・余談
ライドウリマスタープレイ中です。いやー音も何もかも懐かしくて楽しい……なんか向かいに比べてバトルフィールド広くなってません?
「ブロウクン……ファントム!」
高速回転するガオファイガーの右腕が光輪を纏い、射出される。ガオファイガーの主武装、右腕を射出する『ブロウクンマグナム』にファントムガオー部分で生み出した『ファントムリング』を付加し貫通力を強化した『ブロウクンファントム』だ。
原作ではリングによって腕を高速リニア回転させることにより発生する力場で貫通力・効果範囲を拡張するものであり、作品後半の主力武装となっていた。
ガイア連合製ガオファイガーにおいては【貫通撃】を付加した右手を撃ち出すブロウクンマグナムに、ファントムリングで回転・貫通力の強化に加え【マカラコワース】【テトラコワース】*1などの防御系スキルや魔法を破壊・解除する効果を付加したもの。
射出されたブロウクンファントムは何らかの防御を貫通し巨体に食い込むが……ファントムリングがバハムートの体に触れた途端に弾け、強化の恩恵を失った右腕が弾かれ、戻って来る。
「やはり通じんか……カーン系を貫通できるというのは発見だが、弾かれたのは素の頑強さか?」
『そのようだね。真・全門耐性ぐらいは持っているとみていいだろう。正直ガオファイガーの武装では倒し切れないだろうね』
「シンプルに武装少ないからな。格闘の他はドリルニーぐらいしかないし。本体の完成を急いだから各種ツールは開発中だし。
しかしまあ、私はガオファイガーには乗りたかったが別に凱兄ちゃんではないのだ。なので普通に武器も使えば魔法も使うぞ! というかこれ根本はデモニカだからな」
『それを言っちゃあおしめえよ』『幼女ネキって原作再現に妥協はしないけどそれはそれで原作キャラのロールにはあんま拘んないからねー。あ、幼女ネキ攻撃来るよ』
「そう言う事はもう数秒速く言え脳缶ニキーッ!」
脳缶ニキの警告の直後、バハムートの口が開き光が漏れる。リンは咄嗟に左手に光輪を纏わせて突き出し、直後、放たれた光の奔流が左手の目前で壁にぶつかったようにして四方に散る。
これもまたガオファイガーの防御装備の再現、『プロテクトシェード』に『ウォールリング』を付加した『プロテクトウォール』。
これは本来『空間を湾曲させ、攻撃に対し反発する防御空間を作り出す』というもので、その反発空間により光学兵器の防御と反射、実弾兵器にも十分な防御能力を有している。
これに関しては比較的原作に近い再現がなされており、ゲーマドライバーの現実世界での使用のために開発した【簡易領域】の技術を応用。掌を中心に円状の、触れたものに対し強く反発するという特性を持った小規模異界を生み出し、接触した攻撃をそのまま相手へと返す。
『ウォールリング』はその特性を強化・拡張し、自機以外を持つ積む広範囲を防御することを可能としていた。
『【プロテクトウォール】も問題なく発動、と。反射できなかったのは向こうの出力が高すぎたのかな? メギドラオンかなあれは』
「おそらくな……しかしなんだ!? バハムートがビーム撃つとかそんなんありか!? というか何でビーム打つんだ!? 魚類の分際で生意気な!」
『幼女ネキ、ダライアスやったことねーな? まあ、推測はできるけどさ』
リンに突っ込みを入れながらカス子ネキが言うには、これは『バハムートはビームを撃つ』というある種の『常識』が作用しているのではないか、という事だった。
『いやさ? この世界にもあるじゃん、某最終幻想シリーズとかバハラグとかグランでブルーなアレとか。*2というかだいたい
『あ―なるほど? 『バハムートは
『脳缶ニキ大当たり。そもそも前世でだってバハムートって言えば某最終幻想シリーズとかグランブルーなアレのせいで『ビーム撃つドラゴン』って認識が一般的じゃん?
