リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第二十四話『クリキャンの終わりとお呼ばれ』

「ん……」

 

未だ日が昇らぬうちに意識が浮上した。

顔を冷たい空気が冷やし、意識を無理矢理現実へ引き出してくる。

時刻は5:15

よく寝たものだ。

 

「ん〜……着替えるか」

 

冬用ライダースジャケットというのは便利なものだ。寒さ対策もそこそこにあり、ファッション性も両立している。それこそ普段着に着用してても問題ないほどに。

薄着になってヒヤリとしながらも、手早く着替えていく。

そして……ふと目に止まった紺と白のマフラー。

 

「夢じゃ……なかったんだな」

 

不思議と笑みがこぼれ、顔が紅潮してくる。

今日から新しい日常へと変わった。

彼女と過ごせる日々に胸を膨らませながら、ケンはテントを後にする。

その首には手編みのマフラーを巻いて。

 

 

 

 

野クル側 キャンプサイト

近づくにつれて、実に食欲をそそる匂いが漂ってくる。

ハイテーブルの上で朝食の準備をしている二人が見えた。

 

「おはよ、二人共」

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

「おはよう!ケン君!」

 

いつもと変わらぬ挨拶。だが不思議と気分はとても軽い。なでしこの笑顔が、いつも以上に眩しく感じる。

 

「もうすぐ朝ごはんできるから、待っててね!」

 

「なんか手伝おうか?」

 

「じゃあ……お茶を沸かしてもらっていい?これ、ほうじ茶」

 

「うい〜」

 

必要かと思って持ってきていたコッヘルとガスバーナーを展開し、お湯を注ぎ入れて沸騰させていく。

 

「あ、そうだ。サンタさん、ありがとう。これ、すっごく温かいよ」

 

「そりゃ良かったな〜」

 

リンの手には、なでしこと色違いで水色の手袋。早速使ってくれているみたいで、なんか嬉しい。

 

「おはよ〜さん、早いねぇ」

 

次いで起きてきたのはあおいだ。

 

「おはよう。ちょうどお茶が沸いたし、飲むか?」

 

「いただくわ〜、それとありがとうな〜、これ」

 

彼女の手にも薄い黄色の手袋。

 

「ナンノコトカナ」

 

「とぼけんでもえぇよ。同級生からクリスマスプレゼントなんて斬新やったし、嬉しいわ」

 

「そっか……まぁ喜んでくれたなら甲斐があったよ」

 

「お、お前ら!!大変だ!!」

 

次はやかましい担当の千明だ。

 

「どないしたん?アキ。朝からそんなに慌てて」

 

「サンタさんだ!サンタさんが来たんだよ!!ほら!このプレゼントが起きたら顔の上に置いてあったんだ!!」

 

『…………』

 

「ど、どうしたんだよ?」

 

「いいや〜?アキは純粋やな〜思っただけやで」

 

「ま、こういうリアクションが一番面白いから期待してたんだよな」

 

「こいつ、未だにサンタ信じてるのか……?」

 

続くように恵那と鳥羽先生が起きてきた。恵那はなんとなく察してたみたいで、手袋をケンに見せながらニッコリと笑っていた。

ちなみに鳥羽先生には、液○ャベ六本セットだ。二日酔いを見越してプレゼントしていたら、案の定飲みながらテントから出て来ていた。

 

「さぁ!出来たよ!ニッポンの朝ごはん!!」

 

なでしこの元気な声が、今日も透き通った空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を終えた面々は、少しゆっくり目にギアを片付けに入った。

何気ないことを談笑したり、ほんの少しふざけ合い。

それは多分クリスマスキャンプが終わるのが名残惜しいことへの裏返しなのか。

準備した時間より、片付けの時間は倍ほどかかっていた。

千明、あおい、鳥羽先生の荷物は、先生の車であるハスラーに。

恵那は桜が送っていくことになった為、到着したラシーンに詰め込んでいく。

 

「ケン君」

 

荷物を一通り詰め込んだあたりで、ケンは桜に呼び止められた。その表情はとても優しいものだ。

 

「なでしこのこと、ありがとうね。受け入れてくれて……」

 

「え?」

 

「そのマフラーをしてるってことは、そういうことでしょう?」

 

