【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策   作:タマヤ与太郎

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そんなわけで140話、脳缶ニキ編後編。気が付けば150話も見えてきたな……果たして今年中に終わるかな!(無理


転生ようじょ、競う。(後)

【ようじょと】第1回P-1グランプリ実況スレ【愉快なお馬鹿共】

 

 

 

762:名無しの転生者

 

いやー酷いことになったな、海女スタンの壁を誰も越えられんとは

 

 

763:名無しの転生者

 

シンプルにギミックとしての凶悪さがダンチなんよな

性能としては大統領と互角らしいからレベルもそんぐらいだろ?

というかなんで一応の主人というか上司のようじょにも躊躇なく攻撃してんだあれ

 

 

764:大統領

 

今念話を飛ばしてみたが

『それはそれ、これはこれ、今の私はレースのギミック。ギミックとしての本分を果たすことこそ忠義かと』と言っている

マスターはこういうとこで手心加えられると逆に怒るタイプだからな、そのまま全力でやれ、と伝えておいた

 

 

765:名無しの転生者

 

幼女ネキ本当にそう言うの嫌いそうだもんな……

でもどうやって突破すんのさ?

 

 

766:名無しの転生者

 

なんかあいつら第四関門手前の加速プレート前で雁首揃えて相談し始めたぞ?

 

[配信中]

 

茜『なんや? みんな止まって相談し始めたで』

葵『あ、コクピットから降りられたんだ……』

カス子『まあ能力の平均化のためにあのボディにしてるだけで普通に人乗れるしなあれ』

脳缶『通訳するね』

 

狩人『ンナナ、ナナンナ?(しかし、どうする?)』

幼女『|ンナ……ナナナナンナナ?《ふむ……全員でばらけて行けば誰かを犠牲に他は進めるのでは?》』

ゆかり『ナナナンナ!?(私嫌ですが!?)』

るる『ナナ、ナナンナンナンナナ(でも、そのぐらいしかないよね)』

天堂『ナナナッナナナ、ナナンナ(恨みっこ無し、という事で)』

ゆかり以外『ナンナナナナナ(それでいこう)』

ゆかり『ナナナナンナナナッ!?(私賛成してませんけど!?)』

 

茜・カス子『草』

葵『でも実際そのぐらいしか……ないかなぁ』

脳缶『お、分かって来たね葵ちゃん!』

オルガ『一応制限時間もあるからな、第四関門まではスルーできるショトカ開通*1もあるにはあるが、レースとしてはせめてショートカット出来る範囲ぐらいは一度でも突破して貰った方が絵になる』

 

 

767:名無しの転生者

 

全員脳筋解決で草

そして流れるようにスルーされるゆかりネキよ*2

 

 

768:名無しの転生者

 

どっちにしろ通らなきゃいけないのは確かだし、4対1で多数決で負けてるし……

どのみち単独であそこ越えるってなると鶏の目つぶしと海女スタンの攻撃を避ける必要あるしな

 

 

769:名無しの転生者

 

ってなるとどっちみち全員でばらけて的を散らすしかねえのか

 

 

770:名無しの転生者

 

お、作戦会議終わったぽいぞ、ようじょと狩人ニキが湖の外周を左右から、

天堂姉妹と美大生ネキが方向を左右にズラしながら加速プレート、ゆかりネキが湖上を行く感じか

 

[配信中]

 

茜『参加者各位、共謀して海女スタン破りに入る模様! 今回の鶏ジャマーのターゲットは……美大生ネキや!』

葵『飛びあがったところに鶏が集まって……切り払った!?』

カス子『まあできればやるよね。やれる部位ついてるの幼女ネキとるるネキしかいねーけど』

オルガ『む、待て。同時に飛び上がった天堂姉妹に動きがあるぞ』

 

 

771:名無しの転生者

 

あれ、何やってんだ天堂姉妹。空中で方向転換して……その向きだと着地出来なくね? 何するつもりだ?

 

[配信中]

(空中で方向転換する天堂姉妹のクニトモ1号、正面部分が海女スタンの立つ巨大シャコ貝に向き、直後自爆砲撃)

 

天堂『ンナナ(ぽちっとな)』

 

 

 

772:名無しの転生者

 

ぶっ放した!?

 

 

773:名無しの転生者

 

海女スタンって倒せるのか? なんかレベル70ぐらいって言ってたよな

 

[配信中]

 

茜『天堂姉妹突然の砲撃! 海女スタン撃破が目的か!?』

葵『倒せるのあれ!?』

オルガ『理論上は可能だ。だが今回のマシン性能では物理的に不可能だ。しかし何も無策で仕掛けたわけでもあるまい』

カス子『……あれか? 海女スタンの攻撃は音を媒介にしている、それを上回る爆音で一時的にかき消すこと自体はクニトモ1号でも可能だわ』

脳缶『あ、るるネキが貝の真上に……載っちゃった』

 

美大生ネキのマシンが貝のフタに乗って……そのまま閉めた!

閉まるんだあれ……

 

 

774:名無しの転生者

 

そのまま他の3人は無事海女スタンゾーン突破、るるネキはどうすんのか……と思えば、無理やり閉じたせいで開こうとしたシャコ貝の動きに乗って大ジャンプ

ギリギリ端っこに足が引っかかって突破成功か。天堂姉妹だけリスタートになっちゃったけど……

 

 

775:名無しの転生者

 

でもあいつら特に気にしてないみたいだぞ、壁の前で待機してる

ショートカット開通待ちかな?

 

 

776:名無しの転生者

 

まああいつらはそんな勝ちに行こうって感じじゃないからな

そんで第五関門だが

 

 

777:名無しの転生者

 

ん?なんだ分かりやすいストレートのコース……いやあちこちに遮蔽がある? スラロームか?

 

 

778:名無しの転生者

 

いやコースの端になんかいるぞ、女の子……いやこれ天堂姉妹じゃね?

