リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
後半イチャイチャ
一話でニ度美味しい?
ニ年のとある夏休みの日。
その日、なでしこはケンの部屋へ遊びに来ていた。今日は互いにバイトが休みで、特に予定もなかったために『彼氏宅デート』となったのだ。テーブルの上にはポテチやポッキーといったお菓子、カルピスなどのジュースが設置。そして部屋は冷房で快適な室温。外が猛暑だっただけに、部屋についたなでしこはオアシスにやってきたかと言わんばかりに溶けていた。
「さてなでしこさんや」
「なぁに〜?」
机に伏せてまったりしているなでしこに、テレビ周辺の配線をイジりながらケンは尋ねる。
「なでしこは自分の弱点を克服できる機会があったら挑戦したいって思う?」
「そだね〜、出来るなら弱点は無くしたいって思うけど……それがどうかしたの?」
「言質取ったり」
そしてテレビと、一昔前に流行ったリモコンを使う白いゲーム機を起動していくケン。
そのコントローラーたるリモコン一個をなでしこに手渡し、ニコニコ顔だ。
「じゃ、克服しちゃおうか?ゲームで♡」
「はぇ?」
そしてテレビに映されるのは、ヘリが落ちることで有名な会社。そのリモコンシューティングゲームだ。『生物災害 傘編年史』を英訳したそれは、迫りくる『アレ』をドンパチして生き延びるもの。
流石にシリーズタイトルを知るなでしこは目を丸くしたまま表情が固まり、フリーズしてしまう。
「ほい、二人プレイっと」
唖然とするなでしこを他所にリモコンのスイッチを入れて参加人数を設定し、先ずは最初のステージである洋館を選択する。
なでしこの弱点克服……つまりお化け嫌いをなんとかしようとしたのだ。
オープニングが流れ、音信不通の仲間の捜索に来ていた特殊部隊の隊員が犬のエサになったところから始まり、すでになでしこは涙目。
そして逃げ込んだ舞台である洋館へ黹辿り着き、探索が始まる。
食堂を抜け、その先でナニかを齧る人のカタチをしたそれは……まさしく死者が蘇ったと言うにふさわしいもの。
「っ〜〜〜!?!?」
操作パートへ移り、迫りくるそいつを見て、更に悲鳴を上げてリモコンを画面に向けてハンドガンを乱射するなでしこ。
しっかり狙いを頭に向けて撃たなければ数発打ち込まないと倒れない。すぐにマガジンが空になり、パニクるなでしこを他所に、ケンは冷静にヘッドショットを決めて敵は沈黙する。
「怖いのはわかるけど、ちゃんと見て撃てば大丈夫だよ?あと、弾がなくなったらリモコンを強く振れば装填されるからさ」
「う、ウン」
涙目ながらすこし強くリモコンを振れば、ガチャンと言う音と共に装填される新しいマガジン。メインウェポンたるハンドガンはリロードさえすれば無制限のマガジンなので安心設定。
そして通路を抜けて数体のゾンビがやってくる。
「ひぃっ!?」
再び涙目になりながらもちゃんと狙いを定めて撃っていくなでしこ。流石にヘッドショットまではいかないが、しっかりと画面を見て撃っているだけ大きな一歩だ。
撃ち漏らしをケンがフォローしながら進み、廊下に差し掛かってワンコゾンビを排除。その道中でなでしこは気になったことがあり、ケンに尋ねる。
「ケン君、この十字ボタン?って何なの?」
「これは武器切り替え。今装備してるのはアサルトショットガンやマシンガン、グレネードランチャーかな?順にそれぞれ近距離で広範囲を薙ぎ払ったり、弾数で弾幕張ったり、爆発で吹き飛ばしたり……って役回りがあるんだ」
「へぇ〜……」
そしてなでしこが少しずつ慣れてきたのかヘッドショットを出し始めた時、巨大な蛇のボスとの戦いとなる。
「ひぃぃ!!蛇だよぅ!大っきい蛇ぃ!!」
「落ち着けなでしこ!こいつは攻撃前に口を開くから、ショットガンに切り替えて打ち込めば攻撃を防げるし、ダメージも大きい!」
「しょ、ショットガン……!」
十字キーを操作し、切り替えられたことを確認したなでしこ。その矢先、目の前で蛇がその巨大なアギトを思い切り広げ、噛みつかんとしていた。
「ひぃぃんっ!?」
ズドン!と今噛みつこうとした蛇の口内に、散弾がもろにヒットし、やつはその巨大な体躯を振り上げてよろける。見事に攻撃を防いだのだ。
「およよ?」
「お!なでしこ上手い!」
そして暫くして再び口を広げた所に、すかさずなでしこがショットガンを撃ち込む。その狙いはまさしく的確。その繰り返しで無傷かつ完封でボスたる蛇を討ち倒すことに成功した。
「ショットガン……なんかいいかも!」
「気に入ったならいいけど、それ、弾拾わないと切れるから、要所要所で使い所を見極めないと駄目だぞ?」
