リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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アンケートの兄妹ほのぼの編です!


『ととのい兄妹』

リン『家に帰ったらスクーターが三輪になっていた件について』

 

何故か野クルメンバーのグループメッセージにスレを立てたかのようなメッセージを送ってきたリンに、バイトや余暇を楽しむメンバーが何事かと目をまるくした。

 

ケン『つまり……どういうことだってばよ?』

 

リン【写真】

 

ケン『お、トリシティじゃん』

 

なでしこ『おおぉ!前輪が2本でなんかオシャレ!』

 

千明『なんだかでっかい三輪車だな』

 

ケン『千明よ。その発言は全国のトリシティライダーを敵に回したと言っても過言ではないぞ……!』

 

千明『なんだよ、大袈裟な〜』

 

ケン『トリシティはな、車輪が増えたことでより安定した走行ができる画期的なスクーターなんだぞ!リーンする際にもその特徴的なフロント二輪によって狙ったラインをトレースしやすくしてあるし、設置面が増えたことで転倒の危険性も低い!さらには……』

 

あおい『なんや偉い饒舌になっとるがな』

 

恵那『ケンにバイク関係の話をさせるとこうなるのかな〜』

 

リン『原付でキャンプ行く予定だったのに……ど畜生』

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかくだから、あれで行ってみたらどうだい?この前小型二輪免許取ってたよね?」

 

ビーノを点検に出した代車があのトリシティであると、家で仕事をしていた渉から説明を受けたリン。だが、愛車でキャンプに洒落込みたかった彼女は納得行かない様子だ。

 

「タイヤ3つ付いてるけど、二輪の免許で乗れるの?」

 

「その辺説明は難しいけど大丈夫。125ccだからリンの免許でも運転出来るよ」

 

「ふむ、三輪バイクでキャンプか……」

 

「あれなら、法定速度まで出しても問題ないからね。何ならケンと走りに行っても楽しいかもしれないよ」

 

「ほほう?」

 

自身の発言に目を光らせる娘。

これは失言だっただろうかと少し後悔するとともに、おそらくは矛先が向くであろうケンに内心で合掌する父親がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うことで、お兄ちゃん。週末ツーリングキャンプ行くぞ」

 

「ちょっと待て、話が見えないんだが?」

 

バイトを終えて帰ってきたケンが玄関をくぐるやいなや、早速リンが怒涛の勢いで迫った。その表情たるや圧が感じられる程である。

 

「ビーノの代車でキャンプを行かないか勧めたんだよ。あれなら法定速度出せるからね」

 

「それはわかるけど……なんで俺もキャンプ?」

 

「だって……高1のお正月から2人でキャンプしてないし。せっかく法定速度出せるバイクがある今なんだから、一緒に少し遠くへ行きたいって思っただけだし」

 

つまり、トリシティに乗って一緒に遠出キャンプしたい。ということである。

まぁ確かにリンの言うように兄妹キャンプを長らくしていないのも確かだ。丁度今週末は休み。予定もツーリングくらいしか考えてなかったら丁度いいだろう。

 

「わかったわかった。じゃ、少し遠くへ足伸ばしてみますか!」

 

「うん!良いキャンプ場ピックアップしとくから!」

 

「うむ、任せたぞ!」

 

かくして志摩兄妹の週末は、ちょっと遠出キャンプに決定したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケン『というわけで、週末は兄妹キャンプとなったわけだ』

 

あおい『えぇな〜、兄妹でキャンプ』

 

千明『一人行こうとする妹を偲び、共に極寒キャンプ場へ……泣かせる話じゃあねぇか……!』

 

なでしこ『いいな〜バイクでキャンプ〜。私もバイト休みなら一緒に行きたいんだけど……』

 

あおい『なでしこちゃん、兄妹水入らずのキャンプやから。今回はケン君をリンちゃんにレンタルさせたげよ?』

 

なでしこ『(´・ω・`)』

 

ケン『待て待て、人をT○UTAYADVDみたいに言うなや。あとなでしこも落ち込むなって!休みが合ったら一緒に行こう!な?』

 

千明『甘いやつだぜ、全く』

 

恵那『そういえば、キャンプ場までに温泉寄るの?』

 

ケン『うむ、鉄板だな』

 

恵那『温泉行くついでに、どうせならサウナって来なよ!』

 

ケン『サウナる?』

 

恵那『うん、冬は温泉も良いんだけどサウナも良いんだよね〜。

サウナ!

水風呂!

外気浴!

って繰り返してると、その内ディープリラックス状態を迎えて』

 

ととのった〜!!