 

[配信中]

(直線コースの突き当り、コースの外側に立つ2人の少女)

 

茜『さあ最終第五関門! コースの先に立つ最後の関門はシンプルなスラロームに見えて……?』

葵『あのコースの先に女の子いるけど……お姉ちゃん、あれ参加者の天堂姉妹さんじゃない?』

カス子『あ、あの子らは天堂姉妹のシキガミの海えっちゃん&空えっちゃんやね。外見が天堂姉妹と同じってだけ。一応許可貰って最終関門に登場してもらったわ』

脳缶『カス子ネキ、どんな関門なの?』

カス子『すぐにわかるよ、見てな』

オルガ『ふむ、2人とも大きく拳を振りかぶっているな。それぞれの片腕に装備しているのは手甲か?』

 

(直後手甲をはめた方の拳を突き出し、そこからごん太ビームがコースの半分を埋める。それを交互に繰り返している)

 

葵『ビーム!?!?!?!?!?!?』

茜『えー、資料が開示されたで! 最終関門『双頭竜門』! 海&空えっちゃんがぶっぱなすビームを遮蔽で避けながらゴールを目指す、操縦テクニックが問われる関門やな!』

オルガ『思い出した、あれは『光弾の篭手(ブリューナク)』か。確か天堂姉妹が開発した霊装『聖騎装(エンチャントギア)』*3の1つだな。本来はシンプルなMAG弾を放つ装備だが、使い手の出力次第でビーム状にもなる』

カス子『厳密に言うとあれは『光弾の篭手(ブリューナク)』の黒札専用カスタマイズの双頭竜(アルトロン)*4やね。あの子らには五行炉と繋がってもらってそこから供給されるMAGでビーム撃ってもらってる』

脳缶『一応遮蔽に隠れてれば当たらないけど、一定の間隔で発射されるビームを確実によけないとるるネキの機体でも危ないレベルの威力だよ』

 

 

779:名無しの転生者

 

本家パンジャンみたいなギミックを人力で再現しないでいただけます??????

まああの子ら人間じゃなくて武器シキガミだけど

 

 

780:名無しの転生者

 

聖騎装ってあれか、女王騎士物語の

ともあれ最終関門、流石に全員遮蔽に隠れて避けてんな

 

 

781:名無しの転生者

 

ビームが途切れた一瞬の隙を狙って遮蔽から遮蔽に隠れながら移動してるけど、それも各々特色があるな

優れたドライビングテクニックで減速はあるものの止まらずに駆け抜け現在1位のゆかりネキ、

尻尾を使って急制動かけて遮蔽に入ったり、遮蔽そのものを踏み台にして大ジャンプでかわし飛び石の様に遮蔽を渡っていく幼女ネキ、

バイクモードと四足モードを切り替え的確に遮蔽を移っていく狩人ニキ、

大ナタを盾にして、武器を犠牲に強引に突っ切ってゆかりネキに猛追する美大生ネキ

第五関門突破の一番乗りはゆかりネキかるるネキかな?

 

 

782:名無しの転生者

 

先に第五関門を突破したのは……ゆかりネキだ!

 

[配信中]

 

茜『第五関門を一番に抜けたのは……ゆかりネキ! 次いで装甲ははがれている物の走行に支障なしとばかりに猛追する美大生ネキ! その後に幼女ネキと狩人ニキが続く! アツい展開やでぇ!』

葵『すごい、なんかいつの間にか普通のレースになってる……』

カス子『と、思うじゃん?』

葵『えっ』

 

 

783:名無しの転生者

 

なんかすっごい不安になる事言うじゃんね

 

 

784:名無しの転生者

 

カス子ネキィ……?

 

[配信中]

(ゴール目前、最終ストレートに差し掛かった直後、最終ストレート全体を埋める大爆発が起こり全車が吹き飛ぶ)

 

 

785:名無しの転生者

 

な に こ れ

 

 

786:名無しの転生者

 

何が起こったんだよ!?

 

茜『おーっと突然の爆破! 何が起こったんだーっ!?』

オルガ『天堂姉妹がショトカ手前の謎の紋章に乗ってるが、カス子ネキ?』

カス子『お答えしよう! あれは乗ると第五関門~最終ストレート内に大爆発が起こり問答無用で空間内の全車を爆破するギミック『ヤケクソボム』! 1回使うと30秒のクールタイムがあるけどタイミングによってはワンチャン狙えるギミックとして置いといたよ』

葵『―――――――――(魂が抜けている』

脳缶『お、ショトカ開通した。現在天堂姉妹がトップだね!』

 

 

787:名無しの転生者

 

そうだよな……P-1でショトカあるならヤケクソギミックもあるよな……*5

天堂姉妹はこれとショトカ開通のタイミングを狙ってたな?

 

 

788:名無しの転生者

 

そして例によって主人相手にも容赦なくビームぶっぱするシキガミ達で草*6

 

 

789:名無しの転生者

 

まあその主人完璧な位置取りでかすらせもしてないんだが

ただショトカ開通したから他の4人も追い上げてきたな

 

 

790:名無しの転生者

 

流れはさっきと同じようだが……そこに天堂姉妹が加わるわけか

 

[配信中]

茜『天堂姉妹、タッチの差で第五関門を抜けるも猛追する他4人! このままでは抜かれるぞ!』

オルガ『天堂姉妹のクニトモ1号は攻撃特化、爆弾と鉄片を運ぶためにパワーはあるが、重量がある分速度では劣る。一時はトップに立ったがこれは不利か?』

葵『幼女ネキさんあたりリベンジしそうだったけど……他の人達もあんまり攻撃姿勢には移ってないね?』

カス子『ここで攻めるよりは追い越してゴールしたかったんじゃねえかな。少なくとも狩人ニキとゆかりネキはこのキチキチマシン猛レースから一抜けしたいだろうし』

脳缶『でも天堂姉妹の事だからもう1つ何か仕掛けてきそうだね……あ、信地旋回しだした』

 

 

791:名無しの転生者

 

うっわあぶねえ、爆弾抱えてぐるぐる回転してるから他の奴らの足が止まった

 

 

792:名無しの転生者

 

姉妹の攻撃範囲は本当に広いからな、迂闊に抜けようとすると吹き飛ばされるぞ

 

 

793:名無しの転生者

 

ん? なんか車体と攻撃パーツ部分の継ぎ目がぐらついてる?