だからそれが作用してあのバハムートもビーム撃つようになったんじゃねーかなー』
沈黙するコクピット内。時折「うおおおぉまた撃ってきた! 反射も出来んしこれ下手に躱すと異界ぶち抜いて外に流れ弾が行くな!?」というリンの叫びが響く中、無惨ニキを含めた3人は「いろんな意味で短期決戦で行かないとまずい」*3という方針で固まったのだという。
その頃異界の外部では、リン達が突入した後の残敵掃討及びバハムート異界への外部干渉と維持、そして流れ弾への対処がメインとなりつつあった。
サキエルを中心とした残存天使軍団も段々と数を減らしはじめ、異界から際限なく湧き続ける天使達を人魚ネキがディスクXの効果を模倣した【呪歌】での湧き潰し。
元々使い捨てであるディスクXを使い切ったマイクは他のサウンドディスクを用いて流れ弾の対処をする面々への補助を行っている。全員で突っ込んだ方が早かろう、という意見もあったが、バハムートの攻撃が仮に内陸部に向けば結界があるとはいえ沿岸部の原発にどういう影響が出るかが分からないというのと、
何よりガオファイガーという新しいおもちゃを得てご機嫌のリンに水を刺すのも悪い、という一部の者と、あのようじょが何しでかすか分からないので遠巻きに見ていた方がいいと思う、という大方の者で意見が一致し、異界が崩れバハムートが外に出ないように干渉し、残敵を掃討しつつ流れ弾への対処をする、という方針になったのだ。*4
そんな一同の中、あきつ丸の中で指揮をしていたカズフサニキの下に通信が入る。中国でセフィロスニキ・ジュンニキと共に事後処理に当たっているスカリエッティニキからだ。
『すまない、カズフサニキ。緊急で伝えたい件があってね』
「ああ、こっちも大方片付いては来てるし、問題ない。緊急って事はメシア教関連か?」
『ご名答だ。そっちの報告も受け取ったが……まさかこっちで逃がした連中とそっちで出くわすとはね。
それはそれとしてだ。連中の資料を漁ったところ、例の切り札に関して気がかりな事実が浮上してきてね』
同時に送られてくる資料。それは、今リンが交戦している悪魔、バハムートの資料だった。
メシア教お得意の実験の末に生み出された人造の悪魔、いわばデモノイドに近いもので、天使達にも根本的な制御はできず、素体状態で生み出されたそれを異界に閉じ込めながら時折解放し、様々なものを捕食させながら育成していたのだという。
恐ろしいことに今交戦している100mを越え、レベルもまた100を超える威容ですら資料によれば『幼体』に過ぎないのだという。
確かに伝承のバハムートと言えばひたすらに巨大で、世界すら支えるという。まずあれないが、育ち切っていたらどれ程になるというのか、カズフサニキにも分からなかった。
『ヤツがメシア教の実験で生み出されたのはまあ、いつもの事と言えばそうだが……問題は、あの悪魔が
同時に送られてくる資料。それは実験結果であったが、添えられている写真とそれに付随するプロフィール、それが目を引いた。
見た所日本人女性であろうことは分かるが……付随するプロフィール、その最後にスカリエッティニキの字で書き加えられた一文が、嫌な想像を加速させる。
その内容は、簡素だが、自分達にとってとても重い一文。『追記事項:転生者の可能性あり』。ただそれだけだが、それ以上の重さを持つ文字列だった。
「マジかよ……スカリエッティニキ、ただのメガテン的転生者とかじゃないのか?」
『残念ながら真実だ。ショタおじ、及びくそみそニキの裏付けも取ってある。彼女は……間違いなく
「螺旋丸ファントム!」
リンがガオファイガーの手に生み出した螺旋丸に『ファントムリング』を付加したものを飛ばし、防御魔法を抜けたそれが体表で炸裂し、クレーターの様な大穴を穿つ。
しかしその穴は見る間に塞がり、リンは周囲に広がる異界が僅かに
「異界からエネルギーを吸って回復しているのか、面倒だな……」
『とはいえクトゥルーのように地脈から吸っているんじゃない、周囲の異界を構成するMAGそのものを分解して肉体を再構築しているようだ。このままじりじりと削り合いを続けるのは得策じゃないだろうね』
