新パソ好調に稼働中です。前からやりたかったドールズネストとかが出来て満足。買ったはいいもののプレイ不可能だったエルデンリング(steam版)もできるぜ!
「ふふふ、戦利品がまた増えた! ああいう偉ぶってるカス共から身代巻き上げるのはスカっとするな!」
「ほどほどにしてくださいね幼女ネキ。あの人たちはともかく、幼女ネキがハチャメチャやると伏見稲荷のウカノミタマの胃に穴が開きますし」
「そうだな、善処はするが……それでも向こうがちょっかいを出してくるならケジメはつけさせねばならん。常々思うが、皆連中に甘すぎやせんか? だからああいう風につけあがるバカが出てくるのだ」
少し後。会談を終えて蓬莱島の逗留先に帰って来たリン達であったが、リンの手には薄く輝く銅鏡のようなものと奇妙な形をした鞭のようなものが握られている。
仙人Xと天照から巻き上げた『手土産』である宝貝の現物(の複製品)*1と天照のフォルマだ。
「みんなが皆幼女ネキ程極端ではないという事ですよ。そこまで怒れるほどのちょっかいを出されていないという話でもありますけどね」
「破魔ネキとかあたりはマジギレしてた方だがあれは当人に直接ちょっかいだされたからなぁ」
「いずれテュポーンの分霊を招くときは呼んでくださいね? 幼女ネキと破魔ネキだけで行かせると血の雨が降りそうですし」
「私達を何だと思ってるんだ」「申公豹*2のパワーを持った哪吒*3ですかね」
にべもない評に頬を膨らませてぶーたれるリンの頭を撫でながらもため息を吐く探求ネキ。逗留先の屋敷の中では多数のアイルーやナマズオ、量産型ニケなどの簡易シキガミが右往左往しており、リンや探求ネキとすれ違うたびに軽く頭を下げては通り過ぎていく。
元々この家はかつてイズナ達が課外授業に訪れた際の逗留先であり、今回リンが訪れるにあたり、ちょくちょく来るだろうからと家の管理のためにリン製の簡易シキガミ達を連れてきているのだ。
なお、当のイズナや文・日向などはイズナは補習授業部の活動として福島支部の支援に、文と日向はその監督役として同行しているのでこの場にはいないのだが。
「……しかし、簡易というには本当に自我がしっかりしてますよね、あの子達」
「そりゃ、ノワール達と比べれば簡易というだけだからな。レベル限界もスキル枠もそこそこ止まりだが、、一反木綿やガーディアン系列よりはよほど上等だぞ。*4
いちいち指示せんと動けんなんてのは面倒極まりないし、後からバージョンアップさせて高級シキガミ相当のボディに変える事は可能だ。というか、すでにいくつか指揮官クラスとして高級シキガミ級に強化している奴らがいるからな。
量産型ニケで言えばエンジニアタイプとして『エイブ』、戦闘タイプとして『ピナ』がいる*5し、アイルーならば戦闘タイプ統括の『コガラシ』*6とサービスタイプ統括の『セリエナ』*7がいるぞ。
基本頑張れば買える程度の値段に設定はしてるが……私のは大体原価ギリギリに設定してるだけだから売れてもほとんど儲けは出ん。*8破魔ネキなどのに比べればまだまだコストダウンは測れそうだ*9」
「ノワールさん達高級シキガミと比較すれば大体の使い魔が簡素ですけどね。……そう言えば、生態調査の方はどうです?」
「問題なく進んでいるぞ! データそのものはアイリスやキャナルにまとめさせているから、まとまり次第送れるだろう。体感的には……モンハン階層やトリコ階層で偶発的な大発生が発生しないかが心配だな
発生そのものはどうにか出来るにせよ、運悪く居合わせた一般人が巻き込まれると多分死ぬぞ」
「モンハンで言う所の百竜夜行、トリコで言う所のデスゴール*10の大発生のようなものですね。ある程度環境は整えているから大丈夫だとは思いますが……ラオシャンロンなどもいますからねえ。どうにでもなると言えばなりますが、手がかからないに越したことはないですし……」
