リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第三話『ワンコ寺参りと海沿いキャンプ場』

お茶の効果でバチバチに張った根を引っこ抜いて、何とかお茶屋さんを後にした二人は、そこから一時間ほど掛けて見付天神へと辿り着いた。

正式名称 見付天神 矢奈比賣神社

リンが調べたとおり、駒ヶ根では早太郎と呼ばれ親しまれていた犬が、こちらでは悉平太郎として祀られている。

入り口に狛犬のように聳え立つ悉平太郎の像は、まるで狐のようにしなやかな容姿だ。

 

「大晦日だし、ラス詣ってことで良いよな」

 

「物の序でだしな」

 

ということでまず拝殿に赴き、お賽銭を投げ入れて一礼二拍手。二人はそれぞれの願いを念じる。

 

「お兄ちゃんは何を願ったの?」

 

「皆の無病息災と学力向上、金運向上に旨いモンが食べれるように」

 

「煩悩まみれじゃん」

 

「冗談だよ。ただ、皆とこれからも良き関係でありますようにって」

 

「ふ〜ん」

 

「そういうリンは?」

 

「来年も穏やかな一年でありますように」

 

「無難だな」

 

「無難でいいんだよ……さて」

 

御参りを終えた瞬間、リンの目つきが変わった。

その鋭い眼光はまさに獲物を狙う肉食動物が如く。

 

「リアル悉平太郎を拝みに!!」

 

普段のリンからは想像がつかないほどの猛ダッシュで件の犬を探しに行ってしまった。

 

「相変わらずの犬好きだな」

 

変なとこで無邪気な妹に苦笑いをしながらゆっくりと後を追う。そう時間がかからず、彼女はお守り売り場で少し沈んだ表情で佇んでいた。どうやら巫女さんに三代目悉平太郎は何処にいるのかを訪ねたところ、何年か前に亡くなっていたことを知らされたからだ。

 

「思えば犬の寿命は十数年だしな、仕方ないのかも」

 

「せめて冥福を祈っとこうか」

 

「うん」

 

境内の隅にひっそりと設けられた墓を撫でながら、リンは寂しそうに呟く。悉平太郎に会いたいと思っていたにも関わらずこうなってしまった為、その沈み具合は如何ほどか。

 

リン『見付天神の悉平太郎三世に会いに来たら、既に亡くなってた……』

 

恵那『そっか、残念だったね』

 

リン『それで少し思ったんだけどさ。犬の寿命って人間よりも短いし、何十年も一緒に居られないよね。斉藤はチクワとのお別れ、怖くならない?』

 

リンの問いに思うところがあったのか、恵那は少し返事を躊躇う。

 

恵那『すっごく怖いし、そうなったら悲しいけど……仕方ないと思う。だから今いっぱい遊んであげて、楽しかったって思ってもらいたいよ』

 

リン『そっか』

 

ケン『強いな。お前』

 

恵那『そうかな?……でも、もっと遊んであげたり、構ってあげたら良かったって後悔したくないだけなんだ。だからこれからも免許取って車で出掛けたりとか、色んなことをしてあげたいよ』

 

ケン『よし、一年経ったらチクワをタンデムしてやる。一緒に風になろうぜぃ』

 

リン『おいバカやめろ』

 

恵那『そうだ。クリスマスキャンプ行ってからみんなの写真見せると、すごいテンション上がるんだよチクワ』

 

リン『お、そうなんだ』

 

恵那『また遊んでね、リンちゃん、ケン君!!』

 

そうして送られてくるのは元気に庭で遊ぶチクワの姿。

その姿に、リンはだらしない笑顔を浮かべながら返事を打っていく。

 

リン『よし、これでもかというくらい遊んでやろう』

 

ケン『暖かくなったら、またキャンプに連れてってやろうか』

 

恵那『だね!そのためにもバイト、頑張るよ。二人も気をつけてね〜』

 

どうやらリンの沈んだ気持ちは収まったようだ。

そして記念に、ということで、悉平太郎の犬みくじを購入。

 

「そろそろ良い時間だし、キャンプ場向かうか」

 

「だな。……お、大吉」

 

「私もだ」

 

「なになに?『自らの道を顧みよ、新たな発見が得られる可能性アリ』」

 

「意味深だな。ところで何で二個買ったの?」

 

