リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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改めて色々擦り合わせたらこっちになってしまった……進行構成不足です。

今回はおまけがメインになってしまった……


第十一話『粉砕玉砕大爆死』

風呂を終え、宿題を終え、後は寝ようかという時間

 

ケンはベッドで横になりながらスマホのディスプレイをじっと見ていた。

その画面には、ラインのメッセージ画面。送信先は『各務原なでしこ』となっている。

さて、どう誘ったものかと踏ん切りがつかない状態だ。なにせ今までデートなど未経験の領域。気の利いた言葉で誘えるかどうか。

 

(えぇい!ままよ!)

 

どうせなら当たって砕けろだ。

別にチャンスはこれだけじゃないのだ。二度三度とデートをするくらいこれからもあるのだから、一度断られるくらいどうってことない!

 

ケン『なでしこ、起きてる?』

 

なでしこ『起きてるよ〜』

 

スマホを見ていたのか、すぐに返事が返ってきた。

 

ケン『あのさ、次の土日にキャンプ、行かないか?』

 

なでしこ『今週の?』

 

ケン『うん、そうだけど。予定入ってたりする?』

 

なでしこ『ごめんね、今週はバイトのシフトが入ってて行けないんだぁ……』

 

砕けた。

 

ケン『そっか。なら仕方ないな。ってバイト?』

なでしこ『うん、身延駅の近くにある和食屋さんで』

 

ケン『へぇ……長期バイト見つかったんだ?』

 

なでしこ『うん!今日お姉ちゃんがそこに募集中の貼り紙があるの、教えてくれたんだよぅ』

 

(そっか……あの時桜さんはそこに向かう途中だったのか……)

 

なでしこ『だから寂しいけどアキちゃん達と楽しんできてね!』

 

ケン『いや、野クルの皆は誘ってないんだ』

 

なでしこ『え?じゃあリンちゃん?』

 

ケン『それも違う』

 

なでしこ『???』

 

ケン『なでしことキャンプデートしたかっただけなんだ』

 

何か画面の向こうでスマホを落とす音が聞こえた気がした。

 

なでしこ『で、デートでございますか』

 

ケン『うん。折角そういう間柄になったから、さ。一度行ってみたいって思っただけだよ』

 

なでしこ『そうだったんだ……なんだかごめんね?』

 

ケン『いいよ。それよりもバイト頑張って、行ける機会があったら行けばいいしね』

 

なでしこ『うん、いつかは行きたいね』

 

ケン『焦んなくてもいいよ。まだまだ時間はあるんだから、やりたいことを優先しよう』

 

なでしこ『再来週なら休みなんだけど……』

 

ケン『来週も再来週も俺がバイトだからなぁ……』

 

なでしこ『そっかぁ……中々合わないねぃ……』

 

ケン『また希望休出すときに練り合わせしたらいいよ。ゆっくり考えよう』

 

なでしこ『うん。そうする』

 

ケン『じゃ、そろそろ遅いし休むか。おやすみ、なでしこ』

 

なでしこ『うん、おやすみ。ケン君』

 

 

 

「ま、バイトなら仕方ないか……」

 

勇気を出したが叶わず。

でもデートしたい意思は伝わったのだから、一歩前進と考えても良いだろう。

 

「焦んないで行けばいい。時間はあるんだから……ふぁ……!」

 

大きな欠伸が一つ零れ出た。変な緊張が解れたことで眠気が本格的に襲ってきたみたいだ。

消灯してアラームを設定し、ゆっくりと目を閉じていく……。

 

「おやすみ、なでしこ」

 

今頃眠りについてる彼女に思いを馳せながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりへやキャン△

 

翌日 放課後 野クルの巣穴

 

ケンが生徒指導の先生にバイク談話で捕まり遅れるとのことで、先に駄弁っていた他の三人。そのうちあおいが図書室に行くと席を外して数分後……

 

