リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
「沢山買ってきたねぇ〜」
「あと千明が徒歩でもう一束運んでるから更に増えるぞ」
「それ、サイトまで運ぶから手伝ってよ」
「オーキードーキー!!」
リンとなでしこが一束、ケンが両手に一束ずつサイトへ運んでいると、見知った顔が大きなイビキをかいて寝ていた。
「鳥羽先生だ。すっごい寝てるねぇ」
「すでに酒を飲んで宴を始めてるみたいだな……展開が早い人だぜ」
「もう、こんなところで寝たら風邪引いちゃうよ?先生〜」
寒くないようにブランケットを掛けたかと思いきや、顔が寒いだろうと頭までなでしこが被せていた。息苦しいのかモガモガと悶ている。
「オバケみたいになってんじゃねぇか」
「でもこうしないと肩から上が冷えちゃうよ」
「……息苦しそうだぞ」
「せめて鼻だけでも出して差し上げろ」
「ん〜、だったら」
ブランケットを首元まで下げ、
頭になでしこの帽子を深く被せ、
その上からメガネをかける
出来上がったその姿は、妙に腹筋にじわじわくるものだった。
三人で鳥羽先生の変貌ぶりに笑っていると、リンのスマホにメッセージが。
恵那『いつまでも、ほっこりキャンプを楽しめると思うなよ?』
(斉藤……!)
シマリンに電流走る。
恵那『貴様らのいるキャンプ場に刺客を差し向けた。
パーティーは……お開きだ!!』
リン『刺客……だと……!?』
不穏な物言いのメッセージで、再びシマリンに電流走る。
「あ!あれ!」
なでしこの声に二人は視線を移す。
芝生の向こうから何かが全力疾走してくる!
速い!
ぴょこぴょこと長い耳を揺らしながら一直線!
「ウサギかな!?」
「いや違う!アレは……!」
「「チ・ク・ワだー!!!」」
ウサ耳頭巾と防寒用のペット用ジャケットを着込んで突っ込んでくる。
受け止めようとしゃがむリンとなでしこだが、その横を通り過ぎていく。
「おぉ〜チクワ、久しぶり〜」
何故かケンの方へと突っ込んでいってしまい、彼の手でワシャワシャされている。
「ナ、ナンデ……?」
「え?男同士の友情!な?」
「ワン!」
「「えぇ〜……」」
「お〜、相変わらずチクワはケンにゾッコンですなぁ」
なんか沈んでる二人と戯れる一匹と一人の元へ、おおきなダッフルバッグを何個か持った恵那が合流してきた。
「出たなウサギイヌの飼い主め。」
「ふっ……チクワよ、我が眷属となると言う案に、色よい返事は持ってきたかね?」
「ワン!!」
「それはできない相談だねケン……既にチクワは私と家族契約を結んでるのだから!」
「ぬぅ……!家族契約……!なんと忌々しくも強い響きよ……!ならば我が魔力を以て、その契りを上書きさせてもらおう!」
「斬新な中二ファンタジー修羅場はやめろや」
「あとの二人はまだなのかな?」
「そろそろ帰ってくると思うけど……」
と、そこに丁度いいタイミングで牧場スイーツ組が帰ってくる。薪を運んでいた千明はグロッキー気味であるが。
「お〜、みんな揃っとるね〜」
「犬山さんおはよ〜」
「おはよ〜、斉藤さん偉い大荷物やなぁ?」
「えへへ、ちょっとね〜」
「ところで、なんでなでしこは落ち込んでんだ?」
「チクワが〜……」
「チクワ?……シマケンにべったりだな」
「そんなときはね〜」
恵那が肩掛けカバンの中を探り、とあるものを取り出す。
それは犬用のササミジャーキー。
「チクワ〜おやつだぞ〜」
そのニオイに反応し、チクワが視線をこちらに向ける。
「はい、なでしこちゃん。これ持って?」
「え?うん」
なんのことがわからずに言われるがまま、恵那からササミジャーキーを手渡されるなでしこ。
「全力ダァーッシュ!!」
「うぇ!?え!?うん!!わぁぁぁっ!!」
そして全力で走っていくなでしこを追いかけていくチクワ。その様相はまるで草食動物を狩ろうとする肉食動物の構図。
「食うか食われるか。弱肉強食だよ、なでしこちゃん」
「楽しそうや〜」
「食欲に正直な奴らだぜ」
「じゃ、なでしこが弱肉強食ってる内に、テント建てちまうか」
