リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
今回はオリキャラ2名出てきます。まぁ立場上出ざるを得ない人達ですかね
翌日 甲府市某バイクショップ
「と、言うことで、志摩君は方方への出張や研修を経て、こうして最初の配属先たる甲府支店に戻ってきた。既知のスタッフも、初顔のスタッフもいるだろう。改めてよろしくしてやってくれ!」
「支店長の紹介に預かりました志摩ケンです。ここしばらく、様々な支店への出張、研修を経て、こうして地元の山梨に戻ってこれたこと、とても嬉しく思います。山梨を離れて培った知識、技術を用いて、より一層業務に励みたく思います。改めてよろしくお願いします!」
ぴしっと礼を決めれば、事務所内に大きな拍手が巻き起こった。
きっちり目のスーツに身を包み、事務所内で自己紹介。
数年前の初出勤日の様な雰囲気に似てなくもなく、どこか懐かしさすら感じられる。
「志摩君、おかえり!」
「ただ今戻りました、海津支店長。またお世話になります」
「うむ!改めてよろしく頼むよ」
目の前の恰幅がよく、見事に髪がなく、恵比寿のような笑みを常に浮かべているのは、海津支店長。この支店でこの道30年の大ベテランで、特に整備においては各支社でも指折りの技術を持っており、管理職の仕事のみならず、弄りたいからと整備室へふらりと現れることがある。ケンとは入社して以来、ずっとお世話になっており、とても信頼できる上司の一人だ。
「今日は仕事が終わったら、皆で志摩君の復帰祝いをしようと思うのだが、どうだい?」
「いえ、そこまでして頂かなくとも……」
「遠慮はいらんよ。な?白川君?」
白川と呼ばれた細身で長身、白髪混ざりで髪型を見事な七三に分けた眼鏡の中年男性は、クイッと眼鏡のブリッジを指で押し上げて目を光らせる。
「支店長。志摩はまだ戻ってきたばかり。しばらくここを離れたとあって環境の変化もあるでしょう。復帰早々付き合わせるのはいかがなものかと……」
「むぅ、一理ある」
低く、努めて冷ややかに。
陽の海津なら陰の白川と言うべきか。
海津の朗らかさを制すように両断する。立場上、ズケズケと言うのはよろしくないと思われがちだが、この白川という男。次長という立場にあるだけに、その業績はかなりのもので、海津からも大きな信頼を寄せられているからこその発言だった。
「改めて志摩君、良く戻ってきた。またよろしく頼む」
「はい!次長も改めてよろしくお願いします!」
「こっちの挨拶はそこそこでいい。今日はまず支店内のスタッフに挨拶回りをして来い。仕事はそれからだ」
「はい!行ってまいります!」
一礼して二人の元を離れ、事務所内に居る事務員に挨拶回りに走るケン。
その姿を海津と白川はじっと目で追っていた。
「元気なのが帰ってきましたね」
「そうだねぇ。これでここがもっと活気づいてくれたら、万々歳だ」
「あれだけ元気があるなら、支店長。例の仕事を奴に任せるのも一つの妙案かと。聞けば、アイツの趣味はツーリングの他にキャンプや料理をしていると」
「なるほど、確かに適任だ。じゃ、挨拶回りを終えたら……」
「支店長。先程も言いましたが、奴はまだ戻ってきたばかり。急ぎ答えを出す案件でもありませんし、ここの環境の感覚が戻ってきてからでも遅くはありません」
「む、むぅ……」
「一週間後、来週の月曜日。そこで説明をしましょう」
「そ、そうだな。それくらい経てば良いか」
「えぇ。奴の復帰祝いも兼ねて、ね」
「ふふふ、白川君のそういうとこ、部下からズルいと言われんかね?」
「……よく言われます。何がズルいのか、皆目見当が付きませんが」
「鈍感だな、君も」
「それも……よく言われます」
こうして古巣たる甲府支店へ舞い戻ったケンだったが。
その復帰の裏で支店長と次長が何やら企んでいることに、ケンはまだ全く気づかずにいた。
「ケン君、職場変わったって言ってたけど、大丈夫なん?」
土曜日
甲府の県庁へと到着したケンとリン。
集合予定時間より大分早く到着し、一番乗りだった2人はのんびりと待っていたら、一番近いであろう2人のあおいと千明が次いで到着。なでしこと恵那を待つ時間、県庁前の広場で駄弁ることにした。
