古き良き封魔管スタイル。美音は盾とショットガンでタンク役。
性格はワカモまんまかつ「好き」の範囲が家族全員な若藻、その姉に引っ張り回されて少々皮肉屋になりつつある錠平、ちょっと物分かりのいいミネ団長ぐらいの美音。
17歳ぐらい。

・絵恋&武乃&来人
外見は絵恋が「ゼンレスゾーンゼロ」のエレン、武乃が「境界線上のホライゾン」の糟屋・武則、来人が「仮面ライダーW」のフィリップ。学生。絵恋がセリリ、武乃が日向、来人がアイリスの子。
戦闘スタイルはそれぞれ原作に準じる感じ。来人は電霊としての特性を生かし、オラシオニキ(本名「左 塩之介」)の息子、翔太郎と組んで仮面ライダー(むろんWに変身)兼探偵もやっている。大体兼業デビルハンター。

・笑里
金髪、10歳ぐらいの赤眼ロリ。ただしメスドラフ体形。ヌエのデビルシフター。
戦闘スタイルとしてはヌエオンリーだった頃のようじょに準ずる。一番の末っ子なので大分可愛がられている。性格はおしとやかだが、戦いとなると嬉々として暴れるタイプ。家族大好き。
なおラプンツェルとリンの間の子だが、両親が同じ陽子とが父母が逆でラプンツェルの種でリンが孕んだ形になる。両性。
(なので他の兄弟とは親に対する「お(とう)さん」「お母さん」の意味合いが逆になる)

〇番外(作中未登場)

・夜宵
外見は「ダークギャザリング」の寶月夜宵。イズナとアズサの子。(アズサが母)9歳ぐらい。笑里とは友人。
外見上の感情の変化に乏しいが情緒豊かでアグレッシヴな天才児。アナザー幼女ネキ。(生まれた時から父母の愛を一身に受けて育てばこうなったろうなという意味で)
悪霊・神霊系の拘束・封印・使役に特化したサマナーで物理で殴りもする。戦力、または後述の『残弾』として使うために常に霊や悪魔を収集しており、着いたあだ名が『宮城のバケモンマスター』。
使役するほどでもない悪魔はデビライザーに封印し、召喚ではなく攻撃用の弾丸として使用することに躊躇がない。
黒札の孫、神の高位分霊(タマ&イズナ)の子&孫、人造メシア出産母体の天使人間(アズサ)の子というハイブリッドにハイブリッドを重ねたサラブレッド。
(加えて言うならヤトノカミを祀る一族(壬生一族)の末裔の血統と安倍晴明ゆかりの陰陽師(コドクノマレビト大幹部、倉橋黄幡)の血も入っている)
両親やリンとその子供達、宮城の面々に愛されながら日々フリーダムに生きている。


※追記
前回の更新後黒焦げさんからパジャマようじょのFAを頂きました! 大感謝!


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