リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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タイトルの意味はラストに……


第二十五話『未来予想図』

電車とほぼ並走するようにバイクを走らせ数十分。南部町についた頃には、空は暗やんできていた。

身延線内船駅にて降車したなでしこと再び合流し、南部橋を連れ立って渡り、各務原家へ歩いていく。

 

「よもやなでしこのお父さんから呼び出しが掛かるなんて思いもしなかった」

 

「うん、クリキャンが終わって帰ったときにね、恋人になった事伝えたら、是非会ってみたいって」

 

(……これ、ドラマとかでよくある展開じゃね?)

 

このあと『貴様に娘はやらん!』的な圧迫面接めいた対応を受けたりするのだろうか。

菓子折りとか持っていくべきだったか?と後悔するが、今となっては後の祭り。あと数分も歩けば各務原家だ。

 

「こんなに早くウチに挨拶に来ることになるなんて、予想外だったね」

 

「まぁ遅かれ早かれ挨拶に来てたさ。なでしことの仲をちゃんと認めてもらわないといけないしな」

 

「そだねぃ。私も年内にケン君の家に行ったほうがいいかな?」

 

「父さんも母さんもなでしこのこと知ってるから……あとはじいちゃんかな」

 

「全国旅してるんだっけ?」

 

「うん……だからこういう時になかなか予定が合わないから困るんだよな……」

 

「一度会ってみたいなぁ……ケン君のバイクと、リンちゃんのキャンプのお師匠さん」

 

「師匠って……ん、まぁ、変わった人だよ」

 

などと話していれば、あっという間に各務原家に着いてしまった。

桜のラシーンが駐車してあるので、その隣にバイクを停め、なでしこに続いて玄関へ歩いていく。

 

「すぅ……!はぁ……!」

 

「そ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ?」

 

「いや、こればっかりはな…………よし、行くか」

 

「うん!ただいまー!」

 

元気に玄関を開けて中へ入るなでしこと、彼女に続くケン。先日、お見舞いに来たときとはまた別の緊張感が襲ってくる。出迎えてくれたのは静花だ。

 

「お帰りなさい、なでしこ。いらっしゃい、ケン君」

 

「お邪魔します」

 

「さ、上がって?ご飯出来てるから」

 

「わぁ〜いい匂い!行こ!ケン君!」

 

「う、うん」

 

靴を脱ぐと手を引かれてリビングへ案内される。

そこには既に何というのか滅茶苦茶美味しそうな料理が机いっぱいに広げてあった。ケンの空きっ腹にダイレクトアタックである。

そして上座には一家の大黒柱であろう、少し小太り目の中年男性が。

 

「君が、志摩ケン君だね?」

 

「は、はい!はじめまして!志摩ケンと言います!今日はお招き頂き、ありがとうございます!」

 

緊張からかガッチガチの一礼。まるで油が切れたブリキ人形のようだ。そう言えば似たような玩具が倉庫にあったな、と桜となでしこは思い出す。

 

「はじめまして。桜となでしこの父である各務原修一郎だ。よろしく頼むよ」

 

「よろしくおねがいします!」

 

「そう固くならないでくれ。取って喰いやしないから。ほら、掛けてくれ。なでしこも座りなさい。せっかくのご飯が冷めてしまう」

 

「うん、わかった。座ろっか、ケン君」

 

「し、失礼します」

 

未だぎこちなくマフラーを取って背もたれに掛けるケンに苦笑する静花と桜。そりゃそうだ。この状況で緊張しないほうがおかしいだろう。

二人が座ったのを見計らって、修一郎が音頭を取る。

 

「じゃあ、いただこうか」

 

『いただきます』

 

「い……いただきます」

 

どうしたものかとガチガチ状態。とりあえず手元にある黄金色に揚げられた唐揚げを一つ摘み、ゆっくりと口に運ぶ。

サクッとした衣に、じゅわっと溢れる肉汁と下味。スパイシーさよりもコクのある味わい。

 

「うま……!」

 

「美味しいでしょ?うちの唐揚げ」

 

「うん。けど今までに食べたことのない味だ……これ、下味はコンソメかな。甘さの中に洋風な風味が……初めての味だけど凄く旨い……!」

 

「ほう!これの下味がわかるかね!」

 

「あ、なんとなく、なんですけど」

 

「これ、実は私が揚げたものなんだ。ちょっと変わった味の料理に凝っていてね。ケン君も料理はするのかい?」

 

「そこまで凝ってはいませんが……簡単なレシピとか、キャンプで作りやすい料理とかなら嗜む程度には」

 

「以前、なでしこが友達から担々餃子鍋のシメに、シーフードのカップ麺を入れると言うのを教えてもらったと言っていたが……」

 

「うん!それ、ケン君のアイデアなんだ!」

 

「そうか……あれはたしかに美味かった。良いものを教えてもらったよ!」

 

「恐縮です」

 

しかし何だろう。

この一家滅茶苦茶食うの早くないか?とケンは少し戦慄する。なでしこが早食いで大食なのは知っていたけど、まさか一家全員がそうとは思わなかった。

時折各務原家の人達から、これを、あれをと、テーブルの上にある料理をよそっては勧められ、少しずつ食べていたにもかかわらず、一通り食べた辺りには腹がだいぶ膨れていた。

 

「おや?お腹が大きいのかい?」

 

「はい、少し苦しくなってきました……でもどれも本当に美味しかったです」

 

「そうか、それなら夕食に招いた甲斐があったよ」

 

満足そうに修一郎は箸を置く。その面持ちは、先程までの穏やかなものとは違い、真剣そのもの。

 

「時にケン君。君は、なでしこを愛してくれているか?」

 

「お、お父さん!い、いきなり何を…!?恥ずかしいよぅ……!」

 

ぷしゅぅ〜と、まるで茹でダコのように紅くなってうつむくなでしこ。

ケンもケンで面と向かって尋ねられれば、恥ずかしさを隠せない。

 

「どうなんだい?」

 

ここまで来てヘタっててどうするのだ?今更怖じ気付いてどうする?