 

恵那『ってなるんだよ〜』

 

リン『ほ〜ん』

 

ケン『ディープリラックス……!なんと魅惑的な言葉なんだ……!』

 

恵那『ま、ものは試しなんだし、気が向いたらやってみたら良いよ?サウナに入ると疲れも取れてぐっすり眠れるし、ご飯も進むよ〜?』

 

リン『ほ〜ん』

 

ケン・なでしこ『ご飯!?』

 

ご飯が進む。

その言葉に食いしん坊二人が食い付いた。

 

なでしこ『ケン君!』

 

ケン『おうとも!サウナってご飯が旨かったか検証してくるんだな!?マカセトケ!』

 

なでしこ『よろしく!』

 

あおい『全て言わんでもわかっとる……』

 

千明『熟年夫婦みてぇだな……』

 

リン『ま、確証はないけど、私も頭の隅に入れとくよ、サウナ』

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うことで土曜日

天候は快晴

風も少なく絶好の秋晴れキャンプだった。

 

『125ccスクーター、めっちゃ速っ!』

 

家を出て52号線に合流。本格的に主要道路に入ったリンは、原付とは違うトリシティの魅力に感動していた。

 

『車の流れに楽々乗れるし、渋滞の時も楽だし!なんだコレ!?スゲー!!』

 

「いつになく饒舌だなオイ」

 

2人で法定速度で走る、というのが初めてなので、リンが先を走り、ケンが後追いする形で走行している。30キロから大きく増した速度で戸惑うかと思いきや何の事か。寧ろ感動すらしているのだ。今まで横から抜かしていた乗用車と同じ流れで走れ、妙な敗北感すらない。これが法定速度なのかと、新しい世界の扉すら開けていそうなほど。

何よりも、

 

(お兄ちゃんに気を遣わせずに一緒に走れるっ!)

 

今までケンに原付速度に合わせて走らせていたことが何処と無く気掛りだった。

だが今は違う。2人で出せる範囲の速度でこうやって走れることが何よりも楽しい。

気の昂ぶるままに走り続けていたリンだが、

 

『寒っ!!調子に乗って飛ばしてたら寒くなってきた……!』

 

「ま、そうなるわな。速度が上がった分、走行風も強くなるんだし」

 

『くそぅ……』

 

スクリーンがデフォで付いているとはいえ、その効果にも限りがある。

原付の走行風に慣れていたリンにとって、法定速度のそれはより強烈で、あっという間に身体を冷やしていく。

 

「後少しで目的の温泉なんだし、気張っていこうぜ。なんなら速度を落としても……」

 

『いや!このまま行く!一刻も早く温泉に入るんだ!』

 

「そ、そう……無理はすんなよ……?」

 

インカム越しと、前を走るトリシティから『スゴ味』を感じたケンは彼女の意思に逆らうことはできず、最早見守りながら後ろを走る以外できなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「寒さで顔固まった……」

 

「無理し過ぎだって」

 

「でもこれも最高の温泉への布石っ!マッチポンプマッチポンプ!」

 

「マッチポンプにどんだけ執念燃やしてんだよ……」

 

第一目的地である北杜市の温泉『長寿の湯』に到着した2人。あの速度による寒さに慣れていなかったリンは、物の見事に寒さで冷えていた。

だが身体が冷えた分、温泉は気持ちよく入れるんや〜!というのがリンの理論らしい。

何にせよ身体が冷えている、というのはケンも同じであり、荷物から入浴セットを取り出すと、リンとやや急ぎ足で温泉の受付へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……サウナか」

 

身体を洗い、湯船に浸かってジンワリゆっくり身体を温めていると、ふと視界の端に見るからに中が暑そうな部屋を見つける。

恵那の言う『ととのい』による『食欲増進』。なでしこが興味を持っているだけに検証して見るのもまた良いだろう。

 

「……うわ……」

 

扉を開ければ自身の身体に吹きかかる熱気。ムワッとして、そして喉が燻される感覚。ここまでの暑さは未経験だ。

 

「兄ちゃん、入るならさっさと入って閉めなきゃ駄目だよ。冷えてしまうからね」

 

「あ、はい。すいません」

 

先に入っていた太り目の中年の男性に注意され、いそいそと中に入って扉を閉める。身体全体がサウナの中に入り、また、扉を閉めたことによって、その熱気は更に強く感じられる。

身体が蒸されるような感覚を覚えながら、適当に空いている席に座って時計を見る。

 

(恵那は5分くらいが目安って言ってたな……)

 

ただじっと、暑さに耐え、息すらも躊躇われる環境。

 

「兄ちゃん、どこから来たんだい?」

 

