リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第二話『お茶に蕩ける』

眼前に広がる大海原。

開放感あふれるその景色は、内陸県民にとって憧れのもの。

展望台から見える大海は、まさに絶景!

 

(海だ!と叫びたくなる気持ちは抑えて……)

 

「海だ〜!ムハー!」

 

言葉を飲み込んだ隣では、双子の兄が代わりに興奮を抑えきれずにパシャパシャと写真を取り漁っている。

気持ちはわからんでもない。

既に出発してから6時間。休憩を挟みつつだが順調な旅路だ。ある程度滞在時間を決めておくことで、予定にほとんど狂いなく各地を回れている。

今現在は御前崎灯台へと足を運んでおり、南伊豆とは僅かな差異であるが静岡最南端だ。

 

「撮りまくってるね、お兄ちゃん」

 

「折角だしな。バイクで初めての海っていうのもあるけど」

 

「わかる。私も自分の足で海へ来たの、初めてだから結構撮ってるかも」

 

「これも海無し県民の性ヅラ」

 

次の場所への移動時間となり、駐輪場へ戻る二人。途中、コンクリートの階段につけられた犬の足跡を見つけ、ワンコの恐ろしさに戦慄しながら。

 

「次はお母さんに頼まれた掛川のお茶屋さんだっけ?」

 

「そだけど……何を買えとも聞いてないよな?」

 

「うん。予算と照らし合わせながらお店の人のおすすめでも聞くか」

 

「そうだな」

 

ここからしばらく海沿いを走って、途中右折だ。時間的には一時間ちょいと言ったところ。

すすきが海風に揺れる150号線を走りながら、開放感あふれるツーリングを楽しむ二人。

だったが……

 

『風強くて超寒ぃ〜!!』

 

「わかりみが強い!」

 

これでもGSX250Rは小さいながらもスクリーンを付けているからマシな方だ。ビーノは標準的に付いていないから、リンは海風をダイレクトに受けて、極寒の扇風機を味わっていた。

内陸へ入れば少しマシになったが、20分近く極寒に晒された2人は正直にガチガチに凍えていた。

そして到着したお茶屋さんである『たかくら』に到着したときに、正直寒さで満身創痍に近かった。

 

「ホントにどれが良いのかわからん」

 

「漢字ばっかりで目がチカチカする」

 

実際に店に入れば案の定、様々な銘柄が羅列されており、お茶にこだわりを持たない二人は混乱していた。

 

「とりあえず店員さんに相談だ」

 

「牛乳に相談するみたいに言うな」

 

ということで、店番をしていたメガネを掛けた店員さんに聞いてみることに。

 

「すいません、2000円くらいでおすすめのお茶、ありますか?」

 

「そうですね……でしたらこちらの『姫蔵』などいかがでしょう?」

 

そう言って試飲に1杯の仕出したお茶を汲んでくれた。お茶のことは全くわからない2人は、とりあえず飲んでみることにした。

 

「山奥の蔵で一夏寝かせた熟成茶で、角が取れたまろやかな味わいが特徴となっております」

 

『ほわぁ……』

 

「なんこれ……?ただの緑茶とは渋みが全然違う……!」

 

(よくわからんがうまい)

 

寒いツーリングの後に飲む暖かな飲み物が染み入り、脳が蕩けかけてくる。

 

「……あら?もしかして、夜叉神峠でお会いしたお嬢さんかしら?」

 

「ほぇ……?」

 

脳が回転してないリンは、なんとな〜く店員のお姉さんを見る。メガネを取った姿に、リンは見覚えがあった。

 

「あの時の山ガールのお姉さん?」

 

「どうも。こんな偶然あるんですね」

 

「ん〜?お知り合いだったのか〜?」

 

「うん、上伊那キャンプの時に出会った人なんだ……ってケン、なんか液状化してないか?」

 

「気のせい気のせい……溶けてるだけだから」

 

「お二人はそっくりですが……ご兄妹ですか?」

 

「はい、不本意ながら。この間はほうじ茶ありがとうございました。美味しかったです」

 

「いえいえ、今日はお二人で掛川まで?」

 

「はい。磐田の海の方へ初日の出を見に」

 

「あぁ……それで遥々山梨から。磐田でしたら、福田海岸がいいかも知れませんね」

 

『福田海岸?』

 

「えぇ、あの辺りでは有名な初日の出スポットで、年末になると浜に鳥居が建てられて少し不思議な雰囲気になるんですよ」

 

「へぇ……じゃぁそこに行ってみます」

 

「ん〜、キャンプ場からもそう遠くないから丁度いいな、有力情報ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

結局二人は勧められた『姫蔵』を購入することにした。寒さに耐えたあとに飲んで、妙に美味かったからというのもあるのかも知れないが。

 

「ではお気を付けて。またお越しくださいね」

 

「はい」

 

「また溶けに来ます」

 

「あはは……」

 

そしてバイクへ戻る傍ら、咲へ購入の報告を入れる。

 

リン『今、お茶屋さんでお茶買ったよ』

 

咲『ご苦労さま〜。お茶、試飲させてもらった?』

 

ケン『美味くて、なんか溶けた』

 

咲『溶けた……?』

 

ケン『うん、寒さに震えたところにあれは致命傷だった』

 

咲『そんなに美味しかったのね……。だったらそこの二階、緑茶カフェになってるから、一休みして行きなさい。お金、少し多く渡したでしょう?』

 

リン・ケン『マジで!?』

 

カフェと聞いて踵を返し、急ぎ店内へ戻る二人。

 

「あら〜、もう来てくださったんですか?」

 

また歓迎された。

 

そして二人で暖かな二階の喫茶スペースでお茶とお茶請けを頂き……

 

二人揃ってものの見事に蕩けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ケン『静岡のお茶カフェヤバい。溶ける』(写真)

 

なでしこ『ふぉぉ!抹茶ティラミス美味しそー!って溶ける?』

 

ケン『なんていうか……妙に落ち着いて動きたくなくなるでござる。今の心境を例えるなら、ほっとけや温泉のくつろぎスペースで寝てたときの心境に似ている……』

 

千明『それをやっては駄目だ!予定が変わってしまう!タイム・パラドックスだ!』

 

ケン『リンも、ここをキャンプ地とする〜って』

 

恵那『わかる〜私も布団の中にテント建てたいって思うときあるもん』

 

あおい『恵那ちゃん、それテントの意味あれへんよ……』

 

なでしこ『でも静岡のお茶は美味しいから、何だかわかるかも』

 

ケン『思った以上に美味かった……自分用に買って帰ろうかな〜……』

 

予想以上に静岡のお茶に魅了され、色んな意味でヤバい状態の二人は、予定時間ギリギリまで寛いでいた。

加えて、今回のキャンプでまた飲みたくなった時用に、少量の商品を購入して出発となった。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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