 

[配信中]

茜『おーっと! 天堂姉妹、信地旋回からの攻撃パーツ自切!遠心力で爆弾と鉄片の塊を後方にぶん投げた!』

葵『当人はそのまま逆走でゴールに突撃していってる……でもみんな回避したね?』

オルガ『……待て、全員にかわされた爆弾層が第五関門の方に吹っ飛んでいって……』

脳缶『あ、通り抜けた後もブリューナク撃ってた武器えっちゃんズの攻撃で爆発して……』

カス子『うーわ、切り離し投擲からのステージギミックで遠隔起爆かよ、えげつねえ』

 

 

794:名無しの転生者

 

遠隔起爆で後方から爆炎が!?

 

 

795:名無しの転生者

 

うわ、最後方にいた狩人ニキと幼女ネキが吹き飛んだ。それがクッションになって美大生ネキはギリ耐えたな

 

 

796:名無しの転生者

 

ゆかりネキはひっくり返りかけるが逆にそれが爆風を帆の様に受ける形になって加速!ゴール直前で天堂姉妹に並んだ!

 

 

797:名無しの転生者

 

そしてそのまま雪崩れ込むようにしてゴール! ほぼ同着に見えたが……少し遅れて美大生ネキと

 

 

798:名無しの転生者

 

あとは速攻で第五関門抜けて来た幼女ネキと狩人ニキがブレードと槍でチャンバラしながらラストスパート……

 

 

799:名無しの転生者

 

でも一瞬のスキをついて前足と前タイヤ部分を潰して幼女ネキが4位でゴール、あとはギリ自走可能だった狩人ニキが最下位でゴール……

いやほんととんでもねえレースだったな……

 

 

800:名無しの転生者

 

んで、結局1位はどうなったんだ?

 

[配信中]

茜『レース終了ーっ! ちょっと今協議中なんでちょっとまってな!』

葵『なんか大分接戦だったので写真判定中だそうです』

オルガ『マスターは4位か、まあ、元々勝敗にはこだわっていなかったようだし、思う様レースを楽しめた事だろう』

カス子『いやほんと天堂姉妹、レースを荒らすのまでは想定してたけどまさかトップ争いに食い込んでくるとはねえ』

脳缶『いい盛り上がりだったね! これは第二回も企画した方が良いかな? 来年あたり』

 

 

801:名無しの転生者

 

またやんの!? いや楽しかったけどさw

 

 

802:名無しの転生者

 

しょっぱなの全力砲撃からラストの遠隔起爆まで、本当に天堂姉妹が荒らしてくれたよな……

 

 

803:名無しの転生者

 

そういやゆかりネキの最下位ペナルティは免れたみたいね?

 

 

804:名無しの転生者

 

それもそうだな。まあ一安心じゃね?

 

 

805:カス子

 

と、思うじゃん?

 

[画像]

(観客席でイズナとあかりが大盛り上がりで応援している)

 

 

806:名無しの転生者

 

イズナちゃんと知らん子だ、もしかしてこの子が例の親戚?

 

 

807:大統領

 

そうだな。今のところバレてないだろうが……まあ、ゆかりネキにはひと時余韻に浸らせるぐらいはしてもいいだろう

ミチルとツクヨにすべてを任せる。上手くやってほしいものだな*7

 

 

808:名無しの転生者

 

イズナちゃんの脇で2人がすっげえ死んだ目してる……

 

 

809:名無しの転生者

 

ほんと気が気じゃないだろうな、いつ口滑らすか分かったもんじゃないもん

 

 

810:名無しの転生者

 

まあ……うん……探求ネキに連絡しとくネ……俺ガイアニ社員で今横にいるから……

 

 

811:カス子

 

マジ頼むわ……

 

 

 

 

 

 

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『写真判定の結果、全く同時という事で1位はゆかりネキと天堂姉妹の同着1位や!』

 

『3位が美大生ネキさん、4位幼女ネキさん、5位狩人ニキさんです。表彰式は――――――』

 

 

 

「ひ、酷い目にあった……」

 

埃及特区、ライディングデュエル用サーキット。

その関係者区画の廊下を歩いているのは、紫髪にパーカーを着た少女。今回散々な目にあった黒札、ゆかりネキである。

結局レースは天堂姉妹との同着1位という結果に終わり、幼女ネキによる親戚バレor地獄の修行は免除となった。

しかしその過程で普段感じる事のないストレスを受けたのは事実であり、肉体的な疲労はないものの精神的な疲労が凄まじく、ゆかりネキは壁に寄りかかりながらも何とか歩を進めていた。

 

「お、いたいた」

 

「うわでた」

 

思わず飛びのくゆかりネキ。現れたのは我らが鵺原リン(ようじょ)。楽しくレースが出来てご機嫌なのか満面の笑みを浮かべていた。

 

「1位おめでとうな。まあ同着だが……本気でやったがそれでも負けたというのはゆかりネキの天運だろう。肉体スペックは横並びだったわけだしな!」

 

「まあ、それは良いんですけど……約束は守ってくれますよね?」

 

「無論だ、約束は守るとも。私からあかりにバラしはせんよ。もう手遅れだがな」

 

「……は?」

 

真顔になるゆかりネキ。それもそうである。そもそもこのレースに参加する羽目になったのはリンの娘であるイズナがあかり相手に口を滑らせかけたからであり、

最下位で真相バレか地獄のシゴキの二択になったのも今目の前にいる幼女ネキのせい。

万が一にもそれを避けるべく必死にレースを走り切ったというのに、それが最早手遅れとは?

 

「観客席にイズナがあかりを連れて来ていてな。イズナは口を滑らせなんだが同席したきくりネキがポロっと漏らしたのでバレたそうだ」

 

事の起こりはレースが終盤に差し掛かった時に遡る。ちょくちょく課外授業という体で応援に行っていて顔見知りだったイズナときくりネキ。

離れた場所で観戦していたが、イズナを見つけて移動、相席し、その流れで一緒に座っていたあかりとも話をしていたのだという。

そこで『そういえばあかり殿はゆかりネキ?殿という方のお知り合いだそうなんですが、ご存じですか?』と質問し、

『ゆかりネキ? ああ、あの甘ったれの……』という所からあかりが怒涛の質問開始。きくりネキもそれに対し知る限りを応え、*8無事露見と相成った、との事。

 

「バラさない約束でしたよね!?」

 

「約束は守ったろう。『私は』その事についてあかりに一切言及はしておらんぞ。

 そも、あの約束は『最下位になったらバラす』という話であって決して真相を口外しないという約束ではないはずだがな。*9

 第一何度も言っているが、私が口外しなかったとしても他の所からバレる可能性は十二分にあったぞ?