「……はい。俺は昨晩からなでしことお付き合いさせていただいてます」

 

「あの子を、よろしくおねがいします」

 

「こちらこそ。近々、御両親にも挨拶に伺いたく思います」

 

「ふふ……まぁ両親とも、なでしこを大切にしてくれるなら何も言わないわ。まぁ一緒にご飯食べましょうってくらいだと思うけど」

 

「では……その時を楽しみにしています」

 

一通り報告と軽い挨拶を終えると、なでしこが駆け寄ってくる。

 

「ケンく〜ん!記念にみんなで写真撮ろう!」

 

「ん、わかった」

 

「じゃ、私はカメラマンに回ろうかしら?」

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

こうして、野クル主催による年末の大イベントであるクリキャンは幕を閉じた。

各々が車やバイクで家路に就くなか、誰もの心には同じ思いがあった。

『またキャンプに行きたい』

そんな思いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日 各務原家 リビング

ソファにうつ伏せでゴロゴロしながら、なでしこはスマホを操作している。

というのも、今回のクリキャンで撮った写真を見返して、物思いに耽っているのだ。

 

「なでしこ、家の中で位手袋外しなさい」

 

「やだ」

 

「お?なでしこ、帰ってたのか」

 

ちょっぴり反抗期ななでしこ。そこへ今年最後の町内会の寄り合いを終えて帰ってきた、各務原家の大黒柱である修一郎がリビングに姿を現す。

 

「ただいま、お父さん」

 

「お帰り。クリスマスキャンプ、楽しかったかい?」

 

「うん!すっごく楽しかったよ!」

 

「そうか!そりゃ何よりだ!写真、見せてもらってもいいかい?」

 

「うん!」

 

しかし彼女は知らない……この行動がちょっとした騒動に繋がろうなどとは……

 

「へぇ……すき焼きのお色直しにトマトか!美味そうだな!」

 

「うん!さっぱりしてて、いくらでも食べれたよ!」

 

「シメのパスタも美味しそうね!」

 

「アンタ、替えのガス忘れてったでしょ」

 

「えへへ……」

 

そして問題の写真が、家族の前に晒される。

 

「これはリンちゃんかい?夜富士をバックにツーショットとは、仲がいいんだな」

 

「あら、これはリンちゃんじゃないわよ?双子のお兄ちゃんのケン君よ」

 

「お、男の子なのかい?」

 

「えぇ、この前もなでしこが風邪を引いた時にも、心配してバイト終わりに寄ってくれたもの。あなたはその時寝てたから出会わなかったみたいだけど」

 

桜は嫌な予感がした。

どことなく話が少しややこしくなっていているような……。

 

「そう言えば、なでしこ。一生懸命編んでたマフラー。ケン君に渡せたの?」

 

「うん!すっごく喜んでくれたよ!」

 

そして桜は見た。

修一郎が今まで見たことないような笑顔をみせている。

しかし口元は笑っていても、目は少し据わっている。

これ、アカンやつや。

しかもなでしこは静花の誘導にまんまとかかり、洗いざらい情報を吐き出している。

 

「じゃ、うまく行ったのね?」

 

「うん!

 

ケン君、私を恋人にしてくれたんだ!

 

ガタン!

満面の笑顔で答えるなでしこに対し、修一郎が物々しい音とともに椅子からずり落ちていた。

 

「そ、そうか……よし!今一度ケン君をウチに招待しよう!どんな人なのか一度会ってみたいしな!」

 

「うん!お父さんも絶対にケン君のこと好きになれるよ!」

 

桜は頭を抱えた。

どういう心境で招待となったのかはわからんでもないが、これがどう転ぶのか、桜は大きな不安が脳裏に過ぎった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

12月26日  本栖高校 野クル部室

今年も後5日と迫ったとき、野クルのメンバーははたきや雑巾片手に部室に集結していた。

 

「よ〜し聞け者共!クリキャンの準備で後回しになっていたが、これより野クルの年末部室掃除を始める!いいか!」

 

『押忍!!』

 

「作戦開始!!」

 

今年一年の感謝の意を込めて、部室大清掃が開始された!!

