そんなわけで136話です。青学ラピュタ分校の皆との交流話。
【盛大な】ようじょのおもちゃ箱【金ドブ】Part.19
985:幼女
現在ラピュタ支部だぞ!
まあ昨日は1回帰ってセリリにタバスコ風呂に漬けられたんだが。全身の穴という穴からタバスコ浸みて来てキツかった
ちなみにデビルシフター用の希釈して使うタバスコの原液風呂な
986:名無しの転生者
何で生きてるんです???????*1
987:名無しの転生者
いやあれ俺も試しに舐めてみたけどガチ目に味蕾死ぬぐらいの辛さだったんですけど……
何で無事なんだよ*2
988:幼女
慣れ……?
全身漬けられたのは初めてだけどタバスコ張ったたらいに顔面漬けられて飲み干すまで許さんとか言われたことは割とあるし
989:名無しの転生者
慣れる程そう言う事される様な事すんなよw
990:名無しの転生者
というか今日は何しに来たのさ
991:幼女
んーっとな、カナヤゴが出来たのでそのあと何作るか、と考えて、色々作れるし便利だからフツヌシ*3作ってるんだよな
その視察と、注文してたゴチポッドとメロン仕様のカチドキと極ロックシード*4が出来たので取りに来て、
あとこっちで出来た友達に自慢しに来た!*5
992:名無しの転生者
あー、そういえばなんかラピュタ支部で保護した金札の女の子たちがいるとか?
993:幼女
うむ、ブルアカのユメパイのそっくりさん*6とその時知り合ったカギリってやつ。
フルネームが斑鳩カギリだそうなので、何か他人とは思えんでな
994:名無しの転生者
イカルガ・カギリ*7か、偶然だろうけど確かに幼女ネキなら印象に残る名前だろうなw
995:名無しの転生者
まあ、なんか事情があるんだろうからあんま詮索はしてやるなよ、言い辛い事情とかあるんだろうし
996:幼女
そうだなー。あいつトンプソン・コンテンダー*8とか使ってるみたいだから中々デキる奴っぽいぞ
機械いじりが好きだそうなのでロボとかプレゼントしたら喜ぶかなあ*9
997:名無しの転生者
腰抜かすんじゃねえかな……
998:名無しの転生者
せめてデモニカとかにしたげなさいよ、流石にロボは維持費がヤバいでしょ
999:名無しの転生者
せやで、幼女ネキの財力を基準にしちゃいけない
1000:幼女
そうか……まあ確かに黒札じゃないしその辺りは配慮してやらんとな
何がいいかな、そういえばビーダマンとか使うみたいだしバンガードフェニックスとかあげたら喜ぶかな?*10
1001:名無しの転生者
まあその辺りなら……?
一般でも手の届くメカとかならメダロットあたりでもいいんじゃねえかな
確か今なら【飛雷神の術】の応用でパーツチェンジとかも簡単に出来るようになってんだろ?
1002:幼女
そうだな! そういえばこないだブラックビートル*11がホビー部から贈られてきたし上げるのもいいかもな
私もブラックビートル好きなんだよな、漫画版3の個体が印象に残っててなぁ……
1003:名無しの転生者
ああ、あの子は可哀想というか切ない終わりだったよな……
あの子なりに考えての行動だったのは間違いないんだけど
1004:名無しの転生者
あとは機械が好きならバイクとかどうかな? ライダーマシン系ならメカニカルで良い感じかも
1005:幼女
いいかもしれんな、ライドベンダーならここでも手に入るかもしれんしちょっと見てみるか
あ、あとホビー部のカタログもやろうかな、ユメも他にどんなのがあるんだ? とか聞いて来てたし
1006:名無しの転生者
一応無惨ニキに話通しときなよ、ニキが保護してる子らなんだし*12
1007:幼女
そうだな、とりあえずカタログはニキに渡しておくか……
トリコ食材一緒に食べるぐらいは大丈夫だよな?
1008:名無しの転生者
まあ大丈夫なんじゃない? アレルギーとかは大丈夫だろうし
あとは普通のお菓子とか差し入れしてあげてもいいんじゃね、聞いた話だと20人ぐらいいるらしいし
受け取る方もその程度のものの方が気兼ねなく受け取れると思うよ
1009:幼女
え? でもどっちみち大した金額でもないしもうちょっと高級なのでもよくないか?
