今回次回共に小説パートのみの予定。
あとトリガーの解説を全開し忘れてたのでここで。
・トリガー
リンが組み上げた術式を基に先生ネキが小型のチップ状の符に術式を組み込み、
グリップ状のホルダーに内蔵した新型展開型霊装。
元ネタは「ワールドトリガー」の同盟武器だが、現段階ではトリオン体への換装能力はなく、
使用者にトリガー術式を使用可能にする能力しかない。
とかそんな感じです。武器系トリガー3種と弾丸系トリガーぐらいしか現状実装されてない。
は製品として弾トリガーを入れたチップ型呪符をガイアメモリに組み込んだ者なんかもある。
とかそんな感じです。
どさり。
アメリカの地を行く移動式シェルター、フロウリッシュ号。そしてそれに先行して前方を走る、2体のクローンヤクザの乗るバイク形態の零零式。
砂蒸気、そして零零式自身の音で聞こえ辛かったが、その耳は何かが落下するような音を捕らえた。
「2号、不審な音を感知しました。先行して調査してきます」
「わかりました1号、上には報告を上げておきます」
進路を外れ、音のした方へと進む1号。
人間1、悪魔2。しかし悪魔の方の生命反応はない。人間の方も反応が弱まりつつあるようだ。
「こちら一号、人間1、悪魔2。人間は微弱ながら覚醒者である模様。悪魔の生命活動はありません。
が、MAGが霧散する気配なし。応援をお願いします」
そう通信で報告し、1号はそれらしき反応の元へと到着する。悪魔らしきものの死体が2つ、
そして人間が一人。不思議なことに、冬でこそあれ雪が降るような天気や気温ではないはずなのに、その体は半ば凍り付いていた。
虚ろな目が1号を向き、それが人間(の形をしているモノ)であることに安心したのか、その顔に僅かに生気が戻る。
「ぅ、あ、あんた、は……」
「こちら一号。生存者の意識あり、凍死の可能性。救護を要請します。
……ドーモ、サバイバー=サン。お気を確かに。じきに救援が参ります」
その言葉と共に、1号の元に他のクローンヤクザや外部にいた人外ハンターたちが集まって来る。
これが、始まりであった。
『――――――さて、みんな集まったな』
フロウリッシュ号内部、会議室。広偉を含めた防衛部隊の指揮官クラスの集うその部屋のディスプレイに映るリンが、そう切り出した。
事の起こりは少し前、クローンヤクザ1号が発見した1名の生存者と、2体の悪魔の骸だった。
『指揮官クラスなら既に話は知っているだろう。例の生存者の話だ。先程死亡が確認されたそうだ。
検死の結果レベルにして0.1程の半覚醒の覚醒者であったことが分かっている。……問題はここからだ。フタバ、説明を』
リンにより促され、クラシックなナース服を着た少女……
先生ネキのシキガミの1人、救急医学部タイプのフタバが前に出る。
同時に画面が分割され、画面には半ば凍り付いた人間、その解剖された遺体が映し出される。
『了解しました。検死の結果、生存者の肉体にはごく軽度の悪魔化の兆候が見られました。
そしてその兆候は、同時に回収された悪魔『らしきもの』のそれと同一のものです』
遺体に代わり表示されたのは、大柄な猿のように見える悪魔『らしきもの』の遺体。
しかしその体はほとんどが変異していたが、手の先、顔面の半分など、明らかに人間の痕跡を残したものだった。
『悪魔『らしきもの』……アナライズでは邪鬼ウェンディゴ・レベル8。
痕跡や遺体の悪魔化の兆候から推察するに、このウェンディゴの『遺体』も元は人間であったものです。
MAGに還らず残り続けていたのも、恐らくはまだ人としての要素を残していたからこそ、
完全に構成要素がMAGに変換されていなかったからでしょう』
フタバの言葉に騒然とする会議室。そのざわめきを指で手元を叩いて出す音で鎮め、
リンはフタバの言葉を継いで口を開く。
『ご苦労。……というわけだ。ここ最近ウェンディゴとの交戦が多かったが、ようやく得心が言ったな。
思えばウェンディゴはカナダの雪山に出る悪魔だ、この場にはあまり似つかわしくないとは思っていたが……
恐らく我々は邪神イタクァの進行ルート上に行きがかってしまったようだな。
本霊ではなく中位・あるいは高位分霊だろうが……
『無理だろう。お前たちで言う旧支配者という括りではあると言え親交があるわけでもないからな……
というか、お間たちの基準で『クトゥルフ神話の邪神』とされている者達と、まともな会話ができるとは思わぬ方がいい。
我やイグがレアなケースなだけで、基本人と会話の成り立つような思考をしておらぬ。あ奴らは概ね人をエサか玩具程度にしか見ておらぬでな』
リンの前に現れた
イタクァ。イトハカ、イタカとも呼ばれる、旧支配者ハスターの眷属である風の神格。北米先住民を中心に信仰、あるいは畏怖されており、様々な姿を持ち人を攫う。
大気を司る神格とも言われ、吹雪を司り、星間宇宙を眷属であるウェンディゴと共に歩む、
攫われた人間は意外にも殺されることはなく、そのまま数か月にわたり地球外の秘境を連れ回され、その後地上に戻される。
しかしイタクァに連れ回された人間は既に高空の冷気、そしてイタクァ自身の冷気に馴染んでしまっており、地上では長く生きられない。
また人間を己の眷属……ウェンディゴに変える力もあり、リン達が見たウェンディゴの『遺体』はなりそこないだと目される。
