リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
予想外に暑さと疲労でダウンしてました
「なでしこちゃん、ソロキャンどうやった?」
「うん!すっごく楽しめたよ!」
ソロキャンから休みが明けて放課後。
野クルの部室へ向かう千明、なでしことあおい、そしてケンは、なでしこのソロキャンの報告を受けていた。
「富士宮も観光できたし、キャンプ場もすっごく夜景が綺麗だったんだよ」
(わかる)
野クルで唯一、なでしこの見守りを行っていたケン。見守りの中で見えた夜景は、確かに特筆すべきものがあったのは事実だ。
「それでね、料理もすごく上手くできたんだよ〜」
「おぉ〜、ホイル焼き美味そうやな〜」
(五目しぐれ、めちゃくちゃ美味かった……。また食べに行きたい。だが……桜さんと行ったら原付きの旅の話題は原則禁止、と)
忘れようにも忘れられない。
あの日、桜にしぐれ焼きを御馳走になったリンとケンだが、食事時間よりも原付きの旅の話を聞いている時間のほうが長かった。その話題性たるや、普段物静かな桜が、『誰だアンタ?』と言いたくなるほどに饒舌だったほど。
「でもご飯食べたあと、少し退屈だったかな〜。だから展望台に上って夜景を見ながらぼーっと考え事してたんだ。そしたらなんか、またみんなとキャンプ行きたくなってきちゃった!」
「ホント、キャンプ沼にズブズブだな」
「底なし沼みたいだね。もう私はキャンプから抜けられないのだよ!だからこれからは、グルキャンとソロキャン、交互に行こうと思います!」
「なるほど!よ〜し!じゃあ次はグルキャンだな!恵那とリンも誘おうぜ!」
「だね!」
「んじゃ、どこ行くか先生に相談しに行くか?」
「おうともさ!早速鳥羽先生のとこに行くぞ野郎ども!」
「誰が野郎や!」
千明が職員室へ駆け出したのを他の三人も追い駆ける。
なんだかんだで山中湖の件で冬キャンプがトラウマになっていやしないかと心配するケンだったが、杞憂だったようでほんの少し安心したのは彼だけの秘密である。
「それなら3月頭に伊豆へ行くのはどうですか?」
「伊豆キャンすか……!」
「いいよね!伊豆!」
相談して早々、鳥羽先生からすんなりとアイデアが出された。
曰く、山中湖で千明達がお世話になった飯田さん親子の店を調べているのを見た大町先生が、伊豆ならそれほど寒くはないだろうから、おすすめされたとのことだ。
「助けてもろた御礼に、お土産もってかなあかんな」
「だな〜、でもなんで一ヶ月以上先なんです?」
「皆さんこの前キャンプしたばかりでしょう?伊豆に行くとなると旅費も掛かりますし、少し間を空けたほうがいいと思いまして」
「……確かに資金的には少々心許ないのは否めない……」
「せやな……」
「美味しいものとか食べたいしね〜……」
「うむ……正月キャンプがまだ響いていてキツイのも確かだな……」
四人ともキャンプによる出費が嵩張り、懐事情がよろしくなかった。学生とは常に青春のための出費の繰り返しであり、こればかりはどうしょうもない。
「それに、2月末には学年末テストが控えてますし」
『うっ!?』
「ね?大垣さん?」
2学期末テストでさんざんだったのは顧問の知るところであり、野クル+2人の中で一番悲惨な成績であった。
「だから、皆さんバイトや勉強をしっかり頑張って、皆で行けるようにしましょう?私も勉強なら協力しますから」
「う、うす……」
バイトはともかく、勉強ばかりは苦手な千明は、濁った返事を返すしか出来なかった。
なでしこ『野クルキャンプ!in伊豆!!3月初めに開催予定だよ!恵那ちゃんとリンちゃんもどう!?』
あおい『バイトで稼いで伊豆キャンや!』
千明『まさに豪遊!!』
ケン『ヒャッハー!!伊豆で散財だー!!』
リン『いや、豪遊て……散財て……』
恵那『いいじゃん伊豆キャン!!』
ケン『ヒャッハー!!リン!伊豆のビーナスラインを攻めに行くぜ!!』
リン『いや、攻めんし!』
恵那『じゃ、リンは行くけど攻めないってことで』
リン『斉藤!謀ったな斉藤!』
恵那『リン!君はいい友人だったが、君の単純さがいけないのだよ!はっはっはっ!』
リン『ぐぬぬ……!』
千明『リンと恵那も参加っと!』
恵那『は〜い!』
リン『仕方ない、付き合ってやるか……仕方なく、だぞ』
ケン『皆さん聞きました?これが世間で言うツンデレって奴ですよ』
あおい『なるほどや』
リン『おいケン……屋上行こうぜ……ひさしぶりに……きれちまったよ……』
なでしこ『リンちゃん、本栖高校って、屋上行くの禁止されてなかった?』
リン『ぐぬぬ……!じゃ、帰ったら覚えてろよ』
ケン『サヨウナラ……野クル……』
とりあえず、伊豆キャンまでキャンプは封印し、その間は勉学とバイトに励むと方針が決まって、今日は帰るかということになったのだが
「そう言えば伊豆キャンの3月4日ってイヌコの誕生日だよな?なんかやろうぜ」