 ミチルとツクヨには出来る限りイズナを止めろ、とは言っていたが、そもそもがイズナはそう言う気遣いが出来る人間ではない。0歳児だぞあいつ?」

 

「それは、そうですけど……」

 

「この件についてはきくりネキも多少責任を感じてはいるからフォローを手伝うとの事だ。探求ネキも呼んでいる、大人しく腹を括れ。

 結果については保証せんぞ。切っ掛けこそイズナやきくりネキだが、そもそもの根本原因はお前の身から出た錆だ」

 

リンはそう言うと、がっくりと肩を落とすゆかりネキの首根っこを掴み、首が締まっているのにも構わず強引に引っ張っていくのであった。

 

 

 

「……ゆかりさん、説明、してくれますよね」

 

「…………」

 

少し後。ゆかりネキはサーキットの応接室で床に正座していた。

周囲には傍に立つ探求ネキ、壁にもたれるきくりネキ、ノワールに膝枕をされながらソファでかったるそうに寝転ぶリン、*10そして正面に立つ、むすっとした顔の銀髪の少女、ゆかりネキの親戚、あかりがいた。

 

「おいゆかりネキ、白状せんと話が進まんぞ。黙れば黙っただけお前の印象と立場が悪くなると事前に説明していたろう。

 私はそれでも構わんぞ、娘の友達に危険が及びかねない不確定要素は排除するに限る」

 

「マスター……それはあんまりでは?」

 

「あんまりなものか。そもそも私はこいつがどうなろうと知った事ではない。あかりの安全が確保され、イズナが心安らかに過ごせればそれで良い。

 ああそうそう、お前のシキガミ達の援護は期待するなよ。この部屋に入れるなと紅蓮に言ってある。無理に通ろうとすれば話が終わるまで殺しておけともな。

 あいつは手加減をせんぞ、大事な式神を傷つけたくなければ大人しく質問に答えろ」

 

眉を顰めるノワールに平然と答えるリン。事実、リンにとってゆかりネキがどうなろうと知った事ではない。

リンにとって重要なのは、イズナの友人であるあかりが無事であればそれで良いし、あかりに何かある事でイズナが傷つくようなことになって欲しくないという思いがまず先にあった。

それ故、ゆかりネキの存在はリンにとって邪魔でしかない。安全マージンを取りにとって稼ぐのは良い。覚醒修行すらリンからすれば温すぎる緩い修行をショタおじに開発させたうえで覚醒したのも腹は立つがまだ良い。

そしてあかりに見栄を張り『自分は凄い人間なのだ』と誤解させたままでいるのもまあ最終的に泥をかぶるのは当人なのでどうでもよい。

リンにとって非常に腹立たしいのは、ゆかりネキが自分に出来る限りで支援しているくせに『自分のレベル上げ速度が遅いせいで抜かされそうになった結果足止めをしていた事がある』という一点である。

リンは大きくため息をつくと、ゆかりネキにちらりと目をやり、何か言いたげに口を開け閉めしてはいるが発言できていないのを見て、半眼で口を開く。

 

「まあそう責めてやるなあかり。確かにこいつは甘ったれでコミュ障でネット弁慶で見栄っ張りで後先考えてないアホだが『言い方ぁ!?』…事実だろ。受け入れろ。

 それでもお前に無事でいて欲しいという思い自体は本物だ。お前のレベル上げを足止めしようとしたのだって、追い抜かされそうになって焦っただけでお前に悪意や害意があった訳ではない。

 多分きっと恐らくメイビー」

 

「……確かに、そうですけど」

 

きくりネキのお漏らしによってあれよあれよとゆかりネキの嘘が露見したのだが、あかりはその中でも『追い抜かされそうになったので自分のレベル上げを一時足止めしていた』という事を気に留めた。

なぜそのような事をするのか? と。元々ゆかりネキの行動を不可解に思っていた*11あかりだったが、その疑念がここになって噴出した。

そしてきくりネキや探求ネキにより話し合いの席が設けられ、現在に至るという訳である。

なお、イズナも関係者だがややこしくなるからと脳缶ニキに預けられ、このいま広がる地獄を一切関知することなくデュエルを楽しんでいる。

 

「実際、デモニカやスキルカード、アイテムなど、こいつのコネで手に入る程度のアイテムを惜しみなく援助していたのは事実だ。

 自業自得だが、人間不信の気のあるこいつがそこまでして失いたくない、そう思う程度にはお前は大事にされているよ。そこに嘘はない。深い理由もな。*12

 お前にもこいつに恩はあろうが、こいつにもお前に恩はある。ほぼ絶縁状態の親族の中で唯一自分を慕ってくれる相手だ、可愛くて仕方が無かろうよ。なあ、ゆかりネキ」

 

「……はい。それは本当です。あかりちゃんと理由は違いますけど、私自身家族からは遠巻きにされてましたし」

 

「それは私もです。ゆかりさんが私の霊能を信じてくれて、支援してくれて、本当に嬉しかった。そのおかげで、今まで生き残れてきたんですし」

 

これもまた事実だろう。幼少期のいじめに対する報復により家族にドン引きされ引きこもりになったゆかり、半端な霊能のせいで周囲と感覚を共有できず爪弾きにされたあかり。

性格はまるで違うがどこか似た背景を持つ2人が親しくなるのは自然な流れであったし、それが血縁であり自分を良く思ってくれるとあらば関係が深まるのも当然だろう。

リンにはあかりがゆかりを慕う理由も理解できたし、ゆかりがあかりに嫌われまいとする理由も、見栄を張りたくなり理由も理解はできた。

 

