リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第二話『猛獣、野クルを襲撃』

「ここが野外活動サークルの溜まり場だ」

 

放課後 

部室棟二階最奥の部屋。そこが野外活動サークルに充てがわれた部室である。ガラッと引き戸を開ければ、細長い空間に排煙窓のような窓が一つ。そしてただでさえ細長い部屋の床面積半分を占拠する棚があった。

 

「ウナギの寝床みたい」

 

「まぁ確かにそう見えるわな」

 

しかし中には誰もいない。まだ部員…もとい、同好会員が来ていないのだろう。流石に勝手に入るのは宜しくないと思ったケンが外で待ってようか、と言うより先になでしこは躊躇いなく足を踏み入れていった。

 

「やっぱりキャンプの本がいっぱいあるねぃ。カタログとか雑誌とか」

 

「そりゃシーズン外はここで本を読んだりして過ごしてるんじゃ……」

 

「おぉ!薪だ!キャンプっぽい!!」

 

「エラいはしゃぎようだな」

 

流石に一人にしておくわけにも行かず、ケン自身もウナギの寝床(違)に足を踏み入れる。

噂には聞いていたが、こうして実際に入るのは初めてで、なるほど確かに狭い。

 

「ツナ缶だ。非常食かな?」

 

「もしかしたら米と一緒に飯盒炊爨に入れるのかも」

 

「えっ?ご飯と一緒に炊くの?」

 

「割と美味いぞ?ちょっと変わった炊き込みご飯みたいな感じで、家の炊飯器でも出来る」

 

「へぇ!今度やってみよ!ツナ缶を使ったキャンプかぁ」

 

「つなキャン△だな。好評配信中だぞ」

 

あれよあれよという間に二人はウナギの寝床を物色し始める。元々は物置だったこの部屋には、本来の用途の物もチラホラ残っていたが、なんだか探検気分になってきたらしく、少年心を擽られたようだ。

 

「松ぼっくり」

 

\コンニチハ/

 

「何でこんなとこに?」

 

「多分、着火剤代わりにするんじゃないか?」

 

「松ぼっくりって、着火剤になるの?」

 

「ってリンと、じいちゃんの声をした誰かが言ってた」

 

「へぇ〜。じゃあこの黒板のキャラは?」

 

「……このサークルのイメージキャラ?」

 

黒板に描かれた、シルクハットを被り両手にマンガ肉をもったクマのような謎のキャラクターについて議論を始めたとき。

 

「ぉ」

 

ガラッと言う入口の引き戸が開く音がそれを中止させた。

そこに立っていたのは、メガネでデコが目立つ黒髪ツインテールの女子だった。

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

三者の間に妙な空気と沈黙が漂う…。

ややあって、

ピシャン!

扉を閉められた。

 

「へっ!?」

 

「チョマテヨ!」

 

しかしなぜか扉を10cmほど開け、その間からメガネを光らせて覗き込んできた。

 

「あきー!ビバークの新刊借りてきたで〜?って何してんの?」

 

「いや、怪しいやつが中に……」

 

「端から見たらアンタも十分怪しいわ」

 

追加された女子生徒のおかげで、このカオスな空間に終止符が打たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、空き巣だと思ったら違うのか」

 

4人が中に入り、床には向かい合う形でデコメガネこと大垣千明となでしこが座り、棚にはあとから来た女子…犬山あおいとケンが座る。ご丁寧になでしこと千明には座布団が敷かれていたり、ここには何でもあるのかと言う疑問すら浮かぶ。

 

「富士山を見に行って行き倒れたら、そこのシマケンの妹たるシマリンに助けられ、ラーメンまでご馳走になった、と」

 

「人を柴犬みたいに言うの、やめろや」

 

とりあえず警備員を呼ばれる事はなかった。

なでしこが言うには、キャンプに興味を持ったのには一昨日の影響が大きいらしく、部活もここにすると決めたのだとか。

 

(なるほど、リンに対する異様な恩の感じ方はそこにあったのか)

 

「夜の富士山、すごくキレイだったよぅ……!」

 

「でも来てもらって悪いんだが、ウチは今はメンバー募集してないんだよなぁ」

 

「へ……?そ、そうなんだ」

 

明らかになでしこの表情に落胆の色が見える。

みんなとワイワイキャンプが出来ると期待していただけに、その気落ちは推して知るべしと言わんばかりだ。

 

(ちょっとアキ!なんで断るんよ!)

 

(だって!ただでさえ部室狭いのが更に狭くなるだろ!)

 

(人数増えたら、部活に昇格させてもらえるかもしれへんやん!そしたら大きな部室にしてもらえるで!)

 

(……何人で昇格だっけ?)

 

(確か…4人やで。せやからこの子と、ついでに志摩くんも入れれば……!)

 

(まさにカモネギじゃねぇか!)

