リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
皆様、新年あけましておめでとうございます。
今年も当小説をよろしくおねがいします
咲さんとリンは外堀を埋め立てて、その上に盛って行くスタイル
ケンがなでしこの膝枕の上で目を覚ましたのは、西日が差し込む時間だった。
眠ってしまったこと、なでしこに気を遣わせたことに申し訳なく思って謝罪するケン。かく言うなでしこは、特に気にしていない様子で。どちらかといえば恋人冥利に尽きる膝枕が出来たことで御満悦だった。
ケンが目覚めたことで時間的にそろそろお開きにする流れとなった。
足が無い千明とリン。千明はあおいが、リンはなでしこが送っていくこととなった。
ケンがリンをタンデムすれば?という考えもあったが、生憎とヘルメットが無いので仕方がなかった。
そして各務原家を出発して二十分程。
山間の道沿いに構える久しぶりの我が家に、ケンは異様な安堵感に満たされる。
一人大阪まで行って家を離れるということが無かったため、3週間離れただけとはいえ、妙な懐かしさすら覚えるほどだった。
「ありがとう、なでしこ。態々送ってくれて」
「うぅん!久しぶりにリンちゃんとドライブできて、楽しかったよ!」
志摩家の玄関先で、なでしこのジムニーから降りたリンは申し訳無さそうに感謝する。
「なでしこ、どうせなら上がっていきなよ?なんなら夕飯食べていかないか?」
「え?で、でもそんなの悪いよ!」
「でも蟹、ごちそうになったんだし、そのお礼みたいなものなんだからさ。遠慮しなくていいよ」
「うむ、それにもう少ししたらなでしこにとっては義実家になるわけだし」
「リンさんや、話が飛躍しておるぞ?」
「ま、少しくらいゆっくりしていきなよ?お父さんもお母さんも、なでしこに会うの久しぶりなんだからさ」
「う、うん。それじゃ、少しだけお邪魔するね?」
ジムニーを家の際に停めて降車。少し遠慮がちに二人に続いて志摩家の玄関を潜るなでしこ。
「ただいま」
「おかえり、リン。ケンも長旅ご苦労さま」
「ん、ただいま、母さん」
「なでしこちゃんも、リンを送ってくれてありがとうね?よかったら上がっていって?」
「は、はい!お邪魔します!」
靴やブーツを脱いでリビングへとなでしこを案内する2人。ゆっくりと炬燵に入りながら雑誌を読む渉が、優しげにこちらを出迎えてくれた。
「おかえり、二人共。よく帰ってきたね」
「ただいま、父さん」
「ただいま」
「なでしこちゃんもいらっしゃい。ゆっくりしていってね?」
「はい!ありがとうございます!」
「リンもなでしこも、炬燵に入って寛いでて。お茶でも淹れるから」
ジャケットとマフラーをソファの上に脱ぐと、夕飯の支度をする先のそばを抜けて、食器棚からコップを取り出す。ケン愛用のコップと、リン、なでしこ用のコップ。リンは名古屋に引っ越す際に普段使っている物を持っていってしまったので、致し方ない。
そして取り出したるは『姫蔵』。10年来愛飲している掛川のお茶だ。
「リンは明日ゆっくりしていくのかい?」
「いや、着の身着のままだから、明日の朝一の電車で名古屋戻るよ。バイクもメンテに出さないといけなくなったし」
「リンちゃん、送っていこうか?」
「いや、流石にそこまでしてもらうのは悪いよ。それに、明日はなでしこも東京に帰らないといけないんでしょ?」
「そうなんだけど……」
「今日送ってくれただけでも十分なんだからさ」
「そうだぞ、長時間の連続運転は御法度なんだからな、無理したら駄目だぞ、なでしこ」
食い下がるなでしこを制するように、ケンが並べた湯呑にお茶を汲みながら、ドヤ顔でこんこんと説く。そんな彼をリンもなでしこも、ジト目で睨む。お前が言うな、と言わんばかりに。
「それ、お兄ちゃん思いっ切りブーメラン刺さってるんだけど?」
「そうだよ!疲れた身体で夜通し走るケン君も無理してるんだよ?」
「無理な長時間運転は親としても頂けないね」
「全く、家族のみならず、なでしこちゃんにまで心配掛けて!反省しなさい!」
四面楚歌だった。
炬燵に入り込むと、小さく縮こまってお茶を啜るケン。気不味く、居心地が悪い様である。
「ほら!今日は炬燵で夕飯よ!なでしこちゃん、食べていきなさい?」
「え?その、そこまでお世話になるわけには……」
「いいから!リンとケンがお昼御馳走になったんだから、これくらいのお礼はさせて?」
「わかりました!じゃあ頂きます!」
そして炬燵の天面に置かれるのはカセットコンロ。
そしてその上には、何やらグツグツと煮える音がする蓋をされた土鍋。
着火し、蓋を開ければ……
「今日はおでんよ?なでしこちゃん、いっぱい食べてね?」
「はい!ありがとうございます!」
志摩家での温かな夕食が始まる。
熱々のおでんを、温かな炬燵に入りながら口に頬張る幸福感。そしてそれは家族のみならず、大切な恋人も一緒で。いつか、またこうして同じ食卓を囲める日が来るように。そんなささやかな思いがケンの中に芽生える。
そしてきっとその時は、ここにいる皆が家族であるように、とも。
そのために、踏み出す一歩を持つ勇気を、彼は未だ持てずにいた。
(どうしてこうなった?)