「ふぇっ!?あぁ、えっと、身延からです」

 

突然、先程注意していた男性が尋ねてきたことで、ケンは思わず声が裏返ってしまった。

見れば男性は中々長い時間サウナに入っているのか滝のような汗を流しており、その見事にツルツルの頭からも汗がたらりと流れてきている。辛いのだろうかと思えば、ニコニコとしており、全く堪えていない様子だ。

 

「身延から!?また遠いとこまで来たね!高校生……みたいだからバイクかい?」

 

「そ、そうですけど」

 

「バイクはいいよね!春や秋、夏も捨てがたいけど、冬は別格だ!凍結が天敵だけど、肌を刺す風、澄んだ空気に透き通った景色。冬が一番のバイクシーズンだと思うんだよ!」

 

「は、はぁ……」

 

「私もね、甲府でバイク関係の仕事をしていてね。走るのも弄るのもバイクの魅力だと考えていてね!自分が整備した相棒で寒い空の下を走り、冷えた身体を温泉やサウナで温める!これが堪らなく楽しいんだ!弄るのが好きすぎて、自分の仕事が終わったら整備の仕事に手を出すくらいで……」

 

ものすごい饒舌にバイクについて語ってきた。しかも少しずつ迫ってきている。

 

「兄ちゃんもゆくゆくは大型を?」

 

「え、えぇ。まぁ……今の中型を乗り潰すくらいに乗ってから、ですけど」

 

「いい心掛けだ。愛着を持って乗っていれば、きっと長く長く一緒に走れるだろうとも!今の相棒を大切にしなさい。先達として、それが一番のアドバイスだ」

 

「はいっ」

 

「ま、もしも新しい相棒が必要になる時が来たら、甲府に○ズキのいい店があるからね。ネットで調べれば直ぐに出てくるから訪ねると良い」

 

そう言うだけ言って営業も欠かさない男性は、少し出た腹を揺らして立ち上がると、時間だからかサウナ室を出ていってしまった。

 

「なんか、濃い人だったな……」

 

バイクショップの店員さんなのだろうか?

何だかあの人とはまた会えそうな、そんな気がしなくもないケンも、時間が来ていたのでサウナ室を後にした。

とんでもない汗をかいていた事に気づかないほど男性の話に聞き入っていたらしい。

サウナ室を出た瞬間、浴場の少し温かな空気ですら冷たく感じるほどに温まった身体から出る汗をシャワーで流し、次はいよいよ水風呂だ。

 

『「アヒィィィィ!?」』

 

……水風呂に浸かった瞬間、何故かケンの声と誰かの声が二重奏となって浴場に木霊した。

 

『ここの水風呂、冷たいでしょ?井戸の水浸かってるのよ』

 

そ、そそそそうなんですね〜……

 

リンのようである。どうやら彼女も恵那の勧めに乗ってサウナろうとしたらしく、奇しくも同じタイミングで水風呂に入ったらしい。

それはそれとして冷たい!

井戸の水を引いているからかというのはわからないが、それでも冷たい。

ガチガチと水風呂で震えていると、慣れてきたのか身体の表面が少しだけ、ほんのりとジンワリ暖かくなってくる。

そろそろのタイミングかと思い、水風呂を後にしたケンは、水分補給を終えて外へと踏み出す。温かな日差しと少しひんやりと感じる空気。ベンチに座り、じんわりと身体が日で照らされる感覚に身を委ねる。

ある程度リラックスしたら再び

 

サウナ

 

水風呂

 

外気浴

 

サウナ

 

水風呂

 

外気浴

 

繰り返すこと3セット。

外気浴でまったりしていた彼の身体に異変が!!

 

(なんだ……これ……頭がフワ〜っとして……身体も妙な浮遊感があって……身体の奥から何か…………)

 

グゥゥゥ!!

 

(腹が

減った!!)

 

 

……

 

………

 

(よし!飯にしよう!)

 

妙な心地よさを残したまま最後にかけ湯でさっぱりさせると、急ぎ身体を拭いて外に出る。リンは先に上がっただろうか?と休憩室を覗けば、妙にリラックスして寛いでいる妹の姿が。

 

「ほげ〜……」

 

「見事にだらけてんな……お〜いリン!戻ってこ〜い」

 

「お兄ちゃん……お腹空いた……」

 

グゥゥゥ!!

