そろそろ100話だぜ!
【備えよう】地方防衛スレ(宮城) その84【いろんな事に】
118:名無しの転生者
とうとうこの日が来てしまったか……幼女ネキへのメシアン面会の日が
119:名無しの転生者
カジオーネキとレン子ニキが延ばしに延ばしてたがなぁ……
120:名無しの転生者
幼女ネキ自身は「めんどくさいイベントなんて早めにこなしとくに限るんだからもうちょい早く教えてくれ」とか言ってたが
というかそもそもなんでメシアンは幼女ネキに会いたいんだっけ? そりゃ宮城有数というか東北地方有数の修羅勢ではあるが
121:カジオー
まあメインはライドウ襲名した祝いと、なんのかんのメシアンに迷惑かけられてたから*1その謝罪に、と言ってたかねぇ
絶対それだけじゃないとは思うけど。東北じゃメシアン共は大概突っぱねられてるからね
レン子ニキ自身現地名家の出だし、それもあって宮城でも割と公然と白眼視されてるしなぁあいつら
122:名無しの転生者
下の方の奴らは結構真っ当に聖職者してるやつらも居るけどだからこそ無自覚にイラっとさせられることも多いしな
メシアンでなければ……と思ったことはちょいちょいある
123:名無しの転生者
分からんではない。でもまあ、よりにもよって幼女ネキとかほんと何考えてんだろうな……*2
124:先生
実は幼女ネキ、連合外だと『黒札か否かに関わらず正当に努力を認めてくれる人』って呼ばれてたりすんだよね
実際現地民だろうが悪魔だろうが、あの子基準でだけどきちんと努力してるやつには援助を惜しまないし
元メシアンって例を挙げるとシスターフッドとか、悪魔系って例を挙げるとタマちゃんとかね
125:名無しの転生者
でもメシアンだろ? 幼女ネキ自身メシアンは不倶戴天の仇敵、と公言してはばからんし
つーか前に「メシアンって時点で努力してない扱いだ」とか言ってたよな
126:名無しの転生者
まあ実際メシア教がいらんことせなんだら十四代ライドウは死ななかったし、方々の地方名家がノウハウ不足でひいひいいう事もなかったわけだしなあ
127:レン子
本当にね……そもそも悪路王異界の一件だってメシア教のせいで起こったよなものだし……
ちなみに悪路王異界はメシアン出禁よ。ガイア連合の機密に関わるあれこれも多いし、そもそも管理者がメシアン大嫌いだしね*3
日向ちゃんやメアリーちゃんの面通しに行く時だって大分大変だったんだから
それでもそう言う要請は後を絶たないし……多分管理権限を持つ*4幼女ちゃんを丸め込んで悪路王異界でのレベリングや術具の徴発も目論んでるんじゃないかしら
128:名無しの転生者
わー、成功の目がカケラも見えないなそれ
不謹慎だけどむしろ頑張ってほしい。出来れば配信で見たい
129:名無しの転生者
あ、そういえばどこで面会すんの? 幼女ネキんち?
130:幼女
そんなわけなかろう。宮城支部の仙台出張所だぞ。イズナ達の教育に悪い
まあイズナ達補習授業部は課外授業として探求ネキんとこに行かせてるから万が一にも会う事はあるまいがな
文とラプンツェルと日向もお目付け役としてつけたから、まあ大事はあるまい
131:名無しの転生者
あ、そうなんだ。探求ネキのとこって言うと蓬莱島?
あそこなら学びの園とかもあるしいい環境かもしれんね
132:幼女
うむ、食欲界*5でぼちぼちメロウコーラが取れそうだそうなので、課題として『メロウコーラの採取』を任せた
あいつらにもほどほどの難易度の任務だろうて
133:名無しの転生者
食いもの関係なのは幼女ネキらしいなw
……メロウコーラってことはサラマンダースフィンクス*6とガチンコするんです?
