リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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遅ればせながらあけましておめでとうございます。そしてしばらく更新が止まり申し訳ないです。
ゆっくり描き進めてたら流れがグダグダになってた……


第五話『始まらない料理』

「さてさてお客様、今日はどんな感じにしましょうか?」

 

チェアに座った千明にヘアカットエプロンを掛けながら恵那がそれっぽく尋ねる。形から入っていくスタイルらしい。

 

「そうだな〜、とにかく後ろと横を肩くらいまで短くしたいんだよな」

 

「思いの外結構バッサリいくのな〜」

 

「いや、鬱陶しくなってきたから、この際な」

 

「え〜?もっと短くしてカッコイイ系にしようや〜」

 

「カッコイイ系か〜……」

 

そんな2人のやりとりを、設営したタープの下にシートやチェアを展開し、各々くつろぎながら千明のヘアカットを見守るケン、なでしこ、あおいの3人。

 

「カッコイイ系といったら、こんな感じかな?」

 

「いや、カッコイイの方向性よ」

 

スマホでカッコイイ系のヘアスタイルのページを開いて千明に見せたのは、一昔前に流行った『SAMURAI』のそれだ。

 

「いやいや!アキちゃんはかわいい系も似合うと思うんだよねぃ!こう……ふわっとした髪型で〜」

 

「よせやい!アタシにかわいい系なんて似合わねーって!」

 

「ふむふむ、ふわっとしたかわいい系だと、こんな感じ?」

 

「いや確かにかわいいけどよ……」

 

次に見せられたのは、ふわっふわにトリミングされたポメラニアン。もはや人ですらない。

 

「寧ろ、短くしてパーマを掛けて、少しチリチリにしたら、案外似合うかもよ?」

 

「短くしてチリチリ……こんな感じ?」

 

ケンの案によって次に表示されたのは、どこかで見たことあるような俳優。

 

「これ大〇洋さんじゃねぇか!ダミだろコレ!」

 

「え〜?似合うと思うんだけどな〜」

 

「大丈夫じゃねぇよ!怒られたらなまら怖えもん!」

 

「じゃあ右はカッコイイ系、左はかわいい系、んで真ん中は〇泉系でいくね?」

 

「行くな!!」

 

隣でチョキチョキとハサミを開閉する恵那。目が本気の彼女に千明に戦慄が走る。

 

「でもやっぱり、アキちゃんはおデコが見えてるほうがアキちゃんぽいよね」

 

「結局そこに落ち着くんが正解やろな」

 

「デコに始まりデコに終わる……それが大垣千明という奴なんだよ」

 

「どんな人生なんだよアタシは……!」

 

「やっぱり私もおデコ見えてるほうがアキちゃんぽいと思うんだ〜。ってことで」

 

ヴィィィ

恵那が取り出したるはバリカン。そしてやはりその先にはアタッチメントすら付けていない、最短で刈れる状態の物。

 

「ちょっ!それだと短いどころか地肌全部見えちまうよ〜!!」

 

「は〜い、なでしこちゃん、あおいちゃん、アキちゃん抑えててね〜?」

 

「年貢の納め時やで?アキ〜?」

 

「アキちゃん、覚悟〜!」

 

恵那の一声に、千明が暴れるのを防ぐべく、なでしことあおいが彼女の身体をホールドして身動きを封じる。ケンに言わないあたり、なでしこの恋人としての気を遣っている……のだろうか?

 

「やはりバリカン(アタッチメント無し)に行き着くのか……」

 

「ちょっ……シマケン!お前動画撮ってねぇで止めろ!」

 

「失礼な!動画を撮っているんじゃない!ライブ配信中だ!」

 

「誰にだよ!?」

 

「ふっ……バイトで参加できない我が妹に、だ!」

 

「んなっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身延町 リンのバイト先の本屋

 

ケン『てことでリンさんや、明ノ山の断髪式が今!斎藤家にて執り行われようとしているその模様を私、志摩家の長男である志摩ケンによる実況のもと、お送りいたします!』

 

千明『やめろ〜!リン!そんな目でこんな私を見るなぁぁ!!どんな目かしらんけど』

 

「……何やってんだ?あいつら」

 

客が居ないからいいものの、兄からライブ配信動画として送られてきたそれは、常人には理解しがたいグダグダなやり取り。

 

「ま、楽しそうならいいか」

 

千明の悲痛な叫びを聞きながら、野クルの玩具と化した悪友。その髪型がどんなものになるのか楽しみにしつつ、来客に対応するためにマナーモードへと切り替え、引き出しに仕舞ったリンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お〜、スッキリしたやん」

 

「なんとな〜く伸ばしてたからな〜。いざ切ってみると、さみしいようなさみしくないような……」

 

「ま、短い髪型もすぐ慣れるよ」

 

結局、バリカンを使用するなどということはなく、恵那の割と普通のヘアカットによって、千明はものの見事にロングヘアから、希望通りの肩あたりで切りそろえた髪型へとチェンジしたのである。

そんな中、持ってきたスナックを貪りながらぶーたれる2人。

 

「ん〜、でもやっぱりアキちゃんはおデコが……」

 

「千明といえばデコだし、やっぱこう……前髪をバリカンでバッサリと……あ、なでしこ、コンソメ味ちょっと分けてよ」

 

「いいよ〜?うすしお味と交換ねっ」

 

「まだ言うかこのバカップル」

 

確かに前髪はそれほどいじっていないので額の露出はあまりない。

だがこのままでは、ポテチを食べさせあってるこいつらがいつまでもデコデコうるさそうなので……

 

「これで文句あるか〜?」

 

「おぉ!なんかアキちゃんがお姉ちゃんみたいに!」

 

