【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策   作:タマヤ与太郎

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なんか書きたいところ書いてたら容量が倍ぐらいに増えてましたが、切り所が難しかったので分割しないで投下。

多分次回ぐらいで終わる……はず!!!!

スキル使っての戦闘シーン、結構頭使いますね……


転生ようじょ、攻略す。⑥

【異界】悪路王の異界攻略スレ(宮城県)【攻略】

 

 

625:名無しの転生者

 

異界内部、なんか聞いてた話より湧きがすげーんですけど!?

 

 

626:名無しの転生者

 

無双ゲーかなんかかと思えば地球防衛軍じゃねーかこれ!!!!

 

 

627:名無しの転生者

 

マジの意味で敵が七分で地面が三分なんですけどぉ!

なんかイヌガミとへアリ―ジャックも混じって出てくるしさあ!

 

 

628:★名無しのデビルサマナー

 

えー、中間報告だよ

お堂内部の時間加速してお堂内部基準で一か月ぐらいみっちり、こっち基準で数日ぐらい修行することになったそうだから、

異界の主の主観時間も加速されて湧きが倍率ドン! になるからごめんな! との事

さっきお堂の中まで行って少佐ニキに聞いて来たたから間違いないよ

少佐ニキは修行免除されたらしいけど。死ぬから

 

 

629:名無しの転生者

 

まってあの悪魔の群れの中どうやって行ってきたの!?

 

 

630:名無しの転生者

 

ショタおじ見てないけど何、トラポートでもしたの?

 

 

631:★名無しのデビルサマナー

 

まあ僕ならお堂の転移阻害に邪魔されずに中に入るぐらいはね

あ、ボスは倒さないよ。一応ここの異界の管理人らしいスカアハと話をしてね、

幼女ネキチームが修行して強くなってアテルイ達を倒せたらこの異界の中身そっくりくれてやるってさ

全盛期ヤタガラスやクズノハの資料や術具の保管庫でもあったらしいから、連合としても収穫は大きいしね

 

 

632:名無しの転生者

 

良くメシア教に滅ぼされなかったな……そうか無限湧きで近づけなかったのか?

ヤタガラスもクズノハも転んでもただでは起きなかったようだなあ

 

 

633:名無しの転生者

 

つまり幼女ネキらがここを攻略すれば全盛期ヤタガラスの資料やらが手に入るって事?

 

 

634:★名無しのデビルサマナー

 

そうなるね。まあこの異界の管理は宮城支部の管轄になるし、写本作って原本は本部に移送する形になるかな

製造部・技術部的にかなり興味深い資料だったと思うよ

なお中の術具に関してはよほどヤベーもん以外は宮城支部預かりです

ライドウの遺品とかもあるらしいけどスカアハ達が認めた奴以外には渡したくないってさ

今幼女ネキがそこの番人とタイマンで殴り合いしてた。ライドウ仕様のスサノオLv70

 

 

635:名無しの転生者

 

死ぬのでは?

 

 

636:名無しの転生者

 

いやライドウ仕様のスサノオなら氷結弱点だから幼女ネキなら弱点を突ける……はずだ

セイテンタイセイは物理無効だしな

 

 

637:★名無しのデビルサマナー

 

どうだろうね、まあ死にはしないと思うけど、氷結縛りで大笑いしながら殴り合ってたよ

流石にセイテンタイセイまでは縛ってないと思うけど、あの子が一番力を発揮できるのヌエだからなあ

最近派手に暴れられなくてストレス溜まってたみたい。というか格上だから弱点縛ってるとワンチャン死ぬと思う

 

 

638:名無しの転生者

 

死ぬのでは?(二度目)

 

 

639:名無しの転生者

 

……ちなみに他の人達は?