 

どうやらリンもサウナを経て空腹が襲ってきたらしい。

何とかリンを起こしてバイクへと戻り、心地よい感覚そのままに走らせてしばらく。

お食事処『高倉』

たかくら、と聞いて少しだけ掛川のお茶屋さんを思い出させる。

 

「お待ち遠様!」

 

「「どうも」」

 

「今日のお昼はさっぱり天ぷら定食」

 

「俺もさっぱりとんかつ定食」

 

「………おいまじか。とんかつをさっぱりって言うのか?」

 

「空腹には抗えんのじゃよ、リンちゃん」

 

「おいなでしこのモノマネすんな」

 

などとバカやっていたら、腹の虫が催促してきた。はよ食えや!との事らしく。

 

「「いただきます」」

 

パクリ、と一口齧れば……

 

「「んんっ!?」」

 

2人に電流走る。

いつもと違う感覚。

一口目からヤバい。

口に頬張り、飲み込む。美味い!しかも食べ進めるごとにその美味さが再認識され、箸が止まらない。一心不乱に定食を食べ進める2人。

美味い!

美味すぎる!

最高だ!

もっと食わせろ!

そしてあっという間に……

 

「「ごちそうさまでした」」

 

いつも以上にがっついてしまった2人。これもサウナで『ととのった』恩恵なのだろうか?

なでしこもかくやと言わんばかりの食べっぷりに自身でも驚く2人。

サウナ……恐るべし!

 

「リン、ちょっとじっとしてな」

 

という言葉とともに、にゅっと伸びてくるケンの手。何事かとじっとしていたら、自身の頬をそっと撫でて手を引っ込めていく。くすぐったい感覚の後、その指にはご飯粒が1つ。それをパクリと彼は口に入れる。

 

「な、ななな……!」

 

「俺もだけど、がっついて食べ過ぎだろ。気付かなかったのか?」

 

「む、むぅ……!」

 

兄妹とはいえ、こういった行為はリンにとって恥ずかしいものらしく、徐々に顔を赤らめていく。

対してケンはというと、兄として妹に恥をかかすまいと気を遣っただけで他意はないのである。

 

「そ、そ〜ゆ〜の、私やなでしこにならともかく、他の女の子にするなよ?」

 

「え?あ、あぁ」

 

(無自覚かよ、この鈍兄は……)

 

なでしこという存在がありながらそんな事をした暁には勘違いしてくるやつも出てくるかもしれない。そうなれば二人の関係も崩れてしまうのは明白。兄と友人には幸せになって欲しいが故の釘刺しだ。

 

「そろそろ出ない?買い出しも行かなきゃだし」

 

「うむ。行きますか」

 

お食事処を後にする2人。

先をゆく兄の後ろ姿に、先程のご飯粒の件を思い出す。

変な所で女子とはフランクな兄。

なでしこと幸せになって欲しいと思っての注意だと前述したが、その実付き合い始めてからしばらくはほんのちょっと彼女に嫉妬があった。

自分だけのお兄ちゃんを取られた。

そんな思いが。

その気持ちを自覚した時、自分の嫉妬深さに自己嫌悪したリンだったが、徐々にその気持ちを受け入れ、2人の幸せのために見守ろうと気持ちを固めた。もちろん、TPOを弁えずイチャコラしないようにお目付け役も兼ねて、だが。

だけど、それでも、

 

「じゃ、晩飯の買い出しだけど、どうせならシェアできるメニューにするか」

 

「だな。色んな味を食べれたら楽しいだろうし。でもお兄ちゃん、食べれるのにしてよ?」

 

「……マカセトケ」

 

「すげー不安」

 

今は兄と2人きりのキャンプを楽しんでいこう。

ケンの前を走るリンは、何処までも晴れやかな表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「出来た!」」

 

途中の市場のようなスーパーのような店で互いに思い描いたメニューの材料を買い込んでキャンプ場へ辿り着いた2人。

受け付けを済ませ、手早く設営を終えた頃には、日は沈んで辺りは暗闇へと包まれていた。

火を熾し、各々持ってきた調理ギアを取り出して夕飯作りに取り掛かる。

奇しくも2人が取り出したのはホットサンドメーカー。

各々背を向けて、出来上がってからのお楽しみにして調理して完成と相成ったのだが……

 

「白州ベーコンと八ヶ岳の野菜のホットサンド!」

 

「八ヶ岳野菜と桃源ポークとチーズを使ったチーズダッカルビ!」

 

「チーズダッカルビ……だと……」

 

ホットサンドメーカーの半分にチーズを溶かし、もう半分におそらくはタレに漬け込んだであろう豚と野菜が暴力的なまでの音で焼かれている。

各々作り上げた料理。ホットサンドは半分ずつ。

ダッカルビはテーブルの真ん中に置いて。

送るためにパシャリと一枚写真におさめて……

 

「「いただきます!」」

 