「二人共ただいま〜」

 

「あ、おかえりあおいちゃ〜ん」

 

だが、その帰ってきたあおいの雰囲気に、千明は何となく違和感を感じる。

 

「……あれ?あおいちゃん、さっきより小さくなってない?」

 

流石のなでしこも気付いたようで、少し動揺を始める。

 

「え〜?気の所為やないの?」

 

「え〜?胸周りとかもぺったんこな気が……!」

 

「こんなもんやで〜」

 

確かにあおいのこれでもかと主張する二つの双丘が見る影もなく、モンゴル平原のごとく地平線が見えそうなほどに真っ平ら。明らかにおかしいとなでしこが疑問符を浮かべていたとき、

 

「ただいま〜」

 

独特のイントネーションで扉を開ける一人の人物。

 

「ビバークの新刊借りてきたで」

 

「あぁっ!おっきいあおいちゃんだ!!」

 

この状況に一番あおいと付き合いの長い千明が確証を得た。メガネを光らせ、それはまるで名推理のごとくロジックとトリックを解き明かす。

 

「さてはお前……ちびイヌコだな!?」

 

「ふふん!気付いたようだね!アキちゃん!」

 

その正体は、あおいの五つ下の妹、犬山 あかりだったのである。

 

 

 

 

「へぇ……あおいちゃん、妹さんがいたんだ?」

 

「せやで〜?てかあかり、こんなところで何やっとるん?」

 

「あおいちゃんのコスプレ」

 

明らかに背丈が高校生のそれと違うのに、すんなり入れる本栖高校……ガバ警備である。

 

「あっ!富士山キーホルダー!」

 

あかりの持つキーホルダーになでしこは目を光らせた。富士山スキーとしては外せない話題だ。

 

「なでしこちゃん、富士山好きなん?」

 

「大好きだよ!静岡から見える富士山も綺麗だけど、山梨から見える富士山もおんなじ位綺麗だよねぃ」

 

そう、ただなでしこは富士山がどこから見ても綺麗で素晴らしいものだと褒めただけ。それだけだ。

だが……

 

「……山梨と静岡の富士が……同じ位……?」

 

「え……?」

 

あかりの空気が変わった事に、なでしこは戸惑う。先程までにこやかだった彼女が目を鋭くし、ドスの利いたような声色に変わったのだから。

 

「アカンで、なでしこちゃん。うちら梨っ子も静岡っ子も、富士山はうちのとこが一番や思うとる。せやから山梨と静岡は長年対立状態が続いとってな?」

 

「え?え??」

 

いきなりスケールが大きくなって、なでしこの困惑もそれに比例してどんどん膨らんでいく。

 

「富士山を巡って、来年あたりに本格的な戦が起こるんやないかって噂になっとんのや〜!」

 

「なっとんのや〜!」

 

「IKUSA!?」

 

なでしこ、パニック。

 

「なでしこちゃんはもと静岡っ子……どっちの味方するん?やっぱり静岡か〜?」

 

「そそそそそれは!」

 

「アカンで〜?下手したらケン君とロミオとジュリエットになってまうで〜?」

 

「ふぇぇっ!?」

 

「そうでなくても下手なこと言うたら反梨者と見なされて、鳴沢氷穴に一生閉じ込められてまうでぇ!」

 

「まうでぇ!!」

 

「アヒィィィ!!」

 

なでしこガチ泣きである。

 

「なでしこ虐めんなホラ吹き姉妹」

 

「「なんのことや〜?」」

 

 

 

 

 

「そろそろ帰るわ〜。アキちゃん、なでしこちゃん、またな〜」

 

「うん!またね!あかりちゃん!」

 

「じゃあな〜」

 

嵐の如く現れ、嵐の如く去っていくあかり。部室棟から出て来た彼女を、背後から笑みを浮かべて狙う怪しい影が一つ。

 

「なでしこはアレだな、人を疑うことを覚えたほうがいいな」

 

「そうかな〜?」

 

「なでしこちゃんは今のままでええよ〜?」

 

はたしてあおいの言葉の意味とは、疑いを掛けられ始めたら、ホラ吹きが成功しなくてつまらないからと言うものなのだろうか……?

 

「いや、世の中にはイヌコのようなホラ吹きがまだまだ居るから……」

 

そんな千明からなでしこへの注意喚起を遮るように、野クルの巣穴の戸が開かれる。

 

「ちょっといい?」

 

「リンちゃん!?」

 

そこに居たのは頭頂部をシニヨンにまとめた少女の姿。

 

「冬キャンに専念するのにアラスカに引っ越すことにしたから、皆にお別れを言いに来たんだ。もう会えなくなるから」

 

「えぇっ!?そ、そんなぁ〜……な〜んてね!もう騙されないよ、あかりちゃん!」

 

「ふぁっ!?」

 

「でかしたなでしこ!よくちびイヌコのホラを見破ったな!」

 

「フッフッフッ……リンちゃんはそんなに小さくないからね」

 

満足げに笑みを浮かべるなでしこ。だが彼女に次の刺客が襲い来る。

 

「ちょっといい?」

 

「ん?で、でっかいリンちゃん!?」

 

次いで現れたのはあかりより頭一つ分以上大きなリン?だ。

そんなリン?こと桜の傍ら、野クルの死角にあたる扉の裏で指示を送る悪戯好きな一人の影。

志摩リン団子の生みの親、斉藤恵那だ。

 

「夏キャンもやってみたいから……」

 

「夏キャンもやってみたいから、アフリカに住むことにしたよ」

 

「えぇっ!?……なんてね!何やってるの?お姉ちゃん?」

 

「へぇ……驚いた。アンタ見破れるんだ?」

 

「流石にお姉ちゃんだもん、わかるよ」

 

「やるじゃねぇかなでしこ!上達してきてるな!」

 

「ふふん!私のことは名探偵なでしこと呼んでくれてもいいんだよ?」

 

鼻高々ななでしこ。だが第三の刺客が彼女に忍び寄ってきていた。

 

「ちょっといい?」

 

次は何故かジャージ姿でシニヨンの人物が現れた。

 

「次こそはリンちゃん!……だよね?でも少し大きい……?」

 

「火星キャンプしてみたいから、テラフォーミングしにいくことにしたよ」

 

(後で覚えてろ斉藤……!)

 

これはケンである。流石に女子制服を着たら、別の意味で生徒指導の先生にお呼び出しされかねないので、男女共に同じ服であるジャージ姿となったのである。

 

「か、火星!?でっかいリンちゃん達とちっちゃいリンちゃん……どれが本物の……!?」

 

「そうだな〜」

 

「はっ!?」

 

「なでしこちゃんが決めたらええよ〜?」

 

「えぇっ!?」

 

悪ノリを始めた千明とあおいも志摩リン団子へ。もはやどれがリンなのかわからなくなったなでしこ。彼女にとって、リンの判断基準は志摩リン団子しかないのだろうか……?

 

「あっちもリンちゃん、こっちもリンちゃん……リンちゃんがいっぱい……!

り、り、り……

 

リンちゃァァァァん!!!

 

なでしこの悲痛な叫びが、本栖高校に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方

図書室で当番をしながらウトウトしていたリン(本物)のもとにメッセージが届く。その音で微睡みから呼び覚まされ、内容を確認する。

 

なでしこ『どれが本物のリンちゃんだっけ!?』

 

そこには様々な志摩リン団子に囲まれたなでしこが半泣き状態で写真を撮って送ってきていた。

その影で黒幕たる恵那が、実に満足そうな笑顔を浮かべながら写り込んで。

 

「なにやってんだ?あいつら」

 

そんなリンのつぶやきに答えるものは、図書室には誰もいなかった。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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