広偉は周囲の者達と視線を合わせ頷き合うと、リンの方を向いて神妙に口を開く。
「姐さん。交渉が出来そうにないって事は……戦うんだな?」
『そうだな。孔雀明王のレーダーでも進路上に巨大な反応が1つ、その他無数の小型の反応を探知した。
アナライズの結果は言わずもがなだ。1号達が見た奴らも、やつが我々の鼻先に投げ込んだものだろうよ』
「……そうか。分かった。俺達は何をすればいい?」
『フロウリッシュ号を守れ。流石に最前線に立たせるわけにはいかん。
お前たちを侮辱するつもりはないが……足手まといだ。私は広域殲滅が一番得意でな、巻き込んで殺さん自信がない。
そんな本末転倒なことをするよりは、お前たちには後詰としてフロウリッシュ号を任せたい。
不満だろうが……やってくれるな?』
真剣な面持ちで言うリン。その言葉に、広偉達は首肯で応えるのであった。
「……さて、頃合いか。お前たち、準備は良いな!」
停止したフロウリッシュ号の最上部、外角の上に仁王立ちしたライドウスタイル*1のリンが、吹き付ける寒風を吹き飛ばすような大音声を上げる。
あれから数刻後、接敵も間近となり、リン達はフロウリッシュ号を中心に展開し迎撃態勢を整えていた。
作戦と言う程のものもなく、広偉達人外ハンターたちがフロウリッシュ号周辺で防衛を担当。その真上でキャナルが孔雀明王で全体の管制とフロウリッシュ号を結界で守り、リン達で打って出る。
防衛目標があるとはいえ、戦法そのものはいつもの『リンが突出してかき回し敵の頭を落とし、他が周囲の雑魚散らしを担当する』であった。
「はい
リンの後ろからひょっこりと顔を出すイズナ。その傍らにはイズナの専用デモニカ、『村雨』が犬を象った待機形態で控えている。
「ミチルやツクヨも配置についた。リン、指示を」
舞い降りてくるのは天使の羽を広げたアズサ。そして彼女を守る様に這いあがってくるの鉄の大蛇ははその専用デモニカ、『草薙』だ。
「よし。で、あれば作戦をおさらいしておくか。広偉達人外ハンター、及び
積極的に攻める必要はない、我々の討ち漏らしを仕留める程度で構わん。
キャナルは孔雀明王での全体管制、タマは結界でのフロウリッシュ号の防護。クローンヤクザ1号から10号、及びナマズオ神輿を任せる、お前らの判断で使え。
アイリスはイカルガに搭乗し前線の管制と火力支援。イタクァが何かするようなら迎撃しろ。
他はノワールの指揮で動け。高くてもおおよそ40にも届かん連中だ、なんとでもなろうが……油断はするな。
イタクァは私が仕留める。近寄るなよ、最近あんまり派手に暴れてないから巻き込んだら敵わん」
リンのその言葉が終わると同時に、リンの目前に立体映像ウィンドウが浮かぶ。イカルガのアイリスからだ。
『マスター、それは良いのですが……マスターはどうなされるんです?
イタクァの相性からしてイカルガの銃装剣が効果的かと思われますが』*2
「オーバーソウルを使う。ついこの間新しいのが完成してな、丁度いいからヤツで試す」
同時に聞こえてくる大きなため息と、『了解しました』という呟き。
ウィンドウに向け小さく「すまんな」と声をかけてから、リンは声を張り上げた。
「よし、作戦開始! ミチル、ツクヨ、派手にやれ!」
『り、りょーかい!』『了解です!』
緊張の色が抜けていない返答と共に、こちらへ向かってきているウェンディゴの群れの先頭集団を霧が包み込み、
その霧のそこかしこに黒い砂のようなものがちらりと見え―――爆発。先頭集団を爆炎が包み、霧ごと吹き飛ばした。
これはミチルとツクヨの武装錬金を併用したもので、ツクヨのアリス・イン・ワンダーランドで起こした霧*3で相手の目と感覚を塞ぎ、
その隙に霧の中に混ぜ込んでおいたニアデスハピネスを充満させ、広がり切った頃合いで着火したのだ。
吹き付けてくる爆風に、リンの口角が上がり、獰猛な笑みを形作る。
「ほう、派手にやるな? イズナ、アズサ、後れを取るなよ。ノワール、見えていたな! お前の仕切りだ、食い散らかせ!」
『了解しました!』
「無論です! 行きますよ村雨!」
「分かった。草薙、行こう」
ノワール、そして2人の返答と共に村雨と草薙が飛び降り、イズナとアズサもそれを追って飛び降りつつも、口を開く。
――――――仁義礼智忠信孝悌 抜けば玉散る氷の刃 振れば命散るさだめのツルギ
――――――我が身 既に鉄なれば 我が心 既に空なれば 生者必滅
唱え終ると同時に
そして2人を中心に集まり、イズナは藤色の、アズサは白い鎧を纏い、大地に降り立つ。
「鵺原イズナ、村雨! 参ります!」
「白洲アズサ、天目一箇命草薙*4。状況を開始する」
それが、開戦の狼煙となった。
「うーん、自分の足で駆けるのも良いですが、弾丸のように空を駆けるのも良いですね!」
『イズナちゃん前! 前見て! 前方にウェンディゴ3体! レベル30クラス!』
村雨を管制するシキガミ*5の声に意識を前に戻せば、そこには3体のウェンディゴが氷結魔法を飛ばそうとしているところだった。
距離的には少し離れているが、村雨の速度は亜音速。見る間に距離が詰まってゆく。
しかしイズナの目に怯えの色は欠片もない。むしろ面白そう! とばかりの好奇心できらきらと輝いていた。
「たった3体ですか……まあ、周りにたくさんいますしここを切り抜けてからたくさん倒せばいいですね!