リンと無惨ニキがそんなことを話していると、カズフサニキからの通信が繋がる。内容は当然、先程のスカリエッティニキからの通信だ。
カス子ネキや脳缶ニキすら渋面を作る事実に、どこか得心したように頷くのは誰あろう、リンであった。
「……なるほどな。黒札を使って作り出したというのならこれほどのものが都合よく私の手の届く範囲に飛び込んできたことにも納得がいく。
3人もうすうす気づいてはいたろう? そもそもこのバハムート、色々とおかしいな? ツギハギというか……中身の詰まった風船というか……こう……」
『オーバーソウルに似ている、ということだね? 確かにあの技術は自分に宿す悪魔、あるいはそれに類するものを魔晶変化させる技法。
デビルシフターが肉体を悪魔に変成させる代わり、媒介を補助としてMAGでもって肉付けするものだ。少なくともデビルシフターのそれはね』
「そう。それだ無惨ニキ。
まあ基本的に指示せねば動かない自我のない人形のようなものだし、そんなことをするなら普通に変身した方が早いし、私はあんまりやらんがな。
多分こいつは、素質のある黒札の悪魔変身能力に外的に干渉し、外部から無理やりMAGを詰め込んで作ったものだ。恐らく素体になっている黒札はデビルシフターなのだろうな」
『なーるほど、まー、やってやれねーことはないわな。多分メシア教そこまで考えてなかったろうけど』
『無理やり詰め込む方法なんて考えたくもないけど、脳缶ぐらしとどっちが酷いか、考えちゃうよね』
嘆息する一同。カズフサニキらには引き続く異界崩壊の阻止と維持を頼むこととなり、結果的にバハムートに挑むのはリン達4人となった。
リンがバハムートをあしらいながらも、残る3人が対策を考える。幸いにして相手の攻撃はパワーこそケタ違いだが単調。油断こそできないが、考える暇はどうにかあった。
『とりあえず目的を整理しよう。目的はバハムートのこの異界内での撃破。そして可能であれば核にされている黒札の救出、になるのかな』
『それでいーんじゃね? でもどうするよ? 奴さんは基本本能で動いてるから動きこそ単調だけどさ、あんのクソでかいのを吹っ飛ばすのは大仕事だぜこりゃ』
『おまけにタフで再生能力もあって、再生するたびに異界を構成するMAGそのものが削れてく。
ダメージ積み重ねていくにしても、そうすると再生からの異界縮小で……うーんめんどくさいね! 一発で吹っ飛ばそうにも下手な倒し方すると素体の黒札が死んじゃうし。
……まあ、ショタおじには悪いけどこれは最悪次善目標ってことで納得してもらうしかないかもね』
口々に言う3人。オーバーソウルを使用できるからこそ、彼らには目標達成の難度が理解できる。*6
オーバーソウルとは、自分に宿す悪魔やペルソナ、そう言ったものに物理的な形を与え、ヒトのまま悪魔の力を振るう事を目的とした技術だ。
しかし、それでもその力は「己」であるし、それを構築するのは基本的に己の力であるからこそ問題なく扱えている。仮に破壊されればそれなりに反動もあるし、下手をすれば死ぬ。
シキガミにより魂の安全を担保されていない相手を救出する前提であるならば手荒な手段は避けたいが、相手は100mを越える巨体の、それも推定レベル100オーバーの覚醒者。
取り押さえるだけでも大仕事だし、今他の面々は異界の崩壊を阻止し、周囲への影響を極力減らす事に注力してもらっている。協力は仰げない。
『それにしたってさぁ、仮にO.S.だとして、本体何処よ? 暴れ狂う巨体の中に埋もれた2m以下の人体とか探すの骨だぜ? そもそもヒトのカタチしてるか知らんけど』
「カス子ネキ、削って再生させたときのMAGの流れで探れんか?」
『できねーこたないと思うけど、上っ面ちょちょっと削った程度じゃ分からんね。せめて半身吹っ飛ばすぐらいの大ダメージは与えんと』
嘆息するカス子ネキ。それが出来れば苦労はしない、と、リンの脳裏に某協会の会長の顔が浮かぶ。