廊下を抜け居間に着くと、10人以上はゆうに座れる大きなテーブルの各所ではリンの嫁達やマリッサ達探求ネキ関係者が思い思いに過ごしており、真っ先に気付いたノワールに抱き上げられながら、リンはテーブルの片隅でマリッサと並んで座る凰音に向けて片手を上げる。
「凰音、勉強はどうだ? 私が教えてやれればいいんだが私は教えるの下手だからなぁ……なんぼ何でもイズナ達と同様補習授業部というのもアレだし……というか補習授業部はオカルト知識よりは一般常識教える方が本筋だしな」
「私自身オカルト方面の知識がイズナちゃん達以下って自覚はあるけど、流石に子供達に混じって教わるのもなんかこう……ね。結局マリッサちゃんとかに教わってるけど……」
「凰音さん、このレベルでそっち方面の知識が一般人レベルって聞いてたけど、大分覚えは良いと思うぜ? あとは腹括ってためらいなくぶん殴れるようになれば化けるんじゃないか」
「振り返った拍子に片パイ11kgの乳で張り倒されたことなら何度かあるが」「リンちゃんそれ今言う事かなぁ!? っていうかあれは事故だし!」
やいのやいのと騒ぎつつも、主人が帰宅したので伴侶たち、そして客人である探求ネキ達も交えての夕食に移行する。
話題は幼女ネキの生態調査の現状のデータがアイリスやキャナルから、各階層を回った結果がリン本人の主観を交えて報告される。
その他はマリッサやペリーヌによる凰音の学習の経過なども報告され、実に賑やかな食卓となった。
そして、翌日。朝食の席で不意にリンへ通信が飛んでくる。キャナルの浮かべる立体映像には探求ネキの顔。小首を傾げるリン。生態調査は昨日で終っているので今日はフリーのはずだが……
『幼女ネキ、今大丈夫ですか?』
「構わんが、どうした?」
『昨日幼女ネキと百竜夜行やデスゴールの話を聞いて備えておくのも大事かと思い、百竜夜行ベータ版のようなものを組んでみたのですが、テストしてくれますか?』
「おお、かまわんぞ! いつ始める? いつでもいいぞ!」
予想通りの食いつきに苦笑する探求ネキ。実際の所、これは昨夜幼女ネキが眠って後ノワール達と協議の末決定したイベントである。
無惨ニキの下へリンが赴いた際に『何かさせて満足して帰ってもらう』事で『報酬代わりに依頼を受けた』と満足してもらったと連絡を受けた探求ネキ、リンに生態調査としてトリコ階層、モンハン階層で
その準備が終わったのでこうして連絡したのである。
『はいはい、落ち着いてくださいね幼女ネキ。そうですね、お昼ごろにモンハン階層の指定の座標に来てください』
「あいわかった! 楽しみにしているぞ!」
少し後。モンハン階層の某所、山岳部に設けられた砦にはリンと嫁達、そしてマリッサや裕奈、二代達の姿があった。
百竜夜行。モンハンシリーズの作品の1つ『Rise』に登場するシステムで、砦に攻めてくる大量のモンスターたちを自身や砦の設備で迎撃する一種のタワーディフェンス形式のシステムである。
蓬莱島においてはモンスターの自然な形での間引きを行う一環として山岳部の砦に追い込み、有志により迎撃する、という想定で探求ネキが組み上げたシステム……ではあるが、事実は少し異なる。
実際定期的な間引きなども必要だが、主にリンの気晴らしと報酬代わりに働きたい!というリンを納得させるために組み上げたシステムであることが大きい。
この後実装するかはまた別問題だし、仮に実装することになってもリンと親交の深いるるネキを筆頭としたデビルマン軍団を招待すればいいだろう、と探求ネキは考えている。*12
どちらにせよ、テストの結果如何で実装するかどうかを決めるし、イベントの一種として整えても良い。どちらに転んでも探求ネキの損にはならないだろう。