どうせなら美味しい方がいいだろ
1010:名無しの転生者
トリコ食材、幼女ネキ的にははした金でもいい奴になると一般的には家1軒ポンと立つぐらいの高級品だからね?
1011:名無しの転生者
あと下手に買える環境にないのにバチクソ美味い奴貰っても困るだろ、舌が肥えちゃう
1012:幼女
……? 別に金が無ければ稼げばいいだろ? あいつらだってそこそこ強いって聞くぞ?*13
1013:名無しの転生者
強いのと際限なくマッカ稼げるのは別問題なのよ
1014:幼女
うーん……? まあ、あいつらは基本ラピュタ支部から出れないらしいからな。とりあえず春日*14んとこからコンテナで買ってくるか
1015:名無しの転生者
そう言えばこの幼女舎弟に製菓会社の社長いたな……*15
1016:名無しの転生者
なんだったら日本有数の大グループが傘下にもいるぞ
1017:名無しの転生者
というかコンテナて。せめて段ボール数箱とかにしてあげなさいよ、相手引くぞw
1018:幼女
今春日に連絡取ったがコンテナは無理っすって言われた。仕方ないから地元のスーパー数軒回らせてこっちに送らせるか
スーパー1件につきダンボールひと箱ぐらいならいけるだろ
1019:名無しの転生者
まあ……それなら……?
1020:名無しの転生者
一応一番も幼女ネキに意見できるぐらいにはしっかりしてんのな
1021:名無しの転生者
一応筋道立てて話せば理解はするから部下からの諫言があれば受け入れるからな
1022:名無しの転生者
一応他人を気遣うという概念は持ち合わせてるのが面白いよねこの幼女
1023:名無しの転生者
全員一応連呼してて草
1024:名無しの転生者
仕方ねえよこの幼女ガイア連合でも有数の自走式核弾頭だもん
理由もなく殴りかかる事こそないけど、逆に理由があれば殴る前に踏みとどまることはあれ殴る事に躊躇ないもん
1025:幼女
こいつら失礼じゃない?
1026:名無しの転生者
言われるだけの事してるでしょお前さん
1027:名無しの転生者
未だに穏健派にカチ込んでないのが不思議なくらいよ
1028:幼女
別にカチ込むほどの事でもないだろ、少なくとも宮城県内ではあいつら活動出来ないし
例の会談の後宮城県内で姿を見たから10人ぐらい病院送りにしてやったらそれ以後ぱったりと姿を見んでな
百鬼夜行の情報網にも引っかからないしマジで宮城県内には入ってきてないっぽいぞ
あ、病院送りって言っても別にぶん殴ってはおらんぞ。ちょっと解除するまで猛烈な腹痛と頭痛と尿管結石にかかる呪いをかけたんだ
やっぱこういうのは人体実験するのが加減の度合いを掴みやすいな!
結石できたメシアンのたうち回ってたけどこれ以上居ると結石のサイズ3倍にするぞって言ったら周りの奴に回収されてった
押さえつけられながらも打ち上げられた魚みたいにビチビチ跳ねてて面白かったぞ
1029:名無しの転生者
やらかしてやがった……ッ!
1030:名無しの転生者
え、これ大丈夫なの? 協定とかに反してないの?
1031:幼女
元々宮城県内で活動すんなってお達しは支部長直々に出てるし、死ぬような呪いでもないしただの警告だぞ
ルート上ちょっと入るぐらいなら見逃してやるが、明らかになんか活動するつもりで来たんだから警告ぐらいするだろ
あいつら口で言ってもなあなあで済まそうとするからな。呪いかけたのだって事前に口頭で警告はしたんだぞ、二回
仏の顔も三度までだ
なお尿管結石そのものでは死なないがそこから感染症とかで死ぬことはあるから気を付けろよ
件の呪いも結石が出来る呪いは解除できても出来た結石は消えないからな
なお、他の連中も時間差で結石出来る呪いにかかってたからどっちみち全員のたうち回ってたろうけど
1032:名無しの転生者
本当に幼女ネキはさぁ……
1033:名無しの転生者
まあ居留地襲撃で血祭開催するよりはまだ穏当……だよな?