「自分を慕ってくれる相手に見栄を張りたい、という気持ちはわかるがな。私とてカナヅチだがイズナに見栄を張りたくてマーメイドに変身できるようにした。

 だからお前の行動は一点を除いてとやかく言う気はない。その一点とて、私なりに最低限度にはお前の事を気遣っての事だという事は、理解してくれ。ゆかりネキよ」

 

「どういうことです、幼女ネキ?」

 

「お前は山梨で温い暮らしをしているから分からんだろうがな、半終末になった今、日本国内とて何が起きてもおかしくないのだぞ?*13

 この間なんぞ京都でレベル30~70クラスの大悪魔が大発生したし、その少し前などレベル100オーバーの悪魔が中国の方から攻めて来ていた。

 まあそれクラスの出来事がホイホイ発生するほど環境は終わってはおらんが……あかりの手に余る事態が発生し、最悪の事態に発展する可能性は常に存在しているのだ。

 具体例を挙げれば……そうだな、蘇生不可能なレベルで肉体や魂が損壊する、魂を持ち去られる、メシア教に捕まって洗脳・改造され走狗とされる、などな。

 そんな時に、都合よく助けが入ると思うか? お前が駆け付けられると思うか? 駆けつけたとして、レベル30にもならん程度のお前に、何ができると言うんだ?」

 

そんなリンの言葉には、悪意は感じられなかった。歯に衣着せぬ舌鋒で容赦なく抉って来てはいるが、リンの言葉は掛け値なしの本音であり、ゆかりネキやあかりを案じてはいる。

そう感じられる程度には、体を起こし、ゆかりネキを見遣るリンの表情は真摯であった。

 

「先輩風吹かせている相手に追い抜かされて焦る気持ちはわかる。だが、だからと言って邪魔はしてはならん。

 それでは何かあった時にそれに抗う強さを得られん。第一……仮に『そう』なったとして、お前、自分を許せるのか?

 自分のせいで大事な相手が死んだという事実を、お前は一生抱え続けて生きるのか? 私であれば自害するがな」*14

 

「……幼女ネキ、その辺りで」

 

「そうだね、その辺にしといてあげなよ」

 

そこで止めに入ったのは、先程からずっと黙っていた探求ネキときくりネキ。

リンはそこで止まり、ため息を一つつくと再びノワールの膝に頭を乗せて寝そべる。

その後、最初に口を開いたのはきくりネキであった。

 

「私個人としては幼女ネキの意見に賛成かな。あ、さっきも自己紹介したけど、あかりちゃん。

 私は福島支部長の廣井きくり。まあ皆にはきくりネキって呼ばれてる。*15

 ……で、ゆかりネキ。ゆかりネキの気持ちも本当にわかるし、山梨に引きこもってる人たちにはその人たちなりの理由があるのも分かるよ。*16

 でもね、あかりちゃんが大事なら足引っ張っちゃだめだよ。何があるか分かんないんだから。ゆかりネキに出来る限りの支援自体はしてたと思うけど……

 それでも、不測の事態は想定しないと。そのためにゆかりネキがすべきこと、それは応援してあげる事しかないんだよ」

 

苦笑したきくりネキはそう言うと一拍置き、別人のように真顔になって、再度口を開く。

 

「山梨の外に出たくない、でも支援はしたい、レベルで抜かれたくはない、でも自分が苦労はしたくない。そんなうまい話はないよ。

 キツい言い方になるけど……苦労したくないならそこそこの上がりで満足してなきゃいけないんだ。それ以上を求めたいなら、それなりの苦労は背負う事になる。

 私は福島の皆の命を背負ってる自負があるし、だから手が抜けないよ。ゆかりネキだってそうでしょ、あかりちゃんに関わって、死んでほしくないんなら……その命に、責任を持たなきゃいけない。

 幼女ネキの言葉だけど……私が潰れかけてた時、あの子は『大いなる責任を果たすなら、大いなる報いがあるべきだ』って言ってくれたんだ。

 責任を果たさないで得られる報いなんて、ほどほどの、そこそこ程度のものしかないんだ。逃げちゃだめだよゆかりネキ。責任から逃げたら、その時ゆかりネキは全部失う。

 今まで持ってたものも、これから欲しいと思ってたものも、全部。背負ってるものの重さで競う気はないけど、私と同じ(・・・・)『背負ってる』ゆかりネキには、その背負ってるものの分だけ果たすべき義務があるんだ」

 

背負ったものを降ろしたくないなら、そうするしかない。どうするのかは、ゆかりネキとあかりちゃんの問題だけどね。

きくりネキはそう言うと、壁にもたれかかり、探求ネキに視線を向ける。

 

「私ですか。自己紹介しておきましょう、探求ネキと呼ばれています。東京の方の支部を預かったりしていますが……まあ今はゆかりネキの友人の1人という立場で来ています。

 私としても幼女ネキと同意見ですよ。もう五年以上の付き合いになりますし……ゆかりネキの事情については私が一番詳しいでしょうね。

 ほとんど言いたいことはお二人が言ってくれたので私からも同意見です、という程度に留めておきますが……

 一応言っておきたいのは、私達はお二人の関係を崩したい訳ではないんですよ。むしろ関係修復のためのフォローをしたくて今回集まっています。

 あかりさん、ゆかりさんの性格はあかりさんも十分ご存じだと思いますが……まず今回の件、ゆかりネキの口からは言い出しづらかった事である、という事はご理解くださいね。*17

 イズナちゃんだって悪意はなかったはずです。あの子は本当に修羅の中の修羅に囲まれて育っているので感覚が大分おかしいので」

 

「それは、はい。さっきも幼女ネキ……さん?が言ってた事に、嘘はないんだと思います。

 だからこそ、私はずっと気になってたんです。ゆかり先輩が私に何をさせたいのか、何を企んでいるのか。それを知りたかったんです。

 私にとってのゆかり先輩は、かっこよくて、優しくて、でもどっか抜けてる、そんな普通の人であることも、間違いないはず!