「ようやく
むん、と可愛らしく気合を入れているのは、ウサミミをつけた、おかっぱ頭の少女。裾や袖口にファイアパターンの装飾が施された黒い着物に赤いエプロンを纏っている。
手には船の櫂、背には軍艦の煙突のようなものを背負い、接続部から腰の左右を覆うように軍艦の艤装のようなパーツが伸びている。彼女は不知火。凰音の専用シキガミであり、ゲーム『アズールレーン』の『不知火改』を模して造られている。
本来であれば凰音と共にレベル上げに勤しむのだが、凰音がレベル90近い高レベルであるため今まで単独でレベル上げに勤しんでおり、現在は凰音の『三か月分』である『四神招来器』の人間態、ティタニア姉妹と共に食欲界の生態調査を行いながらレベル上げをしていた。
未だ凰音には及ばぬとはいえレベルは50に届き、そこに主人と共に戦える機会が来たというのだから、気合の入りようも頷けよう。*13
「頑張ろうね不知火ちゃん。私もまだまだ戦い慣れてないし、迷惑かけちゃうかもだけど」
「それを迷惑と思うシキガミはおりませんよあるじ様。 それに……ノワール様方に比べれば、あるじ様によって降りかかる負担など些末なことでございましょう?」
「リンちゃんは比較対象にしちゃいけないと思うなぁ……」
「例外の中の例外のようなお方でございますからねぇ……」
苦笑し合う主従。そんな中、一同の先頭にリンが立ち、声を張り上げる。
「よし、お前ら準備は良いな! 今回の百竜夜行ベータ版、ざっくり言うと砦の防衛線だ! 三つある全部が抜かれればアウト、逆に言えば2つまでなら抜かれても構わん、無理はするな!
……ともあれ、ざっくり言えば全滅させてしまえば終わりだ! 砦は任せた! 私は打って出るぞ! こないだ無惨ニキから新装備のテスト依頼で色々回って来たからな!」
言うと思った。その時、その場にいた全員の心がシンクロしたのだという。*14
「さて……では行くか!」
そう言ってリンが取り出したのは、横にレバーのようなものが付いた、舌を出した赤い獅子舞のような外装をしたバックルのようなもの。無惨ニキ開発の展開型デモニカ、『変身ベルトガヴ』。 *15 *16
お菓子を実として成らせるオカルト植物『菓子の木』の実を簡易シキガミ『ゴチゾウ』として変換し、そのゴチゾウを用いて変身するベルトである。
腹に押し付ければ瞬時にベルトが巻かれ、それを確認するとリンは声を張り上げた。
「ゴチゾウ! 状況報告!」
その声に応じて現れるのは、五センチほどのお菓子のパッケージに目が付いたような何か。件の簡易シキガミ、ゴチゾウ。その中のグミから生み出される『ポッピングミゴチゾウ』であった。
ぴょこぴょことリンの体を伸ばし耳元に来ると、わにゃわにゃと何事かをリンへと訴えかける。ゴチゾウは変身用アイテムでもあるが、菓子の実1つにつき10体ほどが産み出される。*17
その上で自律行動が可能であり、付与されたステルス能力や主人が無事である限り攻撃対象にならないという特性を活かし偵察などを行わせることができる。
リンはそれを活用し、変身前に大量に生産していたゴチゾウ達を放ち、敵の動向を探らせていたのだ。
「……ふむ、第一陣がそろそろ到着か。丁度良い、お前を『使う』。行くぞ」
望むところだ! とばかりに騒ぎ出すゴチゾウを手に取り、リンはガヴの上顎に当たる部分を開き、ベルトである『ガヴ』中央にゴチゾウをセット。
ハロウィンを連想させるような楽し気な、どこか不気味な音楽が流れ始める。
「変身!」
更に上顎を閉じハンドルを回せば、セットされたゴチゾウを咀嚼するように上顎が動き、それに応じて『ガヴ』から色とりどりのグミのようなエネルギー体が放出されはじめる。
