「~~~~♪ ~~■■~~??ェ????????????????????ョ?ュ??ゥ?ー(B~~~♪」
アメリカ東海岸、アーカムシティ。邪神が眠り、その眷属が蠢く呪われた地に、美しくもおぞましい歌声が響く。
その歌を聴く者はいない。仮に聞いていたとするならば、その歌声に聞き惚れていただろう。
明らかに人の言葉ではなく、時に人の可聴域すら外れ、言語と言うものを根本から冒涜するような混沌とした音波を、
それでもなお『美しい』と認識できているその精神は、真面なものであるとは言い難いだろうが。
その『歌声』の源には、一人の少女。銀の長髪をなびかせ、黒と白を基調とした可愛らしい服装をしている。
陽気にステップを踏み、バレエを踊る様に舞い踊りながら、おぞましくも美しいと認識
「いやぁ、イタクァが倒されるとは……まあ思ってましたが。まさかタイマンで殴り倒されるとは思ってませんでしたねえ。
流石ガイア連合、よくわかんない所にとんでもない戦力がいるもんです」
ひとしきり歌い踊って満足したのか、少女が足を止めて彼方に視線を向ける。
そこには、タコと人を練って固め、悪意と害意を持って削りだしたような、冒涜的な異形の巨体があった。
ビルの谷間を埋め尽くす様に伏している―――少女はそれが休眠期に入っているだけだと知っている―――異形の邪神。
名をクトゥルー。
星辰の揃わぬ故か活動と休眠を繰り返し、積極的に外部に侵攻しようとはしていない。
だが、少女は知っている。その休眠期がもうすぐ終わる事を。
活動期に入ったならば、自らの権能によってある程度その方向を誘導することはできる事を。
だからこそ少女は嗤う。愛らしく、悍ましく、ノイズが走る様に、時折その
これから起こる事を想像し、嗤う。
どうせ自分を倒した所で、動き出した
だが、今この瞬間、ここにたどり着ける者はいない。『星の炎』*1は別の
かつてこの邪神と渡り合った
仮に今この邪神に抗しうる、即応できる戦力があるとするならば……それは、イタクァを打倒した彼女しかいないだろう。
笑みがこみ上げる。腹の底から愉快な気分になる。彼女はどう対抗するだろう?イタクァすら比ではない巨神に対し、いかなる手段を持って戦うだろう?
彼女たちの
何をしでかすか分からないからこそシナリオを用意する甲斐がある。これもまた
そんなことを考えながら、少女―――
「お、姫さん、ようやく見つけたっぺ」
ある日。セドナシェルター内をパトロール(という名のリン&セドナ神公認のお散歩タイム)していたイズナ一行だったが、
聞き覚えのある声に呼び止められる。振り返ってみればそこには直立したナマズのような何か。宮城支部謹製の簡易シキガミの1種、ナマズオだった。
その中でもイズナのお付きとしてリンから与えられている1体で、名を「ギョシン」。頭にバツの字の傷がある個体である。
なお、お付きではあるが基本的にリン譲りの鉄砲玉気質なところのあるイズナに追従することはできず、お目付け役としての役割はミチルに譲りつつあるが。
「あ、ギョシン! どうしたんですか?」
「姐さんからの伝言だっぺ。何日かこの辺を離れるからその間このシェルターにお世話になるように、とのことだっぺよ。
セドナ様には許可を取ってあるっぺ。割り当ての部屋に案内するからついてくるっぺよ」
「はい! わかりました! 皆いきましょう!」
元気よく答えギョシンの後に続くイズナと一行だったが、その中でミチルは後に続きながらも、思案顔で首をひねっていた。
その顔から何かを察したのか、アズサは歩調を落としミチルに並ぶと、前を行くイズナに聞こえないよう声を落として問うた。
「……ミチル、どうかした?」
「いや、多分杞憂だと思うんだけど……なーんか、嫌な予感がするっていうか……
背筋がぞわぞわする感覚が消えなくて。まあこのアメリカでリン様にかなう奴なんているか怪しいレベルだし、心配しすぎかなあ」
ミチルのつぶやきに顔を見合わせるツクヨとアズサ。どんな敵も苦も無く打倒してきたリンが負けるところなど想像もできない。
だが、4人の中でひときわ臆病、言い方を変えれば最悪を想定し周囲をよく観察しているミチルの言葉に、
2人もまたどこか嫌な予感がぬぐえないのであった。
同時刻、ムラクモ内部、会議室。
そこにはレン子ニキを上座に、リン、先生ネキ、狩人ニキ、その他ロボ部の黒札たちが部屋の中央にある立体映像を眺めていた。
立体映像はどこかの都市のひと区画を象っているようだったが、その中央部に明らかな異物……建物のサイズと比して100mはあるだろうか。
人とタコと蝙蝠を練り合わせてメガテンで割ったような怪物が、まるで怪獣映画のように聳え立っていた。
「皆、揃ったわね。まあ、状況は見ての通りだけど……」
「ああ。クトゥルーが活動期に入ったそうだな。……だが、あいつは積極的に侵攻しないのじゃなかったか?
