リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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十四話に、今回の話につながるおまけを追加しました


『ケンのちょっとした黒歴史』

とある冬の日の双子

 

「すっげ〜!スマホの地図で3Dマップ見れるんだ!」

 

台所で夕飯を準備するなでしこと咲。その後ろではこたつに入ったレンがなでしこのスマホを触り、マップを開いて色んなところを見て回っていた。まだスマホを持たせるには早い、と言う両親の方針のもと、最低でも中学に上がるまではお預けになっており、持たぬ者からの物珍しさと言うもので夢中になって見ている。

 

「レン、宿題まだ途中……」

 

「いいじゃん姉ちゃん、減るもんじゃなし」

 

「電池は減ってるよ」

 

隣で同じく宿題をこなしているランが苦い顔をして苦言を呈する。ランもランでスマホには興味がないわけではないのでウズウズしているが、そこは長女。ランはお姉ちゃんだから我慢できたけど、妹だったら我慢できなかった。

 

「お!このあたりも写ってる!」

 

「そうね〜。確か二十年くらい前に対応になってたのよ。リンがレンと同じように見てたわね」

 

「へぇ〜」

 

ぽちぽちと宿題そっちのけでスマホをスワイプさせて、ご近所を見て回るレン。知っているはずの道なのに、何だか冒険しているみたいでワクワクするようだ。

あっちの道、こっちの道と進み行く内、時折近所の人が写ってたりして。

 

「ねぇ、これってどうやって撮影してるの?」

 

「私は見たことないけど、時々屋根に周りを撮影できる特殊なカメラを付けた車が走ってて、それで撮ってるらしいわよ?」

 

「屋根に特殊なカメラ……?」

 

なにか思い当たることがあるのか、なでしこが料理の手を止め、顎に手を当てて思い出そうとする。しかし喉のあたりまで出て来ているのに思い出しきれないもどかしさが、彼女をうんうんと唸らせる。

 

「あ、これって撮影年代別に写真が変更できるって!」

 

「どういうこと?」

 

「もしかしたら、写真を更新する毎に過去の物も保存して、いつでも見られるようにしてるのかしらね?」

 

「すげ〜!だったらサムライのいた時代も……」

 

「ないよ、そんなの……」

 

「はぁ〜〜〜〜(クソデカため息)姉ちゃん、夢って言葉調べてきたほうがいいよ?何事も夢と想像があふれる方が楽しいし、ワクワクするんだ」

 

「現実的なのも大事だよ?夢と現実がかけ離れてたら、ただ虚しいだけなんだから」

 

おおよそ二桁になったばかりの年齢なのか?と疑わしいまでに、ランの脳内は醒めている……と言うよりも冷静すぎる。

 

「……なでしこちゃん、ホントにランちゃんて十歳なの?」

 

「あはは……もしかしたら私達よりも現実を見据えて生活してるかもですね〜」

 

祖母としても母親としても、もう少し年相応に子供っぽさと言うか、無鉄砲なくらいが丁度いいのではないか?と言うのはお門違いか。これもランがランであるが所以なのだろうが。

 

「……まぁ気を取り直して……これ使ったらその年の風景が見られるってことなのかな?」

 

「多分そうだと思う」

 

「よ〜し……じゃあまずは、一番最初の二十年前!」

 

ポチポチとタップして二十年の写真を映し出せば、今とは打って変わって少しばかり昔の建物がぐるぐるマップに映し出される。

見知った場所でも時代が違えば店になってたり、逆に潰れてたり。

家が建っていたところが空き地だったり、道が広いはずが車一台通るのがやっとな程狭かったり。

同じ場所でも今とでは随分様変わりしている。

 

「へぇ〜……この場所、こんな店あったんだ」

 

「あ、学校の帰りにここの自販機でよくジュース飼ってたんだよね〜、懐かしいなぁ……」

 

思いの外、青春時代な風景というものは何物にも代えがたいらしく、料理が一段落したなでしこはレンとともにスマホ画像に夢中になっている。

ランはランで宿題を終えたことで勉強道具を片付け、混じって画像閲覧に夢中になっている。

 