1034:名無しの転生者
知るかw
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「おーっす、差し入れ持ってきたぞ、確かお前らユメ含めて22人だったよな?」
「あ、リンちゃん」
「待って待って待て何その大量の段ボールと冷蔵コンテナ」
ラピュタ支部、青学ラピュタ分校。笑顔でユメがリンに手を振れば、前回リンを監視していた青学生、斑鳩カギリがドン引きでリンを見る。
リンはあの後一番から贈られた大量のお菓子や飲み物の詰まった段ボールを押し、差し入れと称して遊びに来たのだ。しかしそこは我らが核爆弾、その量が常軌を逸していた。
アイルー数匹がかりで引く大八車やラニ=Tの運転する大型の構内用電動カート数台分、下手な大型トラック数台に匹敵する量が続々と搬入されているのだ。
「差し入れだが。中身はお菓子とコーラな! あ、大丈夫だぞ! 全員にそこそこの量が行き渡るようにしてあるからな!」
「この量だと1/22しても部屋埋まるんだけど!?」
絶叫するカギリ。視線を感じて振り返れば、部長である岩寺コマリを筆頭とした次元物理学研究部の面々が物陰からこちらを伺っている。
以前の邂逅からこちら、いわゆる『第一村人』であったカギリが『幼女ネキ係』としてリンが来た時の応対担当になっている。
場合によっては手伝ってもくれるが、それでもいつ爆発するか分かったもんじゃない核爆弾の処理を押し付けられているのはそうなので心の中で中指をダブルで立てておく。覚えてろよお前ら。
「……このぐらいないと秒でなくならないか? ほら、ポテチ食いながらコーラ飲んでるとすぐなくなるし」
「幼女ネキ基準は一般人ドン引きなんだって言ってるじゃん……」
えぇー? とでも言いたそうに首を傾げるリンであったが、そもそもレベル90に達する高レベル覚醒者には一般人の事はよく分からないのである。*16
銃弾を受けて痛いですむキヴォトス人を一般人と言っていいかはさておくとして。*17
「でも私も次はいつ来れるか分かんないし……友達のとこに遊びに来たんだからお菓子ぐらい持ってくるだろ、対した出費でもない*18し」
事も無げに言うリンにカギリは思わず背後のラニ=Tを見るが、ごく自然な動きで視線を逸らされた。
アイルーの方を見た。『荷物これで全部かニャ?』『帳簿を確認するニャ、視線を感じでも反応するヒマなんてないニャ』と即座に気付いてないふりをし始めた。本当にお前ら覚えてろよ。
その後は何事もなかったかのように荷下ろしが進み、ラピュタ分校のある区画には暫く謎のコンテナや段ボールが鎮座することになったのだという。*19
そして。
『あぁ~っ!? あたしのトライピオ*20が!?』
『トライピオでドライガーに勝てるわけねえだろうが! 現実見ろ!』*21
「一部の奴のトライピオに捧げる熱い情熱と絶対の自信は何なんだ……?」*22
「普通にドラグーンとか使った方が絶対強いよね」
「私の友人のカス子ネキなんて霊的素材でフルカスタムしたオカルトトライピオで私の素のドラグーンV2と対戦して普通に負けてたぞ」*23
「オカルトベイで素のベイに負けてる……ッ!」*24
ベイブレード大会を開催した所、
『しょ、初手エグゾディア!? え、イカサマしてない? 本当に素で揃ったの!?』
『今日は引けなさそうな気がしたんだけどなぁ……』
「やはりセツナはエグゾディアに愛されているな……今回1枚づつしか入れてないデッキだったんだが」*25
「あの話本当だったんだ……もはや呪いじゃんそれ」
「流石にエグゾディアが入ってないデッキではこんなミラクルは起こらんが、シンプルに強運なんだよなセツナ。マリカーでもアイテムの引きがいいんだ」
「運がカンストしてるなぁ……」