 だから教えてください、ゆかり先輩! 本当の事を! あんなにたくさんのとんでもないものを私に渡して、どうしたかったんですか!」

 

「え…あ……それ、は」

 

言葉に詰まるゆかりネキ。なぜなら、そこに深い理由などないからだ。企みなどあるはずがない。

自分にとってあかりは自分を唯一慕ってくれる親類であり、失いたくない縁の一つである、ただそれだけなのだから。

ぐるぐると、言葉と考えが体の中を巡る。どう言うのが正しいのか、もういっそ3人に全部任せればよいのではないか。

 

(でも、それは……多分、違う)

 

探求ネキも、きくりネキも、そしておそらくは幼女ネキも、『自分が自ら口を開き弁解する事』を望んでいる。

筋の通らない事を嫌う幼女ネキが見ている前でそれを拒めば、自分は本当に幼女ネキにとっての排除対象となるだろう。*18

なら、どうすれば良いか。どう口を開くのが最良なのか。分かっていても、言葉が出ない。

ちらりと探求ネキを見る。頷き、視線であかりを示された。きくりネキを見た。壁にもたれたまま、こちらもまた視線であかりを示す。

幼女ネキは無言で親指を下に向けていた。恐らくここで下手を打てば本当に自分を『娘の友人に害をもたらすもの』として排除にかかるつもりなのだろう。

唾を飲み込む。怖い。本当のことを言うのが。

荒く息を吐く。怖い。あかりに嫌われるのが。

視線を上げる。怖い。今まで築いてきたものが崩れるのが。

立ち上がる。怖い。怖い。怖い。怖い―――

 

でも、ここで黙っていたら、全部壊れるんだ。全部失うのだ。

人間不信で、甘ったれで、コミュ障で、ネット弁慶で、見栄っ張りで、後先を考えてない自分だが……

それでも、張るべき意地はあるのだ。

 

「……あかりちゃん、まず、何を言うより先に言っておくべきことがあります。―――ごめんなさい。

 私は、あなたが思っているような、大した人間じゃありません。言われている通りの、本当にちっぽけなただの人間なんです。

 あなたに何をさせたかった訳でもない。ただ本当に、あなたに無事でいて欲しかった。ただそれだけなんです」

 

その言葉が偽らざる本心からの言葉である事だけは、この瞬間のゆかりネキは、間違いなく胸を張って言える事だった。

 

 

 

「―――とまあ、そう言う訳だ。度し難いアホだが、どうか見捨てんでやってくれ。

 お前という形で外部に意識が向いているだけ、大半の引き籠りのクズ共よりはいくらかマシな奴だ」*19

 

「幼女ネキ、言い方ァ!?」

 

「事実だろうに。きくりネキも言っていたが、背負った命に責任を持て。持てんのなら最初から背負うな。

 今回の件とて、お前がはじめからあかりに誠実に接していれば起こらなかったことだぞ?

 重いと思うのならば、苦も無く背負えるほどに強くなれ。この世界、力なくば何を言う資格もない。

 ならば背負った命には誠実にいろ。せめて自分を見ていてくれるうちはな」

 

少し後。リンのフォローともいえないような何かに反論するゆかりネキだったが、ばっさりと切り捨てられ肩を落とす。

ゆかりネキの決死の弁解により、あかりとの関係も破綻することなく修復出来た。

その過程でゆかりネキのあれこれが白日の下に晒されるなどしたが、あかりからの信頼は失墜しなかったのでよしとしておこう。

 

以下、あかり&修羅の中の修羅3人による質疑応答である。

 

Q:ブラックカードってガイア連合の創始者群で凄まじい力を持ってるんですか?

 

A:幼女「私はここ1年程の間に加入した黒札だぞ。まあ上の方の連中の大半は初期参加メンバーだが」

  あかり「じゃあゆかりさんも……」

  幼女「こいつは初期参加組ではあるが幹部でもなんでもないただの一般黒札だぞ。まあ、レベル限界自体はとんでもなく高いが……それも黒札なら全員そうというだけだ。

     私のレベルは96、こいつが20そこそこ。稼ぎは良かったそうだが、格下を確殺出来る環境で稼いでただけで真面目にレベル上げなんぞしとらん」*20

  探求「まあ、一般黒札の中では比較的色々やっている方ではありましたけど……真面目にレベル上げする気があったかどうかというのは、疑問でしょうか。

     黒札だからって強い訳でも護国の意志があるわけでもないですからね。目立つ黒札が強いというだけで」

 

Q:世界を滅ぼすとか救うとかメシアの欠片とか聞いたんですけど!

 

A:幼女「え、何それ、知らん。怖。まあ結果的に世界を救ってはいるが……あとメシアンの言う事はまともに聞くなよ。脳が腐るぞ」

  探求「根本的な理念が『ファミチキ食べたい』ですからねえ私ら。多分上っ面だけ見ればそう見えなくも……」

  きくり「まあ地方支部の人間は世界守りたい! って意志は強いよね。世界って言うか故郷だけど。郷土愛?

      根本的に言うと『世界(というか現代社会)ある程度守らないと気楽にコンビニにホットスナック買いに行けない』みたいなのが大半だよね」*21

 

Q:何であんなとんでもないものポンポンくれたんですか!

 

A:幼女「何貰ったのかは知らんが、だいたいポンとくれてやれる程度のものだったんじゃないか? お前現状のレベルもまあ低いし」

  探求「ゆかりネキが作るぐらいのものってあかりちゃんぐらいの人達が使って丁度いいぐらいのものが多いですからね」

  きくり「高レベル用の装備とかアイテムって低レベルが使うと危ないの多いからなぁ」*22

 

Q:このデモニカってとんでもないですよね?

 

A:幼女「画期的な発明ではあったよな。諸々の制約があって普通の状態だとレベル30までしか上がらんから私らにとっては縛りプレイでしかないんだが」

  探求「人にもよりますが、レベル限界が高いなら着ないか、デモニカコア抜いてただの便利な鎧として着た方がいいんですよね」

  きくり「幼女ネキも沢山持ってるけど大半そんな感じで運用してるんだっけ?」

  幼女「変身ヒーローはロマンだからな!」*23

 

Q:皆さんってとんでもなくレベル高いそうですが、どうやったら上がるんです?

