リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第六話『棚ぼたキャンプ』

それは僥倖だった。

静岡の滞在が延びたことをメッセージで半分愚痴るように送った二人。

そこへ救いの手が差し伸べられた。

 

なでしこ『ケン君、リンちゃん、私、2日と3日に浜松のおばあちゃんの家に泊まりに行くんだけど、良かったら二人も泊まりに来ない?奥浜名湖のほとりにあってすっごくいい場所なんだ!それと、静岡の友達がひとりくる予定なんだけど……』

 

そう言えば出発のときに出会った際にそんなことも言っていたな、と記憶の隅を掘り起こす。

少し思案する二人だが、正直この話は有り難い申し出だ。金銭的な意味でも。

 

リン・ケン『お世話になります!!』

 

どちらからともなく、異口同音?にメッセージを送っていた。

 

 

 

 

 

 

なでしこと合流時間のすり合わせを行い、11時に佐久米駅に、ということで決まったわけだが……

 

「そうだ。折角お世話になるんだから、何か買っていくか?」

 

「そうだな。ただお世話になるのも忍びないし……」

 

いくらなでしこの親族とはいえ、見知らぬ人間が二人も転がり込んでは気を遣わせてしまうだろうし、何某かの手土産を持参するのが無難だろう。

何が手土産として良いか、ギアを片付けながら思案していくと、旅の途中で寄ったあの場所なら、手土産に良いものを買えるだろうと思いついたケン。

 

「よし、じゃあ俺はちょっとUターンして買ってくるよ」

 

「Uターンって……どこまで?」

 

「掛川だよ。お茶屋さん」

 

「なるほど、それならもってこいだな」

 

「で、俺が考えた計画なんだけど、リンは俺が向こうにつくまでに和菓子を選んでメッセージで教える。そんで、俺は向こうでそれに合うお茶をチョイスして、んで明日その和菓子を買ってなでしこと合流……って感じなんだけど」

 

「それなら確かに悪くないルートだな……」

 

「リンはメッセージを送ったら、次のキャンプ場の渚キャンプ場に先行して……」

 

「キャンプサイトを押さえておく、だな」

 

「わかってらっしゃる」

 

二人で一緒に行くよりも、役割分担しておく方が効率よくこなせる。バイクでなら法定速度を出せるから、その分行き帰りも早い。見知らぬ地で離れて行動するのは互いに少し不安だが、互いを信じるからこそだ。

 

「よし……じゃあ俺は先に出るよ」

 

「うむ、私も佐久米駅に行くまでのルートでいい和菓子屋ピックアップしとく」

 

「任せた!」

 

まぁ急がなくとも今日一日時間はあるし、ここからお茶屋さんまで一時間もかからない。この機会にゆっくりと静岡を走るのも悪くないだろう。

バイクのアクセルを吹かしながら、ケンは掛川の『たかくら』への道を走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、来てる来てる」

 

たかくらに到着してメッセージを見れば、『しず香』という和菓子屋の『苺のきらめき』といういちご大福が良さそうだというリンの考え。

確かに大きないちごが包まれた大福は食べごたえがありそうで、なでしこあたりが大喜びしそうだ。

 

「あら?またまた来てくださったんですか?あけましておめでとうございます」

 

「ど、どうも、あけましておめでとうございます」

 

出迎えてくれたのは、昨日の眼鏡の店員さんだった。

 

「ウチを贔屓にしてもらって嬉しいです。今日は何をお探しですか?」

 

「いちご大福に合うお茶はありませんか?」

 

「いちご大福……ですか?」

 

「苺のきらめきっていう商品なんですが」

 

「あぁ、しず香の!あそこの大福は美味しいですからね。それに負けないお茶をオススメしますね」

 

そう言って昨日のように試飲用のお茶を注ぎ入れてくれる。

 