いっぱい倒して
イズナはイメージする。自分が腹を切り、そして解釈人に首を落とされるイメージ。
明確な『死』をイメージした上でそれを跳ね除ける。そして現れるのは黄金の狼面、両手が同じ狼の頭となったペルソナ、ケルベロス。
迫りくる氷結魔法を身をよじってすり抜け、ウェンディゴの前で急上昇。
数メートルほど浮かんだ所でペルソナの両腕の顎を突き合わせ、素のMAGを火炎魔法と一瞬で混ぜ合わせてかき混ぜ、圧縮。
拳大ほどの、MAGと炎が混ざり合い、内部で乱回転する球体を作り出して今度は本体でひねりを加えながら蹴り飛ばした。
「イズナ流忍法――――――火遁螺旋丸バージョンシュート!」
球体―――イズナの得意技、螺旋丸と火炎魔法を合成した派生術『火遁・螺旋丸』を亜音速で飛行する勢いそのままに蹴り飛ばす。
そして狙い過たずウェンディゴ達に命中し、イズナを狙ってきた3体以外の個体も巻き込んで盛大に爆炎を上げた。
「やった! 他の奴らも巻き込めましたよ村雨!」
『喜ぶのもいいけどまだ敵はいるからね!?』
快哉を上げるイズナ。村雨に突っ込まれつつも、イズナは油断なく飛んでくる魔法を捌きながらも次の獲物に狙いを定めるのであった。
『御堂、前方にウェンディゴ。レベル11、5体。レベル19、4体。レベル28、1体』
「了解。まずはレベル28の奴から片付ける。――――――ペルソナ」
イズナが仕掛けたのとほぼ同じタイミングで、アズサも戦闘を開始していた。
草薙の兜の内でアズサの顔にガスマスクが生まれ、それが燃え上がりペルソナを、イズナのケルベロスによく似た銀色のペルソナ、フェンリルを作り出す。
「―――【虚空爪激】」
フェンリルがウェンディゴに躍りかかり、一閃。接敵した中で最も強いウェンディゴを一撃で粉砕し、余波で足元にあったアスファルトをも粉砕し宙に巻き上げる。
そしてアズサが構えるのはシュラウドマグナム、そしてL119A1を模したガイア銃『Et Omnia Vanitas』。*6
アスファルトや粉砕された岩塊が舞い散る中、アズサは小さく呟き、引き金を引く。
「極道
猛烈な勢いで吐き出されたMAG弾とガイア弾。それは舞散る破片に当たってウェンディゴ達を檻のように取り囲み、急所を撃ち抜いてMAGへと返す。
イズナやアズサ達4人は、アメリカへ発つ前に殺島や夢澤から戦闘の手ほどきを受けていた。
その一環としてアズサは殺島からその得意技“
「なるほど、わざわざ跳弾なんてさせずとも急所に当てればいいだろう、と思ったけど……
跳弾させて包囲することで擬似的に包囲射撃や行動の制限を行えるというのは、戦術に組み込む価値があるかな」
『御堂、イズナが先行しすぎている。どうする?』
「全く世話が焼ける……草薙、周囲の警戒をしつつイズナを引き戻す」
『諒解した』
軽くため息を吐き、
戦いはまだ、始まったばかりである。
そんなわけで73話、バトル回でした。イタクァをどっかで出したくて……
それでなくともアメリカ編ラストバトル以前に1回どっかで場とらせたかったのです。
■解説
・幼女ネキ
ライドウスタイルが割とお気に入りなようじょ。
今回はイカルガに乗らずに習得していたオーバーソウルを使って戦う模様。
それでなくとも最近あんまり強い敵と戦ってなかったのでストレス溜まってた。
・イズナ&アズサ
割と初めてかも知れない戦闘描写。劒冑も使わせたかったのです……
イズナは夢澤から、アズサは殺島から極道技巧を教わっていた。