遊☆戯☆王大会を開催しては、参戦したセツナが初手エグゾディア連発で殿堂入りしたり。
「「「「「「……おぉ」」」」」」
「……おぉ」
「どやぁ」
「……凰音さん、多分これ怒って良い奴だと思うよ?」
「いやまぁ、セツナちゃん、恥ずかしいのはそうなんだけど、自分のだぞ!ってどやってるリンちゃん可愛いなー、って……独占欲発揮されてるのもちょっと嬉しいし……」
リンの壺洞天内に一同を招待し、そこに作った海岸でリンの保護者として居合わせた凰音の白ビキニに包まれた見事な肢体にカギリとコマリ、次元物理学研究部の面々が思わず見惚れたり。
とにかく考え付く限り全力で遊び倒し、大騒ぎした。そして、その夜。
「……カギリ、ちょっといい?」
「コマリ?」
洞天内部に作られた来客用のゲストハウスでくつろぐ青学生達。高級ホテルもかくやというゲストハウスの片隅で、コマリとカギリが顔を突き合わせていた。
コマリは周囲を軽く見まわし、誰もいないのを確認してから、恐る恐るといった風に口を開く。
「……実際さ、幼女ネキ、どう?」
「どうって……まあ、悪い子じゃないとは思うよ、悪い子じゃ。っていうか幼女ネキ係押し付けられた人間としてはコマリに一言言ってもいいよね?」
幼女ネキ。何の因果かユメと自分が気に入られちょくちょく遊びに来ることとなったが、自分達からすればいつ爆発するか分からない核爆弾が横にある事には違いない。
しかし、その在り方そのものは正直眩しいのも事実だ。己の快・不快をはっきりと表現し、努力すようとする者には援助を惜しまず、今回散々遊び倒したのもラピュタ支部から出られない自分達への気晴らしという意味もあるのだろう、とリンの嫁たちもリンに聞こえないように言っていた。
「まあ、だからこそ青学のやり方知ったら確実にキレ散らかすのは間違いないと思うよ。
アビドスとかそうじゃん。ギリでなんとかそれっぽく収まったけど、そもそも最初に好き勝手した結果原作より規模デカくなったからマッチポンプで削ります、*26とか、原作関係ないじゃん。
ナゴミと団長関連のあれこれだって、変に悪乗りしたせいで買わなくていい恨み買ってるし。当時真面目にミレニアムスパイしてた私の努力を返してほしい」
「いやまあ……それはそうなんだろうけど。でもあたしたち関係ないよねその件。そもそもうちらアビドスにはノータッチだし」*27
「ないよ。全くない。あんなのと一緒にしてほしくもない。でも、幼女ネキは多分一緒だと考えるんじゃないかな。少なくとも、メシア教にはそう考えてるよ、あの子」
実際そうである。リンはメシア教の事を蛇蝎の如く嫌っているが、穏健派も過激派も、何であれば世俗派も同じように考えている。
これはそもそもリンの言い分としては『過激派は論外、穏健派も内部統制ができていない、世俗派はそもそもメシア教である必要がない。なのにメシア教を名乗るのであればメシア教という名のもとに起こるすべての責任を背負うべきである』と考えているからだ。
これを青学に当てはめれば、アビドスに関わっていない自分達も等しくリンが嫌うであろう『青学』であり、事が露見した際恐らく真っ先に被害を受けるのは自分達だろう、というのがカギリの言であった。
「多分、全力で土下座して説明すれば理解はしてくれると思う。実際、動向を掴むために方々にスパイを送るのは必要だった。原作ルート以外に安牌なルートを作れる自信もなかった以上、それに縋るしかなかった。
でも、それ以上に青学はやり過ぎてる。アビドスでもそうだし、なんだったらスパイの回収ということ自体が方々からいらない恨みを買う事態になってる。
だから、最悪、青学って看板下ろして
「ち、ちょっとカギリ!?」
慌てて周囲を見回すコマリ。青学を裏切るとも取れるこの発言がバレれば、下手をすれば身内からの密告もありうる。