やってやれないことはないが、大規模に再生させた場合、ほぼ確実にこの異界は維持も間に合わず消滅するだろう。仮に吹き飛ばせたとしても、再生が始まり異界が崩壊する前に本体を探り出し、救出しなければならない。
脳缶ニキのぼやいたように、黒札の命と京都周辺地域の安全、その2つが、四人の心中にある天秤にかかっていた。
「――――――いや、方法はある、か?」
そう呟いたのは、攻撃をいなしつつも何事かを思案していたリンだった。
『え、マジでやんの? まあ、やらんで後悔するよりはやって失敗した方がマシだろうけど』
「大火力のあてはある。吹っ飛ばした後の探知は3人に任せたいが、いいか?」
『いやーまあ、やってやれなくはないだろうけど……まあ、今日の主役は幼女ネキだし、判断は任せるよ』
『仮に失敗したとして、悪くて件の黒札が死ぬだけだ。外の皆が全力で抑えれば、可能ではあるだろうね』
口々に言うカス子ネキ、脳缶ニキ、無惨ニキ。3人の賛同が得られたと判断し、リンは声を張り上げた。
「聞こえていたなキャナル! “
『え゛!? いやいやマスター!? そりゃ使えるように万全に整備してますが、あれイカルガ用ですよ!? 第一今のマスターで扱えるか……』*8
「そんなことは分かっている! 分かっているが……今最善の結果を導くためにはどうしてもあれがいる!」
『ああもう、言い出したら聞かないんですから! あとで人魚ネキさんやセリリさんにみっちり怒ってもらいますからね!』
「後の事は後で考える! ラプンツェルとミネルヴァ! 天秤座の武器を呼び戻す! 私の武器の中から好きなものを使って上手いようにやれ!」
相手の返答を待たずリンは【飛雷神の術】でラプンツェルとミネルヴァに持たせていた分の天秤座の聖衣を呼び戻し、腰の壺洞天から呼び出した分も合わせて、完全な状態でガオファイガーのストレージCOMPに送り込む。
そして起動するのはトイボックスやイカルガにも搭載していた【マテリアライズシステム】。ガオファイガーの周囲に巨大に具現化された天秤座の聖衣が浮かび、直後分解し、武器形態となって機体の周囲に散らばり、整列する。
さらにリンは自分に宿す悪魔をすべて呼び出し、巨大なヒトダマとして機体外部に具現化させた。
「
リンの叫びと共にヒトダマが解け、展開した天秤座の武器にまとわりつくように形状を取って行く。
それはリンにとっての『最強』のイメージ、それをモチーフとしたリン自身の『最強の力』の具現化。
リンの高まる感情に応えるようにGSライドが出力を上げMAGを放出していき、数瞬後、そこにはガオファイガーを外套のように覆う青の四腕を持つO.S.が完成していた。
「拡張型複霊甲縛式
『すいません無惨ニキさん! マスターをお願いします!』
『了解したよ』
『そこであたしらには何もないあたり信頼と実績感じるやね』『伊達に被害が酷い方の三馬鹿って呼ばれてないよね』*9
『分かってるんなら自重してくださいよぉ! お二人といるとマスターすっごい楽しそうなんで止めづらいんですってば!』
肩をすくめるカス子ネキと脳缶ニキに悲鳴交じりのクレームを飛ばし、キャナルは周囲に浮かぶコンソールを操作し、いつか使う時のためにと積み込んでおいた装備、無惨ニキ製の兵器“
ガオファイガーの右前腕、そしてO.S.の右腕2本を抑え込むようにしてフレームと装甲が展開、装着されていく。無論、ガオファイガーに装備するものではない以上その接合には無理があり、そこを術式接着剤『ウルトラボンド』で強引に接着し、組み付けてゆく。
『幼女ネキ、当然分かっていると思うけど、本来“神砕雷”はイカルガで使う事を前提に設計したものだ。ウルトラボンドで無理やりくっつけている以上動作はするだろう。撃てもするだろう。しかし、それ以上は期待しないでくれ』
「分かっている! 1撃保てばいい! ファントムリング―――三重連!」*10
弓矢のように構えられた“神砕雷”、その『槍』の先端に、ファントムリングが3重に出現する。左腕と『斑鳩・大太』の左腕で抑えながらも、リンは直感に従い狙いを付ける。
