【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策   作:タマヤ与太郎

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そんなわけで12話、幼女ネキがキレました。1話に納めるつもりが描いてたら容量増えてきたので前後編です。


転生ようじょ、ぶちギレる。(前)

 

「――――――ふむ、こんなものだろう」

 

宮城県〇〇町、藤堂家。

あの後すぐに帰宅したリンは、その足で文を見舞いに藤堂家を訪れていた。

寝室に通されたリンは即座に文の容体を把握。出来る限りの治療を施し、ようやくそれが一段落する。

 

「黒札様―――」

 

「リンでいいと言ってるだろうに。とりあえず、応急処置はした。あとはレン子ニキに連絡して治療班を呼んでもらってくれ。

 容体は……そうだな、たとえるなら風船に無理やり許容量以上の空気を吹き込んだ感じだ。

 文の許容量がまあ常人よりは多いからまだ命は助かったが……まあ、許容量以上のMAGは抜いた。

 ……方法がキスだったことは勘弁してくれよ、これしかやり方を知らんのだ」

 

文が受けた『呪い』。それは実の所呪いではなく、加護の類だった。

悪魔が波長の合う相手にMAGを与え、レベルを増強する。そう言う類のものではあったが、

何分与えられたMAGが文の許容量を超える量の上、それを扱う術も拙い子供に押し付けられたそれは、呪いと判断しても差し支えない代物であった。

過剰に与えられたMAGで破裂しそうな状態から、キスによる粘膜接触からの房中術を応用したMAG操作で余分なMAGを引き受け、ひとまず容体は安定した。

あとはきちんとした治療さえ受ければすぐにでも動けるようになるだろう。

 

「なんの、その位、命には代えられんよ……それで、ええと、リンちゃん。これからどうするんだ? よければ文の傍に居てやってくれないか」

 

「それはあんたらの役目だ。私はこの一件に落とし前をつけてくる。

 ……それにだ、こういうのは親が側にいてやったほうが良いんだと、思う。

 私は親無しだからよくわからんが、そういうものなんだろう?」

 

それに、と言い置いて、リンは言葉を続ける。

 

「来週、旅行に行くんだってな? 文が楽しそうに話してたぞ。

 ガイア連合に所属するまでは、地域の維持で精一杯で産まれてから一度も行ったことがないと言っていた。

 だから、可能なら予定は取り消さないでおいてやってくれ。そういう親との思い出は大事にすべきだ。

 ではな、文が起きる前に出る。レン子ニキたちには行先は適当に誤魔化しておいてくれ」

 

 

 

そして、藤堂家を後にするリン。家の門をくぐり外に出た瞬間、リンの気配が張り詰める。

また、同時にリンの五感はあるものを捉えていた。文に無理やり押し付けられていたMAGの気配。

文から引き受けたMAGの気配が、地脈に沿って遠くへと繋がっている痕跡を。

 

「まだ霧散はしていない、十分辿れるな……では、行くか」

 

轟音。藤堂家の門前に深々とした踏み込み跡を残し、リンはその場から一瞬にして走り去った。

 

 

 

同時刻。多神連合の管理する異界の片隅で、一人の男が目を開いた。巨大な岩塊に体の大半が隠れ、全身像は見えないが、

無造作に散らばる真紅の髪、炎のように爛々と輝く強い意志を感じさせる目。

また、その首には金床が置かれ、男よりは何周りも小さな醜い男が槌を振るい鍛冶仕事をしていた。

 

「……おい、動くな。金床がずれるだろう。しかし珍しいな、お前が起きるなど」

 

「すまんな。現世の方で少し面白いことが起こっているようでな……」

 

鍛治屋が男に向けてじろりと視線を落とすと、男は苦笑し返事を返す。

鍛冶屋の知る限り、男がここに封じられてからはほとんど眠りにつくばかりであったはずだが、

その男当人が目を覚ますなど本当に珍しい。

 

「ガイア連合に面倒のかかる一件ではなかろうな?」

 

「分からん。俺に伝わってくるのは強い怒りの感情と、おおよその位置だけだ。

 ……済まんが妻を呼んでくれるか、お前の両親に感づかれると面倒だ」

 