ここで認めてもらうためにお呼ばれしたのだ。

答えを出し渋るためじゃないのだ!

 

「はい……!俺は娘さんを、なでしこを愛しています!」

 

ボンッ!と、隣のなでしこから軽い爆発のような音が聞こえた気がするが、まぁ空耳だろう。

ケンの答えに、修一郎はしばし沈黙。

何か間違ったのか?と疑問符が浮かぶも、それはすぐに霧散する。

これが自分の気持ち、答えなのだ。それ以外に選択肢はないのだから。

 

「……そうか。なでしこ、お前はどうなんだい?」

 

「私も……ケン君が大好きだよ、お父さん」

 

改めて言われると恥ずかしさが込み上げてくる。だけど何も後悔はない。自分達は気持ちに正直になっただけなのだから。

 

「わかった。すまんな、凄むような形になってしまって……父親として、娘が取られると思う気持ちもあってね」

 

「いえ、そんな……」

 

「ケン君……!娘を、なでしこをよろしく頼みます」

 

「は、はい。こちらこそ……!」

 

「何か……結婚の挨拶みたいね」

 

「「けっ……!?」」

 

桜の爆弾発言に、件の二人は一気に沸騰した。

 

「はっはっはっ!流石に結婚は最低でも学校を卒業してからだな!」

 

「当たり前だよ!年齢的にもまだ無理なんだし!」

 

「あら?なでしこ、もう結婚を見据えてるの?」

 

「お母さんまで!」

 

純真ななでしこが玩具にされながら、穏やかな夕食が続いていく。

結局ケンも各務原家の玩具として片足を突っ込みかけていた。

 

 

 

 

 

 

夕食後、お茶を交えて料理やキャンプの話に花を咲かせていたが、宴もたけなわ……というものでもないにせよ、良い時間となってきたので、ケンは御暇する事にした。

 

「もう少しゆっくりしていったら良いのに……」

 

口を尖らせながら玄関先で見送るなでしこ。彼女としてはまだまだ一緒に居たいと思うだろうが、それはケンも同様だ。

 

「俺ももう少しなでしこと居たいのは山々だけど、遅くなりすぎてもご両親に気を遣わせてしまうからな」

 

「……そっか」

 

バイクに跨り、エンジンをかける。プロテクター、グローブも装着し、あとはヘルメット……という時、

 

「ケン君」

 

「ん……ッ!」

 

呼ばれて振り向けば、至近距離になでしこの顔と、唇に柔らかな感触。

不意打ちだった。一瞬何をされたのかわからなかったが、ややあって、クリスマスで感じた柔らかさだったことに気付く。

 

「えへへ……今回は私からしちゃった」

 

顔を離し、はにかむなでしこ。その頬は桜色に染まり、いつもと違って色気すら感じられる。

 

「バイトでしばらく会えないかもだから……ね?」

 

「そう、だな……お互い年末年始、忙しくなりそうだ」

 

「うん、だからケン君成分を補給させてもらいました!」

 

「なんだよそれ」

 

「……気を付けて帰ってね」

 

「あぁ。安全運転で帰るよ。それに、温かいお守りもあるしな」

 

そう言ってマフラーをこれ見よがしに翻し、ヘルメットを装着する。

 

「じゃ、なでしこ。またな。おやすみ」

 

「うん、ケン君も、おやすみなさい」

 

アクセルを吹かして遠のいていくバイク。交差点からそれを見送っていたなでしこだが、南部橋に差し掛かったところで、バイクのブレーキランプが不意に五回点滅する。何かあったのか?と思ったが、その後何もなかったかのように加速していってしまった。 

 

「あらあら、ケン君も意外とロマンチックな事をするのね」

 

「お、お母さん!?」

 

いつの間にか隣に立っていた静花に、なでしこは少し距離を取る。なにせ全く気配がなかったのだから。

 

「さっきのブレーキランプの意味、なでしこ解る?」

 

「うぅん。どうしたんだろ?って思ったけど……」

 

「昔の歌にね、恋人を家に送った後に、バイクで立ち去る時の歌詞があったの。その時に今のケン君と同じ事をしてたんだけどね?その意味が……」

 

「意味は?」

 

「自分で調べてみてね!」

 

「えぇっ!?ここまで教えて!?」

 

「そのほうが、意味をしっかり噛みしめられるものよ?」

 

言うだけ言って、静花は家の中へ入っていってしまった。

好奇心を抑えきれず、その場でスマホを取り出し、グルグル先生で意味を調べたなでしこが、しばらくその場で座り込み、照れ臭さでしばらく動けずにいたのを、影から静花と桜が見ていたという。




ヤバい、年代がバレる……!?
ち、違うんすよ!オカンがCDで聞いてたのを覚えてたからで、世代とかそういうんじゃ……

とにかく、これで1期分終了です。
次回より2期

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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