 

「内緒話するくらいなら、もう少し声量抑えろや」

 

何のためのひそひそ話なのか、件の二人には丸聞こえである。

 

「実は、君達のような熱意ある部員を待っていたのだよ……!」

 

「しれっと俺を入れんな」

 

「ようこそ野外活動サークル、略して野クルへ!!」

 

「話聞けよおい」

 

「まぁまぁ。志摩くんも、もうまな板の上の鯉なんやから、な?」

 

「拒否権を行使する!」

 

というか、とケンは少し真面目っぽく言葉を挟む。

 

「仮にだ。俺が野外活動サークル…野クルに入ったとしよう。まぁ部に昇格出来て大垣や犬山さんは両手を挙げて喜べるのは確かだろう」

 

「そりゃまぁそうだよな」

 

「ただここで問題が発生してくる。活動でキャンプに行くだろう?このメンツで」

 

「楽しそうだねぃ!」

 

「だがちょっと待ってほしい。想像力を働かせろ。その絵面を思い浮かべろ!」

 

年頃で、青春真っ盛りな高校一年生。女子3人の中に男が1人という状態。そんな面々が共に一夜を過ごすというシチュエーション。

 

「どう見てもアウトです、ありがとうございました。そんな訳で、俺は辞退させてもらう」

 

「え〜?私は気にしないのに?」

 

「せやね、志摩くん女の子に見えんくもないし、ギリセーフやと思うで?」

 

「だからアウトだって」

 

「気にしすぎだろ?何だったら、テント別々にすりゃぁいいじゃん」

 

「もしかして志摩くん、おんなじテントで寝る思ってたん?」

 

「ぐぬぬ…!」

 

もはや八方塞がり。嫌な予感がすると思っていたが、これのことだったのかと。さっさと退散しなかった自分を恨む。

 

「頼むシマケン!入ってくれ!体験入部でもいいんだ!なんなら先っちょ!先っちょだけでもいいから!」

 

「しれっと下ネタやめぇや。でもまぁ、志摩くん、いっぺんだけでもえぇからキャンプ行ってみて、駄目やったら抜けたらええやん、な?」

 

「ケン君!一緒にキャンプやろうよ!」

 

「ぐぬ……ぬぬぬ……!」

 

ここまで外堀を埋められて退路がなくなってしまったことを内心嘆く。ここで断ることも出来なくもないが、そうなると場の空気が悪くなる。かと言って快諾できる内容でもない。

 

「か……」

 

「「「か?」」」

 

「考えときます……」

 

「ま、それくらいの返事が妥当だろ〜な」

 

「せやなぁ、今日言われて今日返事はちょっと酷やわ」

 

「むぅ……」

 

約1名ちょっとぶーたれてるが、ここは置いておくとして。

 

「じゃ、改めて……私が大垣千明。一応野クルの部長ってことになってる」

 

「私は犬山あおい。よろしゅうな〜」

 

「各務原なでしこです!よろしくね〜!」

 

「「野クルへようこそ〜!」」

 

歓迎ムードを体で表現するため、大仰に振り上げた手や足が、互いの頬や脇腹に当たり、悶絶する二人。狭い空間が仇となった。

 

「狭い中で大層な動きするからだよ」

 

「フッ……まだまだ甘ちゃんだなぁ、シマケンよ」

 

ケンの指摘に、なんか異様にニヒルな笑みを浮かべる千明。なんか無性に腹が立つ顔だ。

 

「考えてもみろよ。あたしらは野外活動サークル!略して野クル!その名の通り!基本的に我々の活動圏は野外!部室の狭い広いなど、まさに窮屈かつ、狭い視野での意見でしかないのだよ……!」

 

「さっきまで部活昇格のために、俺と各務原を必死に引き入れようとしたやつの言うことかよ」

 

「さーて、イヌコに体験部員の諸君!今から外に集合だ!」

 

「押忍!!」

 

「なんだ……このノリ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで、

校庭へと繰り出した4人。

 

「ところで野クルって、キャンプに行く以外でどんなことしてるの?」

 

「よくぞ聞いてくれた!各務原隊員!普段は季節柄、校庭の落ち葉を集めて、落葉焚をしている」

 

「その火を使(つこ)てお湯沸かして、コーヒー作ったりしとるんよ」

 

「おぉ!なんかキャンプっぽい!私、ラーメン作りたい!」

 

「時々校庭で煙が上がってたの、お前らの仕業だったのか。用務員のおっちゃんがやってるのかと……」

 

「へへん、登山部の顧問の先生にも指導してもらってるからな。安全を期してるぜ。」

 

「ほな早速、竹箒で落ち葉を集め……て……」

 

校庭に辿り着いた面々に、無慈悲な現実が突きつけられた。

見渡すは校庭。

しかしその地面には、落ち葉という落ち葉が殆ど無いに等しい。

いや、季節柄ないことはないのだが、集めたところですぐに燃え尽きてしまうほどの量しか散見されない。

 

「落ち葉、何にもないよ?」

 

「昨日、焚き火したからな」

 

「一朝一夕でそんなに落ちるわけでもないか」

 

現実は非情である。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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