リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
いや、最近筆が進む進む。気持ちがノッてると全然違いますね。
だから今日二話目行きます。
少し飛ばし気味ですが…
ついにあのお方が…!
イーストウッドキャンプ翌日の月曜日
朝 志摩家 リビング
「じゃ、行ってきます」
「気をつけてね。はいお弁当」
「ありがとう、母さん」
「お兄ちゃん、もう行くの?」
「あぁ、今日日直でな」
「じゃあこれ」
取り出したるはチョコ饅頭。先日の高ボッチキャンプの帰りに買ってきたお土産だ。
「コレクッテモイイカナ」
「ちげーよ。それ、なでしこに渡して。長野のお土産だから」
「……何で俺に渡すのさ?」
「だって同じクラスの隣の席だろ?」
「こういうのはリンが直接渡すのがスジだろ」
「え〜……」
「そのほうが嬉しいもんだよ。もらう側っていうのは」
「…………」
「じゃ、行ってくるな」
そう行ってヘルメットを掴んで足早に登校してしまった。バイクの音が去っていき、自分も少し早いけど行こうかとしたとき、咲がそういえば、と一つの包みを渡してくる。
「あなた宛に届いてたわよ。あとお弁当」
「ありがと……行ってきます」
チョコ饅頭と包みと弁当を引っ括めてカバンにしまうと、えっちらおっちら登校を開始した。
どうやって渡そうか思案しながら。
放課後 本栖高校 図書室
本来気を引き締めて勉学に励むこの場所は、ストーブがごうごうと焚かれて非常にまったりとできる魔の空間と化していた。
「リン〜、あおいが借りてたビバーク返しに来たぞ。あとついでになでしこ来てないか?」
2話で借りてたビバークを代理で返しに来たケン。オマケでリンに用事だと出て行ったきりなでしこを探しに来た。
「ケン君!いらっしゃい!……って!私がついでなんてひどいよぅ!」
「あ、いたいた。ったく、心配したんだぞ。……って、なにしてんの?」
何のことか、二人は受付で向かい合って、今朝のチョコ饅頭を食べながら駄弁っていたのだ。
中々帰ってこないと思ったら……
まぁ食欲魔神のなでしこを止めるほうが難しいか。
「ま、何とか渡せたようで良かったな」
「ん、まぁな」
「そだ!ケン君も一緒に食べよ!」
「ラスイチだけどな」
「はっ!?いつの間にそんなに減ったんだろ!?」
(ほとんどなでしこの胃袋に消えたんだけど)
手渡されたラスト一個のチョコ饅頭を齧りながら、机の上に置いてある金属製のソレが目に入る。
「何だこれ?焼き土下座執行機?」
「新しい答えだけど違ぇし」
人それをコンパクト焚き火グリルと言う。
「それでね!週末に私がリサーチしたキャンプ場で焼き肉キャンプしようってなったんだよ!」
「へぇ〜」
「……何ニヤニヤしてんだよケン」
「べっつにぃ〜?」
この前はにべもなく断ってた奴が、随分と丸くなったものだと思い、変に笑みが溢れてくる。
「そだ!ケン君も一緒に焼き肉キャンプしようよ!」
「無理。夕方バイト」
「そんなぁ〜」
「あと昼間は昼間で大事な人とデートだもんな」
「で、デート……!?」
その3文字を叩きつけられ、なでしこの顔が真っ青に染まっていく。
「言い方!ちょっとしたデイキャンプの約束してるんだ。大体相手は男だし」
「なぁんだ……よかったぁ……」
(あれ?何で私……デートって聞いてショック受けて、デートじゃないってわかって安心してるんだろ……?)
自身の心境の変化に内心首を傾げるが、その答えは見つからず。
モヤモヤとした心のままに、なでしこの月曜日は過ぎていった。
キング・クリムゾン!!!