 

 

20分後

 

 

『終わった!!』

 

「部室狭いからあっという間だったね!」

 

「こういうときはありがたいな〜!」

 

「もうちっと手間取ると思ってたけど、そうでもなかったな〜」

 

「そう言えばアキちゃん、部員も四人だし、顧問の先生も居るし、部活に昇格できるんじゃない?」

 

「それなんだけどな……考えたんだよ。アタシらにはこのままがいいんじゃないかってな……」

 

あれだけ部活昇格に拘っていた千明がこんな事を言うのが意外なのか、三人は目を丸くする。

 

「ど、どないしたんアキ?変なもんでも食べたん?」

 

「失礼なやつだな……アタシはただ、今の野クルでやるキャンプが身の丈に合ってるんじゃないかって感じたんだ。皆で頑張ってバイトして、そのお金でギアを揃えてキャンプに行く……。部費が入ってきたら、それが楽な方になっちまうからな。なんか……そうなったら野クルらしくなくなってしまいそうだって思ったんだ」

 

「そうだな。自分達で頑張って行くキャンプだからこそ、クリキャンはあれだけ楽しめたんだろうしな」

 

「だから野クルは今までの方針を変えずに貫く事にする!!よいかね諸君!」

 

「アキもたまにはええこというなぁ」

 

「なんか部長らしかったぞ!」

 

「部長だっての!」

 

「あはは……でも私はまだバイトしてないんだけど」

 

あれからなでしこはバイトを探してはいるものの、高校生募集している雇い先がなかなか無く、難儀しているところだ。

 

「私もバイトでお金貯めて、キャンプ道具買いたいのに…、一体あたしゃいつになったら働けるんじゃろうか……?」

 

そんなしょぼくれているなでしこに朗報となるメッセージがスマホに入った!!

 

リン『なでしこ、まだバイト探してたりする?』

 

なでしこ『うん、なかなか見つけらんないんだぁ……』

 

リン『じゃあ丁度良かった。あとは斎藤が』

 

恵那『なでしこちゃん、私短期で年末年始の郵便局のバイトするんだけど、一緒にどうかな?配達の方ならまだ空きがあるみたいだよ』

 

「郵便局……?」

 

「多分、年賀状の配達とかじゃないか?仕分けとか配送とか、年末年始人手不足って聞いたことあるし」

 

「わぁ……!うん!やるやる!!」

 

渡りに船の誘いに、なでしこの沈みかけていた気持ちが一気に再燃する。

 

なでしこ『リンちゃん!恵那ちゃん!ありがとう!!』

 

「良かったなぁなでしこちゃん!」

 

「うん!」

 

「よぉし!今から皆で祝杯だ!自販機に集合!!」

 

『おぉー!』

 

 

 

 

 

「では、なでしこのバイト決定を祝して……」

 

『かんぱ〜い!!』

 

コツンと互いのペットボトルをかち合わせ、ゴクリと一口飲んで息を吐き出す。

各々の手はクリスマスプレゼントの手袋で暖かくとも、肌寒さはどうしても拭いきれず、こうした暖かな飲み物を飲む時間が至高の瞬間だ。

 

「みんなは年末バイト?」

 

「書き入れ時やからな〜」

 

「こちとら三ヶ日までフル出勤だぜ」

 

「俺は三十日が仕事納めで、三ヶ日は休み貰えたけどな」

 

「そっか〜」

 

「しっかり稼いで、また年が明けたらキャンプに行こうぜ?」

 

「うん!」

 

もう日は沈みかけ、西日が差してくる時間帯。

三人に合わせ、ケンもバイクを押しながらゆっくり歩いていると、なでしこの腹の虫が鳴き出した。

 

「あはは……お腹空いてきたね」

 

「晩御飯なんやろな〜?」

 

「ウチは鍋って言ってたぜ〜」

 

「ウチは何だろな〜」

 

「晩御飯……あっ!!」

 

晩御飯というキーワードに、なでしこが何かを思い出したかのように大きな声を出す。突然のことに誰しもが目を丸くしている。

 

「どうしたん?」

 

「忘れてた!ケン君!お父さんから伝言あったんだ!」

 

「え?何?何なの?」

 

「今日、ウチで晩御飯たべないかって!!」

 

「へ?」

 

いきなりの夕食のお誘いに、ケンは間抜けな声を出すしか出来なかった。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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