リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される   作:ロシアよ永遠に

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第十四話『テストキャンプとサーモンフェスティバル』

季節はめぐり、

雪は積もって、

そして溶けていき、

野にはふきのとうや春の兆しを告げる花がチラホラと咲こうとする初春。

一組の男女のライダーが駆る2台のバイクが高下への道を並び走る。

片や女性は、祖父から受け継いだスラクストンを。

片や男性は嘗ての相棒の魂を受け継ぐ黒いGSXーS1000GTを走らせる。

そのどちらもタンデムや後輪両サイドに多くの荷物を積載しており、その車体の大きさもあってかなりの重厚感が感じられる。

 

『そういえば、こうやって走るのも伊豆に写真撮りに行った時以来だね』

 

インカム越しにつぶやくのはスラクストンを駆るリン。

なんだかんだ年明けてから忙しくなった2人はこうして休みが合うことが中々なく、一緒にツーリングする機会に恵まれずにいた。

 

「だな。しかもキャンツーなんだからめっちゃレアだぞ」

 

『うむ。ホントに高校卒業してから一緒にキャンプ行ったのなんて、指折り数えるくらいだろ』

 

「社会人になって、自分の時間が限られてきたのが原因ヅラ……」

 

『あと、なんだかんだ互いに住んでるとこが遠いっていうのもあるし。……特に私』

 

やはり名古屋と言う土地への距離が大きなネックであり、家族のみならず、友人と出会える頻度もリンが一番少ない。一人が好きだった彼女も、仲の良くなった友人と別れて、中々出会えない環境になると言うのは寂しさもあるらしい。

 

「ま、今日は久しぶりに皆で休みを合わせたんだ。今まで会えなかった分、思いっ切り楽しもうぜ?」

 

『だな、折角【ある意味貸し切り状態】なんだし』

 

久しぶりの皆でキャンプだ。ワクワクしない訳がない。

逸る気持ちが自然と右手に力を込め、アクセルを吹かして更に加速していくリン。

気持ちはわからんでもないケンは、苦笑いを浮かべながらもそれを追うようにして加速し、2人は青少年自然センターへとひた走るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人共、久しぶり!」

 

バイクを駐輪し、ヘルメットを外す2人を出迎えてくれたのはなでしこだった。

高下へ来たにもかかわらず、作業着レンジャーになっていない彼女は珍しい。普段着……と言うよりある程度動きやすい服装だ。

 

「久しぶりなでしこ」

 

「俺はなでしこの誕生日以来だな」

 

「うん、だからケン君は一週間ぶりかな?」

 

「なんだかんだでケンが実家に戻ってからは休み合わせてるよな」

 

「ふっふっふー!デート休暇だよシマリン君!」

 

「この前は美味しいケーキ屋さんに連れてってくれたんだよぅ!」

 

「ま、折角の誕生日だしケーキ食いに行くのも良いかなって」

 

「プレゼントにこのニット帽も貰っちゃって……これは二人の誕生日に倍返ししなくちゃだね!」

 

「程々にしとけよ〜……このバカップル」

 

「お、これで全員そろったな〜?」

 

近況報告と言う名のちょっとした惚気に入っていた所で、管理棟から先についていた他のメンバー+1匹がぞろぞろと出てくる。

 

「お、チクワ爺さん、久しぶりだな」

 

「わっふぅ……」

 

恵那に抱かれるチクワ。その姿は初めて会った時とは比べるべくもなく力がない。健康的には問題ないのだが、犬年齢的に十数歳は人間で言うお祖父ちゃん。迫る歳の波には勝てぬらしい。

 

積もる話の傍らに最終到着の志摩兄妹の荷物を皆で協力して管理棟へ運んだ6人。そこにはすでに他のメンバーの荷物が運び込まれて合わせて大荷物となっていた。

その荷物はテントやら調理器具やらなんやら……

 

「よし、荷物はこんなもんだな。……それじゃ、ウチらのキャンプ場で初めてのテストキャンプ!やってみっか!!」

 

『おおぉ!!』

 

そう

今日はこのキャンプ場(未完)でのお試しキャンプだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントに俺も買い出し班で良いの?」

 

近くのスーパーへ向かう道すがら、なでしこのジムニーの後部座席で揺られるケンがふと呟いた。

残ったメンバーはテント等の設営をしておくと言うことで役割分担したわけだが、力仕事があるであろう設営組ではなく、買い出し組に編入されたことにケンは疑問符を浮かべたのだった。

 

「大丈夫だと思うよ?私がレンタルしてきたテントとかそんなに力いらない軽いのだしね〜」

 

「それに、買い出しやったって力仕事あるから案外男手いるんやで〜?」

 

「つまり荷物持ちってことか」

 

「ご明察〜」

 

ニヨニヨしながら助手席に座るあおいがケンの配属を言い出した目的はこれだったらしい。

まぁ設営も人が居すぎるのもかえって手持ち無沙汰となるかもしれないし、これはこれで良いかも知れない。

 

「それにや」

 

悪戯っぽい口調から、普段の声色へと戻ったあおいがそうつぶやく。

 

「ケン君にも何か作ってもらお思てな〜。久しぶりやし」

 

「うん!私も食べてみたい!」

 

建前は荷物持ちながらも、結局は飯を作ってもらいたいってことらしい。ケンの料理の腕はあれから上達しているのは言うまでもなく、それを目当てにしているという事は、なでしこのみならず、あおいもそれなりに食い意地が張ってると言うことだ。

 

「……仕方ねぇ。一丁腕を振るいますか」

 

「「わ〜い!!」」

 

そして、

スーパーで見つけたお買い得のビッグサイズのサーモンに目をつけたなでしことあおいの黒い笑みに、女性の恐ろしさを見に染みたケン。

何を作るか?と言うことで、なでしことあおいはスープと鍋を立案。

 