そして三度時間は飛び、あっという間に週末。
「リンちゃん、荷物これで全部?」
「うん、あとは薪と炭」
「了解です!」
「入り切らなかったら後部座席も使ってね」
「は、はい」
「娘をよろしくお願いしますね」
「はい」
「娘さん、お借りします!」
志摩家の玄関先に横付けされた桜の愛車ラシーンのトランクに次々運び込まれる荷物。今日はなでしこプロデュースの焼き肉キャンプの日だ。
「クマに気をつけてな〜」
「出ねぇよ……多分」
咲と並んで見送るケンをなでしこは不満そうにぶーたれる。
「ケン君とも行きたかったなぁ……」
「しょうがないでしょ。ケン君もバイトなんだから」
「また一緒に行けばいいよ。それよりも今日はしっかり楽しんで、写真送ってくれ」
「わかったよぅ」
「桜さん、妹を頼みます」
「えぇ、頼まれたわ。ケン君もバイト、頑張ってね」
「はい、ありがとうございます。リンも気を付けてな」
「ん、行ってくる」
程なくして発進するラシーンを見送り、咲と共に腰に手を当て一息。なんだかんだ、あの二人が打ち解けてくれて、兄として、友人として嬉しい限りである。
「じゃ、俺もそろそろ行こうかな」
「ケンも気を付けてね。あんまり無茶したらダメよ?」
「了解っ」
ビーノの隣に駐車されたバイクを引っ張り出し、手早くプロテクター、ヘルメットを装着。発進準備もすでに慣れたものだ。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。気を付けてね。あと、たまには顔を見せるように言っておいて頂戴」
「うい〜」
ラシーンが向かった方角とは逆にバイクを走らせる。その後ろ姿を見て、
「ホント、誰の影響かしら」
と苦笑いを浮かべながら、どこか血の疼きを感じていた。
「肉、喰うかい?」
「いいん……ですか……!」
次のキャンプ予定地の下見に訪れていた千明は、その散策途中にとんでもないものを見つけた。
年季の入ったワンポールテントと大型バイク。焚き火台に木製ローチェアー。極めつけにスキットルとスキレットで焼かれた肉!余りにもダンディという言葉が当てはまりまくる組み合わせの数々に思わず目が奪われていた千明。そんな彼女に気付いたギアの持ち主である初老の男性が彼女に肉を勧めたのである。
「いただきます……!」
フォークに刺された肉を一切れ貰い、口に入れて噛みしめる。
「うんま!!」
レアに焼かれた肉に染み込んだニンニクや香草の香りと、肉本来のしっかりとした味が、口内を駆け巡る。
彼女の反応に得心したのか、男性はニヤリと口元を釣り上げた。
「シブい爺さんだったな…肉めっちゃ美味かったし……スキレット……買っちゃおっかな……?」
こうして大垣千明のナマゾン欲しい物リストに新しい商品が追加されたとかしないとか。
千明が去って数分後……
初老の男性が設営したサイトに一台の中型バイクが停車する。スタンドを下ろして降車し、ヘルメットを取る。
「よく来たな、ケン。久しぶりだ」
「うん、夏休み以来かな?久しぶり……じいちゃん」
この男性こそ、志摩兄妹母方の祖父にして、二人の趣味に影響を与えた男…新城肇その人であった。
「それがお前のバイクか。いいバイクを買ったな」
「中古だけどな。まだ全然カスタムしてないし」
「そういうのはゆっくりでいい。まずはコイツを手足にしてからでも十分遅くないからな。まずは慣れていくことが大事だよ」
「そうだね。あと母さんから、たまには顔を見せてくれって伝言」
「わかった。明日にでも少し寄らせてもらうとしようか」
そこからはゆっくりとした時間が流れていく。
スキレットで焼かれた肉を摘みながら、他愛のない話に花を咲かせていく祖父と孫の姿。
「そうか、リンは今日、友達とキャンプか」
「うん、四尾連湖のキャンプ場だって言ってたな……。なんか、コンパクト焚き火グリル買ったから、それで焼き肉するんだって」
「四尾連湖か……あそこは良いところだ。今は丁度紅葉がシーズンでキレイなところでな」
「まぁ……でも、今日は紅葉は二の次で、友達とのキャンプの方を楽しんでそうだけどな」
「キャンプの楽しみ方はそれぞれだ。リンも、友達も、全力でキャンプを楽しんできたら、それは大成功だろう」
「違いない」
「ケンはどうなんだ?キャンプ」
「学校に野外活動サークルってのがあってさ、それに入ってる。先週も皆とイーストウッドキャンプ場でキャンプしてきたところだよ」
「イーストウッドか……なら、あそこのスイーツを食ったり、ほっとけや温泉に入ってきたのか?」
「スイーツも温泉も堪能したけど……しかし相変わらず凄い引き出しだな…… 」
「伊達に年の大半をキャンプはしてないさ」
「母さんが少しは落ち着けって言ってるけど?」
「こればかりはやめられんよ」
山梨の山中のとあるキャンプ場で、
二人の男の談笑は少年のバイト時間まで話題が尽きることはなく続いていた。
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
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