一定量放出された後、リンは顔を庇うように上げていた左手を顔をひっかくようにさっと動かし、その目が赤く輝く。直後『ガヴ』左側面のボタンを押すとゴチゾウが上下に展開し、絶叫を上げた。
放出されたエネルギー体を『ガヴ』が吸い込み、同時にリンの体表をグミ状エネルギーが覆うように展開し、黒いアンダースーツと紫を基調とした装甲へと変換されていき……変身が完了する。
これが無惨ニキ開発の新たな展開型デモニカ、『仮面ライダーガヴ』であった。そして変身が完了したと同時、リンは新たなゴチゾウ、『ポッピングミ』によく似たそれを『ガヴ』に装填。ハンドルを回して
仮面ライダーガヴは腹部のバックルでもある第二の口*19、『ガヴ器官』においてゴチゾウを咀嚼し取り込むことで変身するが、ゴチゾウの中には特定フォーム用の強化付与などの変身用ではないものも存在する。
これを『追い菓子チェンジ』と呼び、変身用ゴチゾウによるフォームチェンジに加え追い菓子チェンジによる強化付与などを交えた多彩な戦い方が仮面ライダーガヴの特色である。
この形態『パンチングミアシスト』はパンチ力強化形態で、右手にパンチ力増強用ガントレット『シュワパンチング』を装備。パンチ力、また肥大化した右腕での防御力も向上する形態となる。
リンは真正面を見据え、土煙を上げて砦へと殺到するモンスターの群れを視界に収める。右腕を弓矢の様に引き絞り、とびかかる直前の獣のように低く、かつ力強く体をたわめ、今から放つ技を教わった時のことを思い返す。
―――コツ、ッスか? んー……そう言う事は考えた事ねえんスけどねえ。
―――強いて言うなら、
―――
―――土壇場てェのは
「
瞬間、大地に深々とした足跡を刻みながらリンの姿が消え―――猛然と迫りくる
もしこれを放たれたのが人間であったならば、見事な『鵺』のラッピングが施された
「極道
リンの保有する悪魔・キングフロストの【ぶちかまし】をも交えて放たれたそれは、群がるモンスターを小石の様に跳ね飛ばし、『終点』へ向けて
この群れ成す怪物たちの終点に待ち構える、あるモンスターへと向けて。
「……ところでさあ、探求ネキさん」
『どうしました、バハネキ』
「この百竜夜行? ってやつ、どこまで耐えれば終わりなのかな?」*21
同時刻。リンが一直線に直進した結果、その軌道上に居ないモンスターたちは総じて砦に押しかける事となり、その対処に大わらわであった。
幸いにしてモンスターは砦の門を突き破っては来るものの砦備え付けの迎撃設備や個々人で迎撃できる範囲であったため、時折現れる『ヌシ個体』に複数人で対処する程度であったが、
やはり大群が押し寄せているというのは負担がかかるもの。戦闘経験も少ない凰音にはやや不安の色がにじむ。こうして戦闘の合間に全体を俯瞰しつつ各種アナウンスを行っている探求ネキに疑問を投げかけるのも当然の事だろう。
『今回はお試し版なので……というか、幼女ネキ仕様なので幼女ネキがボスを倒せば終りますよ。設定上、ボスモンスターがモンスターを追い立てるという想定で始めていますので』
「そっかぁ……じゃあ、まっすぐボスを目指してるみたいだから案外早く終わるかもしれないんだね」
『まあ……幼女ネキが『遊ぶ』つもりでなければすぐでは? あとは捕獲を試みていればもう少し伸びる可能性はありますね』
「心配だなぁ……」
溜息をつく凰音。リンの妻の1人であり、リンの実力を知っているとはいえ、それでも心配にはなってしまう。
慣れるほかないのだが、慣れてしまうのは人として色々ダメじゃないかなー、となんとなく思う凰音であった。*22
「……いたな、あれか。流石にマキヒコ*23じゃなかったか」
リンの視線の先には、ともすればイカルガよりも巨大な、20mほどの甲殻を纏った四足獣型のモンスターがいた。
