リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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(なでしこに)食い物を捧げよ!


第八話『進撃の猛獣』

「……むにゃ」

 

「ケン、そろそろ起きるんじゃないの?キャンプ行く日でしょ?」

 

志摩家 ケンの自室

シンプルながらも年頃の少年の部屋らしく、バイク雑誌やファッション誌などを本棚に羅列し、勉強机やテレビ、ゲーム機なども散見される。

無論、とある場所には、思春期男子が隠し持つ『アレ』もあるのだが、これはバレるわけにもいかないため秘密。

今日の予定を知っていた咲は、心配して訪室したのだ。

 

「まだアラーム鳴ってないよ〜……」

 

「ならいいけど……遅れないようにだけね」

 

ガチャッと扉を閉める音が妙に意識を覚醒させる。

少し寝ぼけ眼で枕元のスマホを見る。

ブルーライトが暗い空間に慣れた目に飛び込み、目を細めた。

 

「……まだ7時30分じゃん……」

 

そう確認し、二度寝と洒落込もうと再び目を閉じる。

7時30分……

7時30分……

 

「ぴあ゛ぁぁぁっ!!!」(汚い高音)

 

とんでもない覚醒スピードだった。

完全に起きる予定時刻を過ぎていた。

なぜだ!?なぜアラームがならなかったのだ!?

急ぎ原因を探るためにスマホを確認する。

 

「あ゛……」

 

なんのことか、マナーモードだったのだ。昨日、学校から帰ってそのままだったから気付かなかったのだ。

今の時間、すでに電車に乗っている辺りの予定のハズだった。

 

「ち、遅刻だぁぁぁっ!!」

 

「うるさいわよケン!近所迷惑!!」

 

「あひぃぃぃ!!」

 

最寄りの甲斐常葉駅電車は今から走れば八時過ぎの便になんとか乗れる。だが致命的である。

 

「行ってきます!!」

 

今までにないほどの速度で着替えて、ベッドサイドに用意しておいた荷物を全て背負い、肩から掛けて家を飛び出す、

 

「急げ……!走ればまだ最悪八時過ぎの電車に間に合う!!」

 

大荷物を抱えて全力ダッシュ。

普段からそこそこに鍛えているケンにとって見れば、最寄り駅まではさして遠くはない。

ただ焦りが息を挙げさせる要因ともなりえた。

 

程なくして、最寄りの甲斐常葉駅へと辿り着いた。

それほど遠くないのだが、すでに満身創痍。体力がキャンプ場まで保つか心配なほどに。

 

「な。なんとか、間に合った……」

 

時間としては八時十分。少し余裕があるので、待っている間、野クルのメンバーに少し遅れる旨のメッセージを送ろうとしたとき、

すでに同じ案件の先客がいた。

 

なでしこ『ごめ〜ん!!電車一本乗り遅れた〜!!今乗ったところ〜!!』

 

「まじか、まじなのか」

 

よもや自身と同じ過ちを犯すものがいたとは、類友か?類友なのか?

ともあれ、なでしこのメッセージの時間と時刻表を見たら、どうやら同じ電車になりそうだ。

 

ケン『俺も寝過ごして、今から電車に乗る!すまんが少し遅れる!』

 

そうメッセージを送り、自分もそうだが、同じ遅刻者のなでしこも朝食を摂っていないだろうと察し、近くの自販機で温かいペットボトルのお茶を二本購入。 

そうこうしていれば、電車がやってきたので乗り込めば、

 

「ケンく〜ん!」

 

向い合せで座るタイプの座席に座っていた同級生が手を振って呼んでいた。

折角なので対面の席に着くことにした。

 

「まさかなでしこも寝坊か?」

 

「えへへ……そうなんだよ。昨日興奮して中々寝られなくて……アラーム聞き逃しちゃったんだ」

 

「アラーム聞き逃すって……どれだけ熟睡してたんだ」

 