 

A:幼女「死ぬほどの相手と死ぬほど戦う? まあ相応のレベル限界があるという前提でだが。というか意図してレベル上げた事あんまりないんだけどな」*24

  探求「私達は大体そんな感じで面倒事をこなしている間に上がったり、必要だからあげたりですからねえ」

  きくり「おかげで日本有数のホットスポットのはずの東北地方以北が盤石の態勢なの笑っちゃうよね、笑えないけど」*25

  

Q:え、じゃあゆかりさんは……

 

A:幼女「こいつはただ痛いの嫌とかでサボってただけだぞ、さっきも言ったが」

  探求「とはいえ私達ほど振り切れる黒札もそうはいないでしょうけどね。痛いとか言ってられない状況でしたし」

  きくり「思うところはあるけど、まあ大半は一般人メンタルでしかないからね、黒札」

 

Q:私も皆さんみたいに強くなりたいです! イズナちゃんみたいに!

 

A:幼女「方法は色々あるが……イズナに誘われても絶対についていくなよ、マジで死ぬから」

  探求「イズナちゃんは前科ありますからねぇ。目指すならミチルちゃん達にした方が安全ですよ」

  きくり「ミチルちゃん達が遠い目してたっけね……」

 

 

 

「……ふむ、レベル限界を上げる方法か」

 

「色々手段はありますが……私が主にやってる手段はまあ、やめといた方が良いでしょうね」

 

「……何したの?」

 

「ナニをシたらしいぞ。まああかりにはやめといたほうが良かろうが」*26

 

顔を突き合わせる3人。あかりのレベルは10と少し、それもデモニカを使用してであり、素のレベル限界そのものは一桁程度。

レベル限界を上げる方法はいくつかあるが、どれもほぼ一般人であるあかりにはお勧めできる方法ではない。

さてどうしたものか、と唸っていた所、ふとリンが何かを思い出したかのように顔を上げる。

 

「……あ、そうだ。あれがあった。ちょっと待ってろ」

 

そう言うとリンはCOMPを弄りだし、少ししてハンドルのついた黒い箱のようなもの…展開型デモニカの1つ、ビルドドライバーを取り出す。

次いで取り出したのはメカニカルな箱からドラゴンの頭と尻尾が飛び出したような物体、ビルドドライバー対応の簡易シキガミ、クローズドラゴン。*27

それらをあかりに手渡すが、あかりはそれを見て首を傾げる。

 

「……これは?」

 

「お前の持っている通常型デモニカは鎧の様に装着するタイプだが、これは始動キーになるCOMPを持っておけばどこでも装着できる展開型デモニカというものだ。

 いわゆる変身ヒーローのあれだな。そのクローズドラゴンをビルドドライバーに装填し変身する『仮面ライダークローズ』は、肉体を高圧のMAGに晒すという関係上……

 いや専門的な話をしても仕方ないか。やや肉体に負荷をかけるが、レベルが上がりやすくなり、また微増程度だがレベル限界も使用の度に上昇する。

 無論普通にレベルを上げるより辛い道にはなるだろうが、お前の努力次第では生身でもデモニカに頼らずに戦えるぐらいに強くなれる可能性すら見えてくる。

 ……どうだ、使ってみるか? お前の今使っているデモニカからコアを始め、移植できるものは移植してもいいだろう。かまわんな、ゆかりネキ?」

 

「私のあげたG3だとどうしても性能としてはそこそこ程度ですからね……あかりちゃんの安全の為ならまあ、そのぐらいは呑み込みますとも」

 

「それでいい。だが、私からお前にもプレゼントがある。受け取れ」

 

あかりにクローズドラゴンとビルドドライバーを渡した後、リンはさらにCOMPを弄ると、レンチのようなパーツのついた、どこか機械的・工業的なシルエットのビルドドライバーに似た何かを取り出し、同時に取り出した紫色のフルボトルと共にゆかりネキに放る。

 

「展開型デモニカ……確か無惨ニキのスクラッシュドライバー*28ですよね? このフルボトルはクロコダイル……私にも仮面ライダーになれと?」

 

「うむ、仮面ライダーローグになれるセットだな。私も変身したかったが……あそこまで言っておいてお前に何もしないというのもな。受け取れ。私はあとでプライムローグになるとしよう

 お前はあかりと2人でダブルライダーになるといい」

 

うむうむと頷くリン。ゆかりネキは以前聞いたドライバーの仕様を思い出す。確か高圧のMAGに肉体を晒すことでレベルの上昇速度やステータスの上昇幅を増すものだ。

あかりが受け取ったクローズドラゴンはこれをダウングレードし低レベルでも使用可能にしたものと聞いている。

鎧を纏うのならば多少の痛みは我慢できるだろうし、何より幼女ネキお墨付きの装備なら高性能なものであろう。……そして、ゆかりはここでふと気付く。

 

「……これ、クローズドラゴンのアッパーバージョンって事は肉体にかかる負荷も……?」

 

「まあそれなりにはあるが、必要経費だろそんなもん。お前はちょっとレベルが足りんかもしれないが……大丈夫だ、実時間二三日、体感時間一か月ほどでレベルを10は上げられるブートキャンプを紹介しよう。

 悪路王異界のジェネリック影の国ブートキャンプって言うんだが。今連絡しといたから今すぐ行ってこい。シキガミも一緒にな。*29

 あ、あかりも悪路王異界外周でレベル上げがてらクローズドラゴンの慣らしをするといい。私の権限で直通パス*30出しとくから。じっくりやれ、無理はするなよ。

 一応言っておくと悪路王異界というのは、宮城にある私が管理権限を持つ異界でな。外周部はレベル10~30程度の悪魔が出現するのだ。

 ゆかりネキを今からぶち込むのは黒札、ないし許可されたやつ専用のエリアだからお前とは別になるが……まあ、お前が30に届いたらその時は許可を出そう。気張れよ」

 

「はいっ!」

 

「あの、私の都合とかそう言うものは……?」

 

「あるわけないだろ、今まで怠けてたぶんスカアハにみっちり鍛えてもらえ」

 

元気よく返事をするあかりと、へなへなとへたり込むゆかりネキ。

その後、あかりは悪路王異界に足繁く通ってレベル上げに勤しみ、ゆかりネキも半強制的にジェネリック影の国にぶち込まれ、相応にレベルを上げる事で何とか面目を保つのであった。

 

どっとはらい。

 