「お土産」

 

「バカップル」

 

参道を歩きながら見付天神を後にする二人。そんな彼等を見送る一つの白い影。

 

「ん?」

 

気配にケンは振り返るも、何もない。

ただ、ハッキリとした犬の足跡が目に入ったくらい。

 

「恋愛運……『趣味に走り過ぎに注意。妬まれるかも』だってさ。気を付けなよ?」

 

「おま……!勝手に読むなよ!」

 

「あれ?備考欄同じだ」

 

「マジか……!」

 

「『思い掛けない幸運が訪れる』?」

 

 

 

 

 

 

 

目的地の海洋公園キャンプ場についた時、外国に来たかのような錯覚を覚えた。

 

「ヤシの木に……赤瓦」

 

「南国とヨーロッパが一気に来た」

 

フリーサイト一泊で受付し、適当な芝生のサイトをキャンプ地として荷物を運び込んでいく。

 

「この先はすぐ海になっているのか」

 

「また見に行きたいの?」

 

「正直言うと」

 

「設営済ませたら散歩して来なよ。俺はここで荷物番しながらゆっくり過ごすから」

 

「うむ!」

 

そこからのリンはバフでも掛かったのかと言わんばかりの早さだった。

同時にテント設営を始めたにもかかわらず、ケンがポールにテントを吊り下げている段階で既にテントを貼り終え、

 

「行ってきます!」

 

そして赤くないのに通常の三倍(当社比)の速度でサイトの向こうにある海を目掛けて走っていってしまった。

 

「……ホント、海好きだなアイツ」

 

テントを張り終えてチェアを展開。ローテーブルも設置し、ココアを飲むためにコッヘルでお湯を沸かしていく。

 

「お、なでしこからだ」

 

チェアに座って一段落、というところで、なでしこからのメッセージ。

 

なでしこ『ケン君!キャンプ場着いた?』

 

ケン『うん、今テント張り終わったとこ。なでしこは今バイト終わり?』

 

なでしこ『うん、今から帰るとこだよ』

 

ケン『おつかれ〜』

 

なでしこ『うん、ありがとう!ケン君も運転お疲れ様!リンちゃんは?』

 

ケン『パパっとテント張って海見に行った』

 

なでしこ『Oh……』

 

ケン『これも海無し県民の性じゃよ』

 

なでしこ『ちなみにどこのキャンプ場?』

 

ケン『磐田の海洋公園キャンプ場。遠くにでっかい風車がある。写真撮ったら送るよ』

 

なでしこ『うん!お願い!』

 

ホントに写真好きだな、と苦笑いしながらココアを啜り一息。

今年も残り約7時間。早いものだ。

 

なでしこ『今年ももうすぐ終わっちゃうね』

 

ケン『だな。今年は年末辺りは目まぐるしいくらいに色んなことあって、ホント忘れようにも忘れられないな』

 

なでしこ『うん、引っ越してきて2ヶ月くらいで、こんなに思い出ができるなんて思わなかったよ』

 

ケン『来年も……よろしくな、なでしこ』

 

なでしこ『うん!……あ!』

 

ケン『どした?』

 

なでしこ『雪だ!身延、雪が降ってるよ!!』

 

メッセージ越しでも、雪が珍しいのか大はしゃぎしている。

 

ケン『ホワイト大晦日と正月になりそうだな』

 

なでしこ『積もるかな?』

 

ケン『山沿いだからなぁ……積もるかも』

 

なでしこ『楽しみだなぁ!』

 

ケン『浜松の方は積もらなかったの?』

 

なでしこ『聞いてよ旦那さん!浜松は積もるどころか雪あんまり降らないんですぜぃ!』

 

ケン『まぁ確かに……ここは身延に比べたら結構温いよな』

 

なでしこ『だから雪、楽しみだよ!雪だるま作ろうかな……?かまくらもいいなぁ……!あっ!いっそカキ氷にして食べても……』

 

ケン『雪だし、氷違うじゃん』

 

雪による妙なテンションがメッセージからありありと伝わってくる。

まぁ雪でこんなに喜べるなら、悪くもないんじゃないかと、苦笑いを隠せなかった。

 

 

だが、ケンもリンも、ましてやなでしこも。

この雪が3人の正月の予定を狂わせるとは、まだ誰も予想できないでいた。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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