 

 

640:★名無しのデビルサマナー

 

スカアハ’sブートキャンプin宮城 ~ジェネリック影の国より殺意を込めて~

 

 

641:名無しの転生者

 

うわぁ

 

 

642:名無しの転生者

 

 

 

643:名無しの転生者

 

死ぬのでは?(三度目)

 

 

644:霊視

 

良いからお前ら手を動かせ! 幼女ネキの彼女に被害が出たら修行でさらに強くなった幼女ネキに命を狙われるのはお前らだぞ!?

 

 

 

 

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「……さて、こんな所かな。待たせたね、まあ、鍵を開けてもらう必要はなくなったみたいだけど」

 

「ったく、東北くんだりまで呼びつけて置いてそれか? もう少し年寄りを労われよ」

 

宮城・悪路王異界を見下ろす位置にある丘で、ショタおじともう1人、和服の女性が並び立っていた。

楽しそうにからからと笑うショタおじに対し、女性は不機嫌そうな声を上げる。

その顔は頭巾で隠れ見えないが、ぴんと立った背筋、隙のない立ち居振る舞いは、

彼女が歴戦の戦士であることを示している。

 

「……で、あんたが言ってた例の子供、大丈夫なのか?

 スサノオと殴り合ってるって聞いたが……あいつは手加減できるような器用な奴じゃないぞ?」

 

「ははは、大丈夫大丈夫。そこらの大人よりよっぽど冷静に物を考えてる子だし、

 何より足りない実力は知恵で補える子だよ。僕の占術にも危うい卦は出てないし、

 死にかけはしても死ぬようなことは無いだろうね」

 

「それは大丈夫って言わないだろうが」

 

「そうでもしなきゃ強くはなれないよ。昔と違って、今は悠長にしてる暇なんてないからね」

 

口元をへの字に曲げる女性ににこやかに笑うショタおじ。

しかし、さて幼女ネキはどうしてるかな、と軽く霊視をした所、その笑顔がひきつった。

 

「どれ、ちょっと覗いてみようか……げ」

 

「げ?」

 

「うーん……なんというか、互角とは言わないけどそこそこいい感じにやり合ってるね。

 ……ちょっと暴走しつつだけど」

 

「……本当に大丈夫なんだろうな?」

 

その問いにショタおじは軽く目をつむり何事か呟き、少しした後に目を開ける。

 

「少なくとも悪い卦は出ていないね。ま、もう少し様子を見ながら行こうか。

 何日か待ってもらう事にはなるかもね、今現在絶賛特訓中らしいから」

 

「ったく、人使いの荒いガキだ……」

 

丘を下り、悪路王異界の攻略拠点へと歩いていくショタおじと女性。

そして、今現在のリンはというと――――――

 

 

 

 

 

                  

        は

    

       

                 は          

                      

 

(おいおい、あいつの中の(スサノオ)は何やってんだ? 大分やべえぞこいつ)

 

格上であるスサノオとの戦い。その戦いにおいて、リンは意外にも健闘していた。

ヒートアップするごとに人間離れしていく動きを健闘している、と言えばだが。

戦闘開始当初は悪魔変身を多彩に使い分け、弱点属性(氷結系)こそ縛っていたものの、

高速で複数の悪魔変身と変身解除を切り替え、スサノオとの体格差を利用してクレバーに立ち回っていた。

しかし段々と獣じみた荒っぽい戦いが目立ち始め、今は虎のような四肢の、人間態とヌエの中間のような姿で獣のように暴れまわっていた。

普段使っている半変身状態とは明らかに違い、全身を揺らめくMAGが覆い、

顔は不自然に影がかかったように暗くなり、真紅の瞳が暗闇を照らす灯火のように爛々と輝いていた。

 

「ああ、いいなあ、楽しいなあ! 戦いとはこうでなくてはなあ!」

 

狂気と喜色の入り混じった声で嗤うリン。

スサノオはリンの常を知らないが、これは明らかに正気ではない。

戦いの前に軽く話した感じとはまるで違う荒ぶりように、戦いには乗り気だったスサノオも訝し気に眉を顰める。

 