「変わった……って言っても、前にいたとこだからな。真新しいものでもないし、支店長達にも可愛がってもらってるよ」
「何だかんだ、ここしばらくあっちこっち行ってたもんな。そこで落ち着けるならいいんじゃねぇの?」
「まぁ自宅通勤出来るのがデカイな。やっぱり寮よりも慣れ親しんだ家が一番だ。……ちと遠いけど」
実際身延から甲府まで50分程かかるのは致し方ない。その分長くバイクで走れると思えば聞こえは良いが、雪や気温による凍結で電車を利用したことがあるのもまた事実である。
「お〜い!皆〜!」
「おまたせ〜!」
と、ケンの近況報告を終えた所で待ち人2人が大手を振ってやって来る。どうやら到着が同時になったらしい。
「恵那ちゃん、久しぶりや〜!」
「おつかれ」
「変わりねぇみたいだな」
「うん!皆も変わんな……いや、一人何か変わってるねぇ?」
「何で俺の方を見る!?」
「いやいや〜、イメチェンですかな?ケン君は」
「いや、まぁそんなとこかな」
「断髪式は、このトリマー斉藤にご指名を、ってね?」
「おい、何でそこでバリカンを取り出す?」
「ふっふっふ〜、さぁ?なぜでしょう?」
相変わらずからかい上手の斉藤さんである。
とりあえずここでこうしていても進捗が無いので、千明の案内で県庁の中へと入っていく。どうやら予めある程度話は通してくれていたらしく、打ち合わせの部屋も提供してくれるとのこと。
受付を済ませて鍵を受け取り、迷いなくその部屋へ向かって突き進む千明。
そして、
「ここが!アタシらの使う作戦本部だ」
がちゃり、と開かれる作戦本部(仮)の扉。
「こ、これは……!?」
細長い部屋。
雑多な荷物があれやこれやと置かれ、作戦本部というよりもまさに物置!という名称がふさわしく感じる。
「うなぎの寝床みたい……!」
「……あの真ん中で鎮座してるずんぐりむっくりした着包み……何処かで見たような?」
「てか狭っ!?」
「プロジェクト用に部屋貸してくれって言ったらこの部屋でよ〜?」
「野クルの部室みたいやな」
「懐かしいな、部室」
「うんうん!」
妙な懐旧の思いが溢れてくるこの物お……もとい、作戦本部。
「ま、ここは打ち合わせでしか使わないだろうし、このくらいあれば十分だろ?」
千明に続いてぞろぞろとうなぎの寝ど……もとい、作戦本部へと足を踏み入れていく。
そんな中、狭い部屋の途中に白いシーツが掛けられていた高さ1メートルほどの何かに引っかかり、シーツが落ちてその中身が白日の下に晒される!
『うぉっ!?』
「な、何やこれ……?」
何処かの車会社が開発していたロボットにも似たそれが、ガクリと首を項垂れてそこに鎮座していたのである。
「こいつは観光PRロボットのジンジャー君だ!仲良くしてやってくれよな!」
そういってジンジャー君の肩を、まるで竹馬の友と言わんばかりに馴れ馴れしく抱く千明。
「なんで観光ロボットがここに……?」
「まぁ、色々あったんだよ、こいつにも」
次は慰めるかのように頭を撫で始める。
その拍子に何らかのスイッチが入ったのか、ジンジャー君のボディ前面に備え付けられたディスプレイが、独特の起動音とともに明かりを灯す。
「こいつ……動くぞ!?」
『ジャンケンシマショー!!』
『ヒィィっ!?』
突然の起動に、千明以外の誰もが後退りしてジンジャー君から距離を置く。しかし悲しいかな、ここは野クル部室に似た構造のため、大して距離は取れないのだ!
そんな5人など構うことなく、ジンジャー君のディスプレイにはじゃんけんの三種の神器がルーレット状に表示され、既に勝負は始まっているんだぜ?と言わんばかりの圧を放ってくる。
『ジャン!ケン!ポン!』
条件反射で、真正面にいたなでしこがグーを出し、ジンジャー君のディスプレイはパー。
なでしこ 敗退ッ!
『ボクノカチー!!』
テテテテーテーテーテッテテー!
と、どこかで聞いたことあるようなファンファーレが流れ、場に余計な虚しさが漂ってくる。
「って、ただのじゃんけんロボットやんかい」
あおいのツッコミが何とも締まらない作戦会議初日の県庁物置に木霊した。
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
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