リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
「「出来たー!」」
あおいとなでしこが担当する伊豆キャン一日目の夕飯。それは安定の土鍋で作る具だくさんのアヒージョだ。にんにくの香りが周囲に広がり、空腹を加速させていく。
「にんにくのいい香りがたまらんなぁ〜」
「美味しそうですねぇ」
「「先生、こっちも焼けました!」」
と、アヒージョの完成と合わせて出来上がったのは、伊勢海老の炭火焼き。
これは一日運転して疲れたであろう鳥羽先生を労うと共に、恵那と千明にはもう一つの思惑が。
すでに酔いが回っている鳥羽先生に焼かせては、折角の伊勢海老の殻が焦がすであろうことを予見し、殻を守る意味も含めて二人が焼きに回ったのだ。
かくして、程よく焼かれた伊勢海老を肴に始まる鳥羽先生のグビ姉化。口に含んだホクホクの海老の身を日本酒で追っかけて……
「かっはー!最っ高ぅ!!伊勢海老にはやっぱり日本酒ねぇ〜!」
最早オヤジである。
「こっちもできたよ」
「焼いてて空腹で死にそうになるやつだコレ」
そして志摩兄妹が作っていたのは、ガーリックトースト。トースターがないので、バーナーに網を乗せて焼き上げたものだ。
アヒージョとガーリックトースト。これでもかと言わんばかりにニンニクづくしの夕飯。各々しっかりと疲れをとって、明日もわ伊豆キャンを乗り切ろう!という意図もあった。
「それじゃ……ちょっと遅うなってもうたけど……」
『いただきま〜す』
各々長楊枝で具材を刺して、熱々のオリーブオイルが絡んだそれを口に頬張る。
『うまぁ〜!!』
にんにくと、各々の旨味が滲み出たオリーブオイルが絡むことで、どの具材も甲乙つけがたい程に旨く、誰もが夢中で食べすすめる。
シャキシャキのヤングコーンとブロッコリー
ホクホクの粒ごとにんにくと長芋、そしてナス
プリプリの魚介とウインナー
それら全てが自らの持つ食感と旨味が余すことなく引き出されていた。
「ガーリックトーストに乗せるとまたうまぁ〜やな〜!」
「にんにくのパンチがさらに強調されて……」
「たまらん……!」
もはや口の中はにんにくフェスが開催されてどんちゃん騒ぎが始まっている。
そして旨さと疲れと眠気のトリプルコンボを食らった彼は……
「うますぎて……パトラッシュとネロが迎えに来た……」
「ケンくうぅん!!」
昇天仕掛けていた。
「なぁ知っとる?」
と、唐突にあおいが話題を切り出した。
「アヒージョのジョは、スペイン語で叫ぶって意味でな?アヒージョはうますぎて『アヒーッ!』って叫ぶ意味らしいで?」
「はいはい」
いつものあおいのホラだ。皆がそれを理解し、ある程度聞き流しながらも、ここはどことなくそのホラに乗っかってみようと誰しもが思い、揃ってアヒージョを口に頬張り……
『アヒーッ!!』
愉快な叫び声と共に吹き出す笑いが、キャンプ場に響き渡った。
ちなみに
アヒージョとは『小さなニンニク』『刻んだニンニク』という意味である。
「なぁなでしこちゃんなでしこちゃん。金目鯛の干物って、使わへんの?」
「ふっふっふっ。まぁまぁ、そう焦らずに。ここからですよ」
せっかく買った高級食材なのだ。使わねば勿体ないだろうと思ったあかりだったが、なでしこには彼女なりの思惑があったようで、ニヨニヨと思わせぶりに笑みを浮かべる。
「具材の旨味がオリーブオイルに溶け込んだ頃合いやな……」
「そうみたいだねぃ……!」
「ほならなでしこちゃん、バトンタッチや!」
「Entendido!」(スペイン語で了解の意)
具材が無くなりかけた鍋を覗き込んだ料理当番たるなでしことあおい。アヒージョはあおいの当番と位置付けていたようで、それを引き継いでなでしこが更なるご馳走を作り出すようで。クリキャンのすき焼きのような期待感が皆の胸に膨らむ。
そして始まるは、人読んでなでしこマジックと言わんばかりの手腕。
アヒージョで残ったオリーブオイルに持参した調味料と追加の食材、金目鯛の干物を投入。アドリブで鳥羽先生が持ってきた白ワインを振り掛け、更にパスタを加えて味を整えることで……!