(……違うな、逆に(スサノオ)という存在のせいか? (スサノオ)の破壊神という属性に引っ張られてる感じだ。

 その上でこの異界に満ちる怒りと憎しみのMAGに当てられてるようだな……

 なるほど、姉貴が言ってた転生者って奴か。*1(スサノオ)じゃねえな、何某かの本霊に引っ張られてやがるか)

 

ピンボールのように跳ねまわるリンをあしらいながら、スサノオは冷静に観察する。

あくまでも主体は人間(リン)のように見える。乗っ取られている訳ではないようだ。

かつて戦った悪魔変身者も、その肉体は悪魔であったが意識の主体は人間だった。

ならばリンもまた基本的には同様の存在であり、主としてヌエ、そこにスサノオを含むその他の悪魔をサブとして用いているのだろう。

しかし今のリンはどちらとも言えない(・・・・・・・・・)気配を放っている。

人でもなく、悪魔でもなく。人でもあり、悪魔でもある。

 

「……ちぃ、まだるっこしい! 何が本霊(モト)だろうが、ぶん殴れば止まんだろうが!」

 

そこまで考えて、スサノオは考えるのをやめた。

生来暴れん坊の気質のある神であるし、そもそも考えた所でどうにか出来るわけでもなし。

そういうのは(アマテラス)(ツクヨミ)の仕事だとばかりに、スサノオは剣を振る。

 

「【鷹円弾】*2ッ!」

 

「【大放電】*3

 

スサノオが七支刀を投げれば、リンはそれを躱しながら辺り一面に雷撃を撒き散らす。

その間にブーメランの様な軌道を描いて戻って来た七支刀を躱しながら飛び乗り、

その回転を利用しながらスサノオに向けて跳ねた。

 

「【アクセルクロー】*4!」

 

「チィッ! 【蛮力の結界】*5!」

 

独楽のように回転しながら放たれた爪撃を結界で防御。

丸鋸を当てたような金切り音と火花が散り、リンが回転しながら後方に跳躍、

追撃の【鷹円弾】をさらに跳ねて躱し、大きく身をたわめ、跳ねる。

 

「【獣眼】*6【電撃プロレマ】*7【雷龍撃】*8

 

「クッソ……ッ!」

 

全身に雷を纏い、回転しながらの踵落とし。

【物理属性】を吸収する【蛮力の結界】では防げず、結界を砕きリンの足が肩口に食い込む。

そして電撃を喰らったことによる一瞬の硬直。そこでリンは勢いのまま一回転し、

腰から伸びる蛇の尾をスサノオに食らいつかせて落下軌道を変え――――――

 

「【丸かじり】*9

 

ぞぶり。

 

肉を抉る生々しい音と共に、スサノオの肉が齧り取られる。

それと同時に、スサノオは自分のMAGがいくらか削られているのを感じた。

その小さな口から繰り出される【丸かじり】はスサノオからすれば微々たる傷であったが、

リンからすれば自分と相性のいい悪魔の(MAG)を取り込むということでもある。

その小さな体に纏うMAGが、さらに出力を上げた。MAGを爆発的に燃焼、オーバーロードさせている。

かつて京都に出現した大悪魔、酒呑童子はこれを用いて短時間のみLv125という驚異的な数値を叩きだしたという。*10

今のリンををアナライズで見れば「Lv75」という表示が出ただろう、それ程の強化であった。

しかし、スサノオは今日初めてリンを見たため気付いてはいないが、リンは今、常のリンであれば絶対に行わない(・・・・・・・)行動をとっていた。

口いっぱいに頬張ったスサノオの肉を咀嚼し、嚥下する。

人の形をした(・・・・・・)悪魔を捕食する(・・・・・・・)。常のリンであれば決してやらない事だ。

覚醒して後、リンは悪魔を喰らう事は幾度もあったが、決して「人型の悪魔」を捕食することは無かった。

それは覚醒して真っ先に喰らったのが人の形を留めた悪魔(ゾンビ化した育ての親)だったためであり、

人としての理性があれば、リンは回復手段だとしても決して【丸かじり】は使わなかったろう。

 