辛うじて誰にも聞こえなかっただろう事に安堵の溜息を漏らすと、コマリはカギリに詰め寄り、声を潜めて改めて問う。どういう事かと。
しかし、それに対してカギリは、聞き間違いであってほしいという思いをばっさりと切り捨てるように口を開いた。
「私はね、部の皆とワイワイやるのは好きだよ。でも、私は今の状況に満足してる。この状況こそが私の望んだ環境なんだ。
前にも言ったよね、私、ミレニアムで『友達』に何されそうになったか」
諦観と、絶望と、怒りの混じった押し殺した呟きだった。
斑鳩カギリという少女は、かつて青学が方々の動向を察知するために伏せていたスパイであった。
スパイの中でも、『あ、こいつスパイかも』と思われている者達とは別の、悟られる要素をおくびにも出さず情報を集め続けるタイプのスパイ。
しかし、転生者であり、キヴォトスメンタルの少女たちとは根本的な精神構造を異にするスパイたちは、往々にしてその脳を焼き、執着されることがある。
カギリもスパイであると察知こそされなかったが友人の脳をこんがりと焼いた結果執着され、監禁からの強姦未遂という悲劇に見舞われる事となった。
結果対人恐怖症を患い、ほうほうの体で青学へと逃げ帰り、そしてそこから何とか持ち直して青学の次元物理学研究部に入部する事となる。
しかしその経験から、カギリはキヴォトスという世界そのものから逃げ出したい、と考えるようになったのだ。
「まあ、根本的には私のせいだから襲われたことは仕方ないんだと思う。でも、私はもう、あの世界に居たくないんだよ。
嘘はいつかバレるよ。青学が隠してきた色んな事は、いつかバレる。私はそう思ってる。
『原作ルートを辿る事』、それそのものが悪いとは今でも思ってない。でも、そのためにしてきた色んな事のツケはいつか支払うことになる。
私はその時、支払う側でいたくないんだ。皆の事は友達だと思ってる。逃げ出したいと思ってる事にも、申し訳ないと思ってる。
でも、あっちの世界でいつ爆弾が爆発するか戦々恐々としているよりは……今の方が、ずっと気が楽なんだよ。ごめんね、コマリ」
そう言って、カギリは悲しそうに笑うのであった。
(静かだな……)
ゲストハウスの外。昼に遊んだ砂浜に置かれたビーチチェアに寝そべり、カギリは打ち寄せる波を見ていた。
本当に、この世界に来れてよかった。心底からそう思う。青学に戻ってから、暫くは本当に人に会う事が怖かった。
カウンセリングや治療・リハビリで誰かと会う事すら恐く、今でさえ誰かと接する時はおっかなびっくりだ。
自分が『幼女ネキ係』に任命されたのもその辺りを鑑みて荒療治的に、というのが理由の半分ほどでもあったそうだ。
まあ、正直その事について全力で中指を立てたい気がするのは変わらないが、確かに多少はマシになったかもしれない。
(実際、幼女ネキってその辺踏み込んでこないからなぁ。多分、私達が何か隠してる、言えない事情がある、無惨ニキさんが自分に対し情報を伏せている、そのこと自体には気づいてる。
でも、その事について踏み込んでは来ない。私の対人恐怖症にも、多分気付いてる。気付いた上で、そこには触れてこない。
多分、分かってるんだ。自分に対して情報が伏せられている、その理由までは分からなくても、『それを知った際自分が起こすだろう行動』、それを起こしてほしくないから情報が伏せられている、それを察することはできている)
カギリは元とはいえ、スパイであることを悟らせずに情報を集め露見することなく逃げ切った自負がある。その自分の見立ては恐らく正しいだろうという確信もある。
だからこそ、幼女ネキが暴走機関車に見えて(実際暴走しだすと止まらないのだろうが)その実非常によく物を考えている事が意外だった。*28
(私の
来るたび全力で遊んだり振り回したりしてるのも、もしかしたらあの子なりに元気づけてくれてるのかな?