134:名無しの転生者
なお殺しても駄目だぞ、殺さないように、かつ死なないように立ち回りつつ面倒な手順をこなす必要がある*7
135:幼女
そのくらいの難度じゃないとすぐ戻ってくるからな。一週間ぐらいを予定している
そしてその間に面会を済ませてしまうというわけだな
136:名無しの転生者
イズナちゃんアズサちゃんはともかく*8彼女ら以外が大変そうだな……まあ大丈夫だとは思うが
137:名無しの転生者
んで、どうすんの? メシアン来るんでしょ? 突っぱねるの?
138:幼女
別に感情的になって頭ごなしに否定したりはせんぞ? 道理が通っているなら多神連合だろうが一定の譲歩はする
そう言えばだれ来るんだカジオーネキ、知ってるか? ブラザー・トールマンとかなら大歓迎するが*9
139:カジオー
テンプルナイト・輿水だよ*10
140:幼女
ふーん
141:先生
うわ、幼女ネキがめっちゃ悪い顔してる。可愛い!
[画像]
(とてつもなくなんか企んでそうな顔をしてる幼女ネキ)
142:名無しの転生者
ぶれねえなお前もw
143:名無しの転生者
うーわ、ほんとになんかえげつない策考えてそうな顔。ナムアミダブツ
144:脳缶
あ、幼女ネキ! ご注文の【喜劇】と【バプテスマ】*11、仙台出張所に持ってけばいいかな?
幼女ネキは大口の顧客で美味しく食べてくれるからサマエル君も作り甲斐あるって喜んでたよ!
145:幼女
おお、助かる。ストックがなくなって来てたからなあ
【喜劇】はラプンツェルも美味しいって褒めてたぞ。*12【バプテスマ】もジュースにして保管したりジャム作ったりして私も楽しんでいる
ジャム作ってるといつの間にか本来できるはずの量の半分ぐらいに減ってるんだが、天使の分け前ってやつ*13だろうか? 不思議だ
146:先生
幼女ネキ、ジャム作ってると完成した時に口の周りジャムだらけなんだけど突っ込んだ方がいい奴?
147:名無しの転生者
食ってんじゃねーか!w
……って、あのワインって天使が飲むとヤバいんじゃないっけ?
148:脳缶
メシア教の天使じゃなきゃ大丈夫だよ? ラプンツェルさん世にも珍しいメシア教由来じゃない天使だし
メシア教由来でも天使部の皆が連れてるような天使達なら大丈夫!
149:名無しの転生者
ならいいか……というか幼女ネキんとこの人らもお酒とか飲むのね? 幼女ネキ自身飲まないからあんまり酒飲んでる印象ないが
150:幼女
私やイズナとかが未成年ってだけで割と酒飲むやつはいるぞ? 酔う奴は少ないけどな。うちの大人連中大体悪魔かシキガミだし
それでもラプンツェルを筆頭に悪魔組が嗜む程度に呑むぐらいか? ラプンツェルとミネルヴァがワイン、タマが日本酒、セリリがラム酒、紅蓮が蒸留酒系だな
まあそれらを好むというだけでそれしか飲まんわけでもないし、節度は弁えてる。べろんべろんに酔うなんてことはないからイズナらにも安心だ
シキガミ組はどっちかっていうと料理に酒を使うタイプだな。これでもワイン系は結構使うらしく【喜劇】は重宝されてるぞ
ノワールの牛豚鶏のワイン煮込みは絶品でなぁ……【喜劇】は上質なMAGも籠ってるからとてもおいしいのだ
ビーフシチューとか、そう言えばワインを使ったジャムなんかもあるらしいな! 今度【喜劇】で作ってもらおう、楽しみだ
151:名無しの転生者
じゅ、需要と供給が成り立ってる……所でそれをメシアン達に出したりはせんよね?
あれメシアンとか天使が食べると色々問題あるはずだよな
152:脳缶
ただちに影響はないよ! ただちには!*14
あ、今着いたよ、ハンコくださーい!