夕食後、荷物を置きに一旦自室に戻ったケン。
そこには自身のベッドの布団とは別に、床にもう一組敷かれていたのだ。
どういうことなのか咲に問い質せば、
「なでしこちゃん、泊まっていってもらおうかなって思ってね」
と、何食わぬ顔で言うのだ。
流石にそこまで甘えては悪い、となでしこは遠慮するのだが、
だがそれにしたって普通なでしこが寝るのは、リンの部屋か、もしくは客間だろう。
「恋人同士なんだし、いいんじゃないかしら?それとも、なにかやましいことでもあるの?」
もはや八方塞がりだ。
母の考えていることが理解出来ないケンは頭を抱えながら自室に戻る。
ただでさえ久しぶりになでしこに会ってドキドキしているというのに、同室で寝ろとは。
もし間違いが起こったらどうするつもりなのか……。
全く以て鬼畜である。
どうにかなでしこがリンとお風呂に入っている間に気持ちを落ち着けねばとベッドに横になる。
枕の柔らかな感触が、今日のなでしこの膝枕を思い出させ、余計に悶々としてくる。
逆効果だった。
(……このままだと間違いを起こしそうで怖いんだが……俺は結婚するまではなでしこと清い関係で居ようと決めてるのに……!ギギギ……!)
何を隠そうこのカップル。付き合い出してから今まで、そういう行為は未経験だった。キスはすれどもそれ以上のことは、責任云々という今時の若者には珍しく硬い頭で、時折押し倒してしまいそうになる衝動を鋼の理性で抑え込んできた剛の者。それが志摩ケンである。
もっとも、そんな強い意志があるのなら、早いところプロポーズをすればいいのに……と思われるだろうが、それとこれとは別のようだ。
自身の煩悩と死闘を繰り広げる中、コンコンと部屋のドアをノックする音が響く。
「け、ケン君。お風呂、あがったよ?」
少し開けられた扉の隙間から、おそらくリンのパジャマを借りたであろうなでしこが、風呂で温まったであろう顔を上気させて覗き込んでいた。
「あ、あぁ。ありがとう、なでしこ」
「う、うん。その……入っても、いい?」
「ど、どうぞ?」
おずおず、といった様子で入ってきたなでしこ。
高校時代、何度か部屋に招き入れたことはあったが、大人になってからは全く無かった。それだけに、高校時代とは違い、大人としての魅力というか色気が着いた風呂上がりの恋人は、ケンにはどこか艶めかしさすら感じられた。
このままでは不味い。
「じ、じゃ、俺も入ってこよう、かな〜?」
「う、うん。行ってらっしゃいっ」
「ゆ、ゆっくり寛いでていいからな?」
パジャマを持って、どこかぎくしゃくとした動きで部屋から出ていくケンを見送り、なでしこも少し胸を撫で下ろす。
(ど、どうしよう……?ケン君と一緒の部屋で寝るなんて……)
なでしこも正直ドキドキが止まらなかった。
高校時代は大人の関係というものを全く知らなかった純粋な少女だったなでしこ。
だが社会に出て、否が応でもそういった知識が入ってくるもので、興味本位であれこれ調べれば、恋人としてあんなことやこんなことを男性は望んでいることを知り、脳のキャパシティが一時期とんでもないことになったなでしこ。
だが、ケンはそういったことは全くせず、恋人らしいスキンシップはキスくらいなもの。
それで彼は満足しているのか?
はたまた自分に女性としての魅力がないのか?
と悩みもした。
だがふと思い出す。
伊豆キャンの終わりに、そういうことは結婚してからで、なでしことは清い付き合いを、と桜に(凄まれて)話していたのを思い出した。
あぁ、私は大切にされているんだなぁ。そんな彼の優しさが骨身に沁みたものである。
だがこうして同室で夜を共にするというシチュエーションはケンもなでしこも、刺激が強すぎるもので、今日、もしかしたら一線を越えるのかもしれないという憶測が過るには十分だった。
「ほ、本でも読んで落ち着こうっ!」
何とか気を紛らわそうと本棚の漫画に手を伸ばす。
適当に開いたページ。
そこには青年漫画で稀にある濡れ場シーンだった。
恋人同士が濃厚な口付けを交わし、そして……
「〜〜〜っ!!」
パタン!となでしこは漫画を勢いよく閉じる。刺激が強かったらしく、顔が赤を通り越してクリムゾンになっていた。
だが、それでも再び見ようとするのは、羞恥よりも興味が勝っているらしく、おっかなびっくりといった様子でページを横目でチラチラと視界の隅に入れる。
(う、うわぁ〜……!)