前髪をかきあげて頭頂部あたりでヘアゴムによって縛ることで、千明の千明たるデコがバッチリお目見え。これにはなでしこも満足気である。

 

「じゃ、アキちゃんのデコも見えたところで、そろそろバーベキュー、始めよっか?」

 

「待ってました!」

 

メインイベントその2。庭ソーセージデイキャンの開催である。

取り出したるは各々作ったアルコールストーブに、ケンが行き掛けに薬局で買ってきたアルコール。そして……

 

「私は、鬼辛チョリソーを持ってきたよ!」

 

「私はハーブとレモンのソーセージや」

 

「私はチーズかまぼこだよ〜」

 

「それ、ソーセージ……なのか?」

 

「あと犬用のササミもあるよ〜」

 

「俺は市販のやつを燻してスモークソーセージ作って来たぜ」

 

『おぉ!』

 

取り出したるタッパーの中は、飴色に燻されたソーセージが並べられており、蓋を開ければふわりと燻された芳ばしい香りがふわりと広がる。

 

「それ、伊豆キャンの時に作っとったやつやんな?」

 

「まぁな、あれ以来燻製に少しハマってさ。今日はザラメを入れて燻したから、いい色付けが出来てるぞ〜?」

 

「ホントだ!綺麗な飴色になってる!」

 

「これは食べるのが楽しみですなぁ〜」

 

「フッ……!シマケンよ、アタシのハードルを上げてくるとは中々やるじゃねぇか……!」

 

「トリは部長、お前に回したんだ。もちろんアッと驚かしてくれるんだろ?」

 

「あたぼうよ!アタシの持ってきた物にド肝を抜かすなよぅ!?」

 

デデン!

そしてナイロン袋から千明が取り出したるは、白いパックに入れられ、ラッピングされた赤い合い挽き肉!

 

「って!ナマやんそれ!」

 

「神聖なソーセージキャンにハンバーグを紛れ込ませる気か!このデコ助!」

 

「いつの間にそんな壮大なキャンプになったんだ……!?てか話は最後まで聞くもんだぞ?」

 

そして次いで取り出したるは、細長い何かと、ドライヤーと近未来的な銃を足して二で割ったような装置。

 

「合い挽き肉とこいつらを使って、自家製ソーセージを作るんだよぉ!」

 

『自家製……ソーセージ!!』

 

細長い何かはケージング。ソーセージの肉を詰める皮。そしてドライヤーもどきはソーセージスタッファー。ケージングに肉を詰めるツールだ。

 

「自家製かぁ!面白そうだね!」

 

「こんなんいつの間に買うとったん?」

 

「うちの母親が何年か前に買って使われずに埃被ってたんだよ」

 

意気揚々と買ったはいいが、使うのを忘れてタンスの……倉庫の肥やしとなる。流行りのあるあるだ。

 

「大丈夫?挽き肉、腐ってない?」

 

「挽き肉は数日前に買ったやつだよ!」

 

「ケージングも口に入れるもんだろ?ヤバくね?」

 

「そっちも先日買い替えたっての!」

 

「でも自分でソーセージ作るのって難しくないの?」

 

「その辺は調べてみたんだけど、そんなに難しくないらしいぞ?スパイスと挽き肉をこねて、スタッファーにいれて、あとは……」

 

徐ろにスタッファーを手に、その先端をのんびりチェアに座ってくつろいでいたあおいに向けて引き金を絞る。

 

「はいドーン!」

 

「ぎゃっ!!」

 

「あおいちゃ〜ん!!」

 

そのまま力なくチェアの背もたれに仰け反ってもたれ、うめき声のような声を漏らす。

犬山 あおい参謀長官(16)殉職 2階級特進

 

「お前らもだ……!」

 

そして次に狙いを定めるのは……

 

「ドーン!!」

 

「ぎゃ〜!」

 

斉藤 恵那帰宅部員(16)殉職 2階級特進

 

「こ、こんなの人の死に方じゃないよ!二人共、明日の予定だって、来週の予定だってあったんだ!」

 

「次はお前だ」

 

「っ!!」

 

叫ぶケンを傍らに、次にスタッファーが狙う先、そこにいるのはなでしこだ。

向けられた銃口。

目の前に迫る殉職に怯えるなでしこ。

そしてその引き金がゆっくりと絞られ、ためらいもなく、なでしこを惨殺処刑してくれよう!とした矢先、

 

「なでしこ危ない!ぐふっ!」

 

とっさに飛び出した一つの影。

それはケンだった。

引き金を引いたタイミングに合わせ身体を仰け反らせると、芝居っぽく、まるでゆらゆらと踊るようにフラつきながら膝をつくケン。

 

「け、ケンくぅん!」

 

「なんて声出してやがる……なでしこ……!」

 

「だって!だって!」

 

「俺は……野クル通信兵長……志摩ケンだぞ……!これくらいなんてことねぇ!」

 

「いや通信兵長関係なくね?」

 

「そんな!私なんかの為に……!」

 

「カノジョを守んのは俺の仕事だ……!」

 

「でも!」

 

突如始まる謎の三文芝居。何故かなでしこはガチ泣きしてるし。

 

(リン、やっとわかったんだ。俺達にシリアスなんていらねぇ。ただゆるい日々を送るだけでいい。ゆるい日々がある限り、キャンプは捗る)

 

「だからよ……!止まるんじゃねぇぞ……!」

 

そしてうつ伏せになって斉藤家の庭に倒れ伏すケン。

その左手の指はダイイングメッセージとして『メガネ』と残すのを忘れずに。

 

「……なんだ。この空気」

 

そんな一連の流れについていけずに立ち尽くす千明。そしてリビングの窓からそのカオスな光景を目に焼き付けていた恵那の父親の姿があったとかなかったとか。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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