そう、直感なのだ。リンが“神砕雷”を求めたことに理由はない。そうすべきだと思ったから、求める結果を導くためにアレが必要だと、そう直感した。それだけだ。
リンの中のテュポーンがにわかに活性化し、リンからガオファイガーに、ガオファイガーから神砕雷へと、大神より簒奪した雷霆が注がれてゆく。
ガオファイガーと、『斑鳩・大太』とシンクロしたリンの右腕が熱を帯びる。強引に同調率を上げ、襲い来るバハムートへと対応しながらも
『“神砕雷”、チャージ完了。反動は抑えるつもりだけど、使用を想定した機体じゃないし最大出力で撃つにはまだ幼女ネキが弱い。想定した最大出力の7割ほどしかないけれど、それでも半身吹き飛ぶことも覚悟はするように』
「上等! 死ななきゃ安い、蘇生できるから死んでも安い!*11 死んでくれるなよ見知らぬ黒札……“神砕雷”、発射!」
その瞬間、世界が無音になった。否、“神砕雷”射出の衝撃でそのように錯覚しただけだ。しかしそれを認識している余裕はない。発射の衝撃でガオファイガーの右腕は千切れ、O.S.は砕け、亀裂がリンのいるコクピットにまで達する。しかし、発射はなされた。
雷霆を纏い、放たれた杭はガオファイガーを喰らわんと開けた大口の中へと飛び込み、ファントムリングの効果でその外周にも影響を及ぼしながらもその体内を貫通。串を打つようにその巨体を一直線に通り抜け――――――その巨体の後端、1/3ほどを吹き飛ばすのであった。
火花が散るコクピットの中、リンは声を張り上げる。この一撃で倒せるとは思っていない、しかし、この一撃をもって、望む結果を導くために。
「状況報告!」
『こちら無惨ニキ。右腕が肩から吹き飛んだ。“神砕雷”は小破、キャナルさんが回収済み。ガオファイガーそのものは中破と言った所かな。想定より被害は少ないね』*12
『はいはい命子さんだぜー。全身ガッタガタで笑えてくんね。ともあれあたしらもあっちこっち火花散ってるけど無事。けど動くのはともかくこれ以上の戦闘行動は無理だね』
『脳缶ニキだよ。バハムートは動きを止めたけど、死んでないよ。……お、全身のMAGの流れが活性化し始めたね。核―――目当ての黒札がいるのは……みっけ! 胴体中央部、背骨の真下あたり!』
「了解した!」
言うなり、リンはコクピットハッチを蹴り空けて上も下もない異界空間へと飛び出し、ヌエへと悪魔変身。雷雲化を使い、バハムートに穿たれた破孔から潜り込み、脳缶ニキが念話で送って来た座標へと突き進んで行く。
体内を食い破りそこへたどり着くと、そこには肉の塊のようなものがあった。周囲に埋もれるようにして存在しているそれからはでたらめな位置から四肢が飛び出ており、リンのちょうど目の前に憔悴してこそいるが整った女性の顔が半ば埋もれるようにして浮かんでいる。
「こちら幼女ネキ、件の黒札を発見。引き剥がして問題なさそうか?」
『あいあい、こちら命子さん。こっちでも確認。その塊ごとひっぺがしてOKだぜ。ったく、メシア教もいらんことするわ。気脈も経絡もめっちゃくちゃじゃん。その上肉団子。美人が台無しだぁ』
「了解した。まあ、体の方は何とでもなろうが……心は本人次第だろうな」
そう呟き、手を掛ける。瞬間、悪魔変身した手を介して、滝のように何かが流れ込んでくる。
痛い 苦しい 助けて
嫌だ どうして なんで
もう食べたくない おなかすいた ごめんなさい
それは、この黒札の、そしてこの
―――四肢を捥がれ、それを喰わされた。
―――絶望と飢餓の中化け物に変わり、同様に変化した者達との食い合いを行った。
―――荒れ狂う海の中、巨大な魚の化け物に噛み砕かれた。
―――慈愛の眼差しでこちらを見る聖職者たちに、『未来のための礎に選ばれました』と謂れ、殺された。
―――魚の化け物に変じ暴れ狂う自分の体が尽くした暴虐を、五感丸ごと流し込まれ、体感させられた。
この黒札の、そしてバハムートの犠牲者たちの物が入り混じったそれを受け止め、リンはヌエと化した両腕に満身の力を込める。肉塊がはがれる音と共に噴き出したMAGから、さらに凄惨で濃密な記憶があふれ出る。同時に、共鳴するように喚起されるのはリン自身のトラウマ。