「オーキードーキー!」
その後は『我、天啓を得たり』と言わんばかりにショットガンを的確かつ有効活用し、強敵を討ち滅ぼしていくなでしこ。ハンドガンこそブレることが多いものの、ある程度レティクルを合わせる事で有効打を与えられるショットガンは、なでしこにうってつけだった。
という事で、道中ドロップしたショットガンの弾は優先的になでしこに拾わせ、ほかはケンが拾って有効活用し、あっと言う間にラスボスたる暴君を打ち倒して洋館事件をクリアしてしまった。
「や、やっとおわったぁ……」
だいぶ集中していたらしく、リモコンを机に置いてぐったりするなでしこ。途中、どっきりびっくり場面に短い悲鳴を上げつつも、投げ出さなかったのは称賛に値するだろう。
ケンの予想では、もっと泣いたり悲鳴を上げたりして、殆どゲームにならないと予想していたのだが、思いの外ホラーへの克服が早くて驚いた。
「ちょっと休憩したら、黄道特急編やるか」
「えぇっ!?まだあるの!?」
「あるぞ?まだ黄道特急編に狸街編、最後は傘企業滅亡編。あとは続編ソフトも……」
「ひぃぃん!」
「……そんなに怖かったか?」
「怖かったよぅ!ギリギリの気持ちでやってたんだから!」
「ショットガンは?」
「最高!」
「……ホント、魅力に取り憑かれたかんじだな」
「でもやっぱり怖いものは怖かったんだよ……?」
結構強引に誘ったゲームだけに、やっぱり無理してたらしい。ポフっと隣であぐらをかくケンの足を枕にして寝転ぶなでしこ。
「次はケン君が私のお願いを聞く番で〜す」
「お、おう……」
軽く髪を撫でてやれば、猫のように丸まって甘えた表情で『にゅふふ〜』と可愛らしい笑顔を浮かべる。緊張の糸が解けたのだろう、いつも以上に距離が近く感じる。
「ケン君、ポッキー食べたいな〜」
「こらこら、御行儀悪いぞ?」
「私は疲れたから動けませ〜ん」
「やれやれ」
とかなんとか言いながら一本差し出せば、ニコニコと口に咥えてポリポリと軽快な音を立てて咀嚼していく。
「にゅふふ〜」
蕩けた顔のなでしこにケンの顔も自然と綻んでしまう。やはり彼女の食べている姿には和み効果があるらしい。マイナスイオン効果でもあるのか。
食べ終わったのを見るやいなや、次のポッキーを差し出すと、またそれを嬉しそうに咥えるなでしこ。だがそれを咥えたままニコニコとしたままポリポリすること無くこちらを見つめている。
「ねぇケン君?」
「ん〜?」
「ゲームしよ?」
「お、続きする?」
「違うよ〜」
不意にムクッと起き上がると、首を傾げるケンのその足の上に彼と向かい合って座り、首に手を回してん〜っと咥えたポッキー、そのクッキー部分を差し出す。
鈍いケンも察してしまう。そっちのゲームかよ?と。
「ん〜!」
「あの、なでさんや?」
「ん〜っ!」
少しずつ顔が険しくなるなでしこ。このままではヘソを曲げてしまうのが目に見えている。
だがまぁ、ここで断る理由というものもない。
「あむ」
意を決して差し出されたポッキーを咥える。折れないように食べ進めていくのがこのゲームらしいので、目を閉じてゆっくりと齧り進めていく。クリアすれば唇と唇を触れさせ、キスになるのは明白だ。付き合って半年以上経っているし、キスも今まで何度もして居るので今更恥ずかしさはあまりないのだが、このポッキーゲームに至っては、普通とは違うドキドキというものがあって、二人の間には微妙に初心な空気が漂い始める。
ポリポリ……
ポリポリ……
そんな音が部屋に木霊し、ゆっくり目を開ければ顔を赤らめてゆっくりポッキーを食べ進めて近付いてくるなでしこの顔。
十センチ……
九センチ……
ゆっくり、ゆっくりと距離が狭まっていく。
その時が近付いてくる。
鼓動が早くなる。
時間が、やたらゆっくりに感じる中。
そして……
チュッ
唇に感じる柔らかな感触。
今まで生きている中で感じた、最も柔らかなもの。
何度も触れ合い、出来るならばずっと触れ合いたいと感じるそれは、数秒密着させ、やがてゆっくりと離れていく。
「……キス、しちゃったね」
「……だな」
「ポッキー、まだまだありますぞ……?」
「何番勝負まであるかわからんが、受けて立つよ、なでしこ」
そして暫く、ケンの部屋からは静かな中でポリポリとポッキーを齧る音だけが二重に木霊していたという。
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
-
未来の子供達のほのぼの生活
-
ケンとなでしこのいちゃいちゃ
-
お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
-
いつメンのキャンプ