確かにリンは己の有する膨大なMAGと捕食したスサノオの(MAG)を燃やして爆発的に己を強化している。

しかし、今のリンをアナライズで見れば、こう表示されたであろう。

 

『超■/破■神 ヌエハラリン/■■■■■ Lv75』と。

 

ショタおじの危惧していた通り、リンは今暴走状態にあった。

【喰人】という系統のデビルシフター*11に起こる『羅刹モード』、それに近い状態ともいえる。

本来は月齢による変身能力の暴走だが、リンのそれは戦えないと言うストレスからの解放感、

自らの宿すスサノオとは別個体のスサノオとの遭遇したことに寄る共鳴、

そしてストレスから解放され、心の箍がほんの僅かに緩んだことによる異界内部に満ちる怒りと憎悪の空気。

それにより本能が解放され、少しばかり呼び起こされた本霊の影響。

それがリンが羅刹モードに陥った要因であった。

 

「ああ……そろそろケリをつけようか。

 どうにも腹が立ってきた。ああそうだ、神は殺さねばならない(・・・・・・・・・・)

 ……待て、私は今何と言った(・・・・・)? 殺す必要はない。倒せばいいんだ。

 まあいい、結果的にそうなってしまう分にはスカアハもうるさくは言わんだろう」

 

「ハッ……ガキが、生意気言いやがる!」

 

スサノオは吠えながらも【破壊神のゆえつ】*12【豪傑の転心】*13を乗せた【逆鱗撃】*14を放つ。

リンはそれに合わせ【獣眼】【電撃プロレマ】を乗せた【雷龍撃】を放とうとし―――――

 

『り、リンちゃん! 聞こえてる!? 配信が届かなくなって、私心配で……

 でも、ケガしてもいいから、戻って来てね! 私、待ってるから!』

 

文の声がした。その声は、戦いが始まってからずっと攻撃の届かない範囲で滞空していたクウガゴウラム、

そこに乗せたリンのCOMPから聞こえていた。

通信が届かないはずのこの場所に届いた通信、しかしそれは間違いなく文の、リンを案ずる声であった。

その声を聴いた瞬間、リンの目に、顔に、理性の光が戻る。

しかし、僅かに軌道こそ変わったがリンはそのまま横薙ぎに振るわれた七支刀とカチ合い、

ファールチップの形で跳ね、スサノオの背後にあった大扉に激突する。

当然その程度で砕けるような扉ではなかったが、玄関ホールの大扉同様に何故か開いた大扉はリンを受け止めず、

リンはそのまま大扉を押し開ける形で中へと突入していった。

 

「……なんだぁ!? 大扉が勝手に開きやがった……?」

 

その様子をあっけにとられながら見ていたスサノオであったが、

ふと我に返ると七支刀を放り出し、大扉の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

その頃、異界の外ではショタおじと文が向かい合い、文がアームターミナルを操作していた。

通常通信の届かないお堂内部へ向け、ショタおじの協力の元文の言葉を届けよう、としていたのだ。

 

「……これで良かったんですか? 神主様」

 

おずおずとショタおじを見る文。その瞳にはやや怯えと畏怖の色がある。

宮城支部幹部のリンが恋人(ともだち)とは言え支部長のレン子ニキにすら恐れ多い、と言うのが現地民の一般的認識であり、

ガイア連合そのもののトップなどと言うのは雲の上の人間に等しい。

 

「OK。文ちゃんの声はしっかり幼女ネキに届いたはずさ。元々あの子は精神力がとても強い。

 少々危うい状態であったとしても、一瞬でも我に返れば自分で持ち直すさ。

 その為の君だ。君はあの幼女ネキが側に置いている唯一の人間(・・)だからね。

 君がそばに居るという事が、幼女ネキを人間の側で繋ぎ止めている楔なんだろう」

 

「そう、ですか……」

 

