リンの双子の兄は、静岡の猛獣に振り回される 作:ロシアよ永遠に
皆がサーモンを堪能し、自分達で作ったキャンプ場で、しかも貸し切りで食べる贅沢を堪能。
満腹の余韻に浸る間もなく、二代目グビ姉と変身した千明は徐ろに自身のバッグから新たに5つの渋い湯呑を取り出した。
「よぉし!折角のテストキャンプだ!今夜は飲み明かすぞぉ!」
「いやいや、それは流石にやりすぎやで」
「やっぱり厄介な酔い方をするよな、千明のやつ」
そんなあおいの制止もリンのボヤキもどこ吹く風。持ってきた『池池』をドポドポと注いでいく二代目グビ姉。
「ま、飲み明かすかどうかは冗談だけどさ。一杯だけでもやろうぜ?皆で作ったキャンプ場を祝してさ?」
「まだ出来てへんけどな」
「まぁ一杯だけなら良いんじゃない?」
「だな。たまにゃ千明に付き合ってやるとするか……日本酒はあんまり飲まんけど」
「私もだよ〜、たまに酎ハイを飲むくらいだから……」
なんだかんだ言いながらも千明の酒に付き合う事になった5人は、池池の注がれた湯呑を手に持ち、皆が突き合うように掲げる。焚き火に照らされたその水面がゆらりと揺れ動いた。
「じゃ、不滅の野クルに乾杯!!」
「キャンプ場にじゃねぇのかよ!?」
「しかも私と斉藤は元野クルじゃないし」
元部長の謎の方向転換に思わずケンとリンのツッコミが入るが、まぁいつものことだと言うことでその湯呑に入れられたその日本酒を一口含む。
口に広がる純米のお酒ならではの辛味と旨味、まろやかさ。そして鼻を抜ける香りが何とも心地よい。フルーツ感の強い酎ハイを嗜む面々には新鮮な味わいだ。
「へぇ……池池って初めて呑んだけど、こんな感じなんだ?」
「割と飲みやすいな、コレ」
「だろ?お前ら、池池は通販も取り扱っとるで、気に入ったならいつでも注文してな!」
「何だよそれ」
「飯田さんのモノマネやんかそれ」
「お!流石イヌコ、良くわかったな〜」
「飯田さんか〜、懐かしいね〜」
伊豆半島の伊東市で酒店を娘と2人で切り盛りしている飯田さん。千明、あおい、恵那。そしてここにいないが鳥羽先生は山中湖キャンプ以来の付き合いのある人だ。
「そういや通販ばっかであんまり会えてねぇな……元気にされてるのかな〜」
「この前リンと伊豆半島に行った時の帰りに寄ってきたんだよ。お二人共元気だったよな」
「うむ、チョコちゃんもな。……まぁ前ほどじゃないけど」
『チョコちゃん!!』
もはやチョコちゃんの虜になっていたことを思い出した奴らは、あの愛くるしい姿を思い浮かべて顔が蕩けてきている。酒が入っているというのも多少あるのだろうが。
「私はケン君とタンデムでツーリング行った時以来だね。懐かしいな〜」
「ほほぅ?各務原隊員、くわしく!」
メガネを光らせ、絡んでくる気満々の千明。それはあおいも恵那も同様で、やはり酒が入ったことでかなりややこしい予感がしなくもない。
「なでしこちゃん、ケンと、伊豆半島で、どこにいったの?」
一句一句を強調して詰め寄る恵那。いつも以上に絡みが濃厚である。
「えっとね〜?」
「なでしこ君!つ、ツマミでも作りにもが……!?」
「なでしこ、詳細な報告を」
話そうとするなでしこの気を何故か逸らそうとするケン。そんな彼の口を塞ぐのは妹のリン。ブルータスお前もか。
どうやらなでしこの話そうとする内容はケンにとっては都合が悪い、と言うよりなでしこ絡みなので恥ずかしい内容らしい。
そんなオイシイことが確定している酒の肴を見逃す奴らでもなく、詳細をなでしこから聞き出さんとしていた。
「それはね〜?高校3年の時にね〜?ケン君がタンデムデートを誘ってくれたんだ〜。それでね〜?伊豆に一緒に行きたいとこがあるって言って〜、連れてってくれたとこがあるんだよ〜」
『どこに!?』
酒が入ったことで、実に嬉しそうに、高校時代以上にふわふわぽわぽわした喋り方で話すなでしこ。
そんな彼女のゆっくりとした、聞く側からしてみればもったいぶったように感じなくもないそのゆったり感に、女性陣は食い気味である。
ちなみにケンはというと、妨害を防ぐために猿轡をされて手足を縛られていたりする。
「恋人岬だよ〜」
『恋人岬!?』
4人に電流走る(CV古○徹)
「てことはだよ!?てことは!?」
「えっとね〜?そこにある鐘を三回鳴らして好きな人の名前を読んだら〜、愛が実るって言われてるらしくて〜それで誘ってくれたんだ〜」
「へぇ〜?それはそれは……」
そこで目を光らせるのは恵那だった。
何を隠そう、この恋人岬の情報の出所は彼女だ。伊豆キャンでの一幕(二期二十八話参照)でのジオスポット観光計画を立てていた時に、冗談半分で案を出したのが恋人岬だった。
その時はケンの猛反対で行くことはなかったが、彼の中で思うところがあったということらしい。
「で?で?呼んだん?Callしたん?」
「なんで英語なんだよ」
「うん!私はケン君を〜、ケン君は私を呼んでくれたんだ〜」
思い出してよほど嬉しかったのか、先程まで以上に夜でも眩しい満面の笑顔を浮かべるなでしこ。
そして嬉しくも甘酸っぱくて恥ずかしい思い出を暴露された片割れはと言うと、猿轡と拘束された身を悶えさせながら、その身体からとある言葉が全力でにじみ出ていた。
『くっ、殺せ!』
と。
「それでそれで!?」
「そのあとはね〜?なんだっけ?ふたりで『こいびとせんげんしょ〜め〜しょ』?をはっこ〜してもらったんだよ〜?うへへ〜…………くぅ……」
酔いが回ってきたのか、怪しく呂律が回らなくなってきたなでしこ。
ややあって、酔いが限界に来たのか、それとも単に寝る時間なのか、すやすやと可愛らしい寝息をたてはじめた。
「寝ちまったか」
「まぁ飲み慣れへん日本酒飲んだ言うのもあるやろけどな」
明日二日酔いにならないかだけ心配ではあるが、それはさておき……
「さて、もう一人の証人尋問をするとしようか?」
『さんせ〜!』
とてもイイ笑顔のリンの言葉が死刑宣告じみていた。
身動き取れず、もはやまな板の上の鯉と化していたケン。必死の身体を張った抗議も虚しく、無情な尋問は彼をこれでもかと言わんばかりに辱めるのだった(意味深)
そんな彼、彼女らを余所に、ややあって近くを散歩していたチクワが、草むらに落ちていたとある欠片を持ち帰ったことで、ケンへの辱め(意味深)は終わることとなる。
陶器のような文様が刻まれたその破片。
もしかしたら値打ち物かもしれない。
そんな冗談を言い合っていた。
それがまさか。
この欠片がキャンプ場作りに大きな波紋をもたらすとは、今はまだ誰も気付かないでいた……。
ケン君玩具回でした
番外編を書くにあたり、こーゆーのを読みたい!っていうリクエストを募集します!
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