男の言葉に鍛冶屋は大きくため息を吐き、念話を飛ばす。

鍛冶屋としても己の両親が関わると面倒なことになるのは明白であったため、

どうかどこぞの豚神のようにならねばいいが、そんな思いで男の妻を呼ぶのであった。

 

 

 

 

リンが藤堂家を発ってより少しして、宮城支部は仙台出張所で、レン子ニキが頭を抱えていた。

テーブルの上には宮城県の地図、周囲では黒札金札入り混じった面々が慌ただしく行き来していた。

事の起こりは数時間前。リンの親友である現地異能家系の娘、藤堂文が呪いを受けて倒れた。

その報告を受けレン子ニキらが藤堂家に訪れた時には文に対する応急処置は終わっており、

文の両親から聞き取り、眠っている文にかけられた呪いの解析を行い、

結果、宮城県を縄張りとする豊穣神、ウカノミタマの分霊の仕業であると判明する。

そして、それが判明したころにはもうリンの所在は不明。

現在はリンの行方を捜しつつウカノミタマ神とのコンタクトを取ろうとしている宮城支部一同であった。

 

「まずい……まずいわ……皆、幼女ちゃんの行方は!?」

 

『少し前にウカノミタマ所縁の氏子を締め上げて異界の場所を吐かせていたと報告が……』

 

「不味いわ……あの子完全にブチギレてる……完全にお礼参りに襲撃する気だわ……」

 

「まあ、当然だろうな。文はリンの親友だ。それがあんな目にあわされて怒らんはずがない。

 ……で、どうする兄貴。リンもだが……ウカノミタマに対して連合としてどう出る?

 最初に非礼を働いたのはこっちだが、少なくともリンの溜飲が下がる程度の落としどころは見つけんとまずいぞ?」

 

慌てふためく周囲や従兄を尻目に、ゆるりと茶を啜るリンクニキ。その余裕っぷりをじろりと睨みつけ、そこからさらに横にずらす。

そこには椅子に雁字搦めに縛られた神職と思しき青年がいた。宮城の黒札、通称神社ニキだ。

 

「神社ニキに詰め腹を切らせましょう」

 

「確かに俺のチョンボだけど俺だけが悪いわけじゃねえだろ!?」

 

顔を挙げたレン子ニキの目は据わっていた。絶叫する神社ニキを見て少し落ち着いたのか大きくため息を吐くと、一同は状況の整理を始める。

 

「まず事の起こりは幼女ちゃん発案のキクリ米計画が始動した事ね。あの頃はいろんな計画を並行で動かしてたから……

 まあ、その後とんとん拍子で上手く行ったりして割とガチめに失念してたのが1つ目、

 新潟のキクリヒメ様の所から貰ってきたお米だから、彼女の分霊に管理してもらったほうが良いとしたのが2つ目」

 

そしてレン子ニキから視線を向けられ、神社ニキががっくりと肩を落とす。

 

「仕方ねえじゃんうちの祭神コノハナサクヤヒメだぜ?

 というかそもそもうちの神社、神社とは言うが分霊もいねえような弱小神社だしさぁ……

 第一氏子俺一人しかいないし、修行に管理にマッカ稼ぎとよそに目を向けてる暇なんてねえって……

 確かにウカノミタマとコノハナサクヤヒメは叔母と姪の間柄だし話通しておいた方が良かったのはあるけど……」

 

「兄貴、とりあえず神社ニキをいびるのはその辺にしてくれ。詰め腹は切らせる『結局腹は切らされんの!?』にしろ今やる事じゃない。

 ともあれ、その流れでウカノミタマ神をないがしろにしたのがまずかったな、確か数度農業異界に押しかけて来たんだろう?」

 

「うんまあ、そうだけどさ……それでどうしようどうしようみたいに唸ってたら今回の件だろ?

