リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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EXTRA2『キャンプデビュー』

破水したことでなでしこが分娩室へ入ることとなり、ケンも夫としてそれに付き添って入室すること半日……

分娩室前の廊下に備えられた椅子には咲と仕事終わりに駆けつけた渉、そして同じく名古屋から駆けつけたリンが座り、未だ分娩室から出てこない二人を待っていた。

こうして家族の出産を待つ立場と言うのは三人とも初めてなので、やはり不安そうな表情を浮かべ、ゆっくり、ただゆっくり過ぎていく時間をもどかしく、一分一秒が恐ろしく長く感じる。

途中、交代で仮眠を取りながら待つ最中……

分娩室内ではなでしこが歯を食いしばり、下腹部からの痛みに必死になって耐え続けていた。額に汗を、目尻に涙を浮かべ、声にならない声を出しながら、出産の痛みにひたすら耐え続ける。

ケンもケンで、愛する妻が痛みに耐えるのを見守ることしか出来ないもどかしさに耐えながら、必死に手を握ってなでしこを励まし続けた。

永遠とも思える時間

だがこれを乗り越えた先にある幸せを信じて、なでしこは耐え難い痛みを耐えていく。

そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかの双子かよ……」

 

出産後、病室に戻り、家族との対面となったリンの開口一番はこれだった。その表情には呆れながらも、自分達と同じ双子であることにどこか嬉しそうな笑顔を浮かべる。

 

「それで、どっちがお姉ちゃんかお兄ちゃんなの?」

 

「えっとね?女の子が先に生まれたみたいだからお姉ちゃんになるみたいだよ?」

 

(ヨシッ!)

 

何故か心でガッツポーズが浮かんだリン。

そして改めて見下ろす双子の顔をマジマジと見るリン。

確かに双子。だけどほんの少し、ごくわずかながらも微妙な差異があるのがわかる。

 

「お姉ちゃんは目元が少しつり上がってて、ケン君似だねぃ」

 

「弟の目元はなでしこと似てすこし垂れてる感じだな」

 

互いの特徴を受け継いで生まれてきてくれた双子の顔を覗き込みながら、両親であるケンとなでしこは愛おし気に微笑む。長い月日を経て結婚して生まれた子供。ここ一年で怒涛の環境変化だったが、そんな日々も新鮮で楽しくて。そして愛おしい子供が生まれたことでその変化はより顕著なものへと変わりゆくだろう。

 

「ところでさ、お兄ちゃん、名前はどうするの?」

 

「確か、なでしこちゃんから一任されてたのよね?」

 

「これは責任重大だね?ケン」

 

何やら期待を孕んだ目でケンを見つめる両親とリン。

 

「私もすごく楽しみにしてたんだよぅ。どんな名前なんだろうって!」

 

なでしこはなでしこで、目をキラキラさせて見つめてくる始末。

ここまで期待されていたともなれば若干プレッシャーを感じざるを得ないケン。

だが、任されてから暇があれば考えてきた名前。男の子でも女の子でも、どちらでも良いように考えてきたのが、まさかどちらも役立とうとは思いもしなかったが。

 

「え、え〜……では。僭越ながら……」

 

皆の視線が集まる中、気恥ずかしさを紛らわせるように咳払いを一つ。

大切な子供の大切な名前。

子供達に贈る、父として与えられた最初の仕事。

 

「命名……俺となでしこ……二人の子供の名は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十年後のとある秋の土曜日の朝

家の中でドタドタと走り回る音と、子供のはしゃぐ声が響いていた。

 

「キャンプ!キャンプ!」

 

そう言ってはしゃぐのは小学生くらいの男の子だ。ファミリーテントを抱えて家の廊下を走り回り、はしゃぎ回っている。

 

「こらこらレン、そろそろテントも車に積んで準備しないとだから、父さんに渡しなさい」

 

「は〜い」

 

レンと呼ばれた少年が、見かねた父親が窘めながらもテントを返却させる。今日は子供達がキャンプデビューする日。その為に大人数が入れるよう、大き目のファミリーテントを購入したのだ。そのお値段もそこそこ張っただけに、万が一落として壊しでもしたらとんでもない痛手だ。

 

「ほら、ランも荷物積み込み、手伝ってこよっか?」

 

「う、うん……」

 

はしゃぎ回っている自信とそっくりの弟を怖ず怖ず見守っていた女の子、ラン。母親がその背を押し、今日の準備に取り掛からせる。

 

「今日はオバちゃんもくるからな、楽しみにして……」

 

「父さん父さん、オバちゃんって呼んだら、『コンドマタオバチャンテヨンデミロ、ワタシァクサマヲムッコロス』ってすごい顔で言ってたから、やめといたほうがいいよ」

 

「お、おう」

 

妹よ。お前は我が子達に何を吹き込んでるのか?悪影響がないならそれでいいけど。

 

「父さん!言われてた荷物これで積み終わったけど、大丈夫?」

 

「おう!流石だな!手際が良い!父さんとして鼻が高いぞ〜?」

 

手伝ってくれた二人の子供に、満面の笑みでグリグリと頭を撫でる。二人共こそばゆそうにしながらも、褒められるのはやはり内心嬉しそうだ。

 

「それじゃ、お義父さんお義母さん!行ってきますね!」

 

「あぁ。四人とも楽しんでくるんだよ」

 

「ちゃんと暖かくして寝ないと駄目よ?」

 

「わかってま〜す」

 

縁側でゆっくりと日向ぼっこをする初老の夫婦を背に、四人とキャンプ道具を積んだワゴン車が、ゆっくりと発進していく。

心地よい秋晴れの下、幼い二人の子供のキャンプデビューが始まろうとしていた。

 

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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