【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策   作:タマヤ与太郎

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最近気圧のせいかずっげーぐっだぐだで全然作業が進みませんでした……
小説パートのみですがアメリカ編その10、大脱出計画発動です。
ぼちぼちアメリカ編も終盤です。流石に15行くまでには終わるはず……

2024/04/05追記
黒焦げさんから軍服幼女ネキをもらったのであとがきに追加しました。感謝!


転生ようじょ、渡米する。⑩

 

「――――――さて、時間か」

 

孔雀明王内部、イカルガのコックピットの中で、リンは目を開けた。

モニターに映る各種情報を確認、問題なくDDSでの配信ができていることを確認する。

エクソダス計画発動の宣言と、DDSにこの計画を広く知らしめるための決起集会だ。

一人の犠牲者も出さず五百余名の避難民を送り届け、道中で別途避難民をピックアップするためにも、何か問題があってはいけない。

 

「はい、マスター、開始まであと五分です」

 

背後からのアイリスの声と共に、モニターに表示される「5:00」から始まるカウントダウン。

配信画面には球場のマウンドに作られたひな壇とマイクが写されており、設営と撮影を担当しているナマズオ達がちらちらと移りこんでいる。

リンは舌で唇を湿らせ、息をつく。少しだけ、緊張しているようだ。

 

「……マスター、その衣装も良くお似合いですよ」

 

「おだてるな、夜に可愛がってやるぐらいしかできんぞ。まあ、割かし気に入ってはいるがな。

 ……まあ、柄にもなく緊張はしているようだがな、少しだけだが」

 

雰囲気から緊張を感じ取ったか、アイリスが声をかけてくる。それに苦笑して応え、リンはカウントダウンを見守る。

そう、リンは今、Tシャツにスパッツといういつもの恰好ではなかった。

体格に比して大き目の学帽を目深に被り、軍服のような黒の詰襟にプリーツスカート。その上からこれまた大きめの、黒地に赤い雲のワンポイントの入った外套を羽織っている。*1

傍らには陰陽模様の装飾の施された鍔を持つ刀……赤口葛葉が固定されていた。

 

「だが、やらねばならん。ここから先の、あいつらの為にも。ひと時私が矢面に立つ程度はしてやらねばな」

 

「言うと思いましたけど……皆、心配してますからね? ノワールさんも、他の皆も、もちろん私も。

 マスターがやると言えば従いますが、マスターが危険に晒されるのであれば、皆思うところはあるんですからね」

 

「分かっている。分かっているが……それが、今目を背ける理由にはならん。

 守ると言った、救うと決めた。ならば出来ることをやるだけだ。私はあの人(・・・)に拾われて命を繋いだ。

 だが、あの人は私を拾う必要などなかったのだ。だがそれでも、あの人は私を拾い、救い、愛してくれた。

 あの人はもういない。私が殺した。私が喰らった。だが、それでもあの人が残してくれたもの(愛情)ここ()にある。

 そして、両親が残してくれたもの(愛情)もまた、ここ(・・)にあるんだ」

 

リンは胸元に手を当て、ほんの一瞬笑みを浮かべると、次の瞬間には顔を引き締め、レバーを握り直す。

 

「だから、私も誰かを救いたい。私の行動が全てを救うなどと言うつもりはない。

 だが……私の行動が、誰かの心に(希望)を点してくれると、そう信じている。

 だからこそ、私は私がやりたいことをやるのだ。誰に請われたのでもなく、ただ私の意志で」

 

そうこうしている間にカウントダウンは過ぎ、残り10秒を切ったところでリンは行くぞ、と呟き、声を張り上げた。

 

「キャナル! 発進準備! カタパルト展開!」

 

『了解しました! ハッチ開きます!』

 

同時に一度揺れ、浮遊感と共にイカルガの機体を光が照らす。

リフトで持ち上げられたイカルガが甲板まで持ち上げられると、その目の前に光のレールが展開された。

孔雀明王から送られるデータをアイリスが読み上げ、リンへと発進準備の完了を告げる。

 

「良し、イカルガ、発進する! 着地後はアイリスは配信の管理、キャナルは孔雀明王で周辺の警戒と結界維持!」

 

二つの炉から供給される膨大なMAGを推進機へと流し込み、それだけで低位の悪魔なら消滅するような爆風を離し、イカルガは飛翔する。

そして孔雀明王から出た時点で宙返りをし、真下に向けて減速しながら降下。真下にある球場のマウンド……正確に言うならばそこに設営されたひな壇の真後ろに向けて降下すると膝をつき、