「僕の占術にも少なくとも幼女ネキが死ぬような卦は出ていない。

 だから君は安心……できないかもしれないけど、ここで待っていてあげてね。

 あの子が帰ってくる場所を守る、と思えば少しはやりがいもあるだろう?」

 

ショタおじはそう言って笑うと、文の頭を撫でてその場を離れる。

文は暫く通信が切れ、砂嵐を写すアームターミナルの画面を見つめた後、

よし、と自分に喝を入れると異界入口の監視のためにポチやマシロの元へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

「――――――む」

 

リンが目を覚ますと、そこは宝物殿のような場所だった。

剣・槍・斧・術具・符、その他無数のマジックアイテムの山。

そう言った方面には詳しくないリンでも、修羅勢が装備するような一級品の装備ばかりだと見て取れる。

 

「気を失っていたか……ここは……スサノオの背後にあった扉、察するにスサノオが護っていた宝物庫か?

 不用心だな、鍵ぐらいか(・・・・・)けて置けば(・・・・・)いいものを……」

 

軽く周囲を見回し、敵がいないのを確認して改めて自分を確認(アナライズ)する。

レベル60(・・・・・)超人ヌエハラリン(・・・・・・・・)/ヌエ(・・)

HPとMPが減っているのは戦闘していたのだから当然として、状態異常も特になし。

しかし、リンは己の体の異常を感じ取っていた。

 

暴れたくて仕方がない。腹が立って仕方がない。神が憎くて(・・・・・)仕方がない(・・・・・)

 

生来大人しい性分ではないという自覚はあるが、これはおかしい。

傲慢で力を振りかざし、理不尽を押し付けてくるような神であれば憎みこそするが、

スサノオはそうではないし、スカアハもそうだ。そもそもこれは彼らに向けた怒りですらない。

「神という存在に対する無作為な怒り」とでもいうようなそれが、リンの心の奥底から湧き上がっている。

 

(……なんだこれは? おかしい、こんな怒りは筋が通らない(・・・・・・)

 こんな相手を限定しない怒りなど、突然湧いて出るものではないはずだが……)

 

そして立ち上がろうとしてふらりとよろけ、壁にぶつかる。ダメージを受ける程の衝突ではなかったが、

その振動で壁に掛けられていた刀が鞘に入ったまま落ち―――――

 

ずごん。

 

「ぬっ―――――――――」

 

丁度その真下にいたリンの脳天をしたたかに打ち据えた。

そしてその瞬間、リンの心の奥底から湧き上がっていた『怒り』はぴたりと収まる。

リンが目の前に落ちて来た刀を拾い怪訝な顔をしていると、入口の方からスサノオが歩いて来た。

スサノオはリンが頭をさすりながら刀を握っているのを見ると、感慨深げな顔で口を開く。

 

「……そうかい。ライドウ、お前はそう言う(・・・・)やつだったなぁ」

 

「ライドウ……? そうか、この刀は、十四代ライドウのものか」

 

「おう。そいつの銘は『赤口葛葉』*15。呪詛を断つ力を持った霊剣よ。

 見た所お前にまとわりついてた嫌な感じも消えてやがる。

 状況から見るに、上から落ちてお前の頭にぶつかったんだろうが……

 鞘に収まっているとはいえ、葛葉ライドウの愛刀だ。お前の中の嫌な感じも、すっかり消えてんだろう?」

 

「そうだな。ライドウに助けられたか……」

 

赤口葛葉を握ったまま立ち上がり、刀が落ちて来たらしい場所を見るリン。

3mはある高さの壁に刀掛けが据え付けてあり、リンでは宝物を踏み台にしないと届きそうになかった。

リンの口がへの字に曲がる。

 

「……ぬう。戻しておいてくれ」

 

「構わねえが……随分あっさり手放すんだな? もう少しゴネるかと思ったが」

 