アナライズによれば【魔獣マガイマガド】。全身から紫色の鬼火のようなガスを噴き出しながら、百竜夜行の最後尾のモンスターに食らいついては貪っている。
その姿は武者鎧を纏った虎にも思える姿をしており、その尾の先端は金色の槍の穂先の様に三叉に分かれ、すさまじい勢いで突き出されては哀れなモンスターを串刺しにしていた。
「おい」
威圧と共に投げかけた声が届いたのか、マガイマガドが捕食を辞めリンの方を向く。途端、その全身からこれまでとは比較にならない量の鬼火が噴出する。
目の前にいる小型モンスター程もないであろう生き物が、けして油断が出来るような生易しい存在ではないという事を本能で感じ取ったのだ。
「遊んでやる、かかって来い」
その言葉が、戦いの始まりであった。
突進してくるマガイマガドをリンはシュワパンチングで地面を殴る事により回避し、炭酸が弾けるようなエフェクトと共に上空に飛び上がる。同時にマガイマガドを取り囲むように水色の泡が現れ、一瞬マガイマガドの足が止まる。
「まずは小手調べだ!」
飛び上がったリンはガヴ側面のレバーを回し、逆サイドのボタンを叩く。するとまたもゴチゾウが絶叫を上げ、それに反応するようにマガイマガドを取り囲んでいた水色の泡状エネルギーがシュワパンチングの形を取り、マガイマガドの周囲を飛び回りながら攻撃を加えていく。
煩わし気に迫る巨腕を払いのけるマガイマガドであったが、一瞬でもリンから意識を外したのは悪手であった。上空から落下してきたリンの右腕は破裂せんばかりに光り輝いており、反射的に振るった尾の先端とリンの右腕がぶつかり、青と紫のエネルギーが炸裂する。
一瞬の閃光の後、マガイマガドの尾槍は砕け、地面に降り立ったリンのシュワパンチングは砕け、同時に力を出し切ったのかゴチゾウもまた消滅し変身が解除される。
GRururu……
「ほう、仕掛けてこんのか? 良い判断だ。仕掛けて来ていたら殺していたぞ。折角だ、もう少し付き合え」
変身が解け、半分ほどになったリンを見てもマガイマガドがすぐに襲い掛かる事はなかった。変身そのものは解除されたが、リンの危険性そのものはいささかも減っていないのを本能で理解しているのだ。
そしてリンは周囲に集まって来たゴチゾウ達からポテトチップスを模した1匹を拾い上げ、先程同様にガヴに装填し、変身。
ポッピングミの時と同様に展開された黒い素体にチップスがまとわりつくようにして黄色い武者鎧のようなアーマーを形成、双剣型の専用武器『ザクザクチップスラッシャー』を装備させる。
リンが双剣を構えれば、マガイマガドもまた前足の腕刃、そして全身の甲殻が日本刀の様に逆立ち、鬼火が再点火。直後、黄と紫、二色の色つきの風となり、両者は激突した。
20m近い巨体が、持ち前の俊敏性のみならず鬼火の爆発も交えた不規則な軌道でリンに襲い来る。しかしリンもまた襲い来る攻撃をかわし、いなし、刃を振るう。振るわれた刃はマガイマガドの体に当たる度砕け散るが、即座に再生し、時に甲殻を刻み、マガイマガドに警戒心を抱かせていく。
『ザクザクチップスラッシャー』は鉄骨すらやすやすと切り裂くが、日本刀の様に刃筋を正しく切り込まなければその切れ味を発揮できずに砕け散るという扱いの難しい武器である。
だが、マガイマガドの動きにリンがついて行けていないという訳ではなく、
そして、もう一つが――――――
レバーを回し始めると、パンチングミの時に水色の泡が浮かんだように、これまでの斬撃で砕け散った刃がふわりと浮き上がり、リンが刃を振り下ろすとそれらが一斉にマガイマガドに殺到する。
同時にリンは己の中のスサノオを呼び起こし、【霞駆け】を込めた斬撃で刃と共に周囲を飛び回りつつ全身を切り刻み、とどめの一閃。その一撃はマガイマガドの顔面ごと片角を切り飛ばし、そしてその胴体に深々と下傷跡を刻むのであった。