まずはホットサンド。

まだ熱々のそれは、一口齧ればサクサクの食パンの食感の後、まだシャキシャキの歯ごたえの残り、ある程度熱されたことで生まれた野菜の甘みとベーコンの塩気が口の中に広がる。その中にほんの少し、ほどよい酸味のような味がアクセントになって、それがまた旨い。

 

「ん?この酸っぱいのって……」

 

「ピクルスだよ。漬けて持ってきたのを入れてみたんだ」

 

「いいな、これ。甘さと塩気に酸味が入って丁度いいかも!」

 

(うむ、これは大成功だな)

 

思えばカップ麺で済ましていたあの頃に比べ、ピクルスを作って地元野菜に合わせて料理するまでになるとはリンは思いもしなかった。これもなでしこの餃子鍋の影響もあるのか。

行った先の店で自分なりに考え、アレンジし、美味いものを作って食べる。きっとこれもキャンプの醍醐味なのだろう。

 

「次は……」

 

ケンの作ったチーズダッカルビ。

まずはそのまま、タレに漬けこまれた肉を。

 

「旨……っ!いいくらいの辛さに少し酸っぱい……?」

 

「ん、確かに辛みのなかに酸味があって、良いかもな」

 

次は一緒に焼かれた野菜。少し赤い白菜と豚肉を口に運ぶ。白菜を噛めば、シャキッとした歯ごたえと共に広がる酸味と辛味。そう、これは……

 

「キムチ?」

 

「ご明察、タレに漬け込んだ時に一緒に入れたんだ」

 

確かに韓国料理であるダッカルビとキムチ。辛さを全面に出す2つが合うのは納得だった。

 

「あとは焼き肉のタレと、売ってあったスパイスをあれこれってな」

 

「なるほど……それで何処と無く馴染み深い味なんだ」

 

そして次は肉をトロトロに溶けたチーズに付けて……

 

(……うまっ!!)

 

先程まで主張していた辛味と酸味をチーズが優しく包み込み、そのこってりとした味わいで旨味を更に引き立ててくれる。

チーズの影響もあってか、あっという間に具材を食べ終えてしまった2人。

 

「滅茶苦茶美味しかった」

 

「おっとリンさんや。まだダッカルビのバトルフェイズは終了してないぜ?」

 

「なん……だと……」

 

「この残ったチーズとタレを使ったシメご飯が残ってるんや!」

 

予め湯煎しといたインスタントのご飯をタレが残るホットサンドメーカーに投入。ある程度炒めたら、少しカリカリになったチーズと、溶き卵、刻み海苔、ごま油を入れ、軽く火を通したら……

 

「シメの焼き飯の完成!」

 

「お、おぉぉ……!」

 

もはや説明不要。

二人のお腹は大満足の夕飯となった。

 

 

 

 

 

 

 

腹を満たし、軽く食器を片付け、二人はチェアで並んで座っていた。

焚き火を、そして時折空の星を眺め、静かで、2人だけのチルタイムがゆっくりと流れる。

ブランケットに身を包み、焚き火にあたり、火が爆ぜる音だけが耳に入る。

 

「ととのった」

 

「ん?」

 

ふと静寂を破るように言葉を口にしたのはリンだった。

 

「キャンプご飯食べて、こうして静かにゆっくりしてると、私なりのととのいになるなって」

 

「そっか。ととのい方の方法や形は人それぞれなのかもな」

 

「ん。だからこっちのととのいには馴染みがあるんだよな。ソロキャンだと特にさ」

 

キャンプを続けているからこその楽しみ方、ととのい方は彼女なりにあって。

こうして静かに過ごす時間は彼女にとってのととのいへの道なのだろう。

 

「でも」

 

そんな言葉の後、ケンの肩に少しだけ重みが加わる。

 

「こういうととのいも、私は良いなって思う」

 

「ん、眠いのか?」

 

「じゃなくて……少しこうしてたいだけ」

 

その重みは、リンがケンの肩に頭を乗せ、少し体重を預けてきていた。

その表情はとても穏やかで、ととのっている、と言わんばかりにリラックスしているのがありありとわかる。

 

(なでしこには悪いけど……)

 

リンは今日のキャンプに行きたがっていた友人を思い出す。

兄の恋人で、自分の大切な友達。

そんな彼女に少しだけ後ろめたさを感じながら。

 

(今日だけは、私だけのお兄ちゃんだから)

 

兄妹水入らずの静かな空間。

今夜は、今夜だけはこうして甘えていたい。

生まれた日から共に育った双子の夜は、ゆっくりと、ただただ静寂の中で更けていった。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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