「こちらは最高級品として名高い玉露になります。新芽の頃から覆いをして直射日光を遮りながら時間をかけて育てられた茶葉は、艶のある深い緑色で、際立つ香りと共にとろりとした旨みが特徴になります」

 

ズズ……

 

「いかん……また溶ける……」

 

昨日のお茶と打って変わって、渋みよりも旨味が引き立ち、しかも低温のお湯でじっくりと凝縮して仕出されたそれは、程よい温かさで、寒空を走ってきたケンの脳味噌をとろけさせて行く。

 

「これにしまふ……」

 

即決である。

そして値段も最高級品のお茶だけあり、野口さんが二人は飛んでいくものだった。

 

「ありがとうございました!妹さんにもよろしくお伝え下さいね」

 

「ど、どうも……」

 

思わぬ出費に懐が痛むが、なでしこの親類への手土産だ。抜かるわけには行かない。

その分、試飲で美味かったことを実感しているのだから、後悔はなかった。

再びバイクに跨ると、リンと合流するために浜名湖を目指してバイクを走らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

リン『浜名大橋の方へ海見に行ってくる』

 

ケン『おいまじか』

 

渚キャンプ場に着いてメッセージを見れば、そんな一言を残してリンはキャンプ場を出ていた。受け付けだけは済ませてくれていただけマシか。

 

「……少し走るか」

 

再びバイクに跨り、発進させる。

そこまで遠くへ行くわけにもいかないため、浜名大橋を北上し、村櫛町の湖岸沿いの道を抜けていく。海沿いを走るのとはまた違った開放感は、二日間のツーリングの疲れなど感じないほどに爽快だった。

が……

 

「腹が、減った……」

 

時刻は昼過ぎ。流石に玉露を飲んだだけでは腹は膨れないのは悲しいところだ。

十数分ほど走らせたあたりにある遊園地の側のコンビニに寄り、そこで小腹を満たすことにした。

玉露で温まっていた体は既に冷え切っていた為、何かしら温まるものを求めて店内へ。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

そんな決り文句の挨拶と共に、レジ横に置かれているジューシー豚饅が目に飛び込んでくる。

よし、アレは外せない。

ターゲットを一つロックオン。あともう一品とお茶あたりを購入して腹を満たせば問題ない。

パンコーナーにホットドッグがあったので、それと『ウホッ!お茶』。あとはジューシー豚饅を購入だ。

レジに購入物を持っていくと、やや気だるげなムードの若い女性店員が応対してくれた。

 

「温めますか〜?」

 

「お願いします。あ、すぐ食べるのでレジ袋は結構です」

 

「ありがとうございます〜。お客さん、お正月からバイクですか?」

 

「えぇ、妹と年越しキャンプをしに磐田まで」

 

「へぇ〜、年越しキャンプ。そういうのもあるんですね〜」

 

レジ待ちしている客が居ないからか、温め終わるまで話を振られた。まぁ特には支障はない内容なので応じることにした。

 

「どちらからですか?」

 

「身延……山梨からです」

 

「結構遠いところから来られたんですね〜」

 

「でもこの辺りはあっちに比べて温かいですよ。俺なんて雪で道が凍結して帰れないから、もう何泊かしないといけなくなりましたし」

 

「大変ですね。私もバイク……って言っても二種なんですけど乗ってるから、その気持ちわかりますよ〜」

 

温め終わったホットドッグを渡してきたので、お茶や豚饅と共に抱える。

 

「お気を付けて〜、ありがとうございます〜」

 

コンビニ前の鉄製バーに腰を下ろし、温かなファストフードを頬張る。

これもまたバイカーの醍醐味だろう。

 

「明日はなでしこのおばあちゃん家か……ちょっと緊張するかも」

 

彼女の祖母はともかく、出会う予定である友達……恐らくは女の子だろう。

仲良くできるかどうか、少し不安ではある。

 

「ま、最悪リンとは仲良くしてくれたらいいな」

 

そんなつぶやきは、浜名湖のさざなみの音に静かに消えていった。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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