お供のソンビや魚人共は攻めてくるが、と前に狩人ニキに聞いたが」
レン子ニキの言葉を受けて、リンが腕組みをしながら立体映像を睨む。
そう、クトゥルーは顕現してからこっち、活動期と休眠期を繰り返しているが、活動期にあっても外部へ積極的に侵攻する姿勢は見せていなかった。
だが今回、クトゥルーは明確に一方向に向かって歩き出しているように見える。
その直線上にはこちら……セドナシェルターやフロウリッシュ号が停泊している地域が存在する。
リンが立体映像から狩人ニキに視線を写せば、狩人ニキは頷き、リンの言葉を継いで立ち上がる。
「ああ。俺が⑨ニキにピックアップされた時も活動期だったし、⑨ニキのホワイトグリント相手にドンパチやるぐらいには敵意も見せるが……
それでも、基本的にはアーカム周辺をうろうろする程度だ。だが、今回のこの動き……明らかに外へ向けて移動している」
「ねー狩人ニキ、こないだ幼女ネキがイタクァぶっ殺したのって関係あるかな?
ツァトゥグアは別に仲間じゃないとは言ってたけど、腐っても神格を打倒した幼女ネキに目を付けたって可能性は?」
「なくはないだろうがが……先生ネキの心配は杞憂だとは思う。その程度の事ならアメリカではありふれてる……。
俺が危惧しているのはクトゥルーをそそのかし、誘導したものがいるだろう、ということだな」
「狩人ニキ、それって……もしかして、アレかしら?」
会議室にざわめきが満ちる。普段とは違う動きを見せたクトゥルー、ならばそこには外的要因が存在するのだろう。ならばその外的要因とは何か?
レン子ニキが何かを察した顔で口を開くと、狩人ニキはそれに対し重々しく頷いた。
「レン子ニキ、ショタおじとカヲルニキに連絡を。推定『N案件』。カヲルニキの力がいる」
「おい狩人ニキ、カヲルニキなら今は手がふさがっているはずだ。昨日山梨の奴と話した時にそう聞いたぞ」
「……確定だ。『N案件』で間違いない。恐らくこっちが本命と言う事だろう」
リンの言葉に被りを振る狩人ニキ。『N案件』、それは邪神ニャルラトホテプが関わっていることを差す隠語である。
這い寄る混沌、燃える三眼、様々な名と姿を持つ無貌の邪神は、ガイア連合にとってはメシア教と並んで厄介な相手だった。
通常の神々を上回る悪辣さと愉快犯的気質で、様々な場所で暗躍し、大小さまざまな騒動の表や裏で見え隠れしている。
最近では名を呼ぶことすら忌避されており、かの神の関連が疑われる場合は『N案件』と呼称され、
因縁を持つらしい黒札、カヲルニキによって用意したギミックごと吹き飛ばすことが通例となっている。
「……OK、じゃあ私達がするのは対クトゥルーの足止めね」
「助かる。俺は別行動して案件の調査を進めておく。ショタおじに伝えておけば向こうが終わり次第カヲルニキに伝わるだろう。
それで……今回、カギになるのはムラクモ、及びイカルガだ。幼女ネキ、頼めるな?」
「狩人ニキ、俺らは?」
「ロボ部の奴らは整備に専念してもらう方が良いだろう。あのクトゥルーは100mはある。
ムラクモの
何より幼女ネキが全力を出す。覚悟は決めておいてくれ」
Oh……とかぶりを振るロボ部一同。そんなロボ部を尻目に、リンは牙をむいて獰猛に笑った。