「―――――で、言い訳はそれでいいのね?」
「ち、ちゃんとお世話するから……」
全てが終わった後、砦の門前では柳眉を逆立てたセリリが目前に正座したリンを睨みつけていた。その隣にはマガイマガド。先程の戦いの傷は治療されたようで、右目を縦に縦断する傷跡がある以外には元通りとなっていた。
彼もまた叱られた犬の様に伏せており先程からリンと共にセリリのお説教を受けていた。
そもそもの原因は、攻めて来たモンスターたちをあらかた撃退し終え、一息ついていた所にリンがマガイマガドに乗って帰還してきた所に始まる。
20m近い巨体がやって来て騒然とするも直後顔を出したリンが『こいつを飼うぞ!』と宣言。聞けば戦闘後回復し、死か服従を迫り、自分を苦も無く下したリンに服従を近い
しかし、『やっぱりこうなった……』とかぶりを振る嫁達の中でセリリは唯一『変なもの拾ってくるんじゃない!』とお怒りになり、先程までお説教をされていたのだ。
無敵の暴走機関車であるリンをも委縮させるお怒りモードのセリリを見て、マガイマガドもまた『あ、
「どうすんのよこんなでかいの! ロボットと違ってこいつは生きてるんでしょ?」
「そこはその、小さくするから……変化スキルとか組み込むし……」
「あんたはそれでいいの? 多分こいつすっごい振り回すわよ?」
GUoruru……
「『死ぬよりはマシだろ』と言っている」*25
リンの通訳を聞いてセリリは腰に手を当てて大げさにため息。その後改めてキッと柳眉を吊り上げ、リンにびしっと指を突き付ける。
「……ちゃんとお世話できるのね?」
「こいつも私の言う事は聞くようにしつけるし、周りともに喧嘩しないように言って聞かせるから……こんな最大金冠*26クラスのマガイマガドなんて早々出会えんし……
ちゃんとエサもやるし! 散歩も連れてくから! な!? ……あいたっ」
懇願するリンにセリリはデコピンを一発。『ちゃんとお世話できなかったらまた鼻タバスコよ!』と肩を怒らせてその場を去って行くのであった。
そして、また少し後。
「すぴー……」
屋敷の居間では、大いびきをかいて寝ているリンと、その脇で丸まって寝ている紫色のアイルーの姿があった。
あの後探求ネキとリンによってサイズ調整能力、そしてアイルーへの変化機能を追加されたマガイマガドだ。マガイマガドの色彩はそのままに、特徴的な冠や腕刃、尻尾に甲殻を残しながらも猫のようなフサフサとした毛並みへと変わっている。
そんなリンを見ながら、セリリは苦笑しながらため息を一つ。
「余計な手間増やしてごめんなさいね、探求ネキ。別に飼うなら飼うでいいんだけどさ、一応立場上*27リンには怒ってやんないといけないし」
「構いませんよ。概ねテストも出来ましたし……実装するかはさておきますが、これで幼女ネキも満足したでしょう」
「ほんと義理堅いんだか何なんだか分かんないのよねぇこいつ。でもまあ……こいつもいろいろあったしさ、セツナ*28の件……知ってる?」
「まあ一応。幼女ネキからすると、分かってはいてもどうにもできなかったというのは辛い経験だったでしょうね」
セツナ。それはリンの友人の少女の名であった。リン同様にガイア連合に保護された同年代の黒札で、ドクターネキ同様のメシアン被害者でもあった。
ひょんなことから知り合い友人となり、様々な事情を抱えている者同士過ごしていたが、保護される前に行われていた人体改造の結果、その寿命は大きく削られていた。
最終的にはリンがアメリカへと渡っている間に亡くなり、セツナを世話していたシキガミのラムダと、魂の欠片を宿す水晶玉を残して逝った。