「たまたまカギが開いていたから入れただけだ、資格を得たわけでもないからな。

 勝手に持って行っては筋が通らんだろう。先に出ている、お前が出てきたら続きをやるぞ。

 力を示せればいいんだろう? ちょっとやってみたいことがある、付き合え」

 

そう言って出ていくリン。スサノオはそれを見送り、赤口葛葉を刀掛けに戻すとその後を追った。

 

 

 

 

 

「お、戻ったな。仕切り直すぞ、回復いるか?」

 

「いらねぇよ。お前こそ少しくらい待ってやってもいいんだぜ?」

 

「待ってる間に宝玉とチャクラドロップで回復した。それに……一撃だ。

 この一撃に今私の出来る限りを込める。それを見て合格かどうか判断しろ。……ゴウラム!」

 

リンの呼び声に応え、巨大な鍬形虫(クウガゴウラム)がリンの後ろに回り、倒立するような形から変形し、

リンを覆う鎧となっていく。変形が完了したそこには、金の角、黒い体に赤い鎧を纏った戦士、G1がそこにいた。

 

(さっきの状態、熱に浮かされていたような感じではっきりとは覚えていないが……

 身体に感覚は残っている。私は互角にスサノオと戦えていた。

 まだ意識がまともだった時は、体格差とスピードで翻弄できていただけだ、決定打は与えられていない。

 さっきの感覚を思い出せ、あの、魂を燃やすような感覚……

 そして、極力悪魔変身せずにギリギリまで悪魔の力を引き摺り出す感覚!)

 

先程の暴走状態(疑似羅刹モード)の時の事は、リンははっきりと覚えてはいない。

夢の中で大暴れしているような、ぼんやりとした記憶、理由のない、神々への怒り。

それでいて、いつになく絶好調であったような感覚だけが残っている。

その時の感覚を思い出す。体の奥底から、火で炙られる様な、灼けつく感覚が産まれ、全身へと広がっていく。

MAGの爆発的な燃焼による一時的な超強化、身を削る奥義とでもいうようなそれを、リンは意識的に発動させた。

それに加え、体の内部だけを悪魔変身させるようなイメージ。

それにより、デモニカの補正を受けながらもヌエとしての力を最大限に引き出す。

G1の装甲表面に電流が奔り、G1のもう1つの特殊機構が作動する。

腰のベルト部分と赤い装甲に金の縁取りが成され、手甲部の装甲に「炎」を意味するリント文字が浮かぶ。

最後に右足部分に新たに金色の足甲が産み出され、特殊機構――金の力(ライジングフォーム)――が作動する。

 

「行くぞ――――――ッ!」

 

「へっ、面白ぇ、やって見ろ!」

 

一歩ごとに電撃を撒き散らしながら疾走、そして跳躍。

空中で一回転し、飛び蹴りの体勢で突っ込み……スキルを起動する。

 

「【電撃プロレマ】【電撃ギガプロレマ】*16【電撃高揚】*17【雷龍撃】……手加減抜きだ、堪えてくれよ!」

 

そして、G1マイティフォーム最大の必殺技、【ライジングマイティキック】がスサノオの胸に直撃。

その胸に深々と足跡をつけるのだった。リンは飛び退り、残心を示す。

 

「……さて、及第点だとは思うんだがな」

 

「悪くねえ。流石は(スサノオ)が認めたガキだ。ライドウに使われてた頃もここまでの奴はそういなかったぜ」

 

口の端から垂れた血をぬぐいながら、不敵に笑うスサノオ。

リンの前にどっかりと腰を下ろすと、スサノオからすれば赤子にも等しいサイズのリンの頭を無遠慮に撫でた。

 

「だがまだまだだ! 自分に呑まれてるうちはまだケツの青いガキよ、

 一応及第点は出しておいてやるが……スカサハの婆さんの代わりに俺がみっちり鍛えてやる! 嫌とは言わせねえぜ?」

 

「望むところだ。あの感覚、完全に物にすればアテルイとも戦いになりそうだからな。

 回復アイテムは山ほどある、さあ続きをやるか!」

 

