リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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彼をバイクに乗せてたら、言わせたくなった。
反省すれども後悔はしてない。


第三十四話『最終日の道行き』

「今日はこのあと大室山行くんだよな?遠いのか?」

 

「ここから車で一時間くらいだな」

 

帰りはゆっくりと、朝日を背にして皆でペースを合わせて達磨山から下山していく。

その道中、伊豆キャン最終日たる今日の予定を確認しあっていた。

 

「その前に飯田さんのとこ寄っていくんやんな?」

 

「うむ、それから昼まで大室山で遊んで、昼からはサボテンパークだな」

 

「あかりちゃんお待ちかねのカピバラだね!私も楽しみだよ!早く車戻ろう!」

 

はやる気持ちを抑えきれぬなでしこは、上がったテンションそのままに、急ぎ登山道を駆け下りていく。彼女にはペース配分とかそういうものはないらしい。

 

「元気なやつだな〜」

 

「はしゃいでコケるなよ〜!」

 

何だかんだ、トンボロで転倒未遂だったなでしこを心配するのは仕方のないことなのか。

ケンの釘差しも聞こえないのか、ペースを落とすことなく駆け下りていくなでしこ。

やれやれ、と野クルの鉄砲玉の元気に呆れ笑いを浮かべていた。

 

「あのさ、ありがとう」

 

突然のリンからのお礼の言葉に、残る四人は目を丸くする。

 

「今回誘ってくれて。楽しかったよ」

 

そんなリンの言葉に、呆気取られていたが、ややあって千明は苦笑いを浮かべる。

 

「なんだよ〜いきなり〜」

 

「リンちゃん、まだ気が早いで?」

 

「そうそう、今日はまだ始まったばかりだよ」

 

「家に帰るまでが伊豆キャンだ。ラスト一日、楽しみきろうぜ。リン」

 

「……そうだな」

 

誰もが思う。

今日が伊豆キャン最後の一日であること。そこに名残惜しさはたしかにある。

だからこそ、今日一日を全力で楽しもう、と。

既に遥か下を全力で駆け下りるなでしこのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャンプ場に戻った一行。その頃にはあかりも目が覚めたので、皆で作った軽めの朝食を摂り、いざ伊東へ!ということになったのだが。

今から西伊豆へ向かい、帰りはまたここに戻ってくることになるので、時間短縮的な意味を込めて全員でラフェスタに乗っていこうという案が上がった。ダメ元でキャンプの管理棟職員にバイクの預かりが出来るか聞いてみたところ、快く引き受けてくれたのもあり、晴れて車による伊東への旅となったのだが……

 

『き、キツい……!』

 

ラフェスタ人数制限いっぱいである8人乗車に加えて荷物も積むとなれば、その窮屈さは推して知るべし。

誰も彼もがぎゅうぎゅう詰めになっており、ゆったり車旅などあったものではない。

助手席から後部座席の凄惨な状態を見ていたケンは、やれやれと見かねて助手席を降りる。

 

「しょうがねぇな。俺はバイクで行くよ。そしたら少しは余裕できるだろ?」

 

「いやいや、そりゃシマケンに悪いだろ?」

 

「別にいいよ。その代わりに先生。伊東まで先導させてもらってもいいですか?」

 

「構いませんけど……ほんとにいいんですか?志摩君」

 

「単に走りたいってのもあるので問題ないですよ」

 

「なんや悪いなぁ……」

 

「だから気にすんなって。俺なりに楽しんでるだけだし」

 

そう言ってプロテクターやグローブ、ヘルメットを装着し、走行準備を整えていくケン。

 

「説明しよう!シマケンはグローブ、プロテクター、ヘルメットを装着し、全身防護することにより、フルアーマーシマケンとなり、圧倒的防御を誇るのである!」

 

「圧倒的でもないけどな」

 

バイクに跨り、エンジン始動。ホルダーに取り付けたスマホに伊東市の飯田さんが営む酒屋を入力。ルートを割り出させる。ある程度山間の道を走るのは、伊豆半島を半ば横断する形になるのでやむ無しか。到着予定時刻は概ね一時間後だ。

 

「ケン君、気をつけてね?」

 

「ここに来て怪我するつもりもないからな。任せとけ。リン、インカムを一応オンにしてハンズフリーにしといてくれ。何かあったら互いに連絡できるようにさ」

 

「ん、わかった」

 

「よし……じゃ、行きますか!」

 

達磨山から一台のバイクと、それに続く乗用車が、伊東市へ向けて発進する。ギアを上げ、エンジンを吹かし、加速。

徐々に自身に襲い来る冷たい風が強くなり、あっという間に今回伊豆キャンでの最高速度である時速30kmを超過する。法定速度による久々に感じる速さと風に、ケンは口元を緩める。

 

(不思議だ、この緊張感……!)

 

緩やかなカーブに差し掛かる。ギアを落とし、最低限のスピードダウンでバイクを倒し、カーブをスムーズに駆け抜け、抜けざまに再びギアを上げて加速する。

 

(オートマチックでは到底味わえない……!)

 

エンジンの回転数が上がり、高い音をあげ始める。ギアを上げ、大人しくさせて再び加速。アクセルを回してエンジンの回転数を再び上げていく。

 

(2気筒エンジンが、こんなにも息吹を……!)

 

次は連続したカーブ……ワインディングに差し掛かる。リアブレーキとアクセルで速度を調節し、右へ左へのカーブをすり抜けていく。

 

(たまらない……!こんなにもワインディングでの時間が走行に高揚感をもたらすのか……!)

 

次はキツめのカーブ。

リアブレーキを掛けて速度を調整し、カーブをリーンインにて突き抜けていく。

 

(感謝するぜじいちゃん……!よくぞこの喜びを俺に教えてくれた……!)

 

思い通りにバイクが走り、不思議と生まれる昂り。ギリギリの速度で攻め、そして走り抜ける緊張感と爽快感が、全身を駆け抜ける……!

 

『俺のライディングは、レボリューションだ!!!』

 

昂り果てた先に、思考が言葉となり、そしてそれはインカム越しに後方を走るラフェスタの車内に響き渡るわけで……。

 

「……アイツって、ホントに変人だよな」

 

「うむ……我が兄ながら恥ずかしい」

 

「走っとるとこ後ろから見とったら、ちょっとかっこえぇな〜って思っとったらこれやもんな」

 

「ケン君、流石にこれは私もフォローできないよぅ……」

 

車内で自身の変人ぶりについて実しやかに囁かれていることを露知らず。伊豆の参道を堪能するケンはどこまでもテンションが高く、途中でラフェスタ内のインカムの電源が密かに消されていたことを、本人は知る由もなかった、




短めですまぬ……

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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