そりゃ、8歳でレベルだっけ、それが90を越えてるなんて、事情がない訳がないんだ。多分、軽々に聞いちゃいけないなんかがある)*29
無惨ニキに探りを入れた時にも、彼はその辺りをはっきり言いはしなかった。
伏せる理由が特にないのなら、そしてそれが必要ならば、多少憚られる内容でも伝えてくれるだろう。それを言わなかったという事は、つまりは
(私の事情を話したら、幼女ネキは迎え入れてくれるかな。このままラピュタ支部でもいいけれど……私はもう、キヴォトスには――戻りたく――――――)
穏やかな夜風が、打ち寄せる波の音が、カギリを眠りへと誘う。ラピュタ支部を出る事があるなら、他の支部へ行けるのならば、出来れば、気心の知れた幼女ネキの所がいい。
そんな事を考えながら、カギリの意識は眠りの淵へと落ちて行った。
夢を見た。
未だに消えぬトラウマとしてカギリの心に根差す、青学に救出された時の、執着をこじらせた友人に監禁された時の夢を。
しかし、夢はいつものそれとはやや様相を異にしていた。
服を剝かれ、事に至ろうとしたところで突入してきた救出班により救出される、それがいつもの流れだ。だが、今回の夢は突入してきたのが何故か幼女ネキだった。
ドアではなく壁を蹴破って突入し、友人をヤクザキックで壁に叩き付けて沈黙させ、こちらを一瞥して『行くぞ』と声をかけて去って行く、そんな夢だ。
あれ、なんで? どうして幼女ネキが? そんな疑問も当然沸くが、夢の中の自分が向かれた服をかき集め壁の穴から外に出ていくところで夢は終わり、その眠りは一層深い所へと導かれて行った。
そして、時間は少しだけ遡る。夜のおやつとして倉庫にトリコ食材を取りに行ったリンであったが、そこでばったりと出会ったのはコマリ。
消灯時間になってもカギリが戻ってこないので探していたのだそうだ。
「カギリが? まあ、別に何か危険な生物がいるわけでもない。*30強いて言うなら腹でも冷やしてなければいいんだが」
「まあそうなんだけど……部長としては心配になるからさぁ」*31
まさか『青学を抜けてそっち側に行きそうなので心配&警戒してた』とは言えず、コマリは言葉を濁す。
それを知ってか知らずか、リンは暫し思案した後、念話でキャナルに声をかけた。
「……ふむ、そうか。キャナル、カギリを探せ。
『了解しました。全域にスキャン掛けますね』
その言葉と共に、意外にもあっさりカギリは見つかった。昼に遊んだ海岸にあるビーチチェアに寝転んでいたのだ。
しかし。
「……うなされてるな、悪夢でも見てるのか?」
「あー、まあ……色々あったんだよ、カギリも。今じゃましになったけど、昔は対人恐怖症気味でさ……一応、何があったのかは知ってる。でも、あんまりカギリに無断で言う事でもなくてさ」
「そうか。なら聞くまい。それにまあ……隠し事は今に始まった事でもあるまい。カギリに限らずだが……
私も似たようなものだ。隠してこそいないが、大っぴらに公言して回るような過去でもない。いずれ打ち明けてくれると思っているが、無惨ニキが何も言わんのだ、私が勝手に掘り起こす事でもあるまい」
「意外にあっさり引きさがるんだ?」
正直意外だった。この幼女ネキ、鵺原リンという少女は、曲がったことを嫌い、不条理を押し付けるものに対し牙剥く事を躊躇しない。
しかし、怒っていなければその行動は理性的ですらある。瞬時にスイッチが切り替わる場合もあるから気を付けろ、とは無惨ニキの言葉だが……
「必要ならやるが、必要もないのに暴き立てるのは趣味ではない。それに、まだ学生の身の少女たちを無惨ニキが保護しているのだ、何もない訳はあるまいよ。
親しき中にも礼儀ありだ。友人が語らぬ過去を掘り起こすほど、私は無粋ではないよ」
「そっか……実際、言えるかは分かんないよ。ずっと秘密にしてないといけないかもしれない。でもまあ、ありがと。
あたしは良いけどさ……カギリの事は、ちょっと気にかけてやってよ」
「当然だ。……しかし、うなされたままというのもかわいそうだな、見様見真似だが……ふむ、やってみるか」
「え? 何を――――――」