 文ちゃんは俺も診たけど、結局あれは……まあ、ウカノミタマが加護を与えたのが原因っぽいんだよな」

 

「呪いじゃないの?」

 

レン子ニキの疑問に、神社ニキはその時の様子を思い出しながらも言葉を続ける。

 

「うん、俺が診た時はもう幼女ネキが応急処置した後だったけど、あれは【呪い】じゃなくて【加護】だ。

 基本的には霊格の上昇、あとはウカノミタマからMAGを貸し付ける感じの加護だな。

 簡単に言うとレベルアップとか稲荷神系の加護が備わる感じの奴。

 ……ただ、文ちゃんまだレベル一桁だろ? 成長に見合わない強大な加護とMAGに押しつぶされかけた、

 っていうのが今回の件の真相だな。幼女ネキがほどほどにMAG抜いて行ったみたいだから、

 今は文ちゃんの今の実力に見合う程度のほどほどの加護に落ち着いているみたいだ。

 これは文ちゃんが稲荷神系の加護と相性のいい異能者っていうのもあるんだろうな」

 

「……つまり、今回の件はウカノミタマが力加減を間違えた、という話なのか?

 そう言えば四国の方で神の加護の圧力のせいで心身に不調を抱えた、という話があったな……」

 

「そう言えば日本神の解放で分霊たちが本霊との繋がりの復活とかしてたそうだしね……

 ……加護ってそんな溢れそうだから減らしとくみたいなノリで減らせるものだったかしら?」

 

「こういう言い方もあれだけど、幼女ネキって房中術のプロ(ミナミィネキ)から実地で直接指導受けてるし……」

 

沈黙する三人。しばしの沈黙の後、最初に口を開いたのはリンクニキだった。

 

「……それより今はリンをどうするかが―――『緊急入電! ウカノミタマ神の異界に高レベル覚醒者の襲撃アリ!』

 ――――――すまんもう手遅れだったかもしれん」

 

「ともあれ今は無理にでも押しかけてリンちゃんを止め……られないだろうからウカノミタマ神とコンタクトを取らなきゃ!

 神社ニキもいいわね? 逃げたら私とリンクで死ぬまで追いかけて殺してから蘇生するわよ?」

 

そういうレン子ニキの顔は笑っていたが、目だけは笑っておらず、言外に『本気でやるからな』『お前1人逃げられると思うな』

と言っていたのだと、神社ニキは後に酒の席で語っていたのだという。

 

 

 

 




そんなわけでスラッシャーホラーかモンスターパニックの様相を呈し始めて来た12話でした。
これオチまで書くと確実に25~30kb越える(大体普段は10~14kbに収まるように書いている)なあと思い前後編です。


■解説

・幼女ネキ
友達に手を出されてキレた。キレたけど目標意外に(必要以上の)手は出さない程度の自制心はある。
友人の推定ファーストキスを奪う形になった事を若干気にしている。
文ちゃんに応急処置した時点ではまだ気づいてなかったけど、
MAGの匂いで氏子を識別して締め上げた結果ウカノミタマの仕業だと理解しロックオンした。

・文ちゃん
『カオス転生小ネタ~とある地方の異界事情~』の大赦組みたいなことになった。(程度で言えばアレより酷い)
リンによる救命措置で一命はとりとめたけど本来タマちゃんが想定した程度にはレベルは上がらなかった。
それでも一応レベルは1だったのが5~6ぐらいには上がった。
(レベル限界も15ぐらいだったのが30ぐらいには上がっている)

ウカノミタマ(タマちゃん)
今回の戦犯その1。
幼女ネキのターゲットとして完全にロックオンされた。
与える力の加減を間違えなければ殺気を込めて睨まれる程度で済んでた。

・レン子ニキ
現在異界に急行するために準備している。
流石に本気で詰め腹を切らせるつもりは無かったけど今の状態で逃げたら追いかけて殺してから蘇生して詰め腹切らせるまではやる。

・リンクニキ
シリアスな台詞を言いながらやっぱりパン1だった。

・神社ニキ
今回の戦犯その2。1回逃げたので椅子に雁字搦めにされてた。
祭神に連絡が取れるほど大きい神社でなかったのと、
修行や管理、諸々の諸費用を稼ぐのにいっぱいいっぱいでそっちの方まで気が回らなかったのが真相。

・『鍛冶屋』と『男』
多神連合所属の2柱。今回の一件には関係ないけど幼女ネキとは関係がなくはない。
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