「……となると、汁物よりもおかず系……2人のメニューの間に食べてもらう味の方向性なら、少ししっかり目の味付けにするか……そして煮込み系ではなくて焼き系に……」

 

飽きが来ないようにコンセプトや味の重複は避けるべきだ。

ブツブツとメニューを組み立てるケンの表情はかなり真剣である。

 

「な、なんやケン君料理人みたいやな」

 

「何を作ってくれるのか、楽しみだねぃ」

 

その圧に少し圧されながらカートを進めるあおいと、そんなもの気にせずワクワクが止まらないなでしこ。

ウロウロと野菜コーナーや調味料コーナーなど、あーでもないこーでもないと唸るケン。

と、調理器具コーナーへ差し掛かり、とあるモノを見た時、ケンに天啓が下った。

 

「……これだ!こいつならサーモンといえば定番のアレが出来る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜

皆がメインの焚き火でなでしこが一発目の料理を作るのに気を取られている裏で、あおいとケンは各々のメニューの下拵えに取り掛かる。

 

「よし、こっちはこれで煮込むだけや。ケン君はどうや?」

 

「こっちも頃合いを見計らって後は火に入れておけば問題ないよ」

 

「よっしゃ、今日はサーモン尽くし。皆にとことん味わって貰おうやないか……!」

 

「うむ、簡易的なサーモンコース料理と言っても過言ではないぜ……!」

 

「「ふっふっふ……!!」」

 

サーモンを見つけた時に浮かべた2人の笑みに負けず劣らず、ケンも相当に黒い笑みだったのに誰も気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケッケッケッ!日本酒には炙りサーモンヅラ〜!」

 

途中で約1名、余ったサーモンを串に刺して炙って晩酌を始めるメガネが居たが。

 

まずはなでしこが作った優しい味わいのサーモンミルクスープ。

 

「美味しい!」

 

「はぁ〜!温まるぅ〜!」

 

「超!絶!美味!!」

 

野菜とサーモンの旨味が溶け込んだ生クリームの優しい味わいのミルクスープ。隠し味のディルの風味も合わさって身も心も温めてくれる一品だ。

鍋いっぱいのスープを六人で食べて行けば……

 

「あれ?もう終わりか〜……6人もいれば一瞬だな〜」

 

美味かっただけにその味の名残惜しさもひとしおで。残念そうな千明になでしこが素敵な笑みを浮かべる。

 

「ふふふん、アキちゃん、まだ終わりではないですぞ?」

 

「うむ。なでしこさん、イヌコさんや、手伝っておくれ」

 

「任せなされおじいさん」

 

「アキみたいに呼びなや」

 

席を立つ老夫婦とあおいに疑問符を浮かべる設営組。

ややあってそれぞれがお盆に乗せた皿を持って戻り、それぞれに一皿ずつ配っていく。

 

「……これって……アルミホイル?」

 

「まぁ開けてみてくれたまえ諸君」

 

言われるがまま、皿の上に乗ったアルミホイルの包み紙。それをそっと開けば……!

 

『おぉ〜!』

 

アルミホイルの中に閉じ込められていた何とも言えない芳しい香りが開放され、湯気とともに鼻腔をくすぐってくる。

バター

キノコ

バジル

コンソメ

ニンジン

タマネギ

そして

メインたるサーモンの香りが渾然一体となって、ミルクスープでそこそこ膨れた腹を再び空腹へと誘う。

 

「そう!スープの次はポワソン……!サーモンのホイル焼きだ!」

 

『うまそー!!』

 

頂きますの声と共にサーモンを一口。

バターのまろやかな風味

下味の塩コショウ

共にホイルの中で熱されたことで染み込んだ野菜の甘味と旨味

そしてバジルの爽やかな香りが口いっぱいに広がっていく。

 

『美味い……!』

 

「さっきのミルクスープの優しい味わいから打って変わって……」

 

「コンソメのパンチが効いててメッチャ美味いわぁ……!」

 

「そのパンチをバターや野菜が包み込んで……!」

 

どうやらお口に合ったようで、皆の顔が蕩けてきている。

だがこのシマケン。ここで終わるような男ではない。

 

「ここで皆に味変だ」

 

差し出されるは小鉢に入れられたクリーム色の何か。

彼の言うがまま、それを少しサーモンに掛けて一口。

 

『っ!?!?』

 

「何これ!?マヨネーズ!?パンチの効いたサーモンにこってりとした味わいが加わって更に……!」

 

「でもこれ、マヨネーズって割に少しピリッとしてて爽やかで……ん?これ、何処かで……」

 

「ふっふっふ……シマリン君、よくぞ気付かれましたな!マヨネーズに混ぜたもの……それはこれだ!」

 

じゃ~んと取り出したるは細長くデコボコとした形の淡い緑のモノ。そう、リンにとっては色んな意味で思い出深い食材。

 

「ワサビ……だと……」

 

「そう!これをマヨネーズに合わせればこってりしながらもクドくなく、かつ爽やかな後味にしてくれるってわけだ。って、これはちょっとした知り合いのアレンジの引用なんだけどな」

 

「やるじゃんシマケン!」

 

「うんうん、私の目に狂いなしやな……って!これだけのメニュー出されたらこのあとの私の料理のハードル上がってまうやん」

 

無論、その後に出されたメインたるあおい特製のサーモンと湯葉入り石狩鍋(味噌バター牛乳味)も不味いはずがなく、シメのほうとうも合わせて絶品の域だった。

こうして料理班3人によるサーモンテロは、物の見事に成功したわけである。

番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!

  • 未来の子供達のほのぼの生活
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  • お兄ちゃんはおしまい!(意味深)
  • いつメンのキャンプ
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