リンは軽く咳払いをすると、カギリの隣にあったビーチチェアを動かして寄せると、その上にどっかと座り込み、深呼吸。
そして軽く力を入れると、その下半身が黒い魚のそれに変わる。リンの宿す悪魔の1つ、マーメイドへの悪魔変身だ。
その上で軽く息を吸い、次の瞬間、口から粒がれるのは、歌であった。
いつでも誰かが きっとそばにいる
思い出しておくれ すてきなその名を
「あ、この曲……」
喉元まで出かかった言葉を、慌てて止めるコマリ。
転生者である自分は知っている。これはジブリ映画『平成狸合戦ぽんぽこ』のED『いつでも誰かが』だ。
そしてこの歌声に乗るMAG、これはスキル【子守唄】だろう。そういえば、とコマリは以前リンが世間話で話していたことを思い出す。
リンもまたかつて悪夢にうなされていた時、人魚ネキという黒札に子守唄を歌ってもらった事があるのだと。
後に無惨ニキに聞いた所によると、彼女は非常に優れた歌唱スキルを持っており、不特定多数の人間に子守唄を聞かせる事で悪夢にうなされるような人間でも安眠させることができたのだという。
恐らくリンはそれを模倣し、自分の【子守唄】で悪夢にうなされるカギリを安眠へと持っていこうとしているのだろう。
心がふさいで 何も見えない夜
きっときっと誰かが いつもそばにいる
静かに歌うリン。カギリの寝顔も、うなされ、苦しそうな顔から、徐々に穏やかな寝息にかわってゆく。
そうして暫く歌った後、カギリはうっすら笑みを浮かべる程に穏やかに眠っていた。
「すごい……こんな穏やかな顔で寝てるなんて久しぶりに見た」
「人魚ネキや私に対するセリリ程の精度は出せんがな。そもそもが対症療法だ、根本治療ではない以上、そのうちまた再発するぞ」
「どうにか出来ないの?」
「カギリのこの
あとで今の子守唄をCDに焼いて送る。本人が抜け出したい、と思ってればその内悪夢も見なくなるんじゃないか?」
そこまで言うと、リンは念話を飛ばして別荘からノワール達を呼び寄せ、限りを運んでもらおうとする。……したのだが。
「……ぬ」
「……掴まれちゃってるねえ」
眠りに落ちたカギリの手は、傍で子守唄を歌っていたリンのTシャツの裾をがっしと握って離さなかった。
しかも(リンは知らぬことだが)キヴォトス人の腕力でである。無理やり手を開けば外せようが、折角寝入った所を起こすのも忍びない。
そんなわけで。
そのままカギリは駆け付けたノワールによりリンごとゲストハウスに搬送、カギリ割り当ての部屋に放り込まれ、そのまま朝を迎えた。
朝になり目覚めたカギリがリンに抱き疲れて寝てる事にびっくりチキンの面目躍如とばかりに記録更新の絶叫を上げたり、
そして夢の内容を覚えていたカギリの挙動がリンに会う度ちょっとおかしくなったりしたのだという。
どっとはらい。
そんなわけで136話でした。多分ラピュタ分校の皆については憎からず思っているんじゃないだろうか。
きちんと理由を話せば理解は示してくれるし無関係判定が出るはず。
□解説
・ようじょ
お友達と全力で遊んだ。青学関連のあれこれについては全く知らないが、自分に対して情報が伏せられているな? というのは理解してる。
けど伏せられる心当たりは割とあるし、そもそも他人の過去を掘り返すほど無粋でもないので知らんぷりしてる。
人魚ネキやセリリの子守唄治療を受け続けているので、2人程の精度じゃないけどできる事は出来る。この後CDに焼いてカギリに贈った。
事務課? お前らが子守唄以外の依頼を人魚ネキに依頼しなくなったら考えてやるぞ? とか考えている。
作者的には使用楽曲の欄使って見たくて……
・カギリ
記録更新した青学生。一応神秘がアルテミスだという事だけは決まっている。
ようじょよりはマシだけどトラウマ持ち。ようじょ子守唄でちょっとマシになった。
そして幼女への視線の湿度がちょっと増した。(なおようじょは全く気付いてない)
・青学のみんな
ようじょ開催のホビー大会で全力で楽しんだけど、転生者であるとバレそうになるのを押さえるのが大変だったそうです。
・トライピオ
へぇい(挨拶)
トライピオがどういうものかはようつべで検索してみよう!