153:名無しの転生者
つまり何かしらはあるって事じゃねーか!
……やらないよな?
154:幼女
確かに受け取ったぞ! ……うむ、美味い。マッカは口座引き落としで頼む
155:名無しの転生者
やっぱり食べてて草 まあ美味しいんだよなあれ……
156:レン子
あ、そろそろ来るわよ幼女ちゃん、戻ってらっしゃい
157:幼女
うむ、今行くぞ
158:名無しの転生者
幼女ネキ、ほどほどにね?
159:幼女
うむ、ほどほどにしておくぞ
160:名無しの転生者
心配だなぁ……
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「――――――鵺原リンさん、お初にお目にかかります。メシア教テンプルナイト、輿水幸子です。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「いや別に招いちゃおらんがな。お前らが年明け前からぎゃあぎゃあ五月蠅いから仕方なく席を設けただけだ」
ガイア連合宮城支部、仙台出張所。その会議室では、リンとメシア教穏健派の日本におけるまとめ役ともいえるテンプルナイト、輿水幸子が席につき向かい合っていた。
リンの後ろにはノワールとブラン、そしてセリリと紅蓮。幸子の後ろには、配下と思しきメシアンが同数。幸子が連れてきた面々に合わせ、同数の嫁を残した形となる。
「そう言えば、十六代目の葛葉ライドウを襲名されたとか? かの十四代の使役した悪魔達に認められるというのも、誉れ高い事でしょうね」
「見え透いたおべっかなんぞ聞きたくもないな。ああ、それと……」
「何か?」
瞬間、殺気が部屋を満たす。リンの手が幸子の首を掴み、ギリギリと締め上げていたからだ。
にわかにメシアンが色めき立つが、リンの殺気に合わせて即座に銃を構えたノワールとブラン、刀を抜いた紅蓮を見て一瞬止まり、直後リンに睨まれてたたらを踏んで下がる。
リンはふん、と鼻を鳴らし幸子に視線を戻すと、未覚醒ならば即死するであろう満身の殺意を込めて口を開く。
「私を呼ぶときは『幼女ネキ』と呼べ。『リン』は私の両親が私に贈ってくれた唯一の
そう吐き捨て、突き放す様に首を締め上げる手を離す。幸子は軽くせき込みながら、よろけながらも堪え、姿勢を正した。
「けほ……り、了解しました。今回はまあ、そのお世辞を言いに来たのもですが……宮城県内における我らメシア教穏健派の活動を認めていただきたいのです。
支部長様には今回の件と共に打診したのですが……あなたが良いと言えば、検討のための話し合いを始めても良いとお返事をいただきまして」*16
「レン子ニキめ、面倒を押し付けおってからに。大方カジオーネキや先生ネキの入れ知恵だろうが……まあいい。それで、お前らの活動を認めろ、だったか?
――――――やなこった。なんで私がお前らがのさばる手助けをせねばならん? そもそも……メシア教は私の敵だ。過激派・穏健派に関わらずな。
そも、私はお前たちメシア教から迷惑を被った事しかない。お前らが私に譲歩こそすれ、私がお前たちに譲歩することなど天地が覆ろうとありえんことだ」
あまりにもばっさりと切って捨てられたからか数秒ぽかん、としていたが、幸子は咳払いを一つすると、ややひきつった笑みでリンを見やる。
「……協定をご存じかと、思われますが」
「無論だ。日本メシア教への過度な迫害の禁止、及び信教の自由の保障。日本神解放にあたってお前らと結んだ協定だろう? これでも宮城支部幹部だ、当然知っているさ」
「ならば――――――」
「だが
そして出た結論は……貴様らなぞ存在に値せんと言う事だ。いるだけ邪魔、社会のゴミ、ドブネズミの方がまだ世界に貢献出来よう。
私は努力を尊ぶ。黒札であろうとなかろうと、ガイア連合であろうとなかろうと、真摯に努力し明日へと進む姿勢は素晴らしいものだ。それこそが人が人たる所以と言えよう」
「我々は努力をしていないとでもいうのですか! 流石にその物言いは黒札殿とて承服できかねますぞ!」
リンの痛罵に耐えかねたのか、メシアンの一人が顔を赤くして吼える。しかしそれに対して帰って来たのはリンの罵声ではなく……銃声。
リンが取り出した
空気が凍る。思わず叫び出しそうだった別のメシアンも、その銃口が自分を向くと返り血を浴びた青い顔で口を噤む。
「そう言えば言い忘れていたが、テンプルナイト殿以外は発言するならば許可を得てからするように。破れば殺す。何、初回はサービスだ、タダで蘇生をしてやろう」
そう言って頭が吹き飛んだメシアンに【地返しの玉】を投げて蘇生させるリン。フィルムの逆回しのように元に戻っていくメシアンを無感情に見ながら、リンは次の【地返しの玉】を取り出し、見せつける。
「次からは口のきき方に気をつけろよ、私はあまり気の長い方でもないし、魔人ネキやウォレスニキほど優しくもない。私は間違っていると思えばショタおじにすら噛みつく。
当然黒札だからと言って行動を肯定するわけでもないし……薄汚い
もう一度言うが……口のきき方には気をつけろよ? 蘇生はしてやるが、次からは後日料金を請求する。私のトリガーは軽いぞ」
リンはそう言うとM1887をスピンコックでリロードし、引き金に再度手をかけた。
「……まず、先の発言について補足しておこう。私は努力を尊ぶがお前たちはどうなのか? という話だな」
突然の発砲から少し。リンは会議室の上座に座り、下座に並んだメシアン達へと講釈を始める。
リンの後ろにはノワールとブラン、出入り口には紅蓮とセリリが控え、殺気を交えて油断なくメシアンの一挙手一投足を監視している。
「まず、何故努力を尊ぶか。それはシンプルに頑張ってるやつらを応援したいという感じだな。大半の地方黒札や現地の面々など、世界を守るために日夜奔走しているのだ、日々遊んでばかりの私などよりよほど素晴らしい者達だ。
……うむ、そこのメシアン2号、発言を許可する」
「ジョシュア・ラングレンです。驕るわけではありませんが……我々も日夜奔走しているという自負があるのですが、黒札殿から見てそれは努力ではないという事ですか?」
「
ガイア連合とメシア教が同盟するにあたって最終的な後押しになったのはそこだ。実際末端のメシアンはメシアンと言う事を除けば大半が善良で精力的だ、それで助かっているものも居よう」
しかしそこで「だが」と区切りをつけ、リンは殺意すら籠った視線でじろりとメシアンらを睨む。
「そこでお前たちが『メシア教徒である』という事が大幅なマイナスとなる。テンプルナイト・輿水。それが何故か分かるか?」
「それは……我々穏健派が過激派の行動を抑止できていないという事でしょうか?」
「素晴らしい。花丸をやろう。ご褒美に山梨名産のブドウとワインをやろう、喉も乾いただろう? 存分に食え」
幸子の返答に大きく頷き、リンは指を鳴らす。するとメシアン達の目の前に1人につき1本のワインと皿に乗ったひと房のブドウ、そしてからのワイングラスが転送されてくる。
メシアン達はそのワインのラベルを見ると頬を引きつらせ、リンの方を見た。
「あの、これは……」
「我が友人脳缶ニキの所で売っているブドウ『バプテスマ』とそれで作ったワイン『喜劇』だ。私はそのブドウが大好きでな。ワインもまた私の嫁の1人、ラプンツェルが特に好んでいる。
良い答えを聞かせてもらった褒美だ、遠慮はいらんぞ、特にさっきぶち抜いたメシアンは血も足りておらんだろう。ワインは神の血ともいう、存分に飲め」
にっこりと
『バプテスマ』と『喜劇』、これはメシア教の天使やメシアン以外にはただのおいしいブドウとワインでしかないが、メシア教の天使やメシアンにとっては『天使が食べると行状に応じて行先が変わる』『人生経験に応じて味が変わる』『信心に比例して正直になる』など、えげつない呪いを秘めている。
無論それを幸子達は知らないが、この状況で目が笑っていないリンが勧めてくるもの、迂闊に手を付けるとまずい、その思いが手を止めていた。
手を打付ける様子のない幸子たちを見てリンは鼻で笑うと、再び口を開く。
「出されたものに手もつけないとは失礼な奴らだ。まあメシアンが無礼の恥知らずなのは今に始まった事ではないが……まあそこはどうでもいい。
メシアンと言うだけで大幅なマイナスとなる、その要因の1つがそれだな。お前たち曰くの過激派はお前らメシア教の異端なのだろう? 自分達のケツぐらい自分で拭け。
そもそもお前らが適当な封印をして放置した結果我々が苦労する、などという事態は枚挙に暇がないのだがな。お前たちが信用されるためには過激派の絶滅ぐらいはやらんと無理だぞ?
まあ、出来るはずもないがな。有力な天使や高レベルのメシアンは大半が過激派だ。尤も、私が気に入らんのはそこではないがな?」
「……と、申しますと?」
「分からんかテンプルナイト・輿水。それはお前たちが
お前たちがどれだけへりくだり取り繕っても、メシア教の被害者はお前たちがメシア教と言うだけで忌避するだろう。けして許すことはないだろう。
道南の魔人ネキにも言われたろう? 信用されたくばメシア教の名を捨てろ。貴様がメシア教を名乗り続ける限りお前たちが真に受け入れられることはないし……
メシア教を名乗っているという
ぞわり、と幸子の背筋を悪寒が走る。同時に、ばたばたと部下のメシアン達が突っ伏していく。リンの放った殺気に当てられ、気絶したのだ。
それでも、心臓を握り潰されるような圧力に耐えながら視線を返す幸子に向けため息を吐くと、リンは殺気を緩める。
「……ふん、この程度の殺気で気絶するとはな。何か言いたそうだが……当ててやろうか、それは我々のやった事ではない。そんなところだろう。
過激派がやったことなのだから自分達に関わりはない。そう言いのだろうし、実際そうなのだろうが……そこはどうでも良い。
十四代ライドウと十五代ライドウ、そして我が壬生一族、そしてその一族である我が父とその妻である母。先代と先々代はお前たちメシア教によって自害を強いられた。
そしてその後の苛烈な弾圧で壬生一族の多くの者が命を落とし、我が曾祖母や両親達も近年まで日本中を逃げ回る羽目になったのだそうだ。
更に、それに端を発する私が両親に逃がされ、死に分かれる事になったのはメシア教が原因だ。まだ穏健派と過激派に分かれる前のな。
お前たちが自分が真なるメシア教であると標榜するならば、私にはお前たちがやったことを追求し糾弾する権利がある。
お前たちが日本の異能者達を弾圧しなければメシア教に対する風当たりは強まらなかったのだ。受け入れられていたかもしれないのだ。
今お前たちが陥っている苦境、それはすべてお前たちの身から出た錆に過ぎん。お前たちが許されたいのならば、全てを捨てろ。
メシア教の教えも、今の地位も、金も、道具も、何もかもを捨て、地を這いずり、石もて追われてもくじけることなく贖罪に生きろ。
そうしてメシア教を捨てた結果受け入れられた人間を私は何人も知っている。我が妻の一人もその一人だ。出来ないわけがない。お前たちがやろうともしないだけだ。
そんな、やって当然の努力もせんような奴らは嫌われて当然。出来ないというのは、お前のただの我がままに過ぎん」
そう言ってのけるリンの顔には、何の感情も浮かんでいなかった。怒りや憎しみといったものを超越した地点まで高まったボルテージが、逆にそれらの感情を振り切っているのだ。
その顔を受け、リンの秘めていたメシア教への憤怒や憎悪を一身に受け、苦笑いを浮かべていた幸子の顔からもまた、笑みが消える。
「……それほどまでにお嫌いですか、メシア教が」
凍り付いたような顔の幸子の絞り出すような言葉に、リンは何を今更、というような顔で、手元に呼び寄せた『バプテスマ』を口に運び、一息で食べ尽くす。
次の瞬間、リンの表情が変わる、柳眉を逆立て、怒りの形相で、幸子を睨みつけ、叫んだ。
「ああ嫌いだな。お前たちがいなければ、私は両親に愛され健やかに育まれていただろう。心ある人に拾われなければ、寒空の下、私は凍死していただろう。
その心ある人すら、見ず知らずの赤子を育てる中で死に、死人となって蘇り私を育て、ついには狂って私に襲い掛かった。分かるか、お前に?
大事な人の形をした死人に腹を食い破られ、飢餓と痛みと失血と絶望の中、悪魔に変じその死人を食い殺した私の気持ちが。理性を取り戻した時の私の気持ちが。
お前たちがいなければ、メシア教がいなければ、お前たちが我が両親を死なせなければ、私はこんな気持を味わうことなどなかったのだ!
そんな奴らの存在など、天地が覆っても認めてなどやるものか! 否定してやる、私が最後の一人になろうとも、私のこの命尽きる時まで私はメシア教への敵対者となってやる!
そうさせたのはお前たちだ! お前たちが自らこの結果を招いたのだ! 理解しろ、お前たちが嫌われているのだとな!」
少し後。会議室の中は静まり返っていた。幸子は黙り、リンもまたノワールに気遣われながらも荒く息を吐き、深呼吸しながら徐々に気息を整えていく。
そしてリンの息が落ち着いたころ、最初に口をひらいたのはリンだった。
「……ふう、すまんな、つい熱くなった。ともあれ、私の主張は理解してもらえたとは思うが?
歩み寄りたいと真に思うのならばまずお前たちがメシア教を捨てる所からだ。カジオーネキからは悪路王異界に立ち入りたいとも聞いていたが……
あそここそ色々な意味でお前たちに立ち入らせるわけにはいかん。メシアンなんぞがが入ったら悪路王事変の二の舞だぞ。そうなれば誰もお前たちを庇うまいよ」
「……そうですね。今回は日が悪かったようです」
「権利を主張したいのなら義務を果たせという事だな。今後、宮城県におけるメシア教の私の許可なき活動を禁ずる。
語気が強かったことは否定はすまい。私がメシア教被害者の総意というつもりもないが……この日本においてメシアンが真に受け入れられることはない。お前たちがメシアンを名乗る限りはな。
第一、私はお前ら穏健派に度重なる妨害を受けてきているのだ。行動を制限する理由はただの私怨という訳でもない。皆無とは言わんが」
「中華戦線へ行かれた時と、アメリカへ行かれた時の事ですね。お話は聞き及んでいます」
リンが言うのは、中華戦線行きの際メシアンがリンが参加することに対し激高し、メシアン対リン(とその仲魔)の模擬戦が起こった時の事、
そしてアメリカで避難民を救出する際、過激派スパイが潜り込んでいた事にも気付けなかった者達と、スパイや洗脳者まみれで紛れ込もうとした件の事だ。
前者は死なない程度に叩きのめされ計画から実質的に排除され、後者もまた関わった穏健派を捕縛、その後捕縛した者達はリンがキレた一件で棄教し、以後大蛇丸ニキ預かりの実験体となっている。
「とっ捕まえた奴らはもう棄教してるし返すつもりはないぞ。今何をしてるのかは知らんがな。 まあそういうわけだ、北海道と東北で活動するのは諦めろ。
日本に逃げて来た
さ、話は終わりだ。そこのゴミ共を連れてとっとと失せろ。目障りだ」
「ええ、正直、貴女を甘く見ていたようです。では、これにて」
そう言って気絶した者達を揺り起こそうとする幸子であったが、そこにリンが声をかけた。
「……ああ、そうだ、テンプルナイト・輿水。詫びという訳でもないが、一つ言っておいてやることがある」
「何でしょう?」
「まずありえんが……お前のガキが産まれたとして、まともな脳味噌をしていたら私が鍛えてやる。
お前の事は反吐が出る位に大嫌いだが、産まれた子に罪はない。三つ子の魂百までともいう、ガキの頃から躾ければ、少しはマシな奴に育つだろうよ」
その言葉に幸子は目を丸くし……くすりと微笑むと「ありがとうございます」と言葉を残し、配下を揺り起こし去るのであった。
メシアンとの話が終わり、自宅に帰る前にレン子ニキの家へと向かっていたリン一行であったが、先頭をのしのしと歩くリンの背を暫く眺めた後、ノワールが口を開いた。
「……マスター、良かったのですか?」
「何がだ?」
「その、テンプルナイトの方のお子を鍛える、という事です」
その問いに、リンは一瞬思案顔になるが、手をひらひらさせながら嫌そうにため息を吐く。
「ああ、アレか。別に、あの時言った通りだ。生まれた子に罪はない。それに……少々、哀れに思っただけだよ。奴と、いずれ産まれるかもしれない奴の子供がな。
あいつ自身、もはやメシア教の実質的トップという立場から降りられまい。その子供と言えばな……重ねて言うが、子は親を選べんものだ。
まあ……叩いて治る程度の馬鹿なら、生かしておく価値もあろうさ」
「そうですか……」
「まあ、その辺りはどうでもいい。行くぞノワール、確か今レン子ニキの家には豆柴ニキが送って来た酪王カフェオレ*17と福島銘菓があるはずだ! 今回の腹いせに食いつくしてくれる!」
「あんた実家みたいなものとはいえ人んちに贈られた贈答品食いつくすのやめときなさいよ、妹さん達の分ぐらいは残しなさいよ?」
レン子ニキの家のお菓子を喰うと決めて機嫌を直したのか、わははと笑いながら駆け出すリン。そんなリンを追うように他の3人に頼みながらも、ノワールはスマホを取り出すと何処かへと連絡を入れ始めるのであった。
なお、余談であるが。
今回の件についてテンプルナイト・輿水幸子は『交渉は失敗。我らの行状について幼女ネキさんはとてもお怒りでした』と語りなぜ怒っていたのかを話すのみで、
その直前にあった(蘇生はしたが)メシアンの射殺、『バプテスマ』や『喜劇』を食べさせようとしたことについては生涯語ることはなかったのだという。
「お、帰って来た。お帰り幼女ネキ」
「レン子ニキんとこのお菓子食い尽くしてきたんだって? やるじゃん」
「どうも、幼女ネキ。お邪魔してますよ」
「いやなんでいるんだ脳缶ニキにカス子ネキ。人魚ネキまで。つうかいいのかカス子ネキ、道南ほっぽって。邪視ネキや魔人ネキまで連れてきてるし」
帰宅したリンを出迎えたのは、イズナ達についていった3人を除く留守居のアイリス、タマ、キャナル、ミネルヴァの4人。
そしてリンの遊び友達の黒札、脳缶ニキとカス子ネキを含む道南三人娘に人魚ネキを加えた5人であった。
「いやなんかノワールさんに招待されたから……ちょうど暇だったしね」
「ウチらもノワールさんに『たまには息抜きでも』とか招待されてね。あ、向こうは大丈夫だよ。
レン子ニキにリンクニキにカジオーネキに先生ネキと、錚々たる面子が2・3日ヘルプに入ってくれてるし。飛竜戦艦も持ってったからいやー助かるわ」
「私も調度手が空いてたので……ミネルヴァさんがすごく慌ててましたけど、大丈夫ですか?」
首を傾げるリンに3人が答え、リンがノワールの方を向けば、ノワールはびくりと身を震わせるが……不意に眉根を上げると、屈んでリンに視線を合わせ、抱き寄せる。
「皆さんを招いたのは私の独断です、お叱りならば如何様にでも。ですが……マスターはお休みになられる必要があると考えました。
ほかの黒札の方の言葉を借りるわけではないですが……子供は遊ぶのが仕事です。ですので……沢山遊んで、沢山お休みになってください。
イズナ達が戻ってくるまでまだ何日かあります、せめてその間だけでも……心安らかに過ごしてほしいんです。マスターの辛い顔を見るのは、私達も辛いんですからね?」
そう言って苦笑するノワールに、リンは暫し百面相をしていたが……観念したのかため息を吐くと、ノワールの頬にキスをしてからその腕から抜け出す。
「まったく……いい嫁を持ったものだな。……すまんな、助かる。よし皆の者! 孔雀明王格納庫に集合! 山梨や星祭の暇人共も巻き込んで100人ボンバーマン対戦やるぞ!
それが終わったらマリカーやスマブラもだ! リアルACでもいいな! 者共続けーっ!」
そう言って格納庫に全力疾走するリンの背中を見送り、カス子ネキや脳缶ニキはその背中を追おうとして……直前でカス子ネキがノワールを振り返る。
「幼女ネキがガチで凹んでそうって聞いたから来てみたけど……確かにあれは大分空元気入ってんね。ノワールさんマジファインプレーよ?
それにカレンちゃんは本霊ガイアだし、人魚ネキも変身悪魔にガイアいるし、幼女ネキの側にいればいい影響あるかもね。*18そんじゃ脳缶ニキ、シオリちゃんカレンちゃん、人魚ネキ! レッツゴー!」
「オッケー任して!」「ちょっと命子!?」「……はあ、そう言う事ならば、仕方ありませんね」
「分かりました」
直後脳缶ニキと共に全力疾走しその後を邪視ネキや魔人ネキ、人魚ネキが追うのを見送り、ノワールは安堵の溜息を一つ。
周囲にいる他の8人に目配せを送り、主人やその友人たちが心安らかに過ごせるよう、飲み物や食べ物の準備を始めるのであった。
そんなわけで97話でした。気づけば遠くへ来たもので……UA23万越えとは本当に未知の領域ですわ……本編最終回も視界には入ってきましたが、やりたい話も多いのでもう暫くお付き合いください。
■解説
・幼女ネキ
割と過去にに類を見ないベクトルでキレてたようじょ。基本起こる時は静かに怒るけど、基本的に負の感情に感しては自分を押し込めているので噴出するとこんな感じになる。
メシア教に対しては霊視ニキ以上に苛烈。「歩み寄るつもりがあるならメシアンという看板を捨てろ」は嫌がらせではなく純粋に本心。まずようじょに歩み寄るつもりがあるなら本気で棄教するところがスタートライン。
なおキレてる間中ミネルヴァの感知術式にビコンビコン反応してたのでようじょがマジギレして本霊と繋がりかけてたのはみんな知ってる。
・さちこ
言わずと知れたテンプルナイト。あまり好きだとは思ってないけど、彼女もまたメシア教の被害者だとは与太郎も思います。
今回ともすれば交渉材料になりうるあれこれを黙殺したのは、ようじょが吐露した本音に何か思うところがあった模様。
・脳缶ニキ&道南三人娘&人魚ネキ
ノワールが『マスターを少しでも心安らかに過ごさせるため』とレン子ニキらと協議の元、宮城のトップ層が戦艦付きでヘルプに行くことで無理やり休みを取らせた三人娘と、たまたまヒマだった脳缶ニキと人魚ネキ。
ノワールの考える『マスターと対等にバカを合って楽しめる友人』がこのカス子ネキ&脳缶ニキ&人魚ネキの3人だった模様。
後凄まじい余談ですが、3人娘が休んでる時の道南ではリンクニキ200%(全裸&股間にモザイク)が暴れてました(ニコッ