呆れながらも先程買ったお茶を渡せば、そりゃもう大喜びだ。

 

「ありがとう。朝から何も食べずに来たから、喉もお腹も限界だったんだぁ」

 

「そうだろうと思って。ほい」

 

リュックから二つ、ラップに包まれた黒い三角形を取り出すと、うち一つをなでしこに渡す。

 

「おにぎり?」

 

「母さんが電車の中でもいいから食べろって持たせてくれたんだ。丁度二つあるし、一つずつ食べよう」

 

「いいの?それだとケン君が物足りないんじゃ……」

 

「眼の前で友達がお腹空かせてるのに、一人だけ食べる薄情なこと、出来ないって」

 

「……ありがとう、ケン君」

 

ラップを外して、二人揃っていただきますと音頭を取り、そこそこに大きなおにぎりに齧り付く。冷えてはいるが、それでも海苔の香りと白米の甘み、少し感じられる塩気がとても美味だ。

 

「おいひ〜!おかかが入ってる〜!」

 

「俺のは昆布の佃煮だ」

 

バクバクと、本当に美味しそうに食べるなでしこに、自然と笑みが溢れてしまう。

これは、料理を作ってあげたり、奢ってあげたりすれば、その甲斐が十二分にあるだろう。

 

「美味しかった!」

 

「早っ!?」

 

あっという間におにぎりを平らげて、お茶で喉を潤すなでしこ。

まだケンは三分の一くらい残っているのに。

 

「そういえばケン君。テントとシュラフが掛かってるリュックはわかるけど、肩から掛けているそのバッグは何なの?多すぎない?」

 

「フッフッフッ……よくぞ我が秘密兵器に気が付いたな、なでしこ隊員」

 

「秘密……兵器……!」

 

物々しい名前に、なでしこは思わずゴクリと固唾を飲み込む。

 

「まぁ、実際はそんな大層なものじゃないけどな。ただ、リンのやつが持っていった方が良いって人数分予備を渡してくれたからな」

 

「リンちゃんが……」

 

「ちなみに……」

 

「1500円……?」

 

「よくわかったな」

 

「150回払いでお願いしまふ……!」

 

「ホント、トラウマになってんな。しかもどんどん回数増えてるし」

 

乗り換えの甲府駅まで一時間。

二人に話題が尽きることなく、ゆっくりとした時間が流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山梨市駅

 

「ごめ〜ん二人共!遅れた〜!」

 

「お、ようやく来たか!」

 

「悪ぃ、出鼻挫くみたいなことして」

 

「ええってええって、まったり行こ〜」

 

「時間は余裕持って集合にしたからな〜。しっかし、二人共同時に遅刻とは、仲良すぎだろ」

 

「「面目次第もございません」」

 

「さてと。あれから2週間……我々は待ちに待ったときが来たのだ!」

 

「バイトと下調べとその他諸々の準備の時間が無駄でなかったことの証のために!!」

 

「野クルの野望成就のために!!!いざ!!」

 

「「「しゅっぱ〜つ!!」」」

 

「何やこのノリ……」

 

かくして、野クル初めてのキャンプが、ここ山梨市駅で開催されようとしていたのであった。

 

 

 

 

 

 

「アキ〜、今日のキャンプ場はどんなとこなん?」

 

「クックックッ……!よくぞ聞いてくれたイヌコ参謀長官。」

 

「まだ続いとったんかソレ。てか何か昇進しとるし」

 

「これから向かうのはイーストウッドキャンプ場って言う林間キャンプ場だ」

 

「「「ほぉぉ!」」」

 

「薪代タダ!近くに温泉があって、夜景バッチリ!しかも料金は1000円と学生の懐に優しいお値段!!」

 

「「「おぉぉぉぉ!!」」」

 

確かに前回の麓キャンプ場のように利用料金だけで2000円掛かり、しかも薪代もかかれば、それはもう悲惨なことになる。

こういうお手頃なキャンプ場はお小遣いに優しいものだ。

 