コックピットが解放される。即座に赤口葛葉を引っ掴んで飛び出すリンと、それを追って危なげなく飛び降りるアイリス。

ひな壇の周りにはノワールやラプンツェルを始めとしたリン直属の面々が控えており、一同に遅れること少しして上空の孔雀明王からキャナルが舞い降りてくる。

 

「よし、配信中はお前らは後ろで控えていろ、何、少し講釈を垂れるだけだ、すぐ終わる」

 

「だと良いんですが……まあ、了解しました」

 

心配そうに見守る一同をよそにリンは赤口葛葉を背負い、ひな壇に立つ。ナマズオ達がカメラやライトを向け、リンはそれに向けて獰猛に笑う。

リンの周囲にはいくつかの立体映像ウィンドウが開く。そこに表示されているのはこの配信を見ている者達のコメントや、配信を実況しているDDSのスレの書き込みなどだ。

それらに軽く目を通し、リンはカメラを見据え、口を開く。

 

「さて、この配信を見ている奴ら。久しぶりだな。初見の者もいるだろう。

 私はガイア連合黒札、幼女ネキと呼ばれている者だ。今日はアメリカはオクラホマ州より配信をしている――――――」

 

 

 

避難車両、砂蒸気(サンドスチーム)『フロウリッシュ号』。*2

その各所に備え付けられたモニターには、DDSを通じて配信中のリンの姿が映し出されていた。

平素のTシャツにスパッツというラフの極みのような服装とは違う、幼いながらも威厳を感じさせる詰襟姿。

まるで別人のような姿ではあったが、周囲に侍る美女たち、そしてその強い意志を秘めた赤い瞳は、彼女が自分達を救ってくれた黒札であると如実に示していた。

 

『私を知る者は私がこのような格好をしていることに驚くだろう。私とて時と場所に応じた服装をすることぐらいはあるというだけだ。

 ともあれ、本題に入ろう。私の現在地はオクラホマ州オクラホマシティ。この街の野球場に避難した避難民500余名を保護している。

 しかしここは魔王プルートの勢力圏、時折西の方からメシアンも飛んでくる危険域だ。よって私は避難民を東海岸へと避難させる計画を立案し、実行に移した。

 具体的に言えば避難用の車両を建造し、避難民と共に東海岸、女神セドナの治めるシェルター近郊へと移動する計画だ』

 

ざわめきがさざ波のように伝播してゆく。この場にいる者達はすでにその話を聞いていた。

球場で生きるか死ぬかの瀬戸際にいた自分達を、自分が助けに来たヒロイ・オーマガを救うために来たついでとは言え、

こんな巨大な避難車両を作り、全員を避難できる準備ができるまで自分達を守り続け、衣食住のすべてを提供してくれていた。

その上で比較的、過激派メシアンや大悪魔の影響力の弱い東海岸への脱出計画を主導し、こうして実行にまでこぎつけている。

返し切れない音のある大恩人であることは、疑いようもないだろう。

 

『避難車両とは言うが、実質的には移動型のシェルターだ。定員にもまだ数百人ほどの余裕がある。

 これより東海岸へ向けて移動するが、DDSで逐次位置を報告していくので、移動できるようなら合流するといい。

 出来得る限り生存者を救出していこうとは思っている。無理やり連れていこうとは思わんがな』

 

だが、同時に疑問もある。なぜここまでしてくれるのか?

彼女自身、自分達を助けたのは行きがかり上のあくまで『ついで』に過ぎないと公言している。

ただ一人を助けるために、そのただ一人が守っていたというだけの赤の他人に、なぜこうまでしてくれるのか?

その答えは、意外にもすぐに返って来た。

 

『なぜここまでするのか、そう思う者もいるだろう。実際避難民のやつらに聞かれたこともある。

 まあ実際の所行きがかり上のついでではあるが……それ以上に、こいつらが諦めなかったからだ。

 こいつらを助けた私をヒーローと言うものもいる。だが、それは大きな間違いだ。私はヒーロー(・・・・・・・)などではない(・・・・・・・)

 一般人的に知名度の高い広偉が率先して前に立っていたのもあろうが、こいつらは私達が到着するまで誰一人諦めなかった。

 だからこそ助けることが出来たし……助けようともいう気になった。 これは私の持論だが……諦めないからこそ人は生きる意味がある、そう考えている。

 諦めが人を殺す、とは誰の言葉だったかな。諦めた者はヒトではなく家畜にすぎん。食えるだけ牛や豚の方がまだ上等だ。

 ……だから、あえて言おう。この配信を聞く全ての『人間』よ。けして諦めるな。理不尽に抗い、出来る限りを尽くせ。

 無理をしろとは言わん、出来んことをやれと言うつもりもない。だが、それでも生きる事を諦めないでくれ。ヒトとして在ろうという心を忘れないでくれ』

 

