リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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今日はリンと、そしてこの小説ではケンの誕生日です!
が、しかし、ネタが浮かばなかったので誕生日記念小説はないけど、通常更新で許してクレメンス


第二十六話『眠気との戦い』

千明に遅れて鳥羽先生も登頂したところで、腰を下ろして改めて高原から望む海と伊豆諸島の景色を眺めながらの一服となった。もっとも、なでしこが腰が抜けた状態から立ち直りきれていないという理由もあるのだが。事情を知らない千明や鳥羽先生はなでしこの様子に最初首を傾げていたが、事情説明を受けて苦笑いを浮かべていた。

 

「やはり海はいいものズラ」

 

「ズラ」

 

「アレが利島で……あっちのデカイのが伊豆大島だな」

 

「伊豆大島か……島キャンもやってみたいね」

 

「うむ」

 

「季節柄夏のほうが良さそうだな〜」

 

「となると、海水浴しながらのキャンプやね」

 

「それはそれで魅惑的な響きだね〜」

 

「海水浴……」

 

ここで思春期男子たるケンが想像する。

今ここにいる面々。なでしこやリンを含めて皆、容姿が整っている。そんな彼女らが今の厚着とは異なる、肌面積多めの水着を……

 

(俺、肩身狭そう)

 

下心満載で水着に見惚れるなどという暇もなく、周囲に肌を曝け出した同じ歳の女子に囲まれ、さぞかし居たたまれなくなること請け合い。野クルに入ってしばらく経ち、さらに今の冬でこそその居た堪れなさも薄れてきたというのに。

 

(よし、島キャンになったら、俺は食料調達係を買って出よう)

 

海辺で釣りをし、或いは森へ入っては食える果物を取ったり、動物をキャプチャーしたり……そうすることで皆に貢献しようと心に誓うケン。

素直に水着を堪能しよう、などと邪な考えをしきれないあたり、これがチェリーボーイ所以の悲しさなのだろうか。

 

「また変なこと考えてるな、このバカ兄」

 

「いや、俺はただ今から島キャンに備えて俺のやるべき、そして出来ることを模索してだな……」

 

「なんとなくだけど、恐らくお前の考えてるのはゆるキャンじゃねぇ。サバキャンだ」

 

「ま、ケン君が私の水着に悩殺されてまうかも知れへんねやから、悩むのもやむ無しやろな〜」

 

「えっ!?」

 

あかりの冗談を真に受けて、ここで驚きの声を上げたのは、この中で一番純粋であろうなでしこだ。

その顔は真っ青に染まり、身体はガクガクと震え上がり、まるでこの世の終わりを見たかのような顔である。

 

「け、ケケケけケンくん!?ケンくんは小さい女の子の水着が好みなの!?」

 

「は?え?な、なんでそうなるの!?」

 

「だ、だだ駄目だよ!?あかりちゃんだよ!?小学生だよ!?ねぇ!?私の水着じゃ駄目なの!?」

 

「ちょ!何言ってんの!?落ち着けなでしこ!な?な??」

 

据わった目でずいずいと四つん這いで迫るなでしこに、座ったままジリジリと後退りするケン。とんでもない圧を発しながら迫る彼女は、正直ホラーじみている。

座ったままで行うという謎の鬼ごっこをするバカップルに呆れながら、あかりはこうのたまった。

 

「いや〜、なでしこちゃんて存外ヤキモチ焼きやなぁ〜」

 

「「なでしこ(ちゃん)で遊ぶなや」」

 

そんな彼女の頭頂部に、姉と千明からのダブルチョップが打ち込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が傾いてきて気温が下がり始めたのもあってか、薄手になっていた千明がくしゃみをし始めたので下山することになった面々。細野高原を発ち、車組は車内で話す中で、次の目的地はいよいよキャンプ場!という訳だが、その前に温泉に寄ってから向かうことになった。

伊豆はもともと海底火山だったため、温泉は伊豆半島に数ある中で、バイク組が湯冷めしないようにキャンプ場に程近い所を条件に選択することとなった。

そんな話題の中で約1名、リンがキンキンに湯冷めすることでしまりんだんごアイスと化す妄想を膨らませ、ニヨニヨしていたのは余談なのだが。

 

「ケンくん!リンちゃん!この先の堂ヶ島温泉で温泉入ってくよ〜!」

 

「うい〜」

 

「ふぁ……!」

 

信号で停車したときに、なでしこが窓を開けて二人に行動予定を伝える。リンはいつもの気の抜けた返事だが、ケンはフルフェイスマスクの中で大きなあくびを一つ。口からの吐息でシールドが真っ白に曇っていた。

 

「大丈夫……?」

 

「んむ、まぁなんとかな」

 

「あとちょっとだから頑張ってね!」

 

「うい〜……」

 

「ほんとに大丈夫か?」

 