「初めての野クルキャンプには、良いハードルだな」

 

「夜景も楽しみだねぃ」

 

「温泉も近くにあるとか贅沢なところや。ナイスやで、アキ」

 

「だろう?駅から4キロと、まぁ少し歩かにゃならんが、これもまたキャンプの一環だな」

 

千明のピックアップに各々絶賛、キャンプへの期待が更に膨らんでいく。

 

「そういやなでしこにシマケン。夕飯はなでしこ、朝はシマケンが作るって言ってたけど良いのか?」

 

「任せてよ!」

 

「二人で練り合わせたキャンプらしい飯を食らわせてやるぜぃ。」

 

「へ〜、カレーとかホットサンドかな〜」

 

「!?!?!?」

 

「ナ、ナイショダヨ~」

 

(図星や)

 

(二人共分かりやすいやつだな)

 

「ていうかなでしこちゃんもケン君もそんなに荷物背負って大丈夫なん?」

 

「へ?」

 

「こういうキャスターがついたのんのほうが疲れへんよ?こっから上り坂やし」

 

このキャンプ場までの道のりは大方坂道だ。距離はそこまで長くないにせよ、重い荷物を持っての上りは足腰への負担は大きい。ただでさえシュラフや備品に加えて、調理器具や食材を持っての移動なのだから、なでしこの荷物は重たくなっていた。主に土鍋とか。

 

「仕方ねぇな。疲れたらその荷物、運んでやんよ。シマケンが」

 

「ありがとうな〜ケン君」

 

「……しゃあねぇな。ここは男手として一肌脱いでやんよ」

 

「おぉ!頼もしい!」

 

「ま、限度があるから程々にな〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分後。

 

「ぜぇ……はぁ……!」

 

「ふぅ……ふぅ……!」

 

「なぁ……イヌコ」

 

「なんや……?」

 

「荷物、あいつにも持ってもらわねぇか?」

 

既にバテバテの千明とあおい。

その前方には、未だ疲れ知らずと言わんばかりに元気一杯で走るなでしこ。

そしてなでしこほどとは言わないが、そこまで疲れが見えず、彼女が迷子にならないように少しあとを歩くケン。

明らかにペースダウンした後方の二人を心配し、ケンが少しペースを落とす。

 

「だいじょぶか?」

 

「まぁ……なんとかな。しかしシマケン……なでしこは謎の体力なのは仕方ないけど、お前も結構鍛えてんのな」

 

「まぁ、バイクに乗る姿勢をしっかり維持するのに、特に背筋と腹筋、あと下半身も鍛えてるからな」

 

「へぇ〜……ほなら腹筋もバッキバキに鍛えられとるんか〜……?」

 

疲れのせいか、あおいは恥ずかしげもなく、どちらかといえば冗談のつもりで尋ねてみる。

 

「ん〜、割れてるのは割れてるかな」

 

「さ、さよか」

 

ケンも恥ずかしげもなく答えたことで、逆にあおいが羞恥に見舞われる。

 

「ははっ、じゃあ原付に乗ってるシマリンも体鍛えてバッキバキなのか?」

 

「今度聞いてみたら?」

 

「なんだよ、双子なのにシマケン知らね〜の?」

 

「いや、小さい頃ならともかく、高校一年にもなって腹の見せ合いなんかしないだろ」

 

「言われてみればそうか」

 

そうこう話しているうちに笛吹公園まで残り一キロを切る。そこから少し道は狭くなり、勾配はさらに上がる。

さらなる難関にゲンナリする千明とあおい。その手に持つキャリーをケンは取り上げた。

 

「笛吹公園までのサービスタイムだ。もう少しだから気合を入れて行こう」

 

「シマケン……」

 

「ケン君……」

 

えっちらおっちら

笛吹公園の展望台はあと少しである。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
  • ケンとなでしこのいちゃいちゃ
  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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