「せやな〜」
「あ……私達、向こうにテント建てちゃったから、持ってこようか?」
「え?移動させてまた建てるの手間じゃない?」
「それはまぁ……」
「アタシらの荷物もこの量だと車じゃないと難しいしなぁ〜」
「どうせ寝るときだけしかテント使わないし、荷物だけ取ってくる?」
「そうだな」
なでしこが大自然の厳しさを教え込まれる中、5人は野クル側のテント設営を手分けして行っていく。
スリーブ式は何度か組み立てたからか、だいぶ設営も慣れてスムーズに作業が進んでいく。
そして登場した恵那の高級シュラフに誰もが羨んだり、リンのギアを初めてみた野クルメンバーが羨んだり……
そうこうしてると……
「あ、なでしこちゃん戻ってきた」
「待ってよ!チクワ〜!!」
ササミを奪われて、逆に追いかけるなでしこと、犬という存在に惹かれて、先程鬼ごっこをしていた子供がそれを追いかける構図が出来ていた。
「なんか増えてるな」
「楽しそ〜」
「んじゃ、アタシらもこれで、参加するか?」
そう言って千明が取り出したのはフリスビー。こういう場所で犬と遊ぶときの定番玩具だ。
「ちょっと千明、今どこから取り出した?」
「そこは聞いてはならんところだよシマケン君」
「そりゃ!取ってこい志摩犬!!」
「てめっ!やっぱ後で絶対スレイしてやる!!」
犬、子供達、高校生を交えたフリスビー大会。皆が全力で滑空するフリスビーを追いかけ、歓喜の声をあげ、笑顔であふれる時間。
「おらっ!取ってこいメガネが本体!」
「ちょっ!マジそれとれってのか!?」
時折二人の不毛な争いが勃発することもあった。
各々がクタクタになるまで遊び尽くし。
夕日がキャンプ場を照らす頃、デイキャンプだった子供達は親御さんに連れられ帰宅し、お礼と言うことで袋いっぱいの手作りクッキーをもらった。
「「疲れたヅラ……」」
「子供達より二人のほうがよく遊んでた気がする」
志摩兄妹の荷物を運びながら談笑に花を咲かせる。
いくら体力あふれる高校生とはいえ、数時間遊びっぱなしでは疲れるのも仕方なく、更に疲れれば……
グゥゥゥ……!
「な、なんかお腹空いたねぃ……」
猛獣も空腹を訴える。
今回はなでしこでなくとも小腹が空いてきた。
「せっかくやし、これでお茶にせぇへん?」
「「「「「賛成!」」」」」
そして野クルテントへ戻り、シートを敷いて各々寛ぎ始めた。焚き火台で薪を焚べ、酷使した足を休め、ココアをすすり、クッキーを食べてゆるい時間が過ぎていく。
「おはよ〜……みんな揃ってたのね……」
「あ、先生。おはよう御座います」
「先生もココア飲みますか?」
「ありがとう……いただくわ」
気怠そうにココアの入ったカップを受け取るが、そこに瓶に入った茶透明の液体をドボドボ注いでいく。
「せ、先生、何を……?」
「ココアには意外とラム酒が合うのよねぇ………んぐ!んぐ!ぷはぁ〜っ!!温まるわぁ〜!!」
「起き抜けにいきなり……!」
「これがグビ姉……!」
「噂に聞いていたが……圧倒的じゃないか……!」
改めて見せる酒乱ぶりに、四尾連湖で最初にグビ姉の生態を知ったリンとなでしこは苦笑い。
「あ!見て!赤富士!」
夕日に照らされ、赤く染まる富士山。普段の青いそれとは違い、この時間にしか見せない姿に、誰もが心を奪われる。
「綺麗やな〜……」
皆で見る赤富士。
一人で見ている時とはまた違った風景に口元を緩めるリン。それを見て、ケンもまた口元を緩めた。
「さて!暗くなる前に、夕飯の支度始めるで!」
夕飯担当が動いた。持ってきたクーラーボックスから食材を取り出していくあおい。誰しもが今日の夕飯メニューが何なのかを気にするところだ。
「イヌコはん、今日はええお肉で何作りはるんどす?」
「せやな、今日はクリスマスっちゅうことで…………すき焼きや」
『SUKIYAKI!?』
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
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