リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第三十八話『伊豆キャン〜家路へ〜』

「そういえば、そろそろお土産買わないとだね」

 

サボテンパークから飯田さんの酒屋へ戻る車内で、ふとなでしこが呟いた。

伊豆キャンも最終局面。この後はリンのビーノを回収しにだるま山高原へUターンし、そのまま帰路へつくことになる。その道中にお土産屋があるだろうが、それでも彼女の言うようにそろそろ買い始めてもいい頃合いだ。

 

「買って帰ったら良さそうなものがいっぱいありそうだね」

 

「うん、お父さんからいっぱい買ってくるように言われてるしね!」

 

「じゃ、飯田さんの店から戻りがてら、土産屋に寄り始める算段で行こうぜ?一箇所だけじゃなくて、道行きで何軒か寄ってさ!」

 

「せやなぁ。色んな店回った方が色々買えるし」

 

『ふむ、土産……土産か。土産ねぇ……』

 

皆の会話をインカム越しに聞いていたケンが、まるでオウム返しのように土産と言う言葉を繰り返す。

 

「土産がどうかしたのか?」

 

『いや、俺ら今回じいちゃんに結構助けてもらって伊豆キャンに参加したし、御礼も兼ねて土産を買おうかな〜って』

 

スマホ充電のリレーもそうだが、リンはリンでビーノのスクリーンを持ってきて貰っている。学校の修学旅行とかならまだしも、今回はかなり祖父にお世話になったのは事実だ。それを改めて思い出したリンは、『確かに』と腕を組んで頷く。

 

「うむ、今回ばかりはちゃんとしたお土産を買って帰らないとだな」

 

『けど、何を買って帰ればいいかが問題なんだよな』

 

「ふっ……シマシマよ。土産ってぇのはな……?気持ちが籠もってりゃぁ何だろうと相手は喜んでくれるもんなんだぜぇ?」

 

『じいちゃん方方に出掛けてるからな〜……下手すりゃ色んなもん網羅してるかもしれんから何が良いのかさっぱりだ』

 

「そうだな、どうせならいいもの送って喜んでほしいよな」

 

「お〜い、アタシを無視すんな〜」

 

助手席からニヒルな笑みを浮かべて、さも良いこと言った!と自負しかねないクサいセリフを吐く千明を置いといて。あ〜でもない、こ〜でもないとウンウン唸るシマシマ兄妹。

 

「じゃあさ、飯田さんに聞いてみるのもいいんじゃない?地元の人なんだし」

 

「『そ れ だ!』」

 

恵那の提案に、目からではなく耳から鱗が出そうになった。

伊豆で困った=飯田さんに聞く

そんな方程式が確立しつつある。

肇は酒も嗜むし、もしかするとキャンプに使える肴と、それに合う酒を勧めてくれるかもしれない。

飯田さんへの信頼が爆上がりしている野クルであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほんだら、豚の味噌漬けとウチの池池があうだに!私もそれで時々晩酌をするでね!土産にもええで!」

 

『豚の……味噌漬け……!』

 

早速飯田さんの酒屋に着くや否や、酒を嗜む祖父に贈るお土産のおすすめを尋ねたケン。そして飯田さんの口から飛び出したのは、なんとも魅惑的な響きを持つ食材だった。

 

「おぉ、焼いたら味噌がちょっと焦げて香ばしくなるんよ!それがまた酒を進ませるでね!もちろん飯にも合うで!」

 

『ゴクッ……!』

 

言葉だけで飯テロだ。

先程サボテンパークでタコライスやハンバーガーを食べたはずのケンやなでしこでさえ、口内に唾液が分泌され、なでしこに至ってはよだれが口元から出てきている現状。

 

「アタシ、豚味噌買って帰ろ……」

 

「あおいちゃん!ウチらも!」

 

「せやな!私も買うて帰らんと後悔しそう……いや!後悔する!」

 

「私も買って帰ろうかな〜」

 

「お酒に合うとあらば、買わずにはいられませんね!」

 

酒はともかくご飯に合うとなれば、美味しい物好きの野クルメンバーが食いつかないわけがなく。

志摩兄妹も含め、全員が豚の味噌漬け購入が確定した瞬間だった。

 

「志摩君、酒買うんけ?」

 

「えぇ、ですが酒を積載してバイクを走らせられないので、郵送出来ますか?」

 

「おぉ、それがえぇ。警察に捕まったら大変だに。酒は家に送ったるでね。伝票持ってくるで待っとってな」

 

事務所に飯田さんが引っ込んだタイミングでリンがこそっとケンに尋ねる。

 

「お金、ホントにいいの?半分出すけど……」

 

「いいの。代わりにリンは味噌漬け頼むよ。んで、お酒が届いたら一緒に梱包してじいちゃんとこ送るべさ」

 

「ん、確かにそれがいいな」

 