「えっと、それでこの道を行ったら本栖高校で……あ……」

 

更に道を進んだところでとある物が映り込み、なでしこの顔がぴしりと固まる。

そんな母親の珍妙な顔に、咲を含めて子供達は首を傾げ、地図画像に視線を向ける。

そこには人が写っていた。

道行く撮影用の車両が珍しいのか、道を横断途中にスマホカメラを構え、こちらを撮影している。

まぁ確かに気持ちはわからんでもないだろう。物珍しいし。

だがその人物は4人にとって見覚えある人物だった。

その身にまとうは本栖高校の冬服。

そして特徴的な桃色の長い髪。

今でこそそこまで長くはなく、ミディアムな長さだが、写真の少女は一緒にスマホを覗き込む母親にそっくりだった。

 

「これって……」

 

「母さん……?」

 

「う……そう、みたい」

 

なでしこは思い出した。

あの日は高校一年の期末テスト。そのテスト前ということで部活は休み、家に帰るところだった。

だが、その帰り道は誘惑に次ぐ誘惑。

道中で目に飛び込むのは

ニワトリ、

ネコ、

ワンコ

そして軽トラワンコ(つなよし)

テス勉など頭から抜けてしまったなでしこは、夢中であたりを散策しながら駅への道を歩いていた。

そしてその途中に、奴はいた。

 

普通の車かと思った。

 

だがそのルーフからは珍妙な何かがニョキッと一本生えている。形を言い例えるなら、◯ュッパ◯ャプス的な。そんな珍しい車を見てしまっては……

 

『写真!撮らずにはいられないッ!』

 

てなわけでパシャリと写真に収めたなでしこだったが……

カメラを捉える時、カメラもまたこちらを捉えていたのだと言うことで、こうして見事にぐるぐるマップに収められたなでしこだった。

 

「へ〜……母さん、今より髪伸ばしてたんだ?」

 

「制服姿……可愛い……」

 

「そ、そうかな〜?えへへ……」

 

やはり褒められては満更でもないらしく、ゆるゆるな顔で照れるなでしこ。

よもやこんなところで若い時の姿を暴露されるとは……

 

「あ、これってリン姉さんかな?」

 

「ん〜?どれどれ〜?」

 

そして更に場所は移り、バイクを停めて自販機でコーヒーを飲んでいる青い短髪で女顔の男子制服を着た人物が映り込んでいた。撮影車両に気づいたのか、これもカメラ目線。

 

「美人さんだけど……着てるの男の人の服だよね?」

 

「えっとね?この人は〜」

 

「ただいま〜。いや〜、寒い寒い……」

 

「おかえりお父さん」

 

「「おかえり〜」」

 

「おかえり、ケン」

 

そんな会話を遮るかのように帰ってきたのは、仕事上がりのケンだった。寒いと宣う証拠に、肩には白いなにかが付着しており、ややあってスッと溶けて消えてしまった。

 

「雪、降ってるんだ?」

 

「あぁ、身延に入ったあたりからチラホラな。もしかしたら積もるかもな……」

 

「「雪!?」」

 

雪も言う言葉に強く反応する子供達。物珍しさからか、先程までに夢中だったタブレットを机に置くと、ドタドタと駆けて外へと飛び出していく二人。

やれやれ、さっきまでぐるぐるマップに夢中だったのに、と少し呆れ顔のなでしこと咲。

 

「やれやれ、元気だねぇ……お?ぐるぐるマップ見てんの?」

 

「あっ!それなんだけど……」

 

タブレットを手に取り、写っていた写真を見て表情が固まるケン。

 

「俺の若い頃を見てたのかよ……」

 

「ランいわく、男子制服を着た美人さんだって」

 

「……俺ってバレた?」

 

「バレそうなとこでアンタが帰ってきたから、まぁセーフかしら?」

 

子供達にバレたくない、若き日の女顔。今でこそ年を取ってそれなりに男としての貫禄が出てきただけに、それだけは避けたいケンの切なる願いだったり。

何気ない会話や日常から、思わぬところで秘密というものは暴露される可能性があるという、そんな日常の一コマだった。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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