それを知った時、リンは言葉少なに『そうか』と呟くだけで、涙は流さなかった。悲しいという感情を表すこともしなかった。しかし、リンの妻たちは知っている。リンは間違いなく、友人の死を悲しんでいるのだと。
「マスターがご飯を残されたなんて後にも先にもあの時ぐらいでしたから……その後は人魚ネキさんにお願いして、マスターが人生初の誕生日を過ごせるように尽力しましたけど」
リンの傍らに控えるノワールが、悲しげに微笑む。そもそもの始まりが養父の死であるリンにとって、それなりに長い期間を過ごした友人の死は、いかほどの悲しみだったろうか。
実際、リンは少しでもセツナが生きられるように八方手は尽くしたし、ショタおじや医療班に掛け合うなどしたが、それでも、魂そのものが改造の影響で削れていたセツナを救う事は出来なかった。
今でこそ普段通りに笑う事こそできているが、かつての傷同様、セツナの死により受けた傷もまた、そうすぐには癒える事はないのだろう。
「だからまあ、少しでも気楽に過ごしてほしいのよね。気楽にさせ過ぎると今回みたいなことになるんだけど。いつもの事だけど! ……何かあると気軽に周囲に波及するし……」*29
「薄々分かってましたけどこれやっぱ平常運転なんです……?」
頭を抱えてため息を吐くタマに、よもやこれが日常的に起こりうる事象なのかと気づいてはいけない事実に戦慄する凰音。
この暫く後、『創造ってあそぼ』の際ひょんなことからセツナが復活することになるのだが、それはまだ、今の時点ではわかりようのない事である。
そんなわけで123話でした。思いのほか前回の会談パートの筆が乗り過ぎて分割と相成りました。ガヴ使いたかったんだ……ようじょが本気で戦うならゴチポッド作ってオーバー/マスターを使えば全力でやれそうかな?
戦極ドライバーも使いたい……!
□解説
・ようじょ
割と好き放題やって満足して帰って行きました。変身ベルト系デモニカも多分変える奴は全部買ってると思う。
なおゴチゾウ補充という名目で結構な頻度で破魔ネキんとこのお菓子異界に行っているのでゴチゾウのストックは相当ある。でもお菓子美味しいから通う。自分用のお菓子・フルーツ世界樹作るのもありだな、とか言い出したのを凰音が聞いたけど聞かないふりをした。
セツナちゃんの死に関してはようじょには珍しくガチめに凹んでた(周りから見ると2・3日食欲が少なめな以外ほぼ平常運転だけど内部処理的にはかなり凹んでた)。
ので、後に復活した時は本当に喜んだろうな……日常生活用の外装もロボも用意する勢いであれこれ計画し始めて止められてそう。
・マガイマガド
ようじょに目を付けられたのが運の尽き、ボコボコに叩きのめされてからモンボで捕獲されました。
普段は猫ぐらいのサイズになってパトロールしてたりアイルー姿でようじょにモフられたりした。
基本的にようじょに従属しているので嫁達の言う事も普通に聞く。
・不知火
ついに台詞がもらえた凰音のシキガミ。幽遊白書のぼたんよろしく櫂で空飛んだりする。
対外的には凰音が雇っているお手伝いさん。凰音の送り迎えもしており、1997年製ミニローバーを愛車としている。
レベリングにも積極的であり、イズナの覗きを問題視した凰音の意を受け、夜ごと覗きに来るイズナと家を壊さない程度の静かな攻防戦を繰り広げた結果レベル50の大台に乗った。普通に修行もしてたけど。
・ガヴ
無惨ニキが作った奴を使いたくて……! そんなだから一応の専用デモニカG1改の出番が減るのである。
ゴチゾウ達もまたようじょの子分、百鬼夜行メンバーとして日夜偵察に精を出している。
ようじょが割と気軽に破魔ネキんとこに行ってドカ食いしてるので際限なく増え始めている。
数の際限ない増加をどうにかするためにもゴチポッドの制作が急がれる。