「御礼の手紙も一緒に、な?」

 

「……うむ」

 

メールやラインが普及している今だからこそ、手紙によるお礼や気持ちの伝達は大切なもの。

きっと祖父は余り出さない表情を緩めてくれる。そんな確信が二人にはあった。

 

「待たせたでね!ここに住所と……」

 

きっと喜んでくれる。

そんな期待を胸にお土産を送る。

伝えたい楽しかった思い出を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飯田さん親子に別れを告げ、だるま山高原へ戻る傍ら。当初の計画通りに途中の土産屋や道の駅にてお土産を購入する。誰しもが豚の味噌漬けを逃すことなく購入したのは言うまでもなく。

なでしこに至っては両手いっぱいのナイロン袋のお土産を購入していた。

曰く、父からお土産用の軍資金を渡されていたのだとか。流石健啖家一家の大黒柱だと、彼を知るケンは腑に落ちる。

ちなみにお土産屋からだるま山高原まで、ラフェスタの車内が更に窮屈になったのは全くの余談である。

 

「お二人共、修善寺までで本当に大丈夫ですか?」

 

だるま山高原に戻り、預けていたビーノに跨って出発準備を始めるリンに、鳥羽先生は最後の確認をする。

 

「はい、原付きじゃ修善寺道路通れないみたいですし」

 

「ま、二人でゆっくりと身延に帰りますよ」

 

「そうですか。くれぐれも事故には気をつけて。疲れたら無理せず休んでくださいね」

 

「はい、どっかのバカが眠くならないように見張ってます」

 

「おま……!初日のことネタにすんなよな」

 

「先生もお気を付けて」

 

「ちょ……リンさんや……」

 

修善寺道路を含め、自動車専用道路や高速道路は原付きでの走行を法律で禁止されている。ケンの250ccは特に問題ない。だがここで一人リンを置いて帰るなどという選択肢はハナっからないので、下道を走る選択肢を取る以外なかった。

 

「二人共気ぃ付けてな〜?」

 

「お前らどっちか疲れたらアタシが代わってやっからな!」

 

「免許持ってないだろ、千明」

 

「フフフ……野クル部長、君にコイツを御しきれるかな?私の愛馬は凶暴です」

 

「だからアイツ免許持ってないから」

 

冗談をそこそこに、だるま山高原を出立する3台。インカムは今回はリンが使っているのでラフェスタ車内の会話は聞こえないものの、初日に比べれば雰囲気的に静かなもので、当初ははしゃいでいたあかりでさえも大人しいものだった。

疲れか

はたまた伊豆キャンが終わる寂しさからか

どちらにせよ、それはリンもケンも同様で、インカムから聞こえるのは互いの小さな息遣いだけ。

あと数時間

それで伊豆キャンの終わり

 

「じゃ、私達はこっちだから」

 

「先生、道中お気を付けて」

 

「ええ、お二人も気を付けて」

 

修善寺の梅林近くの交差点。直進すればインターチェンジへ向かい、左折すれば下道で山梨に帰るルートへ分岐する。

左折レーンと直進レーンで別れたことで、互いに並び合って信号待ちすることになった。

シールドを上げたケンにも、そしてリンの声にも、何かしら賑やかしな事をしかねない千明ですら静かに頷くのみ。この何とも言えない時に、流石の彼女も何かしら思うところがあるらしい。

 

「ケン君!リンちゃん!」

 

「「ん?」」

 

後部座席

その窓を開けたなでしこが、呼ばれたことで振り向いた志摩兄妹、その写真をパシャリと撮影する。

ほんの少しだけのお別れ。

それすらも思い出にしたい彼女なりの考えなのか。

 

「気を付けて帰ってね」

 

「わかってるよ」

 

「じゃ、また休み明けに、な」

 

「うんっ!家に帰ったら教えてね!」

 

そんな彼女の言葉を残し、青信号になったことでラフェスタは発進していく。

おそらくは車組は日が暮れる頃に帰宅できるだろう。

だがバイク組は制限速度に加えて自動車専用道路を走らない分長く掛かる。おそらくは休憩を挟んで帰って深夜になるやも知れない。

 

「んじゃ、気張って身延に帰るとしますか!」

 

『んむ、もちろん安全運転でな』

 

二人の伊豆キャン。それはまだまだ終わらない。

数時間駆けての帰路が、伊豆キャン最後の大仕事だ。

少し出てきた疲れ。だがそれすらも心地よく。

わずかずつながらも近づく我が家に向かい、アクセルを回す。

高く聳え、帰りを待つかのようにそこにある富士山を目指して。




おそらくは、次で二期最終話となるかな〜と。
何だかんだで年内完結して、三期アニメ始まるまでに映画編を終える予定です。ケンの職業は……?
あと、番外編もちらほら作る予定です。アンケート作るかもなので、また投票いただけたら幸いです。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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