―――寒空の下泣いていた記憶。
―――屍人となった育ての親が、日々腐り、狂っていくのを見ているしかなかった記憶。
―――ついに狂った育ての親に襲い掛かられ、抵抗空しく腹を食い破られた記憶。
―――悪魔変身能力を発現し、ヌエとなり、育ての親を喰らい、血だまりの中呆然としていた記憶。
―――何を食べても満たされず、舌と脳に焼き付いた
リンの心中を怒りが満たす。こんな事態を引き起こしたメシア教への怒り、あの時何もできなかった自分への怒り。ざわり、とヌエの全身がざわめく。魂の奥底にある扉が、音を立てて開いたような気がした。
『ちょ、幼女ネキヤb「ふざけるな」
カス子ネキからの念話が飛んで来た気がしたが、その時のリンは気付かなかった。それほどまでに、リンの心中には怒りが満ちていた。
何故こいつがこんな目に合わねばならなかった。こいつらが無惨に死なねばならなかった。そうまでして
ヌエの体が、黒く染まって行く。虎柄の体毛が、黒い甲殻へと変わってゆく。2m程の肉体が、爆発的に膨れ上がって行く。
そして、リンの動向を見守っていたガオファイガーに乗ったままの3人の前に、バハムートの肉体を突き破って巨大な影が現れる。
甲殻に覆われた、何処か某怪獣王にも似た数十メートルにはなろうという巨体。その手の中には2m程の肉の塊が握られており、ちらりと見えた肉塊の表面に浮かんだ顔は、スカリエッティニキから贈られた資料にあった女性のものだった。
リンらしき黒い
動き出した無惨ニキによりリンと黒札がガオファイガーの左手に収まった頃には異界はすっかり消えており、残る天使達、田舎ニキ達と交戦していたサキエルはそれを呆然と見つめ、異界を解放して後サキエルに帯同していたガギエルはむしろ呵々大笑していた。
「なん……だと……? バハムートが……」
「クハハハハハ! あれを倒すか! 敵を褒めるのもおかしいが……見事。サキエル、せめて最後ぐらいは足搔かずに――――――」
瞬間、ガギエルはサキエルの胸から光刃が飛びだしているのを見た。こちらを見たサキエルの目には、同じように己の胸から光刃が飛び出しているのを見る。
背後を見れば、
「ま、油断したら駄目よってお話ね。華々しく散らせなんてしねーよ。せめて唐突に、無意味に死ね、
「先生ネキ!」
声を上げる田舎ニキ。サキエルらと向かい合っていた田舎ニキには見えていた。最後の瞬間、唐突に背後に現れた先生ネキが、実に手慣れた動きで背後から刺したのだ。
その刃は迷いなく2体の天使の霊核を貫いており、ほどなくして2体は爆散、MAGへと還るのであった。
その後は無惨ニキの操縦により『浜風』の甲板上に着陸したガオファイガーの
一行は予定通り祝勝会がてら海域の浄化を行った後京都へと帰還。作戦終了と相成った。
これが、後に『京都沖海戦』と呼ばれる戦いの顛末であったのだという。
なお。
緊急搬送されたのち驚くべきことに『まったく異常なし、肉体的にも霊的にも健康そのもの、不可解』という診断の出たリンは京都へと戻ろうとしたが、
後を追って山梨へと戻って来た作戦参加メンバーの大半に囲まれ、某ペンギンコラのような勢いで怒涛の如き大説教を受けたのだという。*13
どっとはらい。
そんなわけで112話、京都編完! まあ次回京都編エピローグな感じの話ですが。
□解説
・ようじょ
ご機嫌でブンドドした上なんかえらいことになったようじょ。まだちょっと神砕雷使える程にはなってなかったけど無理矢理撃った。
なお中破したガオファイガーのせいでロボ部は死にました。
斑鳩・大太はぶっちゃけでっかくしたオーバーソウル斑鳩。燃費がゴミ。
・バハムート
メシア教が再現したオーバーソウル実験の産物……ではなく、デビルシフターの変身能力に外的に干渉して無理やりMAG詰め込んだ結果オーバーソウルっぽくなった何か。
素体になった黒札に関しても次回以降で語りたい。
・最後に変身したあれ
詳細は次回以降に。次回か次々回には語れる……はず!