消え入りそうな声で返すケン。前を走るリンが心配そうに振り返った。

 

「まぁな。頑張って温泉まで保たせるよ」

 

「そ、そうか……無理だけはするなよ?」

 

「あいあいさー……」

 

正直夜中出発に加えて長時間の運転がここに来て響いてきたらしい。同じ時間走ってるリンは、下田で少し仮眠をとっていたのでまだ大丈夫そうではある。だがケンは出発してから一睡もせず、挙げ句細野高原で全力疾走等という、体力消費待ったなしのアホをやらかしていた。いくら体力にそこそこ自信があるとはいえ、限度というものがある。

 

(耐えろ、俺!この先に温泉が待っている!そう!リリンが生み出した文化のキワミ!そのさらなる至高の領域たる温泉!その魅惑的な響きが、疲れと寒気に満たされた俺を迎えるべく待っている!待ってろよ……温泉!!)

 

堂ヶ島温泉まであと2km。ここが我慢所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堂ヶ島温泉の露天風呂に浸かりながら、夕日に照らされる海と堂ヶ島を眺める最高の贅沢。本来下田でキャンプしていたら味わえずにいた絶景。絶好のロケーションに女湯は盛り上がる中……

 

「お、おい兄ちゃん。大丈夫かい!?なんか溶けてるぞ!?」

 

「ほげぇ……」

 

男湯では、溜まりに溜まった寒さと疲れと眠気に、温泉というフィニッシュブローが炸裂し、掛川のお茶のときのようにまるで温泉に溶けるかのようにだらけていたケンが、思わず他の客に驚かれていたとかなんとか。

 

そして……

 

眠気をなんとか押し返して風呂から出てきたケンの目に映った光景。

それは

 

「ぷはぁっ!!温泉上がりはこれに限るぜぇ!!」

 

お風呂上がりにコーヒー牛乳を一気飲みする千明。あおいに『おっさんみたいや』と呟かれていたのはさて置くとして。

 

「ぷっはぁ!ほんとですねぇっ!!」

 

釣られて鳥羽先生も、温泉で温まった身体を一気にキンキンに冷えてやがる飲み物で冷やす快感に酔いしれる。

だが……

彼女の手に持つその缶は、

生ビールのそれだったことに、誰もが言葉を失ったのは言うまでもない。

 

結果として代行を呼ぶことになり、野口英世三人が旅立ったのは、ぶっちゃけ自業自得である。

飲酒運転、ダメゼッタイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、もう暗くなってるし、手分けしてちゃちゃっと設営しちまうとするか!」

 

『お〜!』

 

キャンプ場で受付を済ませた時には既に日は完全に落ち切り、周囲は暗闇に包まれていた。

冷え込みもある為、手早く設営をしていく面々。

だが、

 

「ぐぅ……」

 

眠気が最高潮に達したケンは、テントにシュラフを敷くと、そのまま籠もって寝息を立て始めてしまった。

 

「け、ケンくん!?ご飯、もうすぐできるよ?」

 

「ん〜……あと5分……」

 

女房役たるなでしこが、伊豆で夢の国へ旅立とうとするケンを揺り起こしにかかる。

だがケンとて負けじと夢にしがみつくように中々起きようとしない。

 

「ぬくぬくでたまらん……ぐぅ……」

 

「そっか、起きないんだケンくん。だったら……」

 

業を煮やしたなでしこは、ニヤリとやや黒い笑みを浮かべながらケンのテントに侵入。微睡みに沈みゆく彼になにか仕掛けるべくゆっくりと近づいて行く。

 

「呼んでも起きないケン君には、お仕置きしないと、だね?」

 

ちゅっ…

 

そんな音がテントに響き渡る。

得も言われぬ柔らかな感触にカッと目を見開いたケンは勢いよく起き上がり、その柔らかな感触があったところをさする。

 

「……?………??何だったんだ?今の……」

 

「あ、おお起きたねケンくんっ。もうすぐ夕飯だよ?起きて行こっか!」

 

顔を伏せながらテントから出ていくなでしこ。その様子にケンは思い切って尋ねる。

 

「なでしこ、俺になんかした?」

 

「し、しししてないよっ!夢でも見てたんだよっ!」

 

「なに焦ってんだ……?」

 

「あ、焦ってないもん!さ、先に言ってるから!」

 

そそくさとブーツを履いて出ていったなでしこ。僅かに見えた耳は、なんとなく真っ赤に染まっていたように見えたが……

 

「……とりあえず、飯だし起きるか」

 

あの謎の感触はなんだったのか?首を傾げつつも、睡眠状態から思いっきり飛び起きたからか、目がすっかり冴えてしまったケンに二度寝はなく、ゆっくりとテントをあとにする。

頬のあの柔らかな感触に名残惜しさを覚えながら。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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