「その意気だ! だがお前にはやってもらう事がある。まずは――――――」

 

 

 

 

 

少し後、玄関ホールのキャンプ地に、リンが戻って来た。

やたらと不服そうな顔をしながら戻って来たリンを少佐ニキとヒトハが出迎える。

 

「幼女ネキさん、お帰りなさい。先生たちはまだ修行されてました?」

 

「おお、幼女ネキ。無事そうで何より……なんでそんな不満げなんだ?」

 

「ああ、ノワールや先生ネキ達ならもうすぐ戻ってくるはずだ。

 で、この顔の理由か。それがな――――――」

 

救急医学部達の用意したガイアカレーをぱくつきながらも、なおも不満顔のままのリン。

そのリンが言う理由を聞いて、少佐ニキとヒトハは思わず呆れ顔で天を仰いだ。

 

「―――――まったく日本神話最大の荒神の癖に『今日は飯食って寝ろ』ときたものだ!

 折角テンション上げ上げのまま疲れ果てるまで殴り合いかと思ったのにな!」

 

「いやそれが普通ですよ? というか一か月みっちり修行するって話だったんですから、

 一日目からそんなカッ飛ばしていったって仕方ないでしょう」

 

「そうだぞ幼女ネキ。修行するにしたって休養も重要だ。休まねば修行の効率も落ちるだろうしな。

 特に幼女ネキはついさっきアテルイと殴り合いした足でスサノオとも殴り合いをしたんだろう?

 普通は一息ついて休憩するものだよ、大人しく今日は休むことだ」

 

「…………正論は嫌いだ」

 

自分でも分かってはいたのかぷいと顔を背けてぶーたれるリン。

リンの不機嫌顔はこの後、ノワール達が戻ってくるまで続いたのだという。

 

どっとはらい。

 

 

*1
並行世界から転生者の魂を引っ張ってきたのは封印された大和神の悪足搔きであるので、このスサノオもその事は知っているはず

*2
武器の軌道上にいる敵を貫通する物理中ダメージ+気絶効果

*3
敵単体に複数回電撃小ダメージ+感電効果

*4
敵全体ランダムに2~4回中威力の物理属性攻撃

*5
味方全体に一定時間物理吸収付・与効果発動時にMAG吸収

*6
命中率を上昇させる

*7
電撃属性で与えるダメージを上昇させる

*8
敵単体に力依存による中威力の電撃属性攻撃

*9
敵単体に中威力の物理属性によるHP吸収攻撃

*10
『霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。「トラップタワーでも作ってろ!!」』参照、その他、レムナントやハルカ自身も同様のMAG燃焼による強化をしている描写あり

*11
『業のままに叫ぶ歩み』のニヒトニキなど

*12
全攻撃の威力が増加する

*13
一定の確率で物理攻撃の威力増加

*14
敵単体に物理小ダメージ+暴怒効果

*15
『コドクノマレビト』で使用。『死人驛使』ではムラマサ

*16
電撃属性で与えるダメージを大きく上昇させる

*17
電撃属性攻撃の威力が1.5倍になる




そんなわけでそろそろ終わりが見えて来た悪路王異界攻略戦です。
コドクノマレビト成分を摂取した結果VSスサノオやりたくなって……
あとはちょっと本霊の影響で暴走する展開も。


■解説

・幼女ネキ
ちょっと暴走したようじょ。暴走してた時の事は起きた後の夢の記憶ぐらいぼんやりしている。
実は結構頭ケルトかもしれない。

・文ちゃん
幼女ネキが今のところ唯一手元に置いている人間。
一番弱いけど結構重要なポジション。

・ショタおじ
色々暗躍中。思いの外幼女ネキが暴走してたので文ちゃんに協力した。

・スサノオ
実は幼女ネキよりまともなんじゃ疑惑のある破壊神。
幼女ネキに悪魔カードを渡した方のスサノオよりは幼女ネキと波長が合う。
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