もはやエロ本に近いその本を、顔を真っ赤にしながらも、だんだん直視して見てしまうなでしこ。
最早食い入るように見ていた彼女は……
「な、なでしこさん?」
「ハッ!?」
時間を忘れて、ケンが風呂から上がり、部屋に入ってきたことにすら気付かぬほどに読んでいた。
「け、ケン君っおっおかえりっ!」
「って!そ、その漫画は……!」
油断していた。
存外刺激が強い漫画だ。普段はそうして本棚に出しているが、なでしこが泊まることがあまりにも突然だったため、隠すことを失念していた。
「……読んだ?」
「……ウン」
「……そ、そうか……」
気不味い。
それも非常に。
妙な空気が流れ始めた室内。
「け、ケン君っ!」
「は!はひっ!?」
そんな中、気迫すら感じそうな勢いでなでしこがくわっと迫ってきた。
いきなりのことに、ケンもケンで変な返事となってしまう。
「け、ケン君も……そーゆーこと……したいの?」
「ウェ!?」
「その……え、えっちなこととか!」
「ウェェェイ!?」
赤裸々にとんでもないことを迫るなでしこに、ケンの滑舌がヤバいことになっている気がする。
「わ、私も、そーゆーことケン君とするの……イヤじゃないよっ」
「お、落ち着こうなでしこ!な?な?」
ずんずんと迫りくるなでしこの圧に後退りするしかなく、気がつけばケンはベッドまで追い詰められていた。
「うわっ!」
互いに重なるようにベッドに倒れ込む2人。
ケンが目を開ければ、目の前には視界いっぱいのなでしこの顔だった。
どうやら謀らずもなでしこに押し倒される形となったらしい。
「ケン君……」
「な、なでしこ……」
なでしこが近付けると、そっと唇を重ねてくる。
長らくしていなかったキス。その唇の柔らかさにケンは脳が蕩けそうになる。
だがなでしこの猛攻はまだ止まらない。
唇を離したかと思えば、再び唇を触れ合わせてくる。
「ぷぁっ……な、なでしこ、ちょ……んんっ!?」
息づく暇も、抗議の隙もなく、相次ぐついばむような口付け。一度触れ合うたびに、ケンの理性にハンマーか何かが打ち付けられているかのような刺激が走る。
「ケン君……もっと……」
「ん……んぅ!?」
ほんの少しだけ開いた唇の隙間に、なでしこが舌を突き入れてきた。
今まで感じたことのない未知なる刺激にケンは目を思い切り見開く。
差し込まれた舌がケンの舌に触れるやいなや、なでしこはヌルリと絡ませる。
余りの情報量の多さに、されるがままのケンは脳がパンク寸前だった。
「ぷぁっ……!」
十秒ほどひとしきりケンの舌を堪能したなでしこは唇を離す。その二人の唇の間には、舌が絡まっていた証の銀の糸が繋がっていた。
「は……っ!は……っ!」
対するケンは、なでしこの猛攻を対処しきれず、最早グロッキー状態で、リングならタオルが投げ込まれているであろうほどになっていた。
「ケン君……すごいね、このキスっ」
「す、凄すぎるだろ……!」
もはや理性は瓦解寸前だった。
鼻をくすぐる風呂上がりの女性の香り、色香。
そしてそれに加えて濃厚な口付けともなれば、そういった行為に及んでも致し方ない程に場が整っていた。
ゴクリ、と固唾を飲み込むケン。
その手は、胸元に押し付けられている柔らかなそれに伸び……
「っ……!」
ようとして、なでしこの肩を掴んで顔を離した。
「け、ケン君?」
「ごめん、なでしこ。これ以上は……保たねぇわ」
自身の上からなでしこを退けて、ベッドサイドに座り込む。どうやら理性を持ち直したらしい。
「なでしこ、前も言ったけど……俺はなでしことこれ以上の事をするのは……結婚してからって決めてるからさ……ごめん」
「あっ……!そ、その、私もごめんねっ!変なスイッチ入っちゃってたよ」
「なでしこがこれ以上を望んでくれているのは嬉しいんだ。それは俺も望んでる。けど……」
「ん、大丈夫だよ?」
申し訳無さそうにするケンの手を、なでしこの柔らかくも暖かな手が優しく包み込む。
「私、待ってるよ?ケン君が……心を決めるの」
「なでしこ……ありがとうな」
「うんっ!」
変わらぬ向日葵のような笑顔に、ケンは少しだけ勇気付けられる。
きっと前へ進んでみせる。
その為の確かな勇気を。
そして踏み出したその答えを出すための黒く小さな箱は、ケンの机の引き出しの中に確かに眠っていた。
ケン君が少しだけメス化してるように見えなくもない。
う〜ん……ちょっとやらしいかな……え?この程度なら健全?
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
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