*1:
本家P1ではレース終盤になるとショートカットが開通する

*2:
嫌だろうがなんだろうが抜けられる率を上げるには参加するしかない

*3:
漫画『女王騎士物語』の装備。マナと呼ばれる人間が産み出せねるぎーを動力源とするマジックアイテム。ブリューナクの他にも多種多様なものがある

*4:
原作では主人公があこがれた人物専用装備。2つの光弾の篭手を同調・共振させる必要があるため通常型に比べ扱いが難しい

*5:
実際本家でも同じようなギミックがある

*6:
海&空えっちゃん『手加減加えるなんてそんなそんな』

*7:
みちぅ『もう無理だってぇ……』

*8:
ゆるゆる修行コース開設の要因になったり、非修羅の一般黒札の中では比較的有名だと思われる

*9:
そもそも前編ですら『いずれバレるんだから傷が浅いうちにどうにかしろよ?』とか言われている

*10:
ようじょとしては割と心底どうでもいいので

*11:
『小ネタ 現地一般覚醒者あかりちゃんの憂鬱』参照。現地民にしては手厚く支援されていたので逆になんでこれだけしてくれるのかと不審に思っていた

*12:
実際慕ってくれる可愛い親戚を支援したい、以上の感情はなかったと思われる

*13:
本編時空でも割といつどうなってもおかしくない状態だったと思う

*14:
実際、ようじょが狂ったようん修行や異界探索を繰り返していた初期の理由は半ば自殺のためである

*15:
自称は酒カスネキだが周囲の誰も呼んでくれない

*16:
実際、やむにやまれぬ理由で山梨に引きこもる奴らも少なくはないはず

*17:
実際見栄もあるが、引っ込みつかない状況になりつつあったのも事実

*18:
責任を果たす気がないならいらんだろ、とは思っている

*19:
一応幼女なりにそれなりに評価はしている

*20:
実際、シキガミにせっつかれつつも先延ばしにしていた。その結果が今回

*21:
黒札のほとんどは一般人メンタルである

*22:
あんだったら低レベル用でも条件を守らないと霊質が歪む

*23:
本当にその程度の理由でデモニカやロボを集めている

*24:
前述のとおり、ようじょは苦しんで死にたかったので自殺同然のレベル上げをしていただけなので、生き残れてしまったということ自体が当初としては不本意な結果

*25:
三次諸氏が東北方面に何故か集中しているのである

*26:
色々やったりして徐々に限界を広げていったらしい

*27:
「ファッション無惨様のごちゃサマライフ『見た目無惨様の何か色々開発記 宇宙編03』」参照。仮面ライダービルド系の再現霊装

*28:
同作品で登場した再現霊装。これを現地民向けにデチューンしたのがクローズドラゴン

*29:
なお内容としては当時レベル30のガンギマリ名家勢のリンクニキが地獄を見たというレベル

*30:
悪路王異界の無料パス&直通トラポート&関連設備利用券。ようじょ関係者の現地民は大体持ってる




そんなわけで140話でした。
ゆかりネキをレースに出そうとしてその流れで色々考えると、どう考えてもあかりちゃんに詰められて色々バレる展開あるよな……と思いこんな感じに。
あと本編とは違うIFの展開を描いてみたかった。この世界線だと、ゆかりネキは半強制的にレベル上げさせられて終末直前で40に届く、ぐらいの感じに。あかりちゃんがぐんぐん追っかけてくるので怠けてらんないぞ!

■解説

・ようじょ
レースでは四位だったけど勝ち負けはどうでもよかったので満足した奴。
ゆかりネキに対しては本当に作中で言っていた通りの事を思っている。
ようじょにとって優先されるべきはあかり(=娘の友人)の都合なので、ゆかりネキの都合とかそういうものは本当にどうでもいい。
それでもあかりが大事で守りたいと思うなら力を付けろ、あるいは邪魔をするな。それが嫌なら山梨に引っ込んで布団被って寝てろ、邪魔だから。そんな感じ。
それでもゆかりネキがあかりちゃんを大事に思っていることは理解はしているし、最悪の事態に陥らないように気を使ってはいる。一応、ギリギリ。

・あかりちゃん
レベル限界を上げられる可能性が出てきた子。やる気もあるしようじょらからの支援もあるしで、時間さえかければ本当に生身でも修羅の領域に踏み込める気概のある子だと思う。
この世界線ではいずれゆかりネキと共にダブルライダーとして活躍することになる模様。
なお、あかりちゃんが貰ったビルドドライバーは誕生日プレゼントでようじょが貰ったものとは別のコレクション用に買ったビルドドライバー。

・ゆかりネキ
今回一番ひどい目にあったけど最悪の展開になる事は免れた人。
見栄も何もかも引っぺがされたけど何とかあかりちゃんの誇れるゆかり先輩でありたい、とは思うようになった。
なお、今回終了後ぶち込まれたジェネリック影の国ブートキャンプはみちぅ達がぶちこまれた簡易版の方。ようじょにも流石に本式の方にはさせない程度の人情はあった。
なお、最終的に取れ高ボーナス&1位の賞金の大量のマッカ+マーマイト(英国直輸入)が贈られたそうです。

・聖騎装
制作者は天堂姉妹。漫画『女王騎士物語』の再現装備。
ブローチ状の装飾品から使用者に応じた形状に自動変形する機能を持つ『女王の剣(クイーン・セイバー)』
MAG消費が少ないブレードを作り出す『心の鏡(クルタナ)』
MAGの弾丸を飛ばす『光弾の篭手(ブリューナク)』など、作中で描写のあるやつは大体製作済み。
姉妹は自分のとこのラニシリーズ用の装備として製作したが普通に販売してるので購入自体は可能。
現在は今回のレースの1位の賞金&取れ高ボーナスで魔黒装を製作中。

・仮面ライダーローグ
元々はようじょが自分用として先生ネキに注文した【クロコダイルクラックフルボトル】がたまたま手元にあったので、ゆかりネキのイメージカラーでもある紫のライダーだからという事でコレクション用として買ったスクラッシュドライバーと合わせてあげた。
後でプライムローグ用に【プライムローグフルボトル】よろしくな! と言われた先生ネキは白目を剥いた。
オラシオニキは全力で逃げた。
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