画面の中のリンはそこで一拍置き、傍に浮かんだ立体映像モニターをちらりと見ると、改めてカメラを向き、口を開く。

 

『先ほども言ったが、私はヒーローなどではない。今この状況は単なる自分勝手な自己満足の結果にすぎん。

 ヨーロッパの故事に『天は自ら助くる者を助く』というものがあるそうだな? 彼らが助かったのは諦めず足搔いた、彼ら自身が招いた結果だ。

 もしヒーローなどと言うものがいるとするならば、それは彼らだ! 彼らが足掻き、諦めなかったからこそ私が間に合った!

 だからこそ、諦めず足搔き続ける限り。この配信を聞いているお前たちもまたヒーローである!

 これより『大脱出計画(プロジェクト・エクソダス)』を発動する! 行くぞ者共、一人でも多く英雄(ヒーロー)を救い出す!』

 

勢いよく宣言し拳を突き上げるリンの映像を最後に配信は終わり、『配信は終了しました』という文字とお辞儀をするアイリスが描かれた画像が表示される。

その画面をじっと見つめながら、避難民たちの体には不思議な熱が宿っていた。

 

「……俺達こそが、ヒーローだってよ。そりゃ、ヒロイが戦ってたし、それに引っ張られて諦めなかったけどよ」

 

「あんな大暴れして大活躍して、このデカブツ(避難車両)だってあの子が大半金出して作ったんだろ?*3

 それなのに……あの子はさ、それがただの行きがかり上のついでだって、そう言ってたよな」

 

顔を見合わせる者達。様々な者達がいる、老いも若きも、男も女も。戦闘員も非戦闘員も、健常者も怪我人も。

だが、その目に宿る光はただ一人の例外もなく、同じ光をたたえていた。

 

「俺は、やるぜ。戦闘員じゃないし、何できるかなんてわかんないけどよ、生き延びてやる!

 絶対に諦めねえ、俺は『人間(ヒト)』として生きて、『人間(ヒト)』として死んでやる!」

 

「私だってそうだ! あの子は七歳だと言っていた……そんな彼女が私達をヒーローと言ってくれたんだ!

 諦めず、生き抜くことが恩返しになるのなら、私も最後の最後まで足搔き続けるぞ!」

 

そんな叫びに呼応するように俺も、自分も、と声が上がり、熱気に包まれていく。

大脱出計画(プロジェクト・エクソダス)、その始まりとなる五百余名の避難民。その士気は、末端の非戦闘員に至るまで非常に高いものであったのだという。

 

 

 

なお、余談ではあるが。

この決起集会の配信はリンがDDSに持つチャンネルを使って配信されており、決起集会を見た後に他の動画も、となった者が出るのは当然。

その結果、決起集会での凛々しい雰囲気とその他の配信との温度差や平素のフリーダムさで脳を焼かれるものが続出。

チャンネル登録数がケタが増えるレベルで増加する、メシア教徒に棄教者を多数出すという大騒ぎになったりもしたのだが……

その辺りの事情をリンが知ることはないのであった。*4*5

 

どっとはらい。

*1
ざっくりいうと艦これのあきつ丸に暁マント着せた感じの服

*2
外見上はトライガン無印に登場した同名の車両

*3
終末対策の新型シェルターのテスターと言う体で半分ぐらいは連合持ち

*4
基本動画のコメントとかは見るがそれによっておこる別スレでの反響なんかはあんまり見ない

*5
配信を管理してるアイリスは察したが知らんぷりした




そんなわけで71話でした。
珍しく配信使っていろいろやるようじょ。
最近気圧のせいか頭は痛いわ調子上がらんわで大分お待たせしました……

■解説

・幼女ネキ
たまには真面目な配信をする幼女。
今回の服装の学帽は悪路王異界で使ったライドウの学帽。
諦めなず足搔く奴らに対しては高評価なので球場の避難民たちには大分肩入れしている。
チャンネル登録数が増えたことは認知してるけどその裏で起こったあれこれに関しては知らない。

・アイリス
登録数が爆上がりしたことに気付いて「あの配信のせいだな……」と調べたらすげー大騒ぎになってて真顔になった。
とりあえず幼女ネキから聞かれるまでは知らんぷりしておくことにした。

・避難民
覚悟が大分キマった。


■余談
前のどや顔幼女ネキに続き黒焦げさんから今回の服装の幼女ネキを頂きました!
本当にありがとうございます……


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