「金目鯛のアクアパッツァパスタの出来上がり!!」
『これ、絶対うまいやつじゃんか!』
出来上がったそれを口に含めば、アヒージョから更に洗練された旨味が口いっぱいに広がり、まさに時ではなく味を加速させる『メイド・イン・ヘブン』がそこにあった。
さらに香ばしい金目鯛のお頭の炭火焼きまでも用意され、まさにまるごと金目尽くしの夕飯!誰も彼もが絶賛の嵐だ。あっという間にアクアパッツァを平らげてしまった。
「アヒージョからアクアパッツァへの流れるようなリメイクと連携プレイ……初日からこんなレベルの高いの作って明日のハードル上げやがって……!」
「まさに付け入る隙なしだね!」
「直前まで色々調べてたんよね〜」
「うん!こうしたらアヒージョのオリーブオイルが活用できて無駄にならずに洗い物が楽になる、とか」
「干物は塩気が強いから、塩は控えめにしたほうがええとかな〜」
「まさに主婦のワザマエって感じだな」
「そうなんですよ小姑サマ!このなでしこ!主婦力高い系女子を目指してますから!」
「誰が小姑だ!……それはそうとなでしこ」
「なぁに?リンちゃん」
「その旦那は夢の世界に旅立ってるんだが?」
「あぁっ!?」
リンが示す先には、座ったままうつらうつらと船を漕ぐ黒一点。アヒージョからアクアパッツァ、金目鯛のお頭焼きと美味いものによる怒涛のコンボを喰らい、彼はもはや限界を迎えていた。
まぁ何とかかんとか夕飯を終えるまで持ち堪えた彼の根性は称賛すべきである。
「ま、お疲れのやつは少し休ませてやるとして、アタシ達でちゃちゃっと片付けちまうか!」
『お〜!!』
協力してケンを彼のローチェアに座らせて、冷えないようにブランケットを掛けて、他の面々は食器を洗いながらこれから何をするか話し合っていた。
「なぁなぁ?これから寝るまで時間あるけど何するん?」
「クックックッ……!ナマゾンプライムビデオで動画鑑賞しまくりタイムだぜ〜?」
「あ!えぇな〜!せやったら私、『かいだんぐらし』見たい!」
「ゑっ!?怪談!?」
ビクリと震え上がり、食器を洗う手が止まるのはなでしこだ。こういうホラー系が怖くて堪らないらしく、顔がドンドン青ざめていく。
「なんやなでしこちゃん、こわいん?」
「べっべべべ別にっ!怖くないし!!全然平気だし!?」
「ほな決定な〜!」
「っ!?!?」
なでしこにとって処刑宣告に等しい決定が下された。
そして……
焚き火に当たりながら、各々ブランケットに身を包み、テーブルの上に設置されている千明が持参したタブレット、そこに映し出される映像に、皆が皆真剣な面持ちで注視する。
場面は夕暮れ時の学校廊下。
ツインテールの少女が一人、スコップを片手にゆっくりと歩いていく。
その表情は緊張感に満ち溢れており、警戒すべき『ナニか』を恐れるかのように……。
「ぁ……ぁゎゎ……!」
そしてその画面を見つめるなでしこも、緊張に加えて恐ろしさでガタガタと震え、ローチェアで眠りこけているケンの腕にしがみついている。しかし恐れている割に画面をしっかりと食い入るように見ているのは何故だろうか?
そして場面は廊下の角。
死角に何が居るのかわからない恐怖に、誰もが固唾を飲んで見守る。それは画面内の少女も同じであり、スコップを振り被りながらゆっくり、またゆっくりと歩みを進めていく。
あと少し、というところで勢いよく飛び出すことで不意をつく作戦に出た。
果たして廊下を曲がったそこには……
『「何もない……?ふぅ……」』
奇しくもアニメキャラとなでしこの言葉が重なり、互いに安堵のため息をひとつ。
だが彼女の背後に近寄る一つの影。ボロボロの姿でヨロヨロと、まるで……まるで……
『それはお前だぁぁ!!』
「アヒー!!!」
謎の男によって後ろから胸を貫かれるアレ。突然の男の登場に、なでしこは訳の分からぬ悲鳴を上げる。
『フェニックスが抱き着いているよ』
そして何故か少女に後ろから抱きつく謎の男。
『お前の後ろだ!!』
さらにその後ろから抱きつく謎の男とそっくりの男。
『それはお前だ!!』
さらにその後ろから(略)
『フェニックスが抱き着いているよ』
『お前の後ろだ!!』
『それはお前だ!!』
『フェニックスが抱き着いているよ』
『お前の後ろだ!!』
『それはお前だ!!』
そして男の列は学校の階段まで伸びていき……
「何だこれ……」
「怪談ぐらしやのうて階段ぐらし……?」
何とも締まらない結果だったのだが……
「ようわからんかったけど、なでしこちゃんには効果テキメンやったみたいやな」
「ぁゎ………ふぇ、ふぇにっくすぅぅ………」
ケンの腕に抱きついたまま目を回している彼女が、ある意味一番楽しんでいた……と言えなくもなかった。
何を書いてるのかわかんなくなってきた。
夜のテンションて怖いね
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
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