「相手は⑨ニキが倒すことを諦めた相手、相手にとって不足はないな……レン子ニキに先生ネキ、現場の指揮は任せるぞ」
「おっけおっけ。そーいやレン子ニキらは劔冑あんだよね? 上任せていい?」
「ええ。幼女ちゃん、ノワールさん達はこっちで引き受けるわね。幼女ちゃんはクトゥルーに専念してほしいわ。
……正直、賛成はできないけれどね。セツニキやいろんな人に過保護だとは言われているけれど……*3
貴方にどれだけの実力があり、実績があっても……心配をしてはいけない理由にはならないの。それだけは、分かって頂戴」
レン子ニキの真摯な眼差しに、リンは暫し難しい顔をしたが……最終的には首を縦に振ったのだという。
『こちらムラクモ、ハスキー。データリンク正常』
『孔雀明王、キャナルです。通信異常なし。マスター、及びノワールさん達、先生ネキさん達、レン子ニキさんらのバイタル正常値。
対クトゥルー用精神汚染遮断結界、正常稼働中』
『レン子よ、ブシ子ちゃん共々準備OK。ノワールさん達も異常なし』
『ヒトハです。フタバ以下8名、及び先生の異常なし。いつでもいけます』
作戦開始前。リンはイカルガのコクピット内で気を整えていた。
深呼吸をし、瞑想。全身の気脈を整え、イカルガへとMAGを流し、循環させ、イカルガとの親和性を徐々に上げていく。
そしてその流れが最高潮に達したならその状態を維持し、目を開く。
「――――――よし。アイリス、準備は良いな」
「全ステータスオール・グリーン。いつでも」
「リンだ。各員に次ぐ。今回は悪路王異界以上に長期戦になるだろう。気楽に行け、どうせ足止めだ、無駄に全力でやる必要はない――――――だが」
リンはそこで言葉を切り、先程以上の、攻撃的意思すら見える獰猛な笑みを見せ、再度口を開く。
「ここで倒してしまえば……⑨ニキの鼻を明かせるかもしれんな? やるぞ、勝つつもりでな!」
そう宣言したリンに一同は笑い声で答え、各々の敵を見据える。
リン一行VSクトゥルー。このアメリカの地における最後の戦いが、今始まった。
そんなわけで76話、アメリカ編最終決戦開始です。
N様ガイア連合にとっては厄介極まりないけどこういう時便利だな!(本音
VSクトゥルーは大分初期から考えてた話なのでようやくここまで来れたかと感慨深い……
■解説
・幼女ネキ
イタクァに続く大物でオラワクワクしてきたぞ! してるようじょ。
レン子ニキなどから過保護気味に接されているのは分かってはいるけどあんまい悪い気はしていない。
流石にイズナの社会勉強とか言ってる案件じゃないのでイズナは置いてきた。
・イズナ
幼女ネキの気持ちを知ってか知らずかセドナシェルターの見回りという名のお散歩を日課にしている。
ニナちゃんズ達となかよし。
ギョシンの言うことは割かし普通に聞くけど、そもそも何か言われる前にどっか行くのでイヅナに一応ついて行ける身体能力のミチルと凄い仲が良い。
・ニャル
イタクァを倒した? なんか面白そうなシナリオフックになりそうですねえ! クトゥルー発進! みたいなノリでやらかした邪神。
この個体はTRPGのクソGMみたいな思考。