リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第十四話『なでしこのソロキャン』

「一人でキャンプに行きたい……ですって……!?」

 

なでしこは今、勝負の時を迎えていた。先月にも同じようなことがあった気がするが。

眼の前には、お茶を飲みながら鋭い目つきで『スゴ味』を発しながらこちらを見る姉の桜。

ソロキャンに行きたい。

その意志を伝えたらこれである。

 

「ふ、冬だけどここより温かいし、そんなに遠くないところなんだけど……?」

 

どん!と持っていたコップを強めに(なでしこ比)机に置いた桜に、『ヒッ!?』とクッソ情けない悲鳴をあげてしまう。

これはもしかしなくても反対される……!

そう予想するなでしこだったが……

 

「気を付けていくのよ」

 

まさかの許可。反対されると思っていただけに、なでしこはすこし拍子抜けしてしまう。

 

「へ?いいの?」

 

「スマホ出しなさい?」

 

許可をもらえたことでなんの疑いなくスマホを渡すなでしこ。

桜はそそくさとダウンロードアプリを立ち上げ、とあるアプリケーションをダウンロードしていく。

 

「何してるの?」

 

ダウンロードしたのは、所謂見守りアプリ。対象のスマホが今どこにあるのかGPSで追跡し、変な所に行ってないか確認するためのものだ。

 

「アンタが言ってた西富士宮のキャンプ場までの道に美味しい焼きそばの店があるから寄ってみたら?」

 

「ほんと!?行ってみる!」

 

食べ物の話題にめちゃくちゃ食いつくなでしこ。

なんだかんだで妹には心配性で甘い桜だった。

 

 

そしてなでしこの私室の壁には、リンから教えてもらったソロキャンまでの準備しておくことを箇条書きにした紙が貼り付けられ、項目の一つである『家族や知人に行き先を言っておく』を消すに至り、なでしこは満足げな笑顔を浮かべた。

 

そこから一週間。

なでしこは項目を埋めるために入念な準備を行う日々を過ごす。

バイトに学業。その傍らでキャンプ場の情報を調べ上げ、電波状態や水道、トイレの状態を、口コミやブログの写真やコメントを元に確認。直火NG、ということで、千明から焚き火台を借りる事も抜かりなく。

天気も、週末の空模様は勿論、リンの言った通りに気温の変化も視野に入れて調べて問題なく。

 

そして金曜の放課後

 

野クル四人があおいのバイト先であるゼブラに集まり、なでしこに両手いっぱいのジュースやお菓子を差し入れる。

三人がお金を出し合って購入したもので、なでしこのソロキャンデビュー成功を願ってのプレゼントだ。

 

「なでしこちゃん、気ぃ付けてな?」

 

「うん!ありがとう!みんな!」

 

「ソロキャンの成功を、千明が草葉の陰から願ってるからな!」

 

「おい、アタシを勝手に殺すなや!……ま、しっかり楽しんでこいよ!」

 

「えへへ……もちろん!」

 

「なんかあったら電話しろ。駆け付けるから」

 

「お、ケン君、王子様発言やるやん?」

 

「いや〜、冬の身延なのに熱いぜ〜……カイロいらなくね?」

 

「うっさい、心配して何が悪いっ!……ともかく、気を付けてな?」

 

「うん!各務原なでしこ!ソロキャンの任務に着きます!」

 

「各務原隊員の成功を祈る!各員!敬礼!」

 

「なんやこのノリ……」

 

かくして、

沢山の人達に背中を押され、なでしこのソロキャン前夜はゆっくりと終わりを告げていった。

 

 

 

 

翌日

その日は珍しく桜アラームが鳴るまえに目覚めたなでしこ。

外は未だ日が昇らずに暗く、朝霧が薄く立ち込めていた。

玄関でブーツを履くなでしこを、あくびを噛み殺しながら見送る静花と桜。

見送るなでしこの背中には、テントやらお菓子やらシュラフやらお菓子やらの大荷物。実に重そうではあるが、なでしこは意に介すこともなく立ち上がった。

 

「いってらっしゃい」

 

「行ってきます!」

 

見送る母と姉に、季節外れのひまわりのような笑顔でなでしこは応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が昇り、時刻は9時過ぎ。

今日も今日とてガソリンスタンドのバイトに勤しむケン。

いつもどおりの業務内容を手慣れた様子でこなしていたのだが……

今日はどこか集中し切れていない様に見受けられた。

客が来れば、何時もならいの一番に駆け付けるのに、今日はほんの少しだけ反応が遅れたり……

 

「志摩くん、今日は体調が悪かったりしないか?いつもに比べて少し鈍いよ?」

 

「へ?い、いや、そんなことないですよ?」

 

「ならいいんだけどね。無理してぶっ倒れるようなことはなしにしてくれよ?」

 

「それは勿論です!っと、お客様なので行ってきます!」

 

急ぎ駆け付けると、停車したのは見馴れた水色のラシーンで、その運転手も見馴れた人物だった。

 

「桜さん、いらっしゃいませ!」

 

「現金満タンでお願いね」

 

「はい!」

 

そこからはいつもの変わらぬやり取りだ。各ガラスを吹いたり、精算したり。

お釣りを渡し終えたとき、他に客が居なかったので、世間話がてら聞いてみることにした。

 

「桜さんは今日どちらへ?」

 

「ちょっとドライブにね。早川にある温泉まで行こうと思って」

 

「奈良田湖温泉のことですか?でしたらここから一時間くらいですね。結構な山道なのでお気を付けて」

 

「えぇ、ありがとう。ところでケン君はなでしこのことは知ってるのよね?」

 

「えぇ。初めてのソロキャンに行くって、ここ一週間意気込んでました」

 

「心配?」

 

「……正直言えば」

 

「そうよね……」

 

「ま、まぁなにか困ったことがあれば俺の方にも電話してくるように言ってますので」

 

「そう、その時は悪いけどお願いね?」

 

「任せてください!……あ、そうだ。奈良田湖に行かれるのでしたら、リンと鉢合わせるかもしれないですね。今日は奥山梨に行ってから、雨畑あたりで泊まるとこを探すって言ってましたので」

 

「もし会ったらよろしく言っておくわ」

 

「お願いします」

 

「じゃ、バイト頑張ってね」

 

「はい!まいどありがとうございました!」

 

立ち去るラシーンを見送り、ふとさっきチーフに言われた言葉を思い出す。

いつもに比べて少し鈍い、と。

桜との会話で、なんで鈍かったのか……その理由に得心がいった。

 

(なんだ……俺、なでしこのこと心配してたから鈍かったのか……)

 

あれだけしっかりと送り出したのに、こんな体たらくだ。つくづく変なところで心配性な自分に笑いがこみ上げてくる。

 

「休み時間にでも、ちょっとメッセージ送ってみるか!」

 

意気込んだところで次の客がまた入ってくる。

兎にも角にも今はバイトに身を入れなければ。

ケンは頬を両手で叩いて気を引き締め、客の応対に向かうことにした。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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