「えっ!?あおいちゃん3月4日誕生日なの!?私もだよ!?」
「ホンマなん!?なでしこちゃんも!?」
「なんだよお前ら〜大塩平八郎と同じ誕生日か〜!」
「「………」」
「よっ!大塩コンビ!」
「誰が大塩コンビや」
「アキちゃんはいつなの?」
「アタシは8月31日〜」
「お前、アニ○浜口と同じだぞ〜?」
「なん……だと……」
「アキの誕生日は毎年夏休みに遊び回ったツケをヒィヒィ言うてする日やな〜」
「ぐぬぬ……!そ、そういうシマケンとリンはどうなんだ!?」
「10月1日」
「……いいですか?落ち着いて聞いてください」
「なんだよ?」
「ロード・ジブリールと同じだってよ」
「なん……だと……」
ケンは心にとてつもなく大きなダメージを負った。
ちなみに
恵那はシン・アスカと同じということで、なんかケンは因縁めいたものを感じざるを得なかったのは余談だが。
翌日 放課後 校庭隅の野クルの縄張り
いつものように焚き火を焚きながらコーヒーを飲みつつ、今回伊豆キャンへ参加するメンバーに、鳥羽先生から大まかな予定の説明を受けていた。
「一泊目は下田の浜辺で」
「おおっ!海キャン!」
「二泊目は駿河湾と富士山が見える山の上で」
「富士山が見えるキャンプ場!むはーっ!」
「わかった、わかったから落ち着け」
「どちらも昔家族でよく行った場所で、すごくいい景色なんですよ!……後は回りたい場所を話し合って決めるという形でどうでしょう?」
『異議なーし』
泊まるところが決まれば、あとはグルグルマップで周辺や経路にスポットがあるか探していけば、計画は割とすんなり立てられるだろう。
そんなとき、行きたいところといえば……と、あおいが思い出したかのように挙手する。
「せや、先生。ウチの妹もキャンプ来たい言うてるんですけど連れてってもええですか?」
「あかりちゃん、ですか?」
「なんでも、伊豆の動物園に、カピバラ見に行きたい言うて」
そうして皆に見せるのは、温泉に入って何とも言えない表情を浮かべるカピバラの映像だ。
「これは癒やされるわ〜」
「柚子風呂気持ちよさそうだね〜」
「私も会いに行きた〜い」
「かわええ……」
「これは……行きたくなる気持ちもわからんでもないな」
全員が全員、カピバラに骨抜きにされていた。
これはもうカピバラに会いに行くことは満場一致で確定だろう。
「親御さんが許可してくださるなら構いませんよ」
「ほんまですか?」
「でもちびイヌコが来るとなると、8人か……大所帯だな〜。あれ?先生の車、4人乗りじゃなかったっけ?」
「残りはリンの単車と、ケンのバイクに乗せてもらえばいいんじゃない?」
「ケン君の後ろは譲れないよ!」
「だから一年経つまで無理だって!それに、そもそもリンの単車は二人乗り出来ない決まりだしな」
「うむ」
妙に食い気味のなでしこを制しながら、リンのビーノについても説明を加える。
ケンのタンデムは免許取得から一年経たないと無理だが、50cc以下の原付はそもそも一人しか乗ってはいけないのが法律で定められている。
「大丈夫ですよ。妹にミニバンを借りる予定ですから。8人まで搭乗出来ますよ」
「なんだ〜……」
それなら安心だ。と皆が安堵するが、ケンは神妙な面持ちだった。
8人定員の車に女7人男1人の密閉空間。そんな状態で勿論海沿いを通れば、遠心力で右へ左へ揺られるのは明らか。となれば、隣の子に否が応でも密着してしまうわけで……
(助手席に乗れば良いだけか)
不安は杞憂に終わる。
「先生」
と、ここでリンが挙手する。
「私とケンは原付とバイクで行ってもいいですか?」
「え?全員乗れますよ?」
「実はお正月に二人で伊豆に行く予定を立ててたんですが行けなくて……それからずっと、伊豆の道を走ってみたかったんです」
正月には人でごった返すと渉に言われて泣く泣く磐田へチェンジした計画。伊豆へ行くというのなら、ここはチャンスだ。
「俺もバイクで行きたいです。スカイラインとか、走ってみたいって思ってましたので……」
「ん〜……バイクはともかく原付でですか。身延からだと結構距離ありますが……」
「二人なら大丈夫だと思いますよ。浜松も伊那も行ってますし」
「そうですか……それなら構いませんが……ですが無理だけはしないでくださいね?」
「「はい!」」
念願叶っての伊豆ツーリングに、ケンはもとより、リンもワクワクが隠せない様子。
伊豆キャンまで残り一ヶ月と少し。
高校一年を締めくくる盛大なキャンプになると誰もが確信し、一日千秋の思いで日々を過ごしていった。
そんな中、
伊豆キャンの日までに学年末テストがあるわけだが、もう一つ重大なイベントが待ち受けていた……。
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
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