リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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存外筆が乗ったので連投します!


第十話『猛獣の休息』

「はふぅ……」

 

「極楽や〜」

 

「たまんないねぃ……」

 

ほっとけや温泉 女湯 露天風呂

 

冷え切った身体に染み渡る暖かな温泉に、三人は再び蕩けきっていた。

この露天風呂から見える景色がまた絶景で、目から肌から癒やし成分がなみなみと流入してきているのが実感できる。

 

「アキちゃん、ここからキャンプ場までどれくらいあるの?」

 

「1キロくらいだなぁ。管理人さんには到着は昼過ぎって連絡してあるから、まだまだのんびりできるぞ?」

 

「アカン……悪魔の囁きやぁ……」

 

このままゆっくり、じっくり、ココロも身体も温めて〜、休憩スペースでゆっくりして〜、でキャンプ場にゆっくり向かって〜

 

『へぇ……いい景色の露天風呂だな』

 

「この声は……」

 

「ケン君だ」

 

『ふぃ〜、極楽極楽……』

 

垣根一つ越えた男湯で、彼もまったりしてるのだろう。何となく、蕩けてるイメージが湧く。

 

「ケン君、いい景色だねぇ!」

 

「おまっ!なでしこ!」

 

『なでしこ?そっちも露天風呂か?』

 

「うん!気持ちいいねぃ!富士山も見えるし」

 

『あぁ、風呂はリリンの生み出した文化の極みだな……』

 

よもやこんな環境で会話するなどと思いもしなかった千明とあおいは、妙に恥ずかしくなってくる。

互いに姿が見えないとはいえ、裸の状態で異性と会話をするというのは変に意識してしまっていた。

 

「こうしてると、時間を忘れちゃうねぃ……」

 

『そうだな、ずっとこうしてのんびり浸かっていたくなる』

 

「あ、あんまり長湯したらのぼせてまうから、ケン君も程々にせなあかんよ?」

 

「そ、そうだぞシマケン!のぼせたらキャンプどころじゃなくなるんだからな!」

 

『わかってるよ。お互いにな』

 

「なでしこちゃん、そろそろ上がろか。私ら髪乾かすの、時間かかるし」

 

「そだね。じゃケン君、また後でね〜」

 

『うぃ〜』

 

パシャパシャと急ぎ足で出ていくであろう音を聞きながら、ケンはまだもう少し露天風呂を堪能する。

 

『今頃リンのやつはボッチ高原についた頃かな……』

 

遥か遠くで向かい来る寒風に耐えながらキャンプ地を目指す妹に少し罪悪感を覚えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、出てきたなシマケン」

 

「ごめん、ゆっくりしすぎた」

 

あれから10分ほど湯に浸かって出ると、ロビーで待っていた三人娘。先程出てきたところなのか、ホカホカと少し湯気が出ている。そして風呂上がりで暑いのか、少し薄着であることに気付き、少し視線をそらす。普段それほど気に留めないのだが、湯上がり美人という言葉があるように、風呂を上がった直後の女性には妙な色っぽさがあり、ケンはそれに当てられていた。

 

「どした?」

 

「いや、なんでもない。湯冷めする前に休憩所にいこうか」

 

「そやね、風邪引いてまわんうちにいこか」

 

ゆっくりと休憩所に向かう中、ふとなでしこがとあるものに気付いて足を止める。

 

「お、ここでご飯も食べれるみたいだねぃ」

 

「ほんまや〜」

 

まるで火に吸い寄せられる夏の虫の如く、何かに取り憑かれたかのように食券機に引き寄せられる四人。

 

「私、月見そば〜」

 

「あたしは月見うどん〜」

 

「俺、ほうとう〜」

 

「私は〜…………ハッ!?ここでご飯食べたらキャンプご飯食べれんくなる!!」

 

「「「ハッ!?」」」

 

あおいの一言に、妙な催眠術に掛かっていた三人は我を取り戻し、食券機にお金を入れようとした手を止める。

 

「温泉気持ちよすぎて思考停止しちゃってたよ!」

 

「せやな!温泉恐ろしいわ!!」

 

「温泉て、こんなに罠が張り巡らされているところだったとは……!くそっ!なんてこったい!」

 

ガッツリここで食べては後に差し支える。食べたい欲求をぐっと我慢し、休憩所に足を向けようとする。

 

「温玉揚げおいしいよ〜買ってって〜」

 

「「「「…………」」」」

 

「…………」

 

「温玉揚げだけ、買っていこう!」

 

「せやね!」

 

「ここは負けイベントの巣窟かよ……」

 

そして…

 

「「「「いただきま〜す」」」」

 

休憩所に戻った四人は、黄金色に揚げられた温玉揚げに齧りついた。

 

「うまっ!卵揚げただけなのになんだこれ!美味すぎるだろ!」

 

「黄身がトロトロで蕩けるぅ〜……!」

 

「あ〜!これ湯上がりに食ったらあかんやつや!」

 

「この世にはこんなウマいものが存在していたのか……!ぐ……うぅ……!」

 

「おい、なんかシマケン泣き出したぞ」

 

「あぁ……美味しいもの食べたら泣いちゃうんだってリンちゃん言ってたよ」

 

「難儀なやつだな」

 

「ほらケン君、これで涙を拭くのじゃよ」

 

見かねたなでしこがポケットティッシュでなみなみと流れ出る涙を拭う。

その時、なでしこは気付いてしまった。

 

「およ?……ケン君、髪が生乾きだよ?」

 

「や、そのうち乾くだろ?」

 

「駄目だよ?これって湯冷めのもとになるし、ちゃんと乾かさなかったら髪が傷んじゃうんだから!」

 

「うぐ……!」

 

「ほら!拭いてあげるからじっとしてて!」

 

「じ、自分で拭けるし!」

 

「遠慮せずとも良いぞ〜?」

 

もはや為されるがまま。

バッグから予備のタオルを出したなでしこは、ケンの髪をワシャワシャと拭いていく。

 

「せっかく綺麗な髪なんだから大事にしないと駄目だよ?」

 

「い、いや、男の俺が髪を大事にしてどうすんの?」

 

「あれ〜?ええんか?ケン君、将来ハゲてもても〜」

 

「ハ……!?」

 

「そうだな〜、男としたらハゲるのは辛いよな〜」

 

「嫌やったら、大人しくなでしこちゃんに拭いて貰っといたほうがええで〜」

 

「ワカリマシタ」

 

「ふっふっふっ……ようやく降伏したようだねぃ……」

 

それからケンは為すがままだった。

だが不思議と悪くない気分だ。散髪に行くと眠くなることが多いみたいに、頭を優しくマッサージされるというのは所謂リラックス効果が得られる。久しく他人に髪を拭いてもらう事がなかっただけに、その心地よさは得も知れぬもので。

タオルから漂う柔軟剤の甘い香りも相まって、次第にケンの意識は微睡みに沈んでいった。

 

「……寝てもうたな」

 

「全く、寝てる顔はマジで女子だよな〜、妙に整ってるし」

 

「なんだか可愛いねぃ」

 

パシャリと机に伏して眠るケンの寝顔を写真を撮り、リンに送信。

 

なでしこ『良い子はお昼寝の時間です!』

 

そして……

 

「なんや……ケン君が気持ち良さそうに寝とるの見たら…こっちまで眠とうなってきたわ〜……アカンわ…コレ……」

 

「そだね……ちょっとだけ、寝ちゃおっか……無理しちゃ……アカン……」

 

「だめだぞ〜……お前ら〜……ここで寝